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悠久幻想曲 ORIGINAL ALBUM

ANOTHER ONE『火元はマリア?……いいかげんにしてくれ』

魔龍銀

その日の一日の始まりは、俺にとっての厄災の一日の始まりといってもよかった。
最も俺はどこに行っても常に厄災に見舞われているのだが(すでに諦めてる)、あいつらにかかわると何故かそれがさらに悪化してしまう。
その日は、俺が記憶を取り戻してから一週間後だった。
あの日から俺は、極力シーラを避けていた。
だってな、下手にフィセアを意識しちまうし……それははっきり言ってシーラに失礼だしな……
とまぁ、そんな感じの堂々巡りの考えが続くせいでシーラとしゃべるとどうしてもぎこちなくなってしまう。
でも、それもはっきり言って自業自得でシーラに失礼なのはかわりがない。
とっとと考えをまとめなきゃな。
はぁ……まぁ、そんなこと(でもないが)は置いといてアリサさんのご飯でも食べに行くかな?
ちなみにルシード達だがこのジョ−トショップにいる。
あの、シャドウの馬鹿が彼らを狙ったのだむしろ手元においておいたほうがいい。
……向こうには、フィセア達がいるとはいえ彼女たちよりも俺の方が強いし確実的に安心だ。
そこまで考えていたとき、ドガァ!と、下から物音がする。
どうやら扉が乱暴に開けられたらしい、それも玄関の……
何事かと覗いて見るとマリアの家の執事さんがすさまじい形相でアリサさんに何かを聞いている。
最も、あの形相で迫られてにこやかに返しているアリサさんもさすがだが……
やはり、彼女はどう考えても只者ではない。
いや……少しだけ、あの娘(これの作者が書いている月天な)と似ているところから考えてみると……もしかしたら、先天的な物かもしれんな。
……それはそれで、ある意味恐ろしいが……
まぇともかく、マリアには関わらないに越したことはない。
はっきり言って、マリアに関わってろくな事にあったためしがない、なら、勿論、今回もそうなのだろう。
俺は、部屋からでジョ−トショップのテ−ブルがある部屋……ようは、リビングまで移動した。

そこにはすでにご飯が用意されていた、俺は執事さんを半ば無視した状態でご飯に手をつける。
ちなみに、すでにルシード達はこのジョ−トショップでの仕事に行っている。
働かざるもの食うべからず……てね。
「頂きます」
さっとご飯を持ってぱくりと食う。
うん、やはりアリサさんの料理はうまいなぁ。
とか考えながらゆっくりとご飯を平らげていく。
お、今回の味噌汁はカツオ出汁か?
「ああ、マリア様がいなくなってしまった〜〜!」
執事さんが俺の方をむいてなんか言っているが無視。
黙々とご飯を食べ続ける。
うん、この魚おいしいな。
焼き加減もいいし。
流石アリサさん!エンフィールド一の料理人!!
などと、心の中で絶賛してみる。
「ああ、旦那様も血眼になって探しているというのにぃ〜〜!!」
かなり芝居がかった調子で言う、で、俺はというと。
う〜ん、卵をかけて食べようかな?それとも納豆がいいかな?
と、思案していた。
「こんなときこそどなたがすばらしい方が助けてくださらないか〜〜!?」
などと今だに叫んでいるが俺は……
よし、今日は納豆にしよう。
とか、考えていたりする。
「魔龍殿ぉ〜〜〜〜!」
恨みがましく執事さんが俺に迫ってくる、俺はご飯を食べながら。
「はっへほ、ひはおはんはへへひふんははら≪まってよ、今ご飯食べているんだから」」
などとご飯を食べながら言う。
そこへすかさずアリサさんが言う。
「魔龍君、ご飯を食べたまましゃべっちゃだめよ」
「ごっくん、ふう、すいません、アリサさん」
だが、どうやら元の俺に戻ったとしてもアリサさんへの言葉づかいだけは何故か変わらないらしい。

