いままでの言葉: 2009年
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- 12月の言葉:
「35歳以降に発明されたものはすべて自然の秩序に反するものです」
by ダグラス・アダムズ (1952-2001) "The Salmon of Doubt"
- Andy Hunt著 ; 武舎広幸,武舎るみ訳.『リファクタリング・ウェットウェア : 達人プログラマーの思考法と学習法』(オライリー・ジャパン, 2009.4.) [amazon
| bk1 ]p.116から孫引き
- ヒッチハイクガイドのアダムズ先生曰く,生まれたときに存在したものはどれも普通で自然,15〜35歳の間に発明されたものは「新しく面白く革命的で,自分の職業もそういったものに関連していることが多いでしょう」。当たってる。
- この10年間で発明されたものに対して,この本でいうところの「認知バイアス」を持って接しているかしら?と考えたけど,そもそも発明されたものがとっさに思い浮かばない(爆)つまり,秩序に反するどころか……こういうのを老人力という<嘘
- マインドマップとかインナーゲームとか,いろいろ紹介されている勉強法の本で,もちろんルディ・ラッカーとは関係ない。ここまで人間の脳をコンピュータに例えないとプログラマのみなさんは理解しにくいのか(笑)という突っ込みどころは満載。非技術系にも面白い一冊でした。
- 11月の言葉:
「そう言う風に、今も昔も、小説の読者などには、そう言う頑迷不霊な愛読者があったもので」
by 折口信夫(1887-1953)
- from 「もののけ其他」『文豪怪談傑作選 折口信夫集 神の嫁』(筑摩書房, 2009.9.) [amazon
| bk1 ]
- "頑迷不霊"を一発で変換できたことえり,偉い!(笑)
- 謡曲が「葵の上」というものだから,怨霊をてっきり源氏の北の方と思い込んでいたと。それを「またそれが或点まで、昔風の読者のあるべき姿だったのだと思う」と折口先生,開き直っています。その後段で「読者はなまなか作者の動機を浅く了解して失望しないようにするがよい」ですから。難しくってわかりません,ていうか怪談じゃないと思いますっ>東先生!
- とはいえ,「意志のない人のように、人の言うなりになる性格であるが、そう言う人は、怨霊になる力が無いと思うことは出来ない」と,さらっと書かれているわけで,注意深い読者にはもっと怖い話なのかもしれません。
- 10月の言葉:
「だって,コーンウォール人には尻尾が生えているのに」
by サビン・バリング・グールド(1834-1924)
- from 『ヨーロッパをさすらう異形の物語 : 中世の幻想・神話・伝説』(柏書房, 2007.10.)[amazon | bk1 ]
- コーンウォール人には尻尾が生えていると乳母に信じ込まされたデヴォンシャー人のサビン少年は,仲良しの書店主Lさんに思い切って質問しました。「ぼくはLさんが大好きだよ。でも,尻尾が生えているってほんとう?」と。で,もちろんきっぱりと否定されたわけです。
コーンウォールとデヴォンの位置関係を見ると笑っちゃうしかない挿話ですが,しかし,尻尾の有無はともかく「テーマー川の向こうに住む人々を「別の世界の生き物」だと思っていた。……尻尾をもたないデヴォンシャー人とはわかりあえない人々だと本気で信じていた」というのは,固有名詞を取り替えれば今でも全世界で通用する偏見だから,笑ってばかりもいられないわけで。
- とはいえ,偏見て無くそうったってなくせるものじゃない。ステレオタイプがあるから安心できるってところもあるしね。「ヘタリア」騒動のお隣の国の議会の人なんて,完全に2ちゃんの人が思い描く韓国人を演じちゃったとしか思えない。ま,偏見を逆用するってこともできるわけだし。結局,自分が偏った見方をしているのだと常に意識していくしかないんでしょうね。
- 引用元のほうは監修の池上俊一先生によると「140年にわたって読み継がれてきた,恐るべきロングセラー」なんだそうです。たしかに"Sabine Baring‐Gould Curious Myths of the Middle Ages"でamazon.jpを検索すると13件でてきます。残念ながら内容は,消尽されちゃったというよりも,柳田や南方がいまでも読まれているようなものなんだろうねぇという<今月も地雷を踏んでいるような気が……(^^;
