平成10.9.1火《更新》
大凶収集紀行
First Contact

大 凶
その時までは、私は、おみくじの最悪な運勢は「凶」であろうと考えていた。
しかも、その「凶」にしても、引き当てる確立はとても低いはずに違いないと思っていた。
なにしろ、神様から言い渡される運勢である。
これから何かやろうとしている人が、「凶」なんか引いてしまった日には、
それはもう、どれだけ落胆するであろうか、どれだけ不安になるであろうか、
そう思えば、やはり、神様の窓口を勤める神社が「凶」なんか置いておくはずがない。
もしかしたら、「凶」すら無いのではないかとも思っていたくらいだ。
私のその時は、高校3年生、大学受験を数週間後に控えた初詣の時に訪れた。
場所は、神奈川県鎌倉市、鶴ヶ岡八幡宮。高校時代、鎌倉の寺社巡りが好きだった私は、
初詣は3年連続で鶴ヶ岡八幡宮だった。初詣でなくても、神社仏閣でおみくじを見つけると
引いてみる習慣があったので、何十回と引いたおみくじである。
ここのおみくじは、すみに小さな穴のあいたおみくじ箱を振り、穴から番号が書かれた
竹の棒を出し、番号を告げると巫女さんが、おみくじ棚の引出しから札を出して渡してくれる。
この頃、既に自動販売機タイプが幅をきかせ始めていたので、この方式のおみくじには
格式の高い神社としてのありがたみがあった。
この年は、妹も高校受験を控えていて一緒に出かけた。妹は、「大吉」。そして...。
確か13番だったと思うが、引出しから札を出した巫女さんの顔がすこし妙な感じになった。
軽く二つ折りに渡された札には「大凶」、まぎれもなく「大凶」と書かれているではないか。
おぉぉぉぉぅ...!
...その日、数ヵ所の神社仏閣をはしごし、「大凶」に次ぐ収穫は、「小吉」「凶」
「凶」「末吉」であったと思う。なんて初詣だ。ちなみに、妹は全て「大吉」。
ちなみに、受験は二人とも本命に合格できましたが...。
後で考えてみると、「大吉」なんかより全然珍しい「大凶」を引き当てた自分って、
何か凄いって気分になってきた。その時の「大凶」は、捨てずに持っているはずなのだが、
その後の必死の捜索にも関らず出てこない。じゃあ、また引き当ててやろう、という思いで
おみくじを引くのだが、その後は「吉」側の運勢ばかり。ぜひ、「凶」側を手に入れたい。
果たして、その日はいつなのか...? おみくじ巡りの彷徨が始まった。
...とは言うものの、それほど頻繁におみくじを引いているわけではない。
最近は、自動販売機や業者製のおみくじが多くなり、あまり引いてみようという気になれない。
ルールは、「同じ場所で同じ日に引いてはいけない。自分で引かなくてはいけない。」の2点。
1・2年前に、「日本おみくじ紀行」(島 武史 著,日本経済新聞社,本体1,553円)という
本を買った。すごく詳しく書かれているので、これを読むとこのコーナーも無意味かな?
なんて思ってしまうが、まあ、体験談込みと言う事で...。この本によると、鶴ヶ岡八幡宮は、
50本中、大吉3本、吉15本、中吉7本、末吉10本、小吉5本、凶8本、大凶2本、となっている。
驚くほどの確立でもなかった事を知った。
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