ホームページへこんな本もみつけました。ハワイとは直接関係が無いのですけども..

太平洋航路に見る戦争への道

タイトル:太平洋の女王 浅間丸
著者:内藤 初穂
出版社:中央公論社(中公文庫)
 昭和四年、香港、上海、神戸、横浜、ホノルル、サンフランシスコを結ぶ航路に就航した豪華客船「浅間丸」。
その豪華、優美な姿から「太平洋の女王」と呼ばれたこの船も忍び寄る戦争の嵐から逃れることを得ず、徴用され東シナ界に沈むに至るのです。
本書は太平洋戦争により数奇な運命をたどった豪華客船、浅間丸と関係する人々の運命を克明に追ったものです。随所に「布哇報知」、「羅府新報」などの見出し、記事が引用され、緊張高まる時局に日系社会がどのような反応をしていたか、を伺うことも出来ます。

ただ、それよりも、なによりも、次ぎの文章を紹介したくて本書を取り上げました。

 第八代船長である藤田徹さんは気の重いまま、この任に付きました。前船長渡辺義貞さんが失意のまま船を去っていったからです。
渡辺船長は昭和14年の航海にてイギリスの臨検を受け、乗客であるドイツ人9名の引渡しを許したのですが、これが当時の日本人の反米英感情に触れ、世論の激しい非難(腰抜け呼ばわりをされる)を耐え忍んだ後の出来事でした。

 藤田船長がその二回目の航海で初めてハワイの土を踏んだのは昭和15年のことです。当時の日本は戦時体制下にあり、食料品もすでに配給制となっていました。藤田さんはその時のホノルル散策の様子を、当時小学四年生であった娘、茂子さんに書き送っています。
 ハワイ、ホノルルに着きました。郵船会社支店長の案内でホノルルの郊外を自動車で二時間ばかりドライブして、いろいろなものを見ました。
すべて皆バイバイです。
 船からさんばしに降りると倉庫の前に土人の物売りが露店をならべて居ます。バナナ、パパイヤの果実類からパンやお菓子を売っています。これは皆バイバイです。
 それから自動車にのって田舎に行くと、広い広い畑が幾里にも連って、砂糖きびやパインアップルがまるで春の海のようにひろがって、生い茂っています。これもみなバイバイです。見物を終わって町へ帰ってくると日が暮れて、電灯が店々に明るく輝いて居ました。支那料理やカッフェ、雑貨店や宿屋のネオンが、華やかに光って居ます。日本人の店が沢山あって、おそばやさん、菓子屋さん、大繁昌です。皆バイバイを売っています。
 どこを見てもバイバイならざるは無し。ああ、バイバイ、バイバイ、バイバイヤー、バイベエ、バイベエ。
   茂子さま                              父より
(本書 第五章 航路の崩壊  p159より)
この「バイバイ」とはなんでしょうか。
茂子さんは赤ん坊のころご馳走を見ると「バイバイ」とはしゃいでいたのだそうです。それ以来、「バイバイ」は親子の間で「ご馳走」を意味する符牒となっていたのでした。微笑ましいと同時に胸のつまるハワイの描写ですよね。

アメリカで最も有名な法廷弁護士、ダロウ

 マシイ事件でクラレンス・ダロウについて興味を抱かれた方が多いか、と思います。「アメリカで最も有名な弁護士」と言われるだけあって、名著と呼ばれる本や映画、演劇に広く取り上げられているようです。

タイトル:メデイアの権力
著者:デイヴィッド・ハルバースタム
出版社:朝日新聞社(朝日文庫)
 本書の第三章 「チャンドラー一族の野望」では、ロサンゼルス・タイムスの勃興期が紹介されています。

1910年、タイムス社の印刷工場で連続爆破事件が起き、従業員20名の命が失われてしまいます。
新聞社側に雇われた探偵社により兄弟ともう1人、計3人の男が逮捕されます。(この逮捕も随分と法を無視した過程を経て行われたのですが)

当代随一の弁護士、貧しい者、持たざる者の代弁者クラレンス・ダローは、なにかしら気は進まなかったがマクナマラ兄弟の弁護を引き受ける。

しかし、ダロウにも当時の労働者運動にも不幸なことに、この兄弟は「真犯人」だったのです。絶望したダロウはせめて死刑だけは逃れさせようとし、タイムス側も政治的理由から裏取引を進めます。ダロウは兄弟の有罪を法廷で申し立て、裁判は終わります。

