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スイスに関する本についての第三回目です。
小西政継氏の「マッターホルン北壁」(中公文庫)をまず紹介したいと思います。ツェルマットでは昔はホテル・モンテローザが登山家の定宿であったそうですが、小西氏の時代、一九六〇年代は、駅前のホテル・バーンホフとなっていました。
名ガイドのベルナード・ビナーの経営するホテルであったからで、彼の暖かい人柄に寄せられて多くのアルピニストがここを定宿としていたそうです。
九七年にツェルマットに行った時には確か工事中だったと思うのですが、どうなったのでしょうかね。
さて、小西氏もまた、ここに泊まっていたそうですが、その時はすでにガイドのビナー氏は亡くなられていて、奥様のパウラ・ビナーさんがアルピニストたちの世話をしていたそうです。
彼女が登山家たちの母となり、支えとなったことや、小西氏のアルピニズムに対する徹底した理想追求の姿勢は、読む者にある種の清々しさを感じさせます。これが処女作だとは信じられないほどの登攀記であると思います。 |