いままでの言葉: 2005年
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- 12月の言葉:
"Multos fortuna liberat poena, metu neminem."
- by セネカ
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- 「運命は多くの者を罰から解き放つが,何者をも恐怖からは解き放たない」という意味の言葉がアニメ『巌窟王』[amazon ]のモンテ・クリスト伯の指輪に刻まれています。原作でどうだったかは未確認。岩波版[amazon | bk1]ではなかったと思う。
- 後半が信じられないようなことも多いよな,と思う今日この頃です。大は猫いらず,骨抜きマンションから,小は……まあやめときましょう。
- 11月の言葉:
「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」
- from アンヌ・モレリ ; 永田千奈訳『戦争プロパガンダ10の法則』(草思社, 2002)[amazon | bk1]
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- その第10の法則です。最近もよく聞く,この論調。時流に流されないなんて言うは易く。
- アニメの戦争プロパガンダは一年戦争から何ら進歩していない,と言い切ってもかまわないと思うのだけど,その元ネタたる現実の,我等「国民」が普仏戦争あたりから同じ曲で踊っているという事実に暗澹たる気持ちになれる一冊。
- 10月の言葉:
「机の上の惨状に,あなたの人生が凝縮されている」
- from マリリン・ポール ; 堀千恵子訳『だから片付かない。なのに時間がない』(ダイヤモンド社, 2004)[amazon | bk1]
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- 9月の言葉:
「轆轤首が屏風に上がる話は『北窓瑣談』にもあり,にっこと笑う例は『百物語評判』にある。独創的な行動を取ることはむづかしいらしい」
- from 柴田宵曲『妖異博物館』(筑摩書房, 2005)[amazon | bk1]
- 怪談のラストシーンは秋風がすーっというのがいいな。ということで。なんかこのろくろ首の趣向にしれっとコメントするところがいいじゃないですか。一事が万事,この名調子。「もちろん狐狸の世界に在っても,こういうのは優れた少数者のことで」とか。ひとつひとつの奇談が内容しりとりになっているのも選者の妙手。
- で,この著者にしてこの書肆ありで,青蛙房主人曰く「「莫迦でなくって,出版屋なんかやれるか」。「スーダラ大将の言い草じゃないが,“お呼びでない?”なら,ハイ,それまでよと,この一冊で消え」はしないで「続」が出たのは慶賀の至り。
※青蛙房→青蛙堂?という連想がいまさら働いて,青蛙房主人が岡本綺堂の養嗣子と知りました。
- 8月の言葉:
「SFとは、つまるところ共同体を描く文学であり、個人の性格を掘り下げる文学ではない。」
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from ウ ィリアム・テン ; 浅倉久志訳「ふたりのウエルズ : 火星人最初の襲来」(「SFマガジン」2005年8月号)
- 日本の夏はSFの夏なのでウィリアム・テン先生による「宇宙戦争」パニックに関する考察から。原題は Wells or Wells: The First invasion from Mars. c1988,2004 by William Tenn。
- 結局スピルバーグ版『宇宙戦争』は見てないんですけど,聞くところによるとお得意の家族の再生ものになってるらしい。テン先生の心中やいかに。
- まあ,そういいきっちゃっていいのかい?ってのはあるにしろ,「これはSFじゃない」論議の核はこのへんかもしれません。キャラクター小説から驚異Wonderとか脅威Terrorは得られないわな。なかなかSFになりきれないSFアニメが多いのも,キャラ中心という縛りがあるからなんでしょう。で,『鋼の錬金術師〜シャンバラを征く者』は意外にSFだったなぁと思う次第。
- 7月の言葉:
「本というのは,個人にせよ,公の施設にせよ,永遠に持っていられるものではない。」
- from 室謙二「いろんな,本がある」(季刊「本とコンピュータ」2005夏号)
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- 「本を捨てるのには,後ろめたさと同時に気持ちの良さがともなう」確かに。そして,「結局は捨てられるか,なんらかの形で処分されるものだ」と続きます。このように達観したいものです。室さんは1946年生まれ。
- 「季刊 本とコンピュータ」も予定通り終号。第1期,第2期という分け方は目録屋的には止めて欲しい(紛らわしいから)んだけど,休刊ではなくきっぱり終わり,はいいことです。流通的には雑誌じゃないからできること,なのかな。雑誌の編集姿勢にはマンセーってわけじゃなかったけど,惜しい感じもします。
- 6月の言葉:
「これまでの自分を形づくったすべての記憶が紙を介して指先に伝わり、胸の中で弾けて蘇ってくるのだ。」by 瀬名秀明
- from 仁賀克雄編『おれの夢の女』(早川書房, 2005.4) [amazon | bk1]
- 伝説のアンソロジー『幻想と怪奇』の解説から。
