ルツェルンの夏/音楽祭-2

 ルツェルンはワーグナーが住み、大ピアニストのエドウィン・フィッシャーが晩年を送った所でありますが、そういう文化を育む土壌があるようですね。

 一九五六年は、モーツァルトの生誕二百年にあたり、各地で記念行事が行われた年ですが、この前年ルツェルンで、音楽院の生徒と先生で弦楽合奏のグループが産声をあげ、その優秀さに、翌年にはルツェルン音楽祭にその名をいただいて出演したのです。

 今もその名で活動している、その名も「ルツェルン音楽祭弦楽合奏団」=Festival Strings Lucerneは、ウォルフガング・シュナイダーハンという名バイオリニストが先生で、その一の弟子がバウムガルトナーでヴァイオリンと指揮を担当、ソリストにはヌーシャテル出身でグラーフとも同門になるフルートのニコレ、ヴィオラにはドイツのコッホ、リコーダーに(バーゼル・スコラ・カントゥルムの)ハンス・マルティン・リンデとそうそうたるメンバーと、同窓故の奏法の一致と音楽への同質性によって、緊密なアンサンブルで一躍世界のトップの仲間入りを果たしたのです。

 指揮のバウムガルトナーはシュナイダーハンの助手を務めていた人で、もともとはチューリッヒ出身でパリとウィーンで勉強した人です。独奏を派手にやるというタイプでは無かったようで、主に室内楽などでの活動が多かったようです。カザルスとの共演もプーラド等でやっているレコードも残っています。
 最初は、コンサート・マスターをやっていたのですが、そのうち指揮もするようになったんですね。
 師匠のシュナイダーハンのソロ、ニコレやヴィンシャーマンといったそうそうたるメンバーで入れたバッハのブランデンブルク協奏曲などは一九五九年の録音ということもあり、聞けば随分古色蒼然とした演奏ですが、創設当時の、モーツァルトのディヴェルティメント(ザルツブルク・シンフォニー)三部作などは、本当に颯爽としていて、音楽に対しての踏み込みの強さで、長く印象にのこるものでした。確かグラモフォンへの録音でしたが、残念なことにまだ復刻されていません。ブランデンブルクは出したのに、こちらはなかなか出ないのは、残念です。
 フルニエとのハイドンとボッケリーニのチェロ協奏曲や、あのクララ・ハスキルとのモーツァルトの十三番のピアノ協奏曲などは、忘れがたい記録(レコード)となっています。また、Thurgau 州のWeinfeldenの会議堂でチェコのバイオリニストのヨセフ・スークと録音したヴィヴァルディの「調和の霊感」の抜粋なども良かったなぁ。

 最近は、やや高齢化?のせいなのか知りませんが、少々ダルな演奏が多くなっていますが、彼らの六十年代の演奏は、それは素晴らしいものでした。

 風光の鮮やかさと、その演奏の清々しさが、ルツェルンのイメージと重なってゆきます。ルツェルンの奥深さを感じることができるかも?