平成10.9.1火新作
大凶収集紀行 神話ミニ知識

斎之大人 いわいのうし

 『日本書紀』より

一書(あるふみ)〔第二〕に曰はく、天神(あまつかみ)、 經津主神(ふつぬしのかみ)・武甕槌神(たけみかづちのかみ) を遣(つかは)して、葦原中國(あしはらのなかつくに) を平定(しづ)めしむ。時に二(にはしら)の神 曰(まう)さく、「天(あめ)に惡しき神有り。 名を天津甕星(あまつみかほし)と曰(い)ふ。 亦(また)の名は天香香背男(あまのかかせお)。 請(こ)ふ、先(ま)づ此の神を誅(つみな)ひて、 然(しかう)して後(のち)に下りて葦原中國を撥(はら) はむ」とまうす。是(こ)の時に、齋主(いはひ)の神を 齋の大人(うし)と號(まう)す。此の神、今 東國(あづま)の楫取(かとり)の地(くに) に在(ま)す。

一書〔第二〕にいう。天神が経津主神・武甕槌神を遣わされて、葦原中国を平定させられた。 ときに二柱の神がいわれるのに、「天に悪い神がいます。名を天津甕星といいます。 またの名は天香香背男です。どうかまずこの神を除いて、それから降って、 葦原中国を平げさせて頂きたい」と。このとき甕星を征する斎主をする主を 斎の大人といった。この神はいま東国の楫取(香取)の地においでになる。

※『日本書紀』の原文は漢文である。 読み下し文は、『日本古典文學大系67 日本書紀 上』岩波書店、 現代語訳は、『講談社学術文庫833 日本書紀(上) 全現代語訳』講談社、に依った。
.
索引