そして,柏書房は相変わらずな仕事っぷりで,原文が屈折しているのか,訳が間違っているのか怪しいところもちらほら。適当にあつめたような共訳本は買うもんじゃないですね。それに,いくら著作権が切れていても底本はきちんと書くべきだと思う。
- 9月の言葉:
「明日死ぬかもしれない人間が、大人になる必要ってあるんでしょうか」
by カンナミ・ユーイチ
- from 映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』[amazon ]
- それを言ったらさ,何歳だろうがいつ死ぬかはわからないんだよ,ユーイチ君。まあ,そんなことは死の経験値というしかないものが上がらないとリアルじゃないし,その切羽詰まらない感じが今の日本なわけだけ。でも,キルドレ(の設定ってエルフ%トールキン)で毎日,命のやり取りしているのにそうなの?見たいな感じもして。
- CSで放送されたのでようやく見ました。『すべてがFになる』しか読んだことないし(しかも,とりたててどうという感想もなく),押井ファンでもないので劇場に行くほどでもないわけで。
いちばんうけたのは社名のロストックとラウテルン。ブンデスリーガ(それもいずれも名門とはいえずっと2部)と森博嗣ファンが重なるのか?と思ったら映画オリジナル設定だそうで。次がバセット・ハウンドでたーっ(笑)
全体を通しての感想は,生きる意味とかそういうんじゃなくて,「ボクにもヒコーキが飛ばせるんだよ,ハヤヲくんっ」でした<また地雷を踏むようなことを…。
- 8月の言葉:
「必要に応じて,自分とほかの人との間に、一種の壁を作ってくれます」
by メアリー・ルー・アンドレ
- from メアリー・ルー・アンドレ著 ; 権藤ひとみ訳『私を美しく変えるワードローブ整理術』 (ダイヤモンド社, 2005.7.)[amazon | bk1]
- ここを見てくれている方は条件反射でATフィールド?と浮かんだことでしょうが,スーツのジャケットのことです。著者曰く,「きちんとしたジャケットは世界を征服できるかのような気分を与えてくれます」「職場用とカジュアル用のジャケットは,私にとって鎧のようなものです」。勤め人なら誰でももっている心の壁だわ(^^;
- ワードローブの80%は着ていない服です,整理して活用しましょう,というコンセプトの本なんだけど,私的には服ってこんなに持っていなくちゃいけないものなのかっ!と新たな世界をかいま見せてくれる一冊でした。服を買うくらいめんどくさいことはないんだけど,蠅男(ジェフ・ゴールドブラムのほう)の同じジャケットがばーっと並んでいるワードローブやジョブス(いつも黒のタートルとジーンズ)の真似は許されないんで,5枚のシャツと3本のパンツに3足の靴をローテーション。小山龍介が『整理Hacks!』[amazon | bk1]で提案しているみたいなやり方(立ち読みの記憶で書いてます)。うん,心の壁の作り方は人それぞれってことだ<そういうことか?
- 7月の言葉:
「兎さ。いちばん抵抗力のある生き物は兎族だからね」
by ジョン・S. オズボーン科学士官
- from ネヴィル・シュート ; 佐藤龍雄訳『渚にて : 人類最後の日』 (東京創元社, 2009.4)[amazon | bk1]
- と,甥に教えられたフラウド元陸軍中将はオージーらしく「兎どもめ!われわれ人類がこれまでやって来たことは、結局すべて、奴らとの戦いだったわけか――しかも最後はやつらに負けてしまうとはな!」と詠嘆し,食事前にブランデーソーダをやる口実にするのでした。
- 愚かでいとおしい人類の静かな{週末|終末}の物語。被爆はコレラに罹患するのと違うんだけど,そんなことはどうでもよろしい。そういう瑕疵に目が行ってしまう子供のときに読まず,映画も見てなくて幸いだったとしかいいようがありません。読むべし。しかし,こんな風に穏やかに滅びたいと思ってしまうのは,やはり病んでいるのだろうとも思う。
- SF大会が7月の年は,夏が夏じゃない感じがする。だからって,毎年レイバーディにしてほしいわけじゃないんだけど(^^;
- 6月の言葉:
「一体何階建てたらうちの父さんにバベられるか…ものすごくハイリスクなチキンレースだと思うもの…」
by 聖イエス
- from 中村光『聖(セイント)☆おにいさん』第3巻 (講談社, 2009.3)[amazon | bk1]
