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スイスのアルバム

ソーリオ編その2

 ソーリオは、私にとって天国へつながっている村なのであります。ここに通る道は全て、高い空に向かって輝いているように思えるのです。
 芸術家たちが毎夏、通ってくるということの意味がわかるような気がします。

 スイスのホテルを紹介した本の中にここの村のホテルが紹介されていて、中庭のベンチでの思索の時を素晴らしくレポートしてました。その中で、癌を煩った夫婦が最後の旅に来ていたことが紹介されていましたが、画家セガンティーニの三部作を見てここに来ると、そういったことが納得できる風景に出会えます。

 セガンティーニの絵にも描かれているシオーラ山群(写真右)とピッツ・チェガロと巨大な一枚岩のピッツ・パディーレ(写真左)は、この村から谷を隔てて見る眺めが最も美しい姿でありましょう。適度な距離感が圧迫感を与えず、空間の大きさを静かに実感させることに繋がっているのです。
 何十年か前、作家新田次郎氏が佐貫亦男氏と共にここに来て、実に感動的な文章を書いていますが、その時と恐らくは全く変わらない時間がここには流れているようです。
 あくせく時代を追いかけ、流行に諂って生きていることが、どれだけ天国の門から遠ざかっていることか、思い知らされます。
 水場の横を抜けて行くと、干し草の匂いがしてきます。観光の為の村ではないのです。生活している村なのだという、ごく当たり前のことにも感動してしまいそうになってしまいます。
 小さな村の旅はこれがいいのですねぇ。
 昼下がりのソーリオをのんびり歩いていると、かつてここに来たことがあるような、不思議な感覚におそわれます。
 それなりに人もいるのに、何とも静かな午後でありました。
 この道を歩いて行くと、知らず知らずの内に知らない世界に行けてしまうような、現実と空想の世界の垣根を越えてしまうようなあやうさを、この風景の中に見ていたような気がします。
 写真にしてしまうと、何とも平凡な風景なのですが、その静けさと乾いた空気が写っていればいいのですが…。
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