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− 轍 ・ 05/04/30 (1) −

角島の朝 04:58起床。だんだんと明けてゆく空に残った角島灯台の灯火を愛でてから出発する。丘を越えて島の東側に出ると、角島大橋の彼方では、朝靄に包まれた太陽が柔らかな輝きを纏って昇っていく。『春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎわ少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。』などと宣ひつつ、角島を後にする。角島大橋はやっぱり風が強いが、この前ほどではない。
一昨年(2003年)の9月に走ったR191を萩に向けて走り始める。阿川から一発軽く丘を越えたところで粟野漁港に寄り、まだ目覚めたばかりの小さな街並みを海に沿って通り過ぎていく。粟野の港は串山に護られた穏やかな水面が広がり、油谷湾を挟んだ向うに油谷島が、左端にちょこんと俵島が見えた。粟野漁港の沖には粟野港沖防波堤灯台が見えているが、歩いては行けません。残念でした。 粟野漁港から望む油谷島
今回のツアーの起点を角島にしたのは角島灯台参観という目的もあったのだが、「灯台表」の購入により取りこぼしが発覚したためだったりする。昨日の元山三ヶ瀬北東・南西照射灯もそうだが、油谷島にも地形図に記載のない照射灯があるようだ。経緯度と灯火高から概ねの位置はわかっているので粟野からそれらしきところを凝視するのだが・・・わからん。う〜ん、存在だけは確認しておきたかったのに、スゴイところにあったらどうしよう・・・と悩みつつR191を走っていくと、徒歩旅行らしきおじさんが歩いていました。伊上からR191を離れて、やっぱり油谷島へと向かう。ホントに到達できるのか良く判らない照射燈1基のために3時間を投入することになるが、これも仕方がない。自分の未熟さを悔いよう。
久津の集落 油谷島へは内湾沿いのくせにアップ&ダウンのあるダルい道だが、前回よりは楽な調子でほぼ半分の久津の集落までやってきた。こうして走り続けていると鄙びた漁村の風景は見慣れたものだが、それでもやっぱり自転車を停めて一息入れると、心落着いた穏やかな気持ちを取り戻せる風景だ。
大浦の港を通過して、油谷島に入っっていくと上り坂になって、やっぱりダルいや。本油谷の集落を外れて、まだ記憶の片隅に残っている田圃の中の道を登り、森の中で高度を上げていくと、周囲が開けて草刈りの人々がお休みしていた。振り返ったところに本油谷船瀬照射燈発見。棒の上に箱が乗ってるヤツだった。時間と体力が勿体無いので照射燈さえ獲れれば引き返そうと思っていたのだが、どうせここまで来たのだから、折角だから油谷島を一周していこう。俵島の集落の外れには、道端に注連縄の掛けられた石が置かれていた。注連縄の両端がぐいっと突き出ていて、牛の角のように見える。気のせいだろうか? 注連縄の掛けられた石
油谷俵島の彼方に角島 俵島灯台まで往復すると30分以上かかるので、道路から見るだけにしておいた。俵島は油谷島から更に砂洲で繋がったダブル陸繋島だが、地図で見ると4重のフラクタルなのが楽しい。砂洲は歩いて簡単に渡れるようだが、実際には干潮でもほとんど海面下に沈んでいる。そのためかコンクリートの大きなブロックが並べられているのだが、コイツも波風で一部が崩れていて簡単には渡れないのだ。
とにかく今日中に萩までは行きたいので、訪問済みの川尻岬はパスしてサクサクとR191まで引き返す。来た道をそのまま引き返すだけなのは癪に障るので、来る途中で見かけた棚田に寄ってみた。急斜面の畦を登っていくと、背後には日本の風景が広がる。う〜ん、内湾とはいえ海が綺麗だ。 油谷湾を見下ろす棚田
やっと伊上まで戻り、訪問済みの今岬はやっぱりパスして長門まで直行する。いやぁ、ちゃんと1基獲れたから、良かった良かった。R191を走っていると、途中でまた朝に見かけた徒歩旅行のおじさんを追い抜いた。長門市街に入り、JR長門市駅前。ここで潮場の鼻灯台への再挑戦を誓ってから、もう2年近くたった。トシをとると月日の経つのが速いなぁ・・・。腹も減ったのでパンでも食べようかと終着駅である仙崎駅に寄る。どうせ誰もいないだろうから思いっきりウダろうと思っていたのに、待合室では何やらイベントの準備で沢山人がいる。ちぇっ。仕方ないからスーパーで弁当を買って、青海島へと走り始める。
青海島もやっぱりフラクタル図形だ。前回は仙崎港にキャンプ装備をデポして空身のアタックだったが、今回はフル装備のままなので、途中の峠が脚に堪える。田の浦にある通中学校が潮場の鼻灯台への入口であることは、前回会ったおじさんから聞いているので、今度は校舎の手前から西側の道を入っていく。小さな女の子を連れたおじさんに尋ねてみると、通る人がいないので獣道になっているかもしれないが、今でも道はあるらしい。野犬がいるから単独行は止めた方が良いとのことだったが、お礼を言って、そのまま細い道を進み、人家が尽きたところに自転車を置いた。歩き始めると踏跡もしっかりしてるし、前方の山を越えていく送電線に沿っているので、少し安心する。
潮場の鼻の沖には相島 勾配が急になると踏跡が怪しくなり、竹薮を刈った斜面を登り切ると、海からの崖の上に出た。登る途中で送電線もロストして、もしや前回と同じ所に出たかと思い、とにかく戻って送電線の行方を確認する。再び登り左に歩を進めると、しっかりした踏跡になって送電線に合流したのでOKだろう。前回見えた崩落地の先に出たようだ。この先は下り坂になって森から出ると、ドカンと広がる日本海には手の届くような距離に相島が浮かんでいた。
踏板が錆びた鉄梯子を越えて、遂に念願の潮場の鼻燈台に到達。うむ、やったね! その白亞の御姿に見入っていると灯塔に登れそうだったので、チャレンジしてみました。もう時効ですよね、どんちゃんさん。猿梯子を登れば、30cm足らずの小さな不動レンズにご対面。昨夜の角島灯台では一等レンズを見ることができなかったが、今日は可愛いフレネルレンズに会えました。 潮場の鼻燈台の灯器
海上アルプスの断崖と入江