「んで、執事さんマリアがいなくなったてどういうことだ?」
俺は、仕方なく手伝うことにした、このままアリサさんに迷惑をかけさせるわけにはいかないしな。
「それが……朝起きたら忽然と……」
「……わかった」
その言葉だけで大体の概要を理解する。
どうせ……
「こんなところだろう?執事さん。マリアが朝起きたらいなくなった、んで、ジョ−トショップに来ているかと思って尋ねた、それでアリサさんに聞いてみたら知らないという、で、俺がよからぬことを考えてマリアをどうにかしたと考えあてつけで飯の邪魔をした……ピンポイントだろ?」
「ぐぅ……」
……ジャストヒットだったらしい。
俺は苦笑した。
第一、 シーラやパティみたいな美女ならともかくマリアのように……言い方は悪いが、まだ発展途上中の娘をどうこうするつもりなんざ俺にはねぇ。
……無論、シーラやパティ相手でもそんなことはしないが……
それに、マリアはどちらかと言えばたちの悪い妹だ。
ちなみに、リサやエルが抜けているのは理由がある詳しいことは省かせてもらうが……
「安心しなよ、これでも漆黒の騎士と呼ばれた男だ、態度はまともだから」
漆黒の騎士……全ての世界でこの名は有名だ。
出で立ち不明、身元不明、神出鬼没でしかも完璧主義……謎のベールに包まれた存在。
ただ、この世界には間違えなく始めて来たから通用しないが。
じゃないと話さないし。
「すいません……一時でも魔龍さんを……」
「気にするなよな。んで、マリアをさがしゃあいいんだろ?」
俺はそういいながらため息をついた。
あのじゃじゃ馬が自立してくれるのはいつなんだろうねぇ?

ま、そんなわけでとりあえず俺はテディを伴いなんとなくマリアを探すことになった。
二人で決めたところ夜鳴鳥雑貨店に向かうことになった。
その途中でさらに厄介そうなのに出会うことになるのだが……
「あ、魔龍さん、やっほ〜!」
と、元気よく走り出してきたのはトリーシャだった。
トリーシャは俺に駆け寄ると当然の如く好奇心旺盛な顔で聞いてきた。
「何しているの?」
「魔龍さんと一緒にマリアさんを探しているっス!」
何か言おうとしたときテディによって遮られた。
俺がまた何か言おうとするが……
「へぇ、マリアちゃんを探しているの?彼女なら夜鳴鳥雑貨店に向かっていたような……」
今度はトリーシャによって遮られる、つくづく俺をしゃべらす気はないらしい。
ので、俺は黙ることにした、いちいち反論しているのはめんどくさい。
「……………………」
場に流れる一瞬の異様な沈黙。
この沈黙を破ったのは他でもないトリーシャだった。
「あ、あの……どうして黙ってるの?」
「いや、なんとなくしゃべりだすタイミングをはずした」
「間抜けっス」
「何とでも言え」
俺にしては珍しく投げやりに言う、なんとなくここ最近余裕がなくなっているような気がしないでもない。
それはシーラの件が今だに俺の中で大きくのしかかっている証拠だった。
「それじゃあな、トリーシャ」
「あ、うん、また」
トリーシャは少し残念そうに俺の背中を見送った。

「で、森の方に向かった、と?」
「そうだ」
夜鳴鳥雑貨店の店長は俺にそっけなくそう答える。
しかし……
俺は、思わずマリアの買ったものの内容を見て、冷や汗をかいた。
それは、俺の知識で言うところの『錬金術』のための道具だった。
しかも、高レベルの魔術技量を必要とするものだ。
最も、今の俺がこの程度の魔法を使用しようと思えば片腕ひとつで簡単にできるが……
「ありがとう!おじさん!」
俺はそういいながら、大急ぎで森に向かった。

