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第1章

ashukus

辺境の小さな街
この街は今未曾有の危機に瀕していた。現に街の住民の大半は殺されている
「ぎゃああああ!!」
突然、悲鳴が辺りに響き男が倒れこむ、背中には大きな切り傷が
「・・・あれ?さっきの威勢はどうしたの?」
暗闇から姿を現したのは薄く赤に染まっている刀を持った少年、歳は10か11歳くらいか
「ばっ、化け物!!」
「・・・フフフ、死んでよ」
そう言うとその少年は倒れている男に刀を突き立てた。男は動かない、とその時、刃物を持った男二人が現われる
「おい、居たぞ!!」
「一人殺られてるぞ!!」
そう言うと二人の男はその少年に飛び込んでいく、大人二人と少年一人勝負は見えている筈だった
「・・・無駄だよ」
ヒュン
その少年の刀が一瞬にして二人の男を捉える。『呪われた子』という言葉を残し倒れる二人の男
「・・・そうだよ、所詮人間なんて・・・・」
少年がそう呟いた瞬間、その少年の前に刀を持った男が現れ口を開く
「愁、もうやめろ!!見ろ、お前の刀を、刀身が赤く染まっている。我が家に伝わる『水幻』は正しい心の持ち主が持つと
刀身が青く染まり凄まじい切れ味を持つ。しかし邪な意志を持つ物が持つと刀身が赤く染まり妖刀と化すのだ」
男の言葉に少年が言葉を放つ
「・・・邪?・・・最初に俺を殺そうとしたのは父さんと母さんだよ?俺より父さんの方がよっぽど・・」
「そうだ、しかしそれはお前が『呪いの子』だからだ、お前のあの力は危険だ、それに自分の母親を手に掛けるとはな」
その言葉に少年は冷たい笑みを浮かべる
「・・・フフッ父さん、闘る気なら最初からそう言えばいいのに」
「せめてもの情けだ、苦しまないように殺してやる」
両者全く同じ構えをとる。そして・・・・・・
ガキィィ
少年が彼の父親に斬りかかる。それを受け止める父親、そして少年の刀を受け流し、そして弾く
キィィィン
少年の刀が飛ばされる。技術、力、共に少年の父親の方が上だったらしい。と少年の父親が刀を振り下ろす
「愁、今終わりにしてやる」
切先がその少年に触れると思った瞬間
「グハァッ!!」
少年の父親の背中を飛ばされたはずの少年の刀が切り裂く
『念力 物体移動』
「ぐっ・・・やはり・・・お前は・・・・『呪いの子』・・・だ」
そう言うと少年の父親は事切れた
「・・・ククク・・・《俺は両親を殺した・・・殺した・・・・殺した》」
「俺がみんな殺したんだ」
「・・・五月蝿いな、黙れそれがどうしたんだよ」
「俺は、両親も殺したんだ」
「・・・所詮人間なんて」
「たくさんの人を殺したんだ」
その瞬間、彼の中にもう一つの人格が生まれた。本来の人格を抑制する人格である。
ちなみにその人格には自己防衛の為に10歳の頃の記憶が全て抜け落ちている。もちろん両親を手に掛けた記憶は無い
そしてこの少年こそが後にエンフィールドに移り住む事となるシュウ・アークス、本名 亜楠 愁なのである

7年後
舞台はシープクレスト。そしてここはシープクレスト保安局刑事調査部第四捜査室、通称『ブルーフェザー』事務所・・・・
「あ〜あ暇でしょうがねぇな」
談話室のソファーでだれている室長のルシード、そしてテレビを見ている前室長のゼファー
「ルシード、暇というのは・・・・」
「ゼファー・・・その話はもう何度も聞いたぞ・・」
「うむ、そうだったな」
ブルーフェザーは暇な部署だ少し前は、幽霊だのライシアンだの沈没船だのいろいろあった様だが、ここ最近は特に何も起きていない
と、誰かが談話室へかけこんできた、ブルーフェザーオペレーター役のメルフィだ
「事件よ、ポルターガイスト現象が起きたらしいわ」
「おっ、場所はどこだ」
「ミッシュベーゼンよ、すぐに向かってちょうだい」
気合充分なルシード
「ようし、ブルーフェザー出動だ、ゼファー、メルフィ留守番頼むぜ」
「うむ」
「わかったわ」
と、ピンクの髪をした一人の少女が入ってきた。ブルーフェザー手伝いのティセだ
「御主人様〜ティセもいってもいいですかぁ〜?」
「あ?お前も留守番だ」
「あう〜〜」