ダローは公衆の面前でののしられ、やじり倒される。長年の崇拝者からは『裏切り者』という罵声が飛んだ。
タイトル:オンリー・イエスタデイ−1920年代アメリカ−
著者:F.L.アレン
出版社:筑摩書房(ちくま文庫)
 本書の第八章 「誇大宣伝時代」 の「宗教・科学、そしてデイトン」の項に、スコープス事件、後に猿裁判と呼ばれることになった進化論を教えることの是非を問う裁判の顛末が紹介されます。当時、ファンダメンタリストに牛耳られていたテネシー州議会では州立学校で進化論を教えることを禁じる法律を通過させていました。
 デイトンという町の数人の無邪気とも思える思いつきから、高校教師スコープスは進化論を生徒に講義、逮捕されることになるのですが、当時勢いをましていた新聞、雑誌により、この小さな田舎町デイトンの名前はアメリカ中に広まることとなったのです。
 ダロウの関わった事件、そして彼自身は、様々な形で劇化、映像化されてきました。
近いところではあのレスリー・ニールセンがクラレンス・ダロウを舞台で演じるそうです。裸の銃シリーズのイメージが染み込んでいますけど、以前は渋い、悪役も演じられる俳優でしたからね。タイトルはそのまま、「クラレンス・ダロウ」、ヘンリー・フォンダも演じたことのある戯曲なのだとか。

また組合活動にからむ裁判を担当、弱いものの味方、強大な力に立ち向かう弁護士としての名声を得ていく時代を中心に描いた映画がビデオ化されているようです。
「告発弁護人」というタイトルで、ダロウを演じるのはケビン・スペイシー、やはり名優ですね。(まだ見ていないので、詳細は不明です。原題は「ダロウ」)

 先のスコープス事件をベースに戯曲化されたのが「Inherit the Wind」、1960年にはスペンサー・トレーシー主演にて映画化され、今でもたまにテレビで放映されています。
(小学生くらいのときにわけもわからず観た記憶がありますが、日本語タイトルを忘れてしまいました)

実際の事件とこの舞台、映画についてまとめたHPがあります。
http://xroads.virginia.edu/~UG97/inherit/intro.html

そして、マシイ事件も、これをモデルとした小説「楽園の涙」Blood and Orchidsをテレビ映画にしたものがあります。ダロウに相当する役柄を誰が演じたのか、詳しいことは判りません。1986年にミニ・シリーズとして放映され、主演はクリス・クリストファーソンだったそうです。

ダロウに関するHPには以下のようなものがあります。
http://www.PositiveAtheism.org/hist/darrow1.htm
http://ourworld.compuserve.com/homepages/delao/darrow.htm
http://www.law.umkc.edu/faculty/projects/ftrials/darrow.htm

アメリカン・エリート?

タイトル:ワスプ(WASP) −アメリカン・エリートはどうつくられるか−
著者:越智 道雄
出版社:中央公論社(中公新書)
えー、本書を読んだ理由はハワイの歴史におけるハオレ、白人たちもワスプなのかな、という興味からでした。白人、アングロサクソン、プロテスタントというと、そうですよね。以下を読んだときはプナハウ・プレップ・スクールを連想しました。後のハワイの経済、政治を握る人物がここで教育を受けたといいますから。
「アメリカの場合、流動性の激しい多民族社会にあって、歴史の浅い上流層が、ヨーロッパの上流層のように資産の散逸を妨げるだけのカリキュラムを自前では開発できず、師弟に資産保持の価値体系を刷り込む必要から、私立校が発達した。」
(本書 第四章 後継者養成のカリキュラム −プレップスクール創立ブームの背景−p72)

うーん、トンデモ本と間違えそう

タイトル:古代日本の航海術
著者:茂在 寅男
出版社:小学館(小学館ライブラリー)
知識の無い僕には「トンデモ本」のたぐいの本とドッコイドッコイにしか見えない本。でも、小学館ライブラリーだし...
本書は「古事記」や「日本書紀」の記述を古代ポリネシア語と重ねあわせることにより、太平洋が文化交流のハイウェイであったことを立証しようとします。
これを読まれる時にはハワイ語辞典をお手元に置いてください。著者もプクイさんのハワイ語辞書を参考にしているんですよ。例えば著者は日本書紀の「難波」という地を「ナニワ」、ポリネシア語のNANIとWAに当てはめて解釈してみようとするのです。(もちろんこれはほんの一部の紹介でしかありません)ううむ、面白すぎるぞ。

