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悠久幻想曲 ORIGINAL ALBUM

第八話『集う時……』

魔龍銀

冷たい風がエクイナス山に吹く。
エクイナス山の山中は不気味なほど静かだった。
それだけではない、静かなのはシ−クプレストも同じだった。
まるで時が止まっているかのようだ。
「クッ……何とか間に合いましたね……」
そんな中、一人の男がエクイナス山にいた……いや、一人ではない。
よくよく見てみれば回りには複数の人間がいた。
「しかし……一体何が起こったんだ?」
長身の長髪茶髪の男―――ゼファ−が最初に言葉を発した蒼銀の髪の男……ニュ−に聞いた。
「簡単な事ですよ。シ−クプレストの時間が凍結したんです。それも、一瞬で」
忌々しそうにそう言うニュ−……
その言葉に肩で髪の毛を切りそろえた女……メルフィが驚きの声を出す。
「なんですって!?」
「ほえ〜?ど〜いうことなんですかぁ」
桃色の髪の毛が特徴のS級危険種族の魔物のヘザ−……ティセがニュ−に聞く……
まぁ、最も言葉の意味がわかっていないようだが……
「ともかく!急いだ方が良いんでしょ!」
金髪の短めの髪の毛の女の子……シェ−ルが勢い込んで言う。
その言葉に苦笑しながらも頷くリ−ゼ。
「そうね……お兄さんにも……」
……ニュ−も真剣な顔で頷きながら言った。
「そうですね……魔龍さんに伝えなくては……」
彼にしては珍しく沈鬱な顔で言った。

で、その頃……俺はと言うと。
「だぁぁぁぁぁ!どうしていつもお前はそう言うことをするんだぁぁぁぁぁ!?」
「わぁぁ!ごめんなさいぃ!」
と、言いながらマリアと追いかけっこしていた。
何故かマリアのやったことを尻拭いする事になった俺……いつもの事ながらたまりにたまっていた物が遂に切れた。
……て、訳でもないんだけど……唐突に立ち止まり、俺は溜息を吐いた。
「はぁ……何故俺がいつもいつもいつもいつもいつもいつもぉぉぉ!!尻拭いをせにゃあならんのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
口にして言うと更に虚しくなってくるのだった。
思わず片手で顔を抑えてしまった。
その様子を心配してかマリアが近づいてくる。
「大丈夫?魔龍……」
と、言う言葉に……
「誰のせいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
思わず大声を出してしまう俺だった。
むしろ虚しくなっていくのは何故?(T_T)

マリアにきっつ〜〜いお仕置き(魔力完全封印)を施した後のことである。
「ん?」
いきなり現れた強大な力に俺は反応した。
まるで、この世界のどこかの一つの街を強大な……それも邪悪な力が覆っているようだ。
それは、かなりの距離があるがはっきりと感じた。
そして……この力は……!
「デスピアーか……」
俺は非常に焦った、ええ、もう、無茶苦茶焦りましたとも!
何故って?今の俺には対抗手段がないからだ。
どんなにあがいても勝てるわけが無い。
そこまで実力に差が出ているのだ。
て、言うよりもあまりにも力が出し切れないのだ。
まず、俺自身が封印をかけているのは以前にも説明したと思う。
しかも、現状の状態ではどうしようもないのだ。
こりゃあ、早く奴の穴の部分を取り戻さないとな……
それに、悪い予感がする……
一抹の不安を残したまま、俺はジョ−トショップへの道を歩き始めた。

「ただい……」
ジョ−トショップ前の扉。
俺は、ジョ−トショップのドアをあけて中に入ろうとした。
勿論、お約束の中に入るための言葉付きで。
だが、それは意外な人物によって邪魔された。
「やっほぉ♪おっ久しぶりー♪魔っ龍ぅ君♪」
「なっ!?」
金髪のベリーショートの髪の毛……シェールだ。
中を良く見てみれば、ニュー、フィセア、ゼファー、リーゼ、ティセ、メルフィ、更紗も入る。
よく見てみれば、みんな表情が少しだけ沈んでいる。
特に、ニューは酷かった。
まぁ、シェールは大して変わっていないが……
「ど、どうしたんだよ、お前ら……?」
俺は、あまりの事に唖然、もしくは騒然としてまい言葉がそれしか出なかった。
て、いや、まさかっ!?
「ニュー!まさかシークプレストは……」
「やられました……デスピアーに……!!」
「なにっ!」
では、もしかして先ほど感じたあのエネルギーは……!
「おそらく、お考えの通りだと思います。……時の凍結です」
悔しそうに囁くニューの言葉に、俺は唇を噛み締めた。