ミッシュベーゼン
かくしてブルーフェザーはミッシュベーゼンへとたどり着いた
「うっわ〜、ひで〜なこりゃ」
現場に着くなりパイナップルのような頭の少年が口を開く、ブルーフェザー隊員のビセットだ
「ほんと、めちゃくちゃ、おかみさんと更沙ちゃん大丈夫かな」
ビセットに続きルーティも声をあげる
店内ではおかみさんと更沙がめちゃくちゃになった店内を掃除している
「センパイ、これは・・・」
「ああ、思ったよりひでぇな」
ブルーフェザーは店内へと入る、中は足の踏み場も無い、とバーシアがめずらしく積極的に捜査をする、
さすがに行き付けの店がこうなっては当然だが
「おかみさん、どうしたのこれ」
「どうしたもないよ、いきなり店中の物が宙に浮かんだと思ったら、嵐のよう動き出したのさ」
「へぇ店中の物がねえ・・・更沙、大丈夫だった?」
「・・・うん平気」
その後もブルーフェザーは捜査を続けるも、ポルターガイスト現象特有の気配や思念などは何も無く捜査は行き詰まってしまった。
そして数日後・・・・・

早朝、自室で寝ているルシード、と誰かがドアを強く叩いている
ドンドンドン
「ルシードさん!!」
ドンドンドン
「ルシードさん!!」
「あ〜?なんだよ、うるせぇな」
ガチャ
「またポルターガイストよ」
「あ〜?またかよ、で、場所は」
「今度はクーロンヌよ、すぐに向かって」
眠いルシード、前のような気合はもちろん無い
「ったくよ〜しょうがねぇブルーフェザー出動」
「・・・・・・・ルシードさん・・・・」

クーロンヌ
またもや店内は荒れ放題、クリーム類が所狭しと散乱している、それを店長、リーゼ、バイトのシェールが掃除している
「センパイ、これは前にも増してすごいですね・・・入るのはちょっと」
フローネの言葉をよそにビセットは、足早にクーロンヌへと入っていく、リーゼ目当と言った所か・・・
「リーゼさん、大丈夫ですか手伝いますよ」
「あら、ビセット君ありがとう」
「いえそんな、あははははは」
とりあえずルシードは店長に話を聞くことにした
「おい、とうしたんだこれは?」
「おお、ブルーフェザーの皆さんですか、いやね、いきなり店中のケーキとか皿とかが飛んできましてね、そりゃもう大変だったよ」
「さいわいお客さんは時間が時間だから少なかったんだけど、いた人は災難だったね」
と、シェール、なんとも無責任な発言な気もするが
そしてその後、一通り捜査を終えたブルーフェザー、だかミッシュベーゼン同様、気配や思念などが感じられず原因は分からずじまいだった

その後シープクレストにて同じような事件が何日かに一度くらいの割合で何度か発生したが、それらもこれといった原因はつかめなかった
この『連続ポルターガイスト事件』は新聞やなどに取正され、たちまちシープクレスト中に広がるといろいろな噂も囁かれ始めた
「宇宙人の実験説」「透明な魔物説」「周期的な悪霊の発生説」「ヘザー決起説」「政府の陰謀説」「ブルーフェザー黒幕説」などなど様々だ
そしてその後、当然ながらブルーフェザーはこの『連続ポルターガイスト事件』の解決のために捜査を開始する

シープクレストのとある喫茶店
「何回サボりゃ気が済むんだてめぇは!!」
店内では店長らしき男とバイトの青年が口論をしている
「店長、ホントに記憶が無いんですよ」
「言い訳はいいんだよ、てめぇはクビだ!!」
バン、ガラガラガラ
店長らしき男に突き飛ばされる青年
「いてててて(これで何回目だったかな〜またバイト探さなきゃな〜・・・・・ハァ)」
トボトボと歩き出す青年、彼の名はシュウ・アークス、エンフィールドへ移る前彼はシープクレストにいたのだ、
そして今日もまたバイトをクビになった。しかしそれが本人格の出現によるものとは知る由も無い
「(あ〜明日からどうしよう・・・・)」
シュウはそんなことを考えながら歩いていた。と・・・
ドンッ
「きゃっ」
「あっと、ごめん」
誰かにぶつかったシュウ、青く長い髪を一つにまとめた少女、フローネだ
バサ、バサ、バサ
「大丈夫かな?ちょっと考え事してて、ああ本が落ちちゃった」
本を拾いフローネに渡すシュウ
「あっ、はい大丈夫です。それじゃあ急いでるんで」