日系人によるハードボイルド

タイトル:ミステリー・クラブ事件簿
著者:デイル・フルタニ
出版社:集英社文庫
本書は日系アメリカ人の著者による日系アメリカ人が主人公のハードボイルド小説です。私たちが日系人社会、アジア系アメリカ人について書かれた本を読むとき登場するキーワードが、本書ではてんこ盛りとなって登場してきます。そういった意味で、日系人であることを前面に打ち出した集英社文庫の宣伝方法は正しいのかもしれません。(ミステリとしてはもひとつかな、と思います)
主人公はハワイ生まれで現在はロスで生活する40代の日系人です。コンピュータプログラマでしたが、いわゆる「ガラスの天井」に抵抗するやいなやリストラで首を切られた人物です。(著者もハワイのヒロ生まれの日系三世とのこと)
『かってのおれは、世の中に人種的な偏見など存在していないと考えていた。その理由は、おれがハワイで生まれ育ったということにあるのかもしれない。だが、最近になって、人種が人生を決定する要素になりつつあるという、恐るべき結論に到達するにいたった。そしてそれは、おれがロサンジェルスに住んでいるからかも知れなかった。』
恋人は劇団に所属する女優ですがやはりアジア人に来る役は少なく、「貧乏女優」でブティックでアルバイトなどをして食いつないでいるのです。
ストーリーは強制収容所やノー・ノー・ボーイ、「ヤクザ」、世代間のギャップなどを折り込みながら展開します。ロス、リトルトウキョーの描写も面白くどんどんページをくることが出来ます。リトル・トーキョーの<お盆>と対象させるかたちでハワイ、ヒロのそれを回想するところも読み所の一つだと思います。
著者自身が日系人のステレオタイプに捕らわれすぎているのでは、と思える部分もあるのですが、これは実際の日系アメリカ人について僕があまり知らないからかもしれません。

ペレの呪いって嘘?

タイトル:楽園の骨
著者:アーロン・エルキンズ
出版社:ハヤカワ・ミステリアス・プレス文庫
われらがスケルトン探偵、ギデオンのシリーズです。毎回毎回、さまざまな舞台でそのユニークな推理が展開される訳ですが、本書ではタヒチのコーヒー農園が舞台となります。ギデオンのワトソン役ともいうべき友人、FBI捜査官ジョン・ロウはハワイ出身という設定、いつかはハワイが舞台に、と期待しているのですが、今のハワイにはエキゾチズムが欠けているようです。
今回はタヒチですが、発端はハワイ島の火山国立公園となっています。レンジャーが世界から送られてくる溶岩を前にため息をつくシーンから始まるのです。
ただでさえ多忙なレンジャーの仕事に、送られてきた溶岩を火山に戻すという作業が加わるというわけ。
その溶岩にはたいてい手紙がついており、曰く『ペレの呪いがかかっていると警告されたが、火山から溶岩を持ち帰ってしまった。以降、不幸ばかり続く。ペレの呪いは本当だった。ついてはこの溶岩を火山に戻し、ペレにお詫びしたい』。
そしてその溶岩の行き先はというと駐車場横の<溶岩の墓場>。わざわざ火口までいく手間まで掛けられないというわけです。
このレンジャーによると「呪い」の根拠はハワイの神話には無く、持ち出される溶岩に業をにやした誰かが言い出したことなのだろう、と。まあ、ペレの呪いは無いにしても国立公園から物を持ち出すのは良くないこと。止めましょうね。(僕も反省してます)
著者がこの作品を書くに当たってはハワイのコーヒー農場を取材したようなので、そちらに興味があるかたも読まれると面白いかもしれません。

ハワイの物語 Hawaii's Story

タイトル:北米大陸に生きる
著者:猿谷 要
出版社:河出書房新社/生活の世界歴史 9巻
本書にはハワイのアメリカ併合についての記述があります。そのなかにタトル出版から出版されているリリウオカラニ女王の「Hawaii's Story」の一部が紹介されています。それは女王が幽閉された部屋のなかで退位の文書への署名を迫られる場面なのですが、興味のある方は手に取られてはいかがでしょうか。197ページが該当個所です。
なお、本書は以前『新大陸に生きる』と題されて出版されていたものの文庫化です。

小笠原島とハワイの縁...