- バベルを動詞にできるのはイエスくらいでしょう。いまさらここで紹介するまでもない,ブッダ&イエス最聖コンビの立川ライフ癒し系コメディです。同僚に借りて(そんな特殊な職場ではないです,たぶん)一気読み,笑いました。魚×2パン×5Tシャツ欲しいです<ぉぃ
- 勢いで神殿から商人たちを追放したのかはともかく,イエスが語る過去のエピソードは確かに聖書に出てきます。ええ,読み終わってから福音書を読み返しましたよ<お馬鹿
- で,調子にのって中村元『ブッダのことば スッタニパータ』(岩波書店, 1984.5)[amazon | bk1]に手を出しましたが,これが難しくて。うちは浄土宗だけど,葬式仏教徒だからな…。とりあえず,輪廻はよくないっていうのはわかった。<えーっと
ところで,「犀の角」の注(p.254)「アメリカの或る童話(岩波少年文庫)によると,ナルニア国では一角の犀が重要な意義をもっている」ってどういう意味なんでしょうね。「ノイマンによると」とあるので引用元が変なのか。<ちょっとわかることがあるとこれだ。重箱の隅つつきです。
そして,2009年岩波文庫フェア帯の「きみよ,生きよ。生きたほうがよい。命があってこそ諸々の善行をなすこともできるのだ。」がブッダのことばではないという罠。意外に商売上手。
- 仏教の学校に放り込まれていたら逆だったかもしれないし,信心は別にして記憶力のあるうちに素養を身につけるのが肝心と思った漫画でした。
- 5月の言葉:
「最初はリストになかったものをやって,あとからリストに入れて完了扱いにした経験のある人には、私の言いたいことがわかるはずだ。」
by デビッド・アレン
- from 『ストレスフリーの整理術 : はじめてのGTD』(二見書房, 2009.1)[amazon | bk1]
- そうか,ざっぱーそうなアメリカ人も姑息な満足感を求めるんだ(笑)<偏見
- 最後の方のこの一節で,この人のこと信用できそうな気がしました。
3年半くらい前にブームになったGTD(今月の言葉 2005年10月)原典の新装改訳版。意外に今更感はなく,やっぱりWebのサマリーだけじゃなくてオリジナルを読むのも大切だなと。なんでA4の紙じゃなきゃダメなのかとか,優先順位をつけなくて良い理由,ようやくわかりましたよ。紹介者に自明のことになっちゃったらすっとばされるやね。そして,このページが斯くあるように,著者が思っても見ないところを読者は拾って共感したりもするわけだし。
- で,収集のステップに手をつけては放置という,よろしくない状況におります<ダメじゃん。
- 4月の言葉:
「自分が悪をやりたくてやってるわけじゃなくて,仕方なくやってる悪って言うのはいっぱいあって,その程度の悪って言うのはみなさん手を染めている筈なんです。」by 宮台真司
- from BSアニメ夜話「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(2009年2月26日放送)
- 「ぼくは社会学者もやっている」宮台真司がハンナ・アーレントの「凡庸な悪」(もちろん,未読)を思いっきり噛み砕いて説明したもの。
- 私は悪の秘密結社の領袖もやっていますが,それはともかく,日々の仕事の中にも「悪」を働いているのだと思う今日この頃。組織の中にいるってそういうことなのかもしれない。就職活動などしていた20年以上前は,少なくとも人を傷つける悪には加担するまいと考えていたのだけれど。とはいえ,程度問題の悪であるからといって,相対主義に飲まれては堕ちていくばかりだし。結局,できることをするしかない。
- 3月の言葉:
"+ Gelassenheit - Gelassenheit" "+ ehrgeizig - ehrgeizig"
- vom werder.de: die offizielle Werder Bremen website
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- "Nenne deine wichtigste positive und deine wichtigste negative Eigenschaft?"(長所と短所は?)という質問へのキャプテンと副キャプテンの回答。Gelaasenheitは冷静,ehrgeizigは野心的,という意味かと。