「え〜と、ここをこうして……それで、こうして……」
俺がついたとき、最悪なことに彼女の前には魔方陣が完成していた。
しかも、かなりのスペルが間違ってるゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!(滝汗)
その上これは錬金魔術じゃないぃぃぃぃぃぃ!!!
「まてぇぇぇぇぇぇ!頼む、待ってくれぇぇぇ!!マリア!!」
俺は、大急ぎでマリアの下へと駆け寄った。
しかし、結局間に合わないことになる……
「よ〜し、え〜い☆」
ボガァァァァァァァ!!
しまった、遅かったか!
最も恐れていた事態が今目の前で起きていた。
この錬金魔法は何ともとんでもないことに一歩間違えると精霊召還魔術へとつながる。
しかも、マリアが使ったのは間違えなくその精霊召還の儀式の中でも最悪に連なるものだ。
そして……召還したのは……
「我を呼んだのは貴様か」
そう言いながらマリアをねめつけるように見る。
マリアはその迫力のため言葉が出てこない。
当たり前だ!奴は……邪精霊王『カオス・リミテッド』だ。
しかし、厄介なのが出てきた。
「ちげぇよ、俺だ」
そう言いながら、俺はマリアの魔力の波動に自分の魔力の波動を合わせる。
奴は俺の魔力の波動を見、確かに……と、うなずいた。
「汝の目的は何だ?」
厄介なことになったな……
でも、しかたねぇあわせるか……
「てめぇとの契約の為だ」
ちなみに、俺は自分が素に戻っていることに気づいていた。
最近は口調が少しずつ丁寧になっているとはいえ戦闘では素に戻ってしまう。
まぁ、そんなことよりも……
「で、当然、代償はねぇんだろうな?」
こう言う、精霊との契約の時には代償はない。
なぜなら、その契約自体が代償だからだ。
詳しいことは省く。
「当然だ、主よ……我と汝は契約せり、主の名は?」
「カオスティック・シルバーだ」
こう言う契約のときは本名を使わなければいけない、そのため本名を使った。
最も……魔龍 銀も本名だが……
はっきり言って契約とかの時は、魔龍 銀は使いたくない。
「主の名は……カオス…ティ…ック…シル…バー……様!?」
「おぅ?俺の名前、もしかして知ってる?」
しまった……(汗)
俺の存在を知っているものはこの世界ではニューとフィセア位のものである、と思ったが……
甘かった、はっきり言って俺の正体は知られたくない。
それに、おいそれ正体をばらしてしまっていいような安着な正体じゃない。
「なぜ、そのようなお方がこの私め程度と契約を!?」
「いやぁ……ちょっと、どっかの馬鹿の尻拭いをしなければいけないんでね」
ここまで言ってしまったら隠す意味がない、相手が俺の正体を知っているのならば俺に突っかかってはこないだろう。
ちなみに、どっかの馬鹿とはマリアのことである。
……ある種天才かもしれないが。
なんてったって、本来失敗しても下級の魔族しか呼び出せない物なのに最上級の精霊を呼んだんだから。
まぁ、んなことはどうでもいい。
ともかく、その様子にカオス・リミテッドは深々とひざまずいた。
「わかりました……ですがあなた様と契約はできません、私達精霊はあなたにじゅんじる者です……」
「おいおい、いつから精霊は俺を信仰するようになった?第一、お前たちが尊き者は無と同一の存在だろう」
……自分で正体をいっておいてなんだが。
「無を従えているお方に我らが殉じるのは定め……わが主、無限なる時を駆ける王よ……私めの力が必要となっとき及びください」
「わかった、だが呼び出すときはリミットで呼び出す、いいな?」
「ハッ……」

かくて、俺に新たなる精霊、邪精王カオス・リミテッドが加わった。←なぜに……

「魔龍、あんたって……なにものなの!?」
硬直状態を続けていたマリアがリミットが消えたことでどうやら硬直が解けたようだった。
無論、第一声はこれであったが……
「う〜ん……何者なんだろうなぁ……」
事実、俺はどんな存在かなんて考えたこともなかった、ただいえるのは……
「ともかくすごいんじゃない?」
だった。

でも、勿論それでは終わらない。
「それはともかく、マリア……」
俺は、こめかみのあたりを抑えつつ瞳を閉じる。
俺の声色に気づいたか、マリアがあははは……と虚しく笑う。
「お前……俺がこなかった場合どうするつもりだったんだ?」
いつになく強い口調で俺は言った。
マリアは分かっていないが、錬金術とは必要以上に危険なものなのである。
たとえ成功したとしても人の魂をすうものだってあるのだ。
先ほどは、カオス・リミテッドのように比較的大人しめの精霊だったからよかったものの……これが、荒くれ者の精霊だったら命はなかっただろう。
「えっと……」
「マリア、これだけは覚えておいてくれ」
マリアが何か言うより先に俺は言った、その真剣な口調にマリアも押し黙る。
「錬金術はなぜ完成しなかったか……なぜ、禁呪にしていされているのか……分かるか?」
「えっ……?」
突然言われたことに彼女は困惑する。
俺は淡々と説明していく。
「あの魔術は人間に必ず害を及ばす魔術なんだ……時には人の命をとりかねないものだ」
「!!!」
あまりにも唐突な言葉にマリアも一瞬唖然とする。
「魔術や魔法はとはな、必ずしも人を幸福にするものだけとは限らないんだ。それは、あらゆることにいえる」
……大きすぎる力は特にな。
心の中でそう付け加えつつも表面上では静かに言葉をつむぐ。
「でも……でも、マリアは魔龍達のために」
なるほど……
ジョ−トショップはお金に困っている、だからか……
「大丈夫だよ、マリア。最新請求は必ず通らせてみせるから、信じてくれないか?」
俺は微笑みながら言う、マリアはそれに小さくうなずいた。
「うん……それと、心配かけてごめんなさい……」
……どうやら俺は、みんなのためにも再審を通らせなければいけないようだ……がんばらなきゃな……

END!!

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