灯塔の上に立ち上がり、名高い海上アルプスを遥か上から鳥瞰する。周囲の崖や入江は素晴らしくも美しく、自然が創り出した雄大な造形と鮮やかな色彩を前にして、唯、立ち尽くすだけである。眼下の海では、青海島巡りの観光船が右往左往し、積載されたフツーの人々が蠢いているのが見える。青海島を訪れたことがある人は少なくないだろうが、この光景を拝んだ人は決して多くはないだろう。
出戻りの目的を達したので潮場の鼻燈台に別れを告げ、田の浦に戻って仙崎まで帰るが、風が強いぜ。今日はまだ先が長いので、仙崎の港を素通りして岸から沖に伸びた石灰岩積み出しのコンベアの下を通ってR191に出る。幹線国道は好きくないから嫌だぜと思っていたら、お誂え向きに海側には旧道があった。方角が西に変わって少しは逆風が和らぐかと期待していたのに、ちっとも楽にならないぞ。なんでやねん! 強風に疲れて果てて三隅の駅に寄って、ぢゅっちゅを飲んでパンをちょっと食べて休むと、多少復活して走行を再開する。
三隅から北に向かい仙崎湾岸の野波瀬まで一山越えるが、山どころか丘でもない程度で、予想していたより全然楽。野波瀬漁港から海岸に沿って行くと、岬の先端に照射燈の四角い灯塔が見えた。さっきまでの荒々しい青海島から一転して、透き通るような綺麗な水の穏やかな海辺。しょっぱくなかったら海とは思えないほどだ。すぐ横の砂浜で戯れる親子連れの姿が似つかわしい岬に、松島二子照射燈は素っ気無く立っていた。
引き返して行く途中で野波瀬漁港に寄って、穏やかな海を眺める。例によって野波瀬港小野波瀬防波堤灯台が見えているが、防波堤灯台を獲物にしてしまうと肝心の旅が前に進まなくなってしまうので、見るだけで我慢することにしている。その防波堤の内側には大きな石積の堤があるのだが、その端には大きな石灯籠が建てられている。夜になると灯火が点るのだろうか? 野波瀬漁港の石灯篭
飯井の集落 三隅まで戻り、萩へとむかう。まだ距離はあるので急ぎたいところだが、やはりR191を離れて日本海に沿っていくことにして、山陰線と並行する道へとハンドルを切る。最初は綺麗な2車線の道は踏切を渡るとすぐに田舎道になり、地蔵峠を越えて名もない小さな岬を廻り込むと、美しい日本の風景が広がった。やはりR191を直行するのとは較べる術もない。
道は山陰線に沿って小さな集落を繋いでいく。海岸沿いとはいってもリアス式海岸なので平坦な場所はなく、100m程のピークとはいっても小刻みに幾度も登らされるので気分的には峠よりも辛いほどだ。そんなことは判っていても、こうした道を辿っていくのは自転車乗りだけに許された特権だ。 JR山陰線 飯井〜三見
小原浜に寄せては返す波 三見の集落を過ぎてやっと沈降海岸のアップ&ダウンを終えると、ラストは砂浜に沿っていく。もう萩はすぐそこだ。やっと余裕ができたので自転車を停めて漣が寄せては返す浜辺へと歩を進めると、萩沖に点在する大小の島影が近づいてきていた。萩諸島はどれもこれも絶壁に囲まれた島なのか、赤茶けた崖の上に平坦な緑の森がこんもりと乗っかり、ケーキのようにも見える。


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