| PREV | | BACK | | NEXT |

− 轍 ・ 05/04/30 (2) −

小原浜から小さな岬を廻ると、左手の森の隙間から赤い灯台が小さく見えた。小砂利が敷かれた道を進んでいくと、すぐに海岸で、三角洲上に形成された萩市街の西側を流れる橋本川の河口になっている。橋本川の向う岸には萩城址のある指月山がこんもりとした姿をたたえ、こちら側にある小島の上の木立から赤い灯台の頭が飛び出している。 橋本川河口の無名の島
玉江港燈台 岸から島までの間にはコンクリの遊歩道があるので、トコトコと歩いていくと島には石段があり、見上げると厳島~社の額が掛けられた朱い鳥居が立っていた。その背後の灯台は、まるで鳥居と塗り揃えたかのような色彩だ。灯台というと自分の中にも白亞のイメージがあるので、赤色だと今ひとつの気分になってしまうのだが、こうしてみると中々良さげな雰囲気を醸している。石段を登って島に上がる。地図には島名が記されていないが、厳島~社だから厳島なんだろうか・・・?って訳ないよなぁ。その厳島~社の小さな社殿の横に、玉江港燈台が立っている。機械室の屋根に置かれた併設の玉江港東方照射灯のサーチライト型灯器も、やはり揃いの色に塗られている。
詰草の小さな白い花が咲き敷かれた川岸を眺めていると、すぐ上流側に高さ2m位のコンクリートの怪しげな四角柱が突っ立っているのが目に留まった。むむむ・・・頂部には小さいが何やら透明な灯器のようなモノが乗っているぢゃぁないか! ダッシュかまして確認に行くと、明らかに灯柱。それも無塗装のコンクリート造だ。う〜ん、渋いぜ。しかしプレートも何も名称を示すようなものはどこにも見当たらない。そもそも「灯台表」に載ってたかなぁ? と非常に???な正体不明の灯柱ではあるが、兎にも角にも珍しい獲物を屠れた喜びに満ちて、思わずニンマリとしながら自転車に跨るのであった。 (仮称)倉江灯柱
川岸沿いの鉄工場を廻り込んで橋本川に架けられた常盤大橋を渡ると、三角洲内側につくられた萩の市街地に入る。すぐに萩城址の横を通るのでちょっくら寄りたくなったが、まずは不確定要素の強い萩港灯台を獲ることが、萩での最優先課題である。萩港灯台は市街北側に飛び出た狐島の先端にある。平成元年修正の地形図を見ると狐島には灯台以外に何もないが、最近の地図では島に建物が並んでいる。よりにもよって私立の女子大学ができたらしくて、見るからに怪しいオヤジが構内に入れるのかは全く定かでない。てなわけで毛利家の菩提寺である東光寺と大照院も再訪したいと思っていたが、菊ヶ浜にある萩商港乗船場の場所だけ確認して三角洲の東側を仕切る阿武川を渡り、狐島へと急ぐことにする。
狐島入口のゲート 北側に広がる市街地の海岸には、鶴江台、中ノ台と島になり損ねた小山が並ぶ。その先の狐島は、これまた砂洲で陸続きの陸繋島で、付根の砂浜は美萩海浜公園として整備されている。砂洲の括れた所にゲートがあり、島全体が大学構内のようだ。守衛小屋に人影は見当たらないので、道路脇の「萩女子短期大学」と書かれた大きなプレートの前に自転車を置いて暫らく辺りの様子を伺うが、人通りは全くない。
牛ちゃん情報ではゲート横の小径を通って灯台まで行けるとのことなので、フェンスに沿って浅い茂みを歩いていくと、自転車置き場に出た。敷地の外側を周って行けると思っていたが、モロ構内だ。少し躊躇したが、これしか道はないようだ。しかし置かれている自転車はどれもこれも酷く錆付いているし、全く人の気配が感じられない。多少はビビリながらも木立の中を大きく曲がりながら登っていく坂道を進んで行くと、正門らしき立派な門があった。 萩女子短期大学正門
構内の案内板 今度は鉄の門扉が開かれたままになっていて、すでに錆びて折れた棒もあった。ゲートを入ったところには少し汚れた大学構内の案内板が設置されていた。案内図の右端から少し下、実際には狐島の最北端にあたるグランドの横に、萩港灯台が記載されている。
開き直って人気の無い構内を歩いていく。並んでいる校舎等はそれほど古びている訳でもないのに、薄汚く埃にまみれたまま放置されている。すでに休校か廃校になってしまったようだ。幾分気楽になって緩やかな下り坂を進み、体育館の横の植込みを過ぎると、さほど広くないグランドの向こうに萩港灯台が見えた。 無人の大学構内
グランド入口には軽トラが停まっていて、夏蜜柑の枝の隙間からは草刈をしている人の姿が見えた。咎められないかと少し気になり、素知らぬ顔をしてグランドを足早に横切っていく。グランド周囲の森が開けた小さな草地に、萩湾を背にして立つ萩港灯台の姿があった。海を見渡すことができるこの場所は、かつては学生達の憩いの場だったのであろうが、今となっては草ボウボウ。人が途絶えて久しいようだ。
日本最小の火山 笠山 暮れていく日本海を独りぼっちで望むと、萩湾の向かいには笠山が見える。笠山は日本で最も小さい火山であるらしいが、火山の大きさはどうやって測るのだろうか? この笠山の北端には虎ヶ埼灯台があるが、お姿を視認することはできなかった。今日はもう余裕がないので後日に行くことにして、萩港灯台に別れを告げて歩き始める。
萩市街に戻る途中に萩反射炉跡があったので寄ってみた。小高い丘に登ると、崩れかかったような赤煉瓦の煙突跡だけが寂しそうに取り残されている。幕末の貴重な遺構だが、夕暮れ近いとはいえGWなのに人っ子一人いない。近くの道の駅には車が犇いていたので、こうした旧所名跡は日本人にとって既に価値を失ってしまったようだ。まぁ大して面白くないのは確かだが、歴史に浪漫を感じない人々は未来に思いを馳せることもないだろう。 萩反射炉跡
鶴江台の街並み R191から逸れて、鶴江台を隔てる姥倉運河を渡る。阿武川の河口に位置する鶴江台灯柱にむかうと、両側に家の建ち並ぶ狭い路地が続いている。三角洲の外側になるが、ここには古くからの美しい街並みが残され、今も変ることなく息づいているのが、心地良く感じられる。
小径が尽き当たるところまで行って歩き始めると、鶴江台灯柱はすぐだった。円形だとばかり思っていたら、角は丸まっているが微妙に歪な6角形の柱だ。傍らにある祠に向かって手を合わせて、波飛沫で濡れた海岸に佇んでいると、沖からは一艘の船が近づいてきた。萩商港に到着した定期船からは意外に多くの乗客が下船してきて、彼らが三々五々と散っていくのを対岸から見届ける。 鶴江台灯柱
ぐるっと廻って萩商港のターミナルまで行くと、さっきまでいた鶴江台灯柱には何時の間にか緑色の灯光が点されていた。もう人が少なくなって静けさを取り戻した待合室に入ると、まずは相島に渡る船の出航時間を確認し、とりあえず近くにいた萩海運の係員をつかまえて自転車が載せられることを確認しておいた。あとは港の近くにある菊ヶ浜の砂浜か公園で寝ようと思っていたのだが、どうにも空模様が崩れてきているので、ターミナルの軒に風を避けるようにしてテントを張った。


| PREV | | BACK | | NEXT |