−腹が減ったら雪を食え!−

男気カタログ


近代社会のパターン化、あるいはマニュアル化され切った都市生活において、 「男気(オトコギ)」というある種泥臭さの伴う表現を要する感覚に対して目を細めてノスタルジックな 想いを馳せる諸兄も多数おられるのではないかなどと休日の午後カップ麺をすすりながらぼんやり 雲を見つめる今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか?
 
さて本コーナは、そんなこの御時世における幻あるいは夢と現実の狭間に見え隠れする 都会のオアシスとでも言うべき「町角に潜む男気(オトコギ)を伴う事象」というものを発掘し、 紹介するというまさに「正直じいさんバカを見る」的もとい「棚からぼた餅」的あるいは 「果報は寝て待て」的お気楽ノンインタラクティヴ企画なのであります。
 
(要するに「日常生活内で見つけたなんかグッとくるモノを紹介する」という ごくアリキタリの企画な訳ですね・・)


〜カタログNo1〜

カレーヨーグルト

帰宅途中にコンビニに寄る。これはまさにパターン化された日常を肯定するごくありふれた 1例です。そんな日常に突如現れた異変、それがこのカレーヨーグルトです。
 
森永カレーヨーグルト(¥150)
 
食後のデザート、それは言うなれば激しいスポーツの後に浴びる熱いシャワーの様な、 あるいは長く厳しい受験戦争の果てに手にした第一志望校合格の通知の様な、さらに言えば満員電車の中で身動き一つ 取れない状態にもかかわらず勃発した激烈なる便意を何とか耐え忍びようやく下車して たどり着いた公衆便所にも人が溢れていた為に泣く泣く最後尾に並びつつ我慢に我慢を重ねた末に 個室に入った瞬間に堤防決壊という危機一髪の修羅場を乗り切って安心したのも束の間に トイレットペーパーが無いことに気付くも後の祭りという絶望の淵に立たされて為す術も無し と諦めかけたそんな時にポケットから昨日道端でもらった武富士のポケットティッシュが 偶然出てきたときの様な、言わば「優雅かつ贅沢な欲求を満たす至福のひとときを華麗に演出するまさに 食の高級貴金属」とでも呼ぶべきモノな訳ですが、本品をそのような「デザート感覚」で 買い求めて口にするという行為は軽率という以外の 何者でもありません。
 
「カレーヨーグルト」というネーミングからもお分かりの様にこれは「カレー」と 「ヨーグルト」を組み合わせたまさにエポックメーキングとでもいうべき新世代のサイバー度 満点な食べ物な訳ですが、私が発見したのはコンビニのデザートコーナです。要するに 「明治朝食ストロベリーヨーグルト」や「グリコプッチンプリン」や「森永たっぷりグレープフルーツゼリー」 などと肩をならべて陳列されているのです。
 
そうなれば当然本品の位置付けとしても「デザート寄り」と考えるのが自然の摂理な訳で、 そうすると当然引っかかるのが「カレー」というエスニックな風情漂うキーワードです。
 
「ま、そうは言ってもデザートなんだろうからぁ、あくまでもヨーグルトがメインで せいぜい後味にカレーっぽさがふわっと残るって感じなんじゃないのぉ??」ってな具合に軽く 考えて購入してはみたものの、一抹の不安*1も抱きつつ帰路につき、着換えも済ませてホッとひといきついたころに はやる心をグッとこらえて「いただきま〜〜す」とハイトーンシャウトしながらフタをOPENした直後の状態が 下の写真です。ドン!
*1「あれっ、レコファンの中古CD¥200引セールって昨日までじゃ なかったっけ??」程度の不安
 
 
「おやっ?!意外に白いな・・」そんな休日の陽だまり的好印象が芽生えると同時に、 そんな安堵感に相反した強烈な刺激臭が私の鼻腔を貫きます。「う、うわぁ〜〜!! カ、カレーとヨーグルトのニオイだぁ〜〜!!」(・・あたりまえです。)カレーヨーグルトから カレーとヨーグルトのニオイ、太陽が東から昇って西に沈むようなものです。なにも驚くことは ありません。しかし・・ しかしあまりにも「カレー」と「ヨーグルト」のニオイが互いに独立し過ぎている のです。まさに水と油、タイムリーな所で例えれば「郷ヒロミ」と「二谷友里恵」状態と言っても 過言ではあるのかないのかなんだかよくわかりませんが、とにかく不吉な、間違っても「香しい」 などと形容すべきモノとは程遠いアトモスフェアが室内に充満してしまっているのです。どよ〜〜ん・・
 
そうはいってもニオイだけで全てを判断してしまうのは早すぎます。「ドリアン」だって「くさや」だって、 ニオイだけで判断してしまったら全く成り立たない食べ物です。「人は見かけじゃない。」とか「MCハマーの 踊りはそんなに上手くない。」とか「私はアナタが思ってるほど子供じゃないのよ・・」といった季節を彩る 俳句が頭をよぎります。
 
ニオイとしては確かに「カレー」と「ヨーグルト」が完全に独立し切っていました。しかしそれは あくまでも「ニオイ」の話です。何といってもカレーヨーグルトのメーカはあの「森永」です。そんな超大手が その社名を揺るがす様なアクロバティックな商品を出すとは到底考えられません。きっとニオイに反して味は絶妙な ハーモニーを奏で、私を目くるめく官能のラビリンスへといざなってくれるに違いありません。
 
