苫東をどう活用する?

苫東をどう活用する?


苫東は正式名称を苫小牧東部大規模工業地域という。 もとは湿原、草原であった勇払原野を開発した工業地域で広さは約1万haある。 1万haと言ってもピンとはこないかもしれないが東京の山手線の内側の面積の約1.6倍もあるとにかく広大な工業地域なのである。 そんな工業地域も実際売れたのは約15%、ほとんど売れなかったも同然である。

最初開発を決めた頃は本当にこの地域は夢の場所に見えたに違いない。 札幌からは1時間かかることはない距離にある。 千歳空港からはわずか20分程度。 日本が高度成長を続ける当時は様々な可能性を想像したのではないだろうか。 しかしながら実際は現在の状況が示す通り北海道東北開発公庫の不良債権と化しているのである。 日本が急激な変化を続ける中、同じ事業を見直しもせずただ盲目的に開発をした結果がこれである。 このようなことが日本のそこかしこで起こっているのだからこれは役所が悪いとかそんな問題ではないはずである。 日本人の気質がそんな風潮をもともと重んじるに違いないだろう。

苫東工業地域は現在歴然として存在している。 今までの経緯とやかくよりもこれからここを活用する方法を見つけ出すことが重要ではないだろうか。

活用方法は今まで様々な人が意見を出している。 しかしながら見ていると机上の空論的なものが多い。 知的集積をめざして研究所等を誘致なんて意見もあるがそれにしては広すぎる。 またそれだけではとても工業地域全体が活性化する起爆剤になるとも思えない。 筑波のような都市も以前造られている訳だから同じ事をやっても北海道内ではたかがしれている。 もともと民間資本はもうこの様な工業地域に立地するメリットなどはほとんどないのである。 同じ日本国内で新たな生産拠点を設けるよりも海外にシフトしていった方が現状でははるかに安上がりに企業としての進歩に役立つのである。

民間がだめなら官庁に頼るという考え方もあるがそれも無理だろう。 この広大な地域を官庁関係の開発だけというのはいくら考えても絵空事に終わる。 究極策で新首都を苫東へなんて意見もあるのだが今の時代そんなことをしても最初の移転に伴う建設需要がせいぜいで結局中途半端なものになるだろう。

民間も官庁も駄目とすればどうすればいいのか。 八方ふさがりの状況で大きな決断がされない限り苫東は荒野のまま永年存在することになるだろう。 ではどうすればいいのか。 私はここ苫東をロシアなどとの交流拠点にするのがいいのではないかと思う。 10年も前ならロシアなどとの交流は実現は不可能であったに違いないが今一つの経済交流圏として北海道、千島、サハリン、沿海州をひとくくりに考えてもいいのではないだろうか。 苫東をその日本の拠点いわゆる経済特別区の様な形にするのである。 当然税金などは免除されるようなことが必要だし、土地もほぼ無償で提供することがひつようになるだろう。 また外国人の居住に関しても優遇することが望ましいだろう。 そうすることによって短期的には多額の損失が発生することになるかもしれない。 しかしながら最終的には苫東が有効活用され損失以上の経済効果が生まれる可能性が出てくるのである。

これからの北東公庫の行方により苫東もどうなるか。 しばらく目が離せない状況が続くのではなかろうか。

北海道旅情報巻頭  8.アラカルトレポート