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− 轍 ・ 03/12/30 (1) −

船から見た神島 再び鳥羽駅横の駐車帯に車をデポする。自転車で行ってもあまり意味が無さそうなので、デイパを背負って徒歩で市営定期船乗場に向かう。神島行きの船に乗って海を眺めていると、坂手島の東端には丸山埼灯標が見えた。鳥羽の佐田浜港から神島までは約45分。神島は地理的には愛知県側の伊良湖岬の方がはるかに近いが、古来から伊勢神宮の神領であり、伊勢神宮を守る島であったとも言われている。だんだんと神島が近づいてきた。
神島は山の中腹から上が海に浮かんでいるような格好で、平地はほとんど無い。集落も急な斜面に家が立ち並んでいて、いたるところに石段がある。旅人にとっては風情のある風景だが、暮らしている人達はきっと大変なんだろうなぁ。島を一周できる遊歩道があるようなので、港から学校に向かって歩き始める。自転車で海岸沿いを走るときは時計回りが基本だが、今日は歩きだし神島燈台で呆けたいので逆回りにした。しばらく歩くと古里の浜。砂浜には八丈島と呼ばれる大きな岩がある。 神島の民家
神島小中学校 神島小学校と神島中学校は同じ敷地に建っていて、それぞれの表札が嵌め込まれた門柱が仲良く立っている。冬休みで誰もいない静かな校庭を横切って歩いていく。田舎の学校はたいていそうだが、ここも集落からはかなり遠く、ほとんど島の反対にある。9年間毎日歩いていれば、丈夫に育つのだろう。
校庭のすぐ横にはニワの浜という小さな入り江があり、白い石灰岩が露出したカルスト地形になっている。反対側には神島の南に大きく突き出した弁天岬があり、近くには鍾乳洞もあるようだ。 ニワの浜のカルスト地形
神島監的哨 海を見ながら坂を登っていくと、良い具合にうらぶれたコンクリートの廃墟が現れた。この神島監的哨跡は、対岸の伊良湖岬にある試砲場から撃たれた砲弾の着弾点を確認して報告するために昭和4年に建てられた旧陸軍の施設であると、説明板に書かれていた。また、神島は三島由紀夫の小説『潮騒』の舞台としても有名であるが、この監的哨はクライマックスの舞台として描かれており、映画のロケにも使われたらしい。




神島燈台
監的哨跡から森の中を下っていくと、灯明山の中腹に立つ神島燈台に着いた。明治43年に点灯された神島燈台は白熱電球を使用した日本最初の燈台であり、自家発電による電気灯としてもアーク灯を使用した尻屋埼灯台に次ぐ2基目である。周囲には猫が沢山たむろしているが、そんなに痩せこけていなかったので結構観光客が来て御菓子でもあげるのだろう。不用意にバッグを開けると飛掛かってくるヤツもいるので、気をつけましょう。
伊良湖岬 神島燈台から正面の海を眺めると、伊良湖岬の伊勢湾海上交通センター(いせわんマーチス)と伊良湖岬灯台、その手前の海上には朝日礁灯浮標が見える。初めて伊良湖岬を訪れたときは伊良湖岬灯台のすぐ背後に旧信号所の巨大なアナログ式表示板があり、『これはなんだろう?』と不思議に思ったものだが、いせわんマーチスの完成後に取り壊されたようだ。
予定通りに、海を眺めてひとしきり呆けた後に、神島燈台を後にする。コンクリートの道を下って集落の上に出ると、眼下に神島港が見えた。急斜面にびっしりと家が立ち並んでいる光景は見事で、写真を撮らなかったことが悔やまれてしまう。その家の横を下っていくと八代神社の鳥居があり、石段が延々と続いている。どうせ船の時間には余裕があったので、てくてくと石段を登っていく。登り詰めると八代神社の社殿があった。離島の神社らしく海の神である『綿津見命』を祀っており、古くから伊勢湾を航行する船乗りたちに海の守護神として崇敬されていたという話だ。 八代神社の鳥居
注連飾り 神島の家の戸口には『蘇民将来子孫門』と書かれた護符と蜜柑の付けられた注連縄が飾られている。これは備後国風土記逸文に記された伝説に基づく疫病除けで、伊勢志摩地方では一年中飾っておくのだそうだ。星野之宣の『宗像教授伝奇考』を読んで知っていたが、実物を見るのは初めて。
かつては神島にただ一つの時計を収めていたという時計台。『富山の薬屋さん』が寄贈した元の時計は長い間失われていたが、今では新しい時計が付けられて神島の時を刻み続けている。役場の玄関には、やはり『蘇民将来子孫門』の大きな注連縄が飾れられていた。どこかで売っていたら買って帰ろうと思ったのだが、見つからなかった。残念。 時計台
漁船の正月飾り


神島港に係留されている漁船にも、正月の準備がされていた。家の正月飾りは松が相場だが、漁船には枝の先端だけ葉の残された竹飾りがつけられている。早くも大漁旗を掲げている船もある。
神島港の船のりばの裏手には異様な物体が並べられている。何かと思っていたのだが、海から戻ってきた漁船を覗いていたらタコがウニュウニュしているのが見えたので、蛸壺であることに気がついた。素焼きのような色をしているが、プラスチック製なのがショボイ。 蛸壺
神島港北防波堤灯台 菅島にむけて船は神島港を出航していく。港の入口の防波堤上にある神島港北防波堤灯台と水面近くを飛び交う数羽の海鳥を見ながら、神島に別れを告げた。


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