翌日
「ルシードさん、被害にあった場所の共通点が見つかったわ」
駆け込んで来たのはメルフィだ
「で?なんだその共通点ってのは」
メルフィは書類を開く
「今までの事件で確実に被害にあってる人がいたわ」
「どういうことだ?」
と、ゼファー
「どうやらその人が行った先々で事件が起こっているみたい」
「メルフィそいつの住所は?」
「それが、その人少し前から行方不明らしくて」
その言葉に難しい顔をして何かを考えるゼファー
「とにかく住所教えろ、行ってみるしかねぇだろ」
「それじゃあ、ここよ・・・・・・・・・・」

その男の家
「ここか」
「なぁ、ルシードどうせここにはいないんだろ〜」
「あ?可能性をあたるのは捜査の基本だろうが」
「そうよビセットくん」
家へと入っていくブルーフェザー
「うわっ、ひどいねこれ」
声を上げたのはルーティ
「ほんとひどいわね、ミッシュベーゼンとかといい勝負ね」
家の中は荒れ果てていた、そう、ポルターガイスト現象が現われたように・・・・・
「とりあえず近所の人にでも話を聞くか」
という訳で、偶然通りかかった近所のオバさんに話を聞くブルーフェザー
「悪いが、この家で何があったのか知らないが」
ルシードの質問に早い口調で答える、典型的なオバさんタイプだ
「知ってるも何も、いやね、なんか毎日ガタガタうるさくて、
それにあの人『呪いの子』だとか『化け物』とか大声で、こっちは眠れやしないよ、最近は静かになったんだけど」
「『呪いの子』『化け物』?」
「どういう事でしょうセンパイ?」
「あ?わかるかよ」
そんなブルーフェザーをよそにさらに続けるオバさん
「なに、あの人何かしたわけ?教えてよ、協力したでしょ?」
「あ?捜査の内容を教えられるかよ」
その後ルシードたちはしつこくオバさんに付きまとわれたらしいがなんとか振り切り事務所へと辿り着いた

ブルーフェザー事務所
「ご主人様、おかえりなさいですぅ」
「ルシード、帰って早々悪いが例の事件で気になることがある」
ゼファーが難しい顔をしている
「あ?気になること?」
「これだ」
そう言うとゼファーは一つの書類を取り出す
「なんだ?未解決事件報告書?」
「そうだ、そしてこれは七年前に今は無くなった小さな街で起こった事件だ」
「無くなった?どういうこと?」
と、バーシア
「うむ、その町の住民は大半が殺されたのだ、ある一人の少年によって」
「マジかよ」
「その少年には魔法とはまた違う得意な能力があり、それを恐怖した住民はその少年を集団で迫害したらしい」
「ひでぇな」
ルシードが一言、そしてゼファーは続ける
「そしてその少年は自分を迫害した人間を含め街の住人を惨殺、逃亡したらしい」
「それでゼファー、その事件と今回の事件がなんの関係があるんだ?」
「うむ、全てのポルターガイスト事件に遭遇した例の男はその町の数少ない生き残りらしい」
「あ?まさか」
ルシードは大体分かったようだ、さらに続けるゼファー
「恐らくは復讐だろう、その少年は当時10歳だから今は17か」
「ゼファー、そいつの顔写真とか無いのか?」
と、また書類を取り出すゼファー
「これだ、名前は亜楠 愁。街で唯一の剣術道場、亜楠流剣術道場を開いていた亜楠家の一人息子だ」
その写真を見てフローネは驚愕する
「この人、たしか前に!!」
「あ?フローネ知ってんのか?」
「はい、昔と変わってるけど確かにこの人です。たしかあそこの喫茶店で、でもまさか・・・」
「よし、フローネ案内しろ!!」
そう言うとルシードたちは再び外へと飛び出していった

とある喫茶店
「んっああ、あのサボリ魔ね」
「あの、名前とか住所、わかりますか?」
と、フローネ
「名前はシュウ・アークスとか言ってたな、住所は・・・・・・だったかな」
「シュウ・アークス・・・亜楠 愁、間違い無いですね、でもあの人が人を殺したなんて・・・・」
「行ってみるしかねぇだろ」
そしてブルーフェザーは教えられたシュウの家の住所へと向かった、そして
コンコンコン
「はい、誰〜?」
ガチャ
「保安局の者だが、シュウ・アークスか?」
とりあえずルシードは今使っている名前を使う
「ええ、そうですけど?」
「『連続ポルターガイスト事件』知ってるな?」
「そりゃ、まぁ」
「それじゃあ、この男を知ってるな」
そう言うとルシードは例の男の写真を出す
「いえ、知りません、誰ですか?」
「あ?しらばっくれるんじゃねぇよ」
シュウに掴みかかるルシード
「センパイ、落ちついてください」
「そうだよルシード、落ちつきなって」
ルシードを止めるフローネとルーティ
「ルシードさん、ね、噂には聞いてたけど乱暴な人だな〜・・・あれっ?あなたは?保安局の人だったんですか」
「ええ、まぁ」
「そんな事はどうでもいいんだよ、亜楠 愁!!」
ルシードの言葉に少し驚くシュウ
「懐かしい名前を知ってますね〜、とにかく俺はなんにも知りません、それじゃあ」
バタン
「明らかに怪しいね」
バーシアが呟く、そしてルシードが続く
「たしかにな、よし今日は張り込むぞ」
この言葉に当然ながら文句を言うビセット、ルーティ、バーシア
「え〜!!マジかよ〜」
「張りこみ嫌〜い!!」
「めんどくさいわね〜」
そしてルシードの鶴の一声でそれら文句を無視し張り込みをする事になったブルーフェザーだった

