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 06.6.4 松本探索 (渡来人祭り)

このたびは、信州は松本にて開催された、信州渡来人倶楽部さん主催の「渡来人祭り」にいって参りました。朝は聖霊降臨の祝日のミサに出て、そのまま高速道路をとおって松本市街に向かいました。松本市街から、浅間温泉方面へしばらく走ると、会場の浅間温泉イベント広場に着きました。イベント広場では、すでに3日目の歌や出店、大勢の観客でにぎわっており、とても盛り上がっていました。さっそくお知らせいただいていた信州渡来人倶楽部の代表の方にご挨拶をして、初対面の喜びをわかちあいました。ご自身料理店を経営されておられるそうで、おいしい韓国料理を食べさせていただきありがとうございました。倶楽部のみなさんもご紹介くださり、渡来人研究会の新刊もご購入いただき、さらに本の販売もご許可いただくなど、大変親切にしてくださりました。また、ちょうど近江渡来人倶楽部のみなさんもいらしており、ご紹介いただきました。近江渡来人倶楽部では、この春、大津のほうに「渡来人歴史観」をオープンなされたそうで、パンフもいただきましたが、ぜひ後日お伺いしたいと感じています。また新刊のほうもご購入くださり、本当にありがとうございました。だんだん渡来人ネットワークが広がってきたようで、お互いの研究会の得意とする分野を生かしながら、協力していければと期待しています。

イベントでは、地元出身のメジャーバンドや、韓流ユニットをはじめ、しっかりとした音響設備もそろえて、ステージ含めて、歌って踊って盛り上がっていました。また、前日の夜のコンサートなどでは300人くらいの人でとても盛り上がっていたそうです。今回はイベント会場近くのホテルで、本物の「天冠」、つまり古墳出土で新羅製と目される、金の王冠が展示されていました。実物を拝見すると、金箔がいまでも残っており、また同時に新羅製と酷似する甲冑も出ており、この浅間温泉近くの出土地である5世紀末の桜ヶ丘古墳にいた首長が、渡来系であったことをうかがわせるものでありました。信州渡来人倶楽部のある方によると、この近くに薄(須々岐)川が流れており、その地の首長とみられる須々岐氏が日本後記の記録によると、渡来系の姓から和姓へと変わったことが記載されているそうです。このことからも、この地が渡来人の移住地であると思われるのですが、そちらの渡来人は高句麗・新羅系?であり、やや南隣の安曇の地名の渡来人は別系統ではとのことでした。その他、近くの古墳や神社など詳細をお教えいただき、まことにありがとうございました。その後、日が暮れる前にさっそくそちらのほうを探索してみました。

イベントもフィナーレを迎えるころ、一足先に倶楽部の方にお別れを告げ、一路須々岐水神社のほうへ向かいました。境内には大神社がありました。こちらの神社はとおりがかった近くのご老人にお聞きしたところ、そばの須々岐川の上流から、ススキにのって神様が流れてきたとのことでした。そしてまたやや南方にある、倶楽部の方にお教えいただいた針塚古墳については、その保存をご老人の旦那さんがたが、必死で訴えた結果、なんとか残ったとのことで、地元の住民の方の思いがとてもひしひしを感じられました。その針塚古墳は、5世紀後半の積石塚で、竪穴式の石室をもち、現在は公園として積石の様子がとてもきれいにみえる、貴重な古墳であります。鉄関連の遺物もみられ、朝鮮でも有名な積石塚のあり方との比較がどうかと気になるところです。この針塚南方に八坂神社がありますが、先の須々岐水神社にも船関連の碑文があるように、こちら八坂神社にも松尾神社にあるような長い船を示すとおもわれる木材らしきものがあり、倶楽部の方も、山岳地帯における船信仰が見える点に、注目すべきであろうと思います。安曇などの地名は確かに、研究会でも指摘されているように、海人族系の地名とも受け取れ、鉄製の文化を残した大陸系渡来人と、海人系渡来人との接点が、この信州松本の地にもあったことが想像できます。

そこから、南東に数キロ走ると、3世紀代の前方後方墳「弘法山古墳」があるとのことでしたので、さっそくそちらにむかってみました。須々岐川を越えてしばらくいくと、小高い丘の頂上部に前方後方墳が見えてきました。こちらは、おそらくは渡来系が入る以前の在地首長の墳墓と見え、相当な規模の前方後方墳でした。一面盆地を見渡すことができる、壮大な眺めは、いかにも在地首長の権力誇示の場としても格好の場所であっただろうと思います。個人的には前方後円墳は過去たくさんみてきたのですが、四角形2つで構成される前方後方墳は、初めての経験で、渡来人流入以前の在地の首長の考え方を考える上でも貴重な場所でありました。

その後日が暮れたので、浅間温泉に戻り、温泉に入って帰ることにしました。この日は渡来人祭りということで、普段は開放していない旅館の温泉も一律500円で入ることができるとのことで、とても画期的なサービスだと感じます。さっそく「目の湯」という温泉が21時までやっているので、そちらに向かうことにしました。とても古風な本格的な木造旅館で、古代風呂を名づけられたお風呂も木造で露天風呂は大きな桶のようなとても風情ある木造のお風呂で、天井の星空を眺めながら、贅沢なひと時をすごさせていただきました。左目に緑内障を患うわたしとしても、なにかご縁のある温泉でした。

このように、渡来人倶楽部の皆様をはじめ、浅間温泉の方々のすばらしい配慮の数々、これからの地域文化活動のあり方としてとても新鮮なあり方を提示なされていたのではないかと感じます。

今回の様子は、以下の「渡来人祭り」のホームページでご紹介されており、いろいろ諸情報の更新もなされるようですので、今後ともぜひご注目ください。

http://tryjin.sakura.ne.jp/