- 読むことで蘇る記憶があり、一方、タカノ綾嬢が「飛ばされて行く先」VOL.18(「SFマガジン」2005年6月号)で描いているように「意図せずに経てきた経験が、昔読んだ大好きな本をずっと鮮やかにさせる」こともある。このような物語に出会ってしまうことを呪いといいます(^^;
- で、オレのベスト怪奇短篇はポー「振り子と落とし穴」、ウォルポール「銀の仮面」、ラブクラフト「異次元の色彩」(読んだ順)。読んでいたときの回りの様子、明るさ、背筋を走った冷たいものが思い出されて、怖くて読み返すことができません。
- 5月の言葉:
「もっといえば、伊豆箱根、と一括りにされるのだから、きっと同じ県だと大方の関西人は思っている。」
- from 柏井壽『「極み」のひとり旅』(光文社, 2004.9) [amazon | bk1]
- 風薫る5月に相応しく、もないおっさん一人旅本から。うなづけたのはカウンターのある店に開店直後に入れ、というアドバイスくらいかな。旅なんて個人的なものだしね。
- そうか、そうだったのかっ。ていうか、ただでさえ広い静岡、新幹線に乗っているとどこまでいってもまだ県内、まるでヨーロッパにいく時のロシアのような静岡に箱根まで渡してどーするんだ、関西人。ま、こちら関東者も有馬温泉て言われてもイメージ湧かないし。箱根みたいなところなんですよねぇ?<って誰に聞いている。
こんな狭い国の中でも『バカ日本地図』 [amazon | bk1]ができちゃうんだもの、海外派兵なんてしちゃいかんです。ぜったい、迷子になるから。
- 4月の言葉:
「いくら人柄が良くても、評価の対象にはなりません。」
- from 梅森浩一『「クビ!」論』 (朝日新聞社, 2003) [amazon | bk1]
- リストラ対象になってしまった時にためになるハウツー本でもありました。
- でもねぇ、どんなにてきぱき仕事をこなす同僚でも、朝起きて顔が思い浮かんだ瞬間にどよーんとした気持ちになることもあったし、大変な仕事でも人間関係さえ良ければ乗り切れるともいいます。もちろん、悪い人じゃないんだけど、もうちょっとなんとかならないかねー、ていうかこの人にこの仕事は無理だろ、という人が隣近所にいるのもとっても迷惑。
- 「「仕事」と「仕事ぶり」は違うからです。」というクビキラーのお言葉に限りなくYESと言いたいけど全面同意はいたしかねる、ってところです。
- 3月の言葉:
「人間はなぜか評価する力だけは備わっていますから、何も考えてなさそうな人でもあなたの企画の良し悪しを、悔しいかな結構的確に指摘します。」
- from 加藤昌治『考具』 [amazon | bk1]
- ま、天下の博報堂ですから、そうなんでしょう。「なぜか評価する力だけは備わっている」は真だけど、「結構的確」かは疑問てことも……。いや、そもそも何も考えてなさそう、なんじゃなくてほんとに何も考えてなかったりするし。
- 発想法カタログとしては手ごろな1冊でした。この手のビジネス本を図書館のカウンターに持っていくのが一番、恥ずかしいかも。
- 2月の言葉:
「われわれ自身が一個のghostであるということ、まったく不可解な幽霊であるということを、今日では認めざるをえない」by 小泉八雲 from「小説における超自然の価値」
- 東雅夫編『ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語』(小学館, 2004.6) [amazon | bk1]
- 押井守じゃないよ、八雲だよ。
「われわれが、たとえ幽霊についての古臭い話や説を信じないとしても、」というただし書きがつきます。平井呈一訳。同じ文章が『さまよえる魂のうた』(筑摩書房, 2004.11 )[amazon | bk1]の池田雅之訳だと「たとえわれわれが、幽霊をめぐる古風な物語やその理屈づけを信じないとしても、なお今日、われわれ自身が一個の幽霊にほかならず、およそ不可思議な存在であることを認めないわけにはいかない。」、標題も「文学における超自然的なるもの」となります。
- で、この『ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語』には同じく平井呈一の擬古文体『おとらんと城綺譚』が収録されていて、これが実にいい。ちびちび大切に読んでいます。もうずいぶん前に国書刊行会のゴシック叢書版の現代語訳を読んで、たらたらとだるい話だな、と思ったのが嘘みたいに名調子!という感じなんです。考えてみればウォルポールは18世紀の人、『雨月物語』と同じ頃の小説なんだもの。ことほどさように翻訳における文体というのは重要なのです。
- 1月の言葉:
「しかしどのような代に生まれるかは、決められないことじゃ。わしらが決めるべきことは、与えられた時代にどう対処するかにある。」 by ガンダルフ
- 『新版 指輪物語 1 旅の仲間 ; 上1』[amazon | bk1]
- 年の始めくらいは前向きにってことで。この会話、映画ではモリアで交されるのでより深みがでてましたね。
- はい、待切れなくてアメリカのアマゾンで買っちゃいました、『王の帰還』SEE版。ああ、もうPJ、あんたって人は……というくらい追加シーン追加シーン。明らかなファンサービスもあれば、なんでこのシーンを抜いちゃったんでしょう、もあり。これを見ずして完結せず、です。
- あ、もちろんギフトセット、ミナス・ティリスの小物入れつきです。これがまた細かいところまでよくできています。で、パッケージの中にこれとセットにできるミナス・モルグルのブックエンド$75也のちらしが入っていて欲しいような怖いような。
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