そしてその晩
「どうだ、なんかあったか?」
《いえセンパイ、こっちは何も》
通信機で定時連絡をしているルシード
「お、おいルシード」
突然ビセットが声を上げる。
「おい、どうなってんだよ」
《どうしましたセンパイ?》
「おいフローネ、お前たちもこっちに来い、急げ」
なんとシュウの家の前で、男が10メートルほど宙に浮いているのだ、その下にはそれを見上げて笑っている青年がいる
「・・・・クククク」
「やめてくれ、頼む、許してくれ!!」
よく見るとその男は全ての事件に遭遇し、その後行方不明になっていた男だった
「あの時の事は謝る、だから許してくれ!!」
「・・・・もう遅い」
その青年がそう言うとその男は目に見えない支えを失い地面に激突する
「た、助け・・・・頼む・・・」
重傷を負いながらも必死に逃げようとする男をあざ笑うかのように青年は口を開く
「・・・まだ息があるのか、楽にしてやる」
男に刀を振り下ろさんとする青年、そこでルシードが声を上げる
「やめろ!!保安局だ」
青年はルシードの言葉に刀を止める
「・・・昼間の奴か、たしかルシードとかいったか」
近づいてきた青年、その顔はまさしくシュウだ、だがその眼光は凍ったように冷たい
「てめぇ、やっぱり」
と、ルシードたちと合流したフローネが口を開く
「まさか本当に!!・・・・でもセンパイ、なにか様子が違いますよ」
「でもよ、間違いなくアイツだろ」
そのルシードの言葉に反応し、シュウが冷たい声を放つ
「・・・・俺をアイツと一緒にするな」
そしてシュウがそう言った瞬間、ルシードたちの体が動かなくなる
「なっ?!体が」
「なんだよこれ!!」
「これって魔法?!」
そして動けないルシードたちに冷たい笑みを浮かべ近づいてくるシュウ
手に持った刀、7年前に街の住民を斬った『水幻』が街灯に照らされ鋭く光る
「やべぇぞ!!」
「ルシード、あんた何とかしなさいよ!!」
「・・・・フッ、無駄だ」
そう言った瞬間、シュウは頭を抑えて苦しみ出した
「なっ・・・・ぐぅぅ・・・」
「あ?どうしたんだアイツ」
「・・・時間か・・・力を使いすぎた・・・・」
そう言うとシュウの姿は跡形もなく消え去り、その瞬間ルシードたちの体も動くようになった
「アイツどこへ消えやがった」
「ルシード、アイツたぶん自分の家だよ、早く踏みこもうぜ」
こういう時は大はしゃぎのビセットだ
「ああ、いくぜ!!バーシアとフローネは怪我人を頼む」
「へいへい」
「分かりましたセンパイ」
「いくぜルシード!!」
「おう」
そしてシュウの家に踏み込むルシード、ビセット、ルーティ
バタン
他人の家の扉をぶち破るルシード
「うわぁ、なんですか?!いきなり」
「ブルーフェザーだ、魔法犯罪容疑で逮捕する」
「ちょっと、そんな魔法犯罪なんてむちゃくちゃな、俺は魔法なんか使えないし、第一に証拠はなんですか!?」
「観念しろよ〜、証人がいるんだよ」
得意げにビセット、当然反発するシュウ
「証人?誰が!?」
「あたしたちに決まってんじゃん」
と、ルーティ、そしてルシードがシュウに手錠をはめる
「あっ!!ちょっと・・・・」
「おら、さっさと来い、本部に連行するぞ」
こうしてブルーフェザーは『連続ポルターガイスト事件』の容疑者、そして魔法を行使した殺人未遂容疑でシュウを逮捕した

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