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− 轍 ・ 04/12/30 (2) −

家島汽船の窓から 再び家島汽船に乗って男鹿島へ。家島港の防波堤を過ぎて天神鼻を廻り込むと、すぐに男鹿島が近づいてきた。船の汚れた窓ガラス越しに眺めると山肌は見事に削れていて、露出した黄色い崖が島の至るところを占拠している。緩やかに弧を描く浜が近づいてきたが、民宿らしき人家が数軒並んでいるだけで、港と呼べるような防波堤も岸壁もターミナルの建物も見当たらず、船は屋根もない小さな桟橋に接舷した。
男鹿島で船から下りたのは、私の他には黄色い土方メットをかぶった兄ちゃんの2人だけ。桟橋には切符を受け取る係員もいなかった。2人それぞれ無言で、サクサクと歩き始める。地形図には島を横切る山道が記されているが、辺りを見回してもそれらしい入口は見つからない。ちょうど近くにいたオジサンに尋ねたら、もう山道は無いらしくて、燈台に行くには海沿いに歩いていけば良いとのこと。帰りの船の時間が気掛かりだが、3時間あれば戻って来れると言うので、ちょっと安心して再び歩き始める。
船着場の付近は舗装されていたが、すぐに砂利道になった。岬を廻り込むとそこは採石場で、道端の倒れかかった看板には、事故が起きても責任を負わないとの旨が書かれている。採石場の中には砂利の山があちらこちらに築かれていて起伏があるので、意外に疲れる。海沿いにいけば良いと言われたが、ダンプカーの積み出し施設や分岐している作業道のおかげで、どちらに行けば良いのか分からなくなる。 採石場入口
ザックリ削れた山 採石場を過ぎると人家があって、犬に吠えられた。夏には海水浴で賑わうらしいが、シーズンオフに旅人が訪れるようなことは滅多にないのだろう。その先では、先程の黄色メットが電柱に登って街灯の修理作業をしていらした。その横を通りすぎていくと、また採石場になった。歩いても、歩いても、採石場が広がるばかりだ。本当にここは日本なのかと思わずにはいられない、荒れ果てた風景が続いている。瀬戸内海にこんな島があるとは、思ってもいなかった。
道端には大きなシャベルカーやダンプカーが整然と並んでいる。立派な作業用車に較べると、島内の自動車は随分とくたびれているものが多いが、ふと気が付くと、ほとんどの車にはナンバープレートが付けられていない。たまに通りかかる車にも付いていないので、廃車という訳ではないようだ。恐らく男鹿島を一周している道は公道ではないのだろう。そういえば信号どころか道路標識もない。 シャベルカー
駝鳥の檻 幾つか採石場を通り過ぎると、青井の集落には数軒の家と小さな船着場があった。道を間違えそうになったが、海岸沿いから高台に上がって草が疎らに生えた荒れた野原を歩いていくと、忽然と駝鳥の檻が現れた。石ころだらけの荒れた土地を走る駝鳥の姿は、現実的でもあり、シュールでもあり、なんとも不思議な感覚に襲われた。
再び海岸まで降りて小さな入り江の突き当たりまでいくと、細い舗装の急坂が森の中を越えていく。登っていく途中で、やっと男鹿島燈台を視認できた。尾根筋からはコンクリ道が分岐していて、船を降りて歩き始めてから62分で、岩津ノ鼻に立つ男鹿島燈台に到達した。その間に見かけた人は、僅か数人。これまでも人知れずに立ち尽くす灯台を幾つも訪れてきたが、これほど寂れた島の辺鄙な場所だと、達成感もひとしお深い。 男鹿島燈台
播磨灘 男鹿島燈台からは、穏やかな播磨灘に小さな島が幾つか浮かんでいるのが見える。遠く東の方には、明石海峡大橋を望むこともできた。元来た北東側の方が若干近いようなので引き返すつもりだったが、南西側の道も見えているし船の時間にも間にあうようなので、男鹿島を一周することにして写真を撮って早々に出発する。
男鹿島燈台から山を下ったところには廃校があった。田浜には数軒の人家があり男鹿島では最も大きな集落のようだが、残された校舎もけっこう大きくて、昔はもっと活気のある島だったのだろう。校庭の片隅に放置された、すっかり錆びついて朽ちた遊具が、侘しさを募らせる。 男鹿小学校跡
池の浜 田ノ浜から丘を越えると、池ノ浜はかなり広い面積で採石場になっている。男鹿島は島全体が採石場になってしまっているが、年末休みとあって、稼動している車両やベルトコンベアーなどは見当たらず、それどころか人の気配まで感じられない。何処もひっそりと静まりかえっていて、打ち捨てられた巨大な廃墟であるかのようだ。
島の西側は8割方採石場だが、ほとんど平坦なので53分で桟橋まで着いた。待合所でドーナツを食べて、置いてあった新聞を読む。50分位あるからヒマだと思ったが、メモしていた船の時刻を確認したら、16:09に坊勢汽船がある。時間になっても船が来る気配がないので、待合所の壁に貼ってある島の案内地図を見てみると、坊勢汽船の乗場は少し離れているようだ。外に出ると、ちょうど船が汽笛を鳴らしながらやって来た。桟橋までダッシュをかまして、5分ほど遅れて来た飾磨港行きの船に乗り込んだ。


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