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− 轍 ・ 05/05/02 (1) −

夜半から強風。霧のままで雨にはなっていないので、まぁいいけど、朝が近づくと風が途切れることはなくなった。テントが煽られてひっくり返るほどの強風なので、風上側に移動して頭でテントを押さえて5時まで寝る。夜は明けたが、やっぱり強風。とにかく内側からテントを押さえつけたまま、ポプラの弁当を食べる。あまりやる気にならないが、強引に撤収して出発する。
本村の街並 まづは見島燈台である。昨夜、山の上に見えた燈光を目指して、集落の中の道を抜け、幾つかの角を折れていく。すぐに丘に向かうコンクリ道になり、登るにつれて本村の街が見渡せるようになった。本村は思っていたよりも大きく、NTTの高い鉄塔が聳え立っている。ガイドマップには発電所もあると書いてあった。集落というよりは市街といえるぐらいの規模だ。
道端に「福戸城跡」と記された小さな標識を見つけた。なんとなくこれに従っていけば良いような気がして、次第に細くなったコンクリの坂道を登り、ト字路を左に折れる。海が見えて小径がぐるりとカーブした先は、小さな公園。朝露に濡れて色鮮やかなシーソーが半ば草に埋もれ、その向うに、曇空に細く高く伸びた見島燈台の姿が見えた。 見島燈台
信号所の廃墟 見島燈台が立つ標高80m位の要害山は、室町時代の城跡であったようだ。山頂は広場状のちょっとした平坦地になり、敷地内を一直線に貫くコンクリ道に沿ってコンクリートの建物やアンテナ跡が並ぶ。海の見える追手側には、唯一2階建ての、信号所らしい廃墟があった。角島灯台や六連島灯台でも同じような信号所跡があったので、昔は灯台と揃いで設置されていたのだろう。その脇の草叢に隠れるように「福戸城跡」の石碑があった。
灯台に付随した建物は案外に大きく、井戸跡に遺された昔懐かしい手動の汲み上げポンプは職員が住んでいた名残であろうか? 搦手側には「見島燈台」の白い標識が掲げられた門柱が立ち、傍らには、鬼子母神の古めかしい小さな社が寄り添うように建てられていた。 遺されていた井戸
本村の路地 本村の街に戻って、ちょっと徘徊してみる。大きいとはいっても、やっぱり離島の港町だ。どこも車一台通るのがやっとの狭い道路が、迷路のように交錯している。黒く塗られた板塀と漆喰の白壁に挟まれた路地が美しい。
港の近くまで戻ってくると、海の神様である住吉様の社が、まるで家の庭先のような所にあった。ちょっと先の小高い丘の上にも神社があるようで、鳥居の並ぶ石段が見える。本土から離れた島の人達は信心が厚いのであろう。 住吉神社
見島牛の記念碑 見島の南岸にある本村から最北端の長尾ヶ鼻に行くには幾つかルートがあるので、地形図を見てどの道にしようかと思案する。ターミナルの裏には立派な角をした牛の像があり、見島牛の蘊蓄が書かれている。自衛隊の基地を見ても面白くも何ともないだろうから、牛の放牧地を廻っていくことにした。
ジーコンボ古墳群とかいうのもあるようだが。良くわからんまま通りすぎてしまった。道端には、大きな三脚を据えて写真を撮っている御仁を幾人も見かけた。どうやら田圃の溜池にいる渡り鳥を撮っているようだ。やがて道巾が狭まり「これでいいんかよ」と思える怪しげな道になった。両側を藪で遮られた急坂を登りきると、周囲が開けて、なだらかな草原になった。 渡り鳥
見島牛の放牧地 放牧地は見島中央部の丘陵地に広がり、数十頭の牛がのんびりと草を食んでいる。見島牛は「いかにも肉牛」といった趣の真っ黒な和牛だ。写真を撮っていたら、のこのこと近づいてきた。美味しそうだな〜。食べたいな〜。ようやく天気も回復してきた。自衛隊の鉄塔や灯台も両方見えて、なかなか良かったばい。
放牧場から坂を下っていくと、すぐに宇津の集落に着いてしまった。そのまま見島北灯台にとりかかる。小さな集落から周囲の畑に中へと幾筋もの小径が延びている。北灯台と記された小さな看板に従って走っていくと、途中からやっぱりコンクリ道になった。小さな丘を越えて明るい森を抜けると下り坂になって、前方に延びた岬の先に白亜の灯台の姿が見えた。 見島北灯台
見島最北端 長尾ヶ鼻 見島は萩諸島としては最も遠く、本土から45kmの沖合い、ほとんど日本海の只中に浮かぶ孤島だ。北端の長尾ヶ鼻の先には、日本海が果てしなく広がっている。まだ風は強いが雲は消えて絶好の天気となったので、傍らのベンチに座り、パンを食べてのんびり休憩する。




見島北灯台の灯籠とレンズ
日本海に浮かぶ見島は、渡り鳥にとって翼を休める絶好の場所となっている。灯台の上空にも、大空を舞い翔ぶ多くの鳥達の姿が見られた。バードウォッチングの好適地として有名なのだろう。走っている途中で双眼鏡や望遠レンズを持った人々に何人もすれ違ったし、長尾ヶ鼻で休憩している間にも数人のグループが入れ替わりにやって来ていた。
並んだ鳥居 船の時間にはまだ間があるが、とりあえず宇津まで戻ることにする。港に着いたが周囲は閑散としていて、船着場の建物には売店もない。少しは時間が潰せるだろうと思っていたが、とことんヒマなので、案内図を見て近くにある観音崎に行ってみることにした。急坂の道は乗って上れるような勾配ではなく、自転車を押していくと、参道には素木の鳥居が幾つも並ぶ。

宇津正観音堂
最後の鳥居をくぐると大きく海が広がり、断崖の下に観音堂の社殿が見えた。『冥途の入り口』と云われるのが頷ける、絶妙なロケーションだ。ここの正観音も両側の断崖も、かなり宜しかった。正観音というのは日本には3箇所しかないらしい。知らなかった。なぜこんな孤島にあるのだろう?
観音崎周辺 北側の崖の上から宇津正観音堂周辺を眺める。相島の断崖とはかなり様相が違うが、広々とした開放的な草原と海食崖との対比が素晴らしい。これほどに風光明媚な見島であるが、観光地といった風情は全く感じられない。この高い崖にも柵も何もなく、風が強くて足を踏み外しそうで、実に恐くて楽しかった。


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