- 毎週末になればBundesliga Kickoff!を見て,Bundesliga公式のLiga Radioを聞きながらLive Tickerをみて,Werder Podcastをダウンロードして,いったんことあればDFB公式やらKicker やらBildやらをバベルのお魚さんのお世話になりつつ睨みつける,というのを2年ばかりやってます。せっかくだからと清野智昭『ドイツ語のしくみ』[amazon | bk1]も読みました。もしかしたら,英語の政治ニュースより,ドイツ語のサッカーニュースの方が何言ってるかわからないなりにわかるんじゃないかと<なぃなぃ
自分の語学的才能に幻想は抱きませんが,こういう対象が中学生の時にあったら,もうちょっと英語ができるようになっていたかも。トールキンはもう訳されちゃってたから……。
- さて,アニメのキャラでこういう設定だったら,あざといなとか鉄板だな,と苦笑いしつつ燃える組み合わせ(古くはセーラー服の天王星と海王星とか)なんですが,この組み合わせには全然食指が…いや,動かなくていいんですけどね。でもまあ,前クラブ世界チャンピオンも倒したんだし,別に仲がいいわけでもなさそうだけど,おもしろいからこのまま頑張れ。<ぉぃ
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*選手プロフィールのドイツ語のページにのみあり。次のシーズンになると消えちゃいます。
- 2月の言葉:
「目的は絶対、手段は自由」by 西堀榮三郎
- ペンギンものだからと回していただいた,第50次日本南極地域観測隊カレンダーの裏面には西堀カルタからの抜粋が載ってまして,その中からひとつ。こういう無茶な考え方は好き。真似できないけど(^^;2月の言葉は「勇気を持って挑戦を」なんだけど,そこはそれってことで。
- そもそもモチベーションとかポジティブ・シンキングとかコーチングとかには懐疑的だし,できれば無縁で生きたいと思っているけど,身過ぎ世過ぎ。表層的理解やつまみ食いは,真剣にやってる人には小手先の技術じゃないって噴飯ものでしょうけど,仕方ない。
- 西堀カルタは日本規格協会モチベーション研究会制作で,西堀榮三郎記念探検の殿堂ミュージアムショップで購入可能。自分で切り抜く必要がありますが,なんと300円!
- 1月の言葉:
「両談同様にて、何れか実、何れか虚なる事をしらず」
from 根岸鎮衛 「耳嚢」巻一
- from 柴田宵曲編『奇談異聞辞典』(筑摩書房, 2008.9.)[amazon | bk1]
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- 「鰻の怪」の項から,大鰻の腹を割いたら麦飯が出てきた,という怪談の2パターンを記して,この結論。
- こんな恐ろしい鰻を食べる人の気が知れません。穴子の方があっさりしていて美味しい上に「化け穴子」とか「大穴子の怪」なんて聞いた事無いし。とはいえ,水族館で穴子を見ると,「君たちっ!そんなに友だちと一緒がいいのかっ!穴は幾らでもあるだろっ!ていうか,つぶらな瞳でみるな〜っ」といきなり食欲減退しますが(^^;
- 雑誌「幽」(創刊号から毎号買ってる<ダメダメ)のネタ本みたいな分厚い本でちびちびやってます。江戸期の随筆,妙に科学的だったり信じているようで信じていなかったり,奥が深いものですね。丑つながりの鰻で年始のご挨拶でした。
- 今年の年賀状(牛尽くし)の引用元です
- 『世界大博物図鑑』第5巻 哺乳類 / ヘブライ文字のA(アレフ,牡牛の角を表す)/ 聖牛3頭 / 牛を象徴とする神,聖者 / クーリーの牛争い / 火牛の計を用いた人たち / 牛の怪3種/ ことわざ (たくさんの中のほんの一部分。取るに足りないこと。 )/ 踊る子馬亭でフロドが歌った「月に住む男」/ 映画『月世界征服』にもでてくるらしいけどジェラルド・ダレル『小包が運んできた冒険』/ 英語のことわざ (一得一失) / 日本昔話 / ヘロドトス「歴史」から / ギリシャ神話の半牛,牛に変身,牛にさらわれて / 地名 (牛皮=カルタゴ、牛の渡場)/ ことわざ(思ってもいなかった出来事や他人の誘いによって、よい方に導かれることのたとえ。 )/ ドナドナ♪ / 『はなのすきなうし』 / 英語のことわざ(美貌は牡牛よりも強く引きつける)
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