ぱくっ・・(死)
 
「期待、それは裏切られるもの。」そこにあるのは悲しい現実・・ 独立した「カレー臭」と 「ヨーグルト臭」を伴う「カレーヨーグルト」の味、それはやはり、完全独立な 「カレー味」&「ヨーグルト味」以外の何者でもありません。
 
「みんな仲良くしなきゃダメでしょっ!」そういって小学生のころはよく先生に怒られたっけな・・ 頬を暖かいものがつたうのを感じながら、そんな遠い日の思い出に身を埋める自分がそこにいました。 何度も何度も、何度も何度も何度も、本当にもう何度も何度もそんなハズは無いと自分に言い聞かせ、 自分を勇気づけ、自分を励ましながらもう一口、もう一口とカレー味とヨーグルト味のする半固形物を 口の中へと送り込みつづけました。
 
しかしそうやっていつまで自分をだまし続けても、何度その半固形物を口に運んでも、それら2者は互いに ハーモニーを奏でることも意気投合することも手に手を取って助け合うことも無く、ただひたすら カレーはカレーであり続け、ヨーグルトもそれであり続けるだけなのです。そうして程なく私の味覚は 限界点に達します。「おっ、おぇ〜〜〜」
 
ここまで食べてギブアップ・・
 
過去に私がどうしても最後まで食べ(飲み)切る事が出来なかったというものが2つありました。 1つは「マズ〜イ、もう1杯!」でお馴染みの「青汁」。もう1つは「タブクリア」という 4〜5年前に発売され一瞬で姿を消したコカコーラ社の炭酸飲料。どちらも飲み物です。これらは両者とも 負けず劣らずマズかった。マズイというだけでなく気分が悪くなる、言わば「逆清涼剤」という言葉がピッタリ 当てはまるものでありました。 そして数年の平温無事な食生活を打ち破り登場した栄えある 第3代目最後まで食べ切れなかった食品大賞受賞が本「カレーヨーグルトという訳です。
 
こう書くと「一体どんな味なんだろう」と興味を持つ方がおられるかもしれませんが、 その味はどなたにでもたやすく御想像頂くことが可能です。要するにカレーとヨーグルトを一緒に食べた所を 想像するだけで良いのです。ただそれだけです。そう、本品は本当にただそれだけの食べ物に過ぎないと言っても 過言ではありません。言ってみれば「一夜限りのスーパーセッション、坂本龍一meets鳥羽一郎」 みたいなもんです。(要するに両者とも台無しって訳だ!)
 
ということで、うかつにデザート感覚で向かい合うと痛い目に会うというなんともデンジャラスな この食べ物、御丁寧にもカレーの具という関係からか「肉片」やら「野菜のみじん切り」なんかもどっちゃり 入っていて呆れるほどワンダフルです。(上記スーパーセッションに飛び入り友情出演の バーバラ寺岡&ショーンコネリーというなにがなんだかで一体何目的なんだという俗に言う脱線転覆状態ですね・・)
 
さらに、「一体森永はどういうつもりでこんな商品を発売したんだ」などと考えない方が不自然とも 言おうものですが、驚くなかれとある筋からのタレコミ情報によると森永はマジらしいです。ここにそのタレコミ メールを引用してみましょう。以下、
 
日経産業新聞によると、
「森永乳業が三月三十一日発売した「カレーヨーグルト」が、業界関係者の注目
を集めている。」
らしい。記事によるとその商品は
「ヨーグルトの中に肉や野菜の入ったレトルトカレーを混ぜ合わせたもの。」
「従来のデザート用食品というイメージとは程遠い商品だ。」
そうだ。なんでも、モニター結果も
「「買ってみたい」は五十八%に過ぎなかった。」
ということで、
「社内でも賛否両論があった。」
のだと。(あたりまえだ)
だが、担当の次長は
「「成功すれば、今までにないヨーグルトの分野が開ける」と力説」
しているらしい。(次長というのは困った人が多いのか?)
しかも、
「初年度は十億円の売り上げをめざす。」
とのたまわっているのだそうだ。
その他に男性をターゲットにした
「ジンジャーヨーグルト」
も出しているらしい。(これはよさそうな気がするが)
[情報をお寄せ下さったOさん、どうもありがとう御座います。 +2ルピー差し上げます。]
 
このメールには「買ってみたい」が58%とありますが、そんなに多いのか??とすら感じてしまいます。 ま、「かってみたい」ということで「買い続けたい」訳じゃないもんなぁ・・
 
もしもまだ貴方がこの「カレーヨーグルト」を味わったことが無いのであれば是非買って、それを 食べながら上のメールを読んでみて下さい。きっとメールに書かれた1文1文が心に染み入って響くハズです。 (だってほら、早くしないと「タブクリア」の様にあっという間に市場から姿を消してしまうかもしれないし・・)
 
さてここまで長々と書いてきましたが、簡単に言ってしまえば「買って食べたら激マズだった」の一言で 終わってしまうことなんですね。ですから時間に追われる多忙な方はこの一言だけ読んで下さい。(ここまで 読んで来なきゃわからないけど。)
 

 
ちなみに言っておきますが私は決してこの商品をけなしている訳じゃありません。ある意味 かなり評価しています。何といっても、
 
罰ゲームに最適な逸品
 
な訳ですから・・
 
(END)


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