タイトル:幕末の小笠原−欧米の捕鯨船で栄えた緑の島−
著者:田中弘之
出版社:中央公論社/中公新書1388
小笠原島が欧米に注目されたのは、ハワイと同様捕鯨船の補給港としての役割として、でした。
寄港する捕鯨船の多くはハワイを経由しており、1830年には初めての移住者が入植しました。その一団は5名の欧米人と20名のハワイ人からなり、さまざまな問題に見まわれながらも生活を続けました。(モラルのない捕鯨船船長、船員に悩まされるのはハワイと同様のようで..)
1840年には日本の中良丸の船頭ら6名が父島に漂着、二ヶ月あまり滞在。生還後の報告によると...
「島人どうし家を訪ねるときは『門口で右手を目よりも高く挙げて<アロウハ>と言い、帰るときにもそのようにする。これが彼らの挨拶のようだ』と記している。ハワイ出身者の多いこの島では、日常生活全体がハワイ風で、いわばリトル・ハワイとでもいうべき雰囲気があったようだ。」(本書p72より)

捕鯨について、もっと知りたい...

タイトル:鯨と捕鯨の文化史
著者:森田勝昭
出版社:名古屋大学出版会
捕鯨の歴史について、そして長者丸の物語に興味を持たれた方に本書をお勧めします。
長者丸の漂流民を救助した「ジェームス・ローパー号」を典型的捕鯨船としてとらえ、その航海日誌から軌跡を追っていきます。また、漂流民の記録をもとに当時のナンタケットを起点とする捕鯨船、捕鯨作業を検証していきます。
これは本書の内容の一部にしか過ぎません。近代捕鯨の始まりから現代までその文化に興味がある方には必読の書でしょう。

皆さんは「フランクリンの果実」という本をご存知でしょうか。

タイトル:フランクリンの果実
著者:アーウィン・ユキコ
出版社:文芸春秋
ハワイ日系移民史に詳しい方はタイトルと著者名をみただけでピンとくるかもしれません。
(僕は古本屋で立ち読みをするまでわかりませんでしたし、本書の存在すら知りませんでした。)
本書は著者アーウィン・ユキコさんの半生記なのですが、なんと彼女の祖父はハワイ国全権公使ロバート・ウォーカー・アーウィンなのです。
そして彼、アーウィン公使はあのベンジャミン・フランクリンの直系5代目の子孫にあたり、そして日米間初の国際結婚をした人物でもあります。
かれは明治14年のカラカウア王日本訪問時に友人の後任として臨時でハワイ国総領事を勤めていたのですが、カラカウア王の要請にて総領事兼全権公使に任命されることとなったのでした。明治天皇とも親しく接する機会のあった彼はカラカウア王の希望である官約移民の実現に尽力、明治19年には日布渡航条約が調印されるにいたりました。
アーウィン公使は第一回官約移民とともにシティ・オブ・トウキョウ号でハワイに渡りました。その旅には妻「いき」と娘「ベラ」が同行していたそうです。(いきはこの時の船酔いがひどく、その後はハワイにもアメリカにも渡らなかったとのこと)

彼等の子どもたちはそれぞれアメリカに留学、暗雲垂れ込みつつある日米関係を反映しそれぞれ数奇な人生を送ることとなります。

アーウィンは大正14年、麹町の自宅にてその生涯を終えました。彼の遺骸はアメリカに帰ることなく、今も青山墓地に眠っているとのことです。
また、彼が伊香保に持っていた別荘は町指定史跡文化財として今も大切に保存されているそうです。


19世紀末レディ・トラベラー

タイトル:女たちの大英帝国
著者:井野瀬久美恵
出版社:講談社現代新書
19世紀末、世界を駆け巡ったレディ・トラベラーたち、彼女たちの心には何があったのか、彼女たちの居場所とはどこにあったのか。
本書の記述の中心はアフリカであり、イザベラ・バードにはそれほど言及されていません。
しかし彼女たちの宣教師に対する評価や「白人文化に毒されたアフリカ人」に対する態度を読むと、メルビルなどの作家たちが表現するハワイへのそれと重なるような気がし、面白く感じました。