「ブルーフェザーの面々だけでも守れたか……」
「ええ……ですが、それ以上は……」
「そこまでは期待してないよ。残酷だけどあいつ相手なら俺が出ないと無理だからな」
それも、本気のな……
この言葉は口に出さなかった、なぜならそれは結局対抗手段が無いのと同じだからである……
だが……
「おかしい」
「えっ?」
俺は一瞬で浮かんできた疑問を口にしていた。
そう、おかしいのだ。
奴の目的はあくまでフルパワーの俺一人。
それ以外には興味が無いのだ。
なのに今回の行動――――
あまりにも信憑性が薄すぎる。
更に、奴の性格から考えてもはっきりいって今回の行動はありえない。
目的すらもわからない。
そして、奴は目的もなく行動はしない。
「……悪い、少し考えさせてくれ」
俺は、そう言うとニューに背を向けた。

ヒュウウウウウウウ……
美しいフルートの音が響き渡る。
一つの旋律が誰もいない山に響き渡る。
その音は、しばらくやむことなく続いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こうすると、どうしてか心が落ち着く……
口からフルートを離し、瞳を開ける。
そして、俺の瞳に美しい山が映った。
「ふう……」
俺は、一つ息を付くと物思いに耽った。
珍しく気が重い。
あれから、何時間たっただろうか?俺は、今、何曲引いただろうか?
それすらも分からないほど、俺は一心に笛を吹いていた。
人間の……得に俺達プレイヤーの考えはいまいち真実みに欠ける。
故に、俺すらも奴の行動は読めない。
だから、いかにしようとも確定的に物事を決め付ける事が不可能なのだ。
「………………」
いや、そもそも俺の力量不足のせいもあるだろう……
しばしの時、重い沈黙が流れる。
(考えてても仕方ないか……行動あるのみ、だな)
俺は、頭を大きく振り次にパンっと顔を叩く。
そして、いつもの表情に戻りザッと体を返すとエンフィールドへと向かった。
自らを鍛え直すために……

「……はぁ!!」
「クッ!!」
そして、戻って早々俺は修行に明け暮れた。
相手は、自警団第三部隊隊員草薙 翔とシークプレスト保安局第四捜査質室長ルシード……そして、聖騎士セシル=ハーヴィである。
三人には仕事の合間を縫って無理に稽古をつけてもらっているのである。
もう一つ、一人だと相手にならないから、というのもある……失礼かもしれないが。
ただし、セシルだけは別口である。
二人の剣げきをかわしつつバクテンし後方へと逃げる。
「コロナ!!」「ヴァニシング・ノヴァ!!」
それを、逃がす物かと魔法で攻撃をしてくる。
俺は、抜いていた剣をしまい両手に爆発的な魔力をためた!!
「ツイン=ゼラス・ブリッド!!」
両手から噴出す魔力!!
「展開!!」
ブワッ!!展開したその魔力が、二つの魔法を同時に相殺させる!!
だが、それは予測していたのだろう、即座に攻撃に移っているルシードと翔。
(まずいっ!二人同時はやばい!!)
俺は、そう判断すると天空剣を抜き空中へと身を躍らせる。
だが、丁度俺が降り立ったその場所に銀色の影が迫る!!
(しまった!!)
ちゃき……
静かに俺の喉元に突き出される美しい剣……
「セシル……」
「君が油断するなんて、珍しいね」
「……そうだな」
相手が常に何処に伏兵を張っているかはわからない……そう言いたいのだろう。
そして、それをかつてのセシルに教えたのは、皮肉な事に今、剣を突きつけられている俺だった。
「参ったな……降参だ」
剣を腰の鞘にしまいながら両手を挙げる、俗に言うお手上げ状態だ。
しかし……
「本当にこのままじゃ駄目だな……」
「そうだね。」

「とは言え、やっぱり並の強さじゃないよ」
「そう、か?」
「うん、力を完全に戻していない状態にしては、ね」
セシルは改めて苦笑を漏らしながらそう言った。
それに俺も苦笑を漏らしながら答えた。
「お前……それ以上強くなってどうするんだよ?」
脱力した面持ちで翔が俺に話しかける。
その言葉に、意外にあっさりと俺は答えた。
「一つの街を救う、それだけが理由だ」
その言葉に、彼もまた苦笑の笑みを浮かべる。
おっと、ちなみにセシルの技量はリカルドを遥かに凌いでいる。
当たり前だ、伝説の聖騎士“セシル=ハーヴィ”を倒せる者など、本当の力を取り戻した“漆黒の騎士”……その位にいる者達だけだ。
……つまり、現状では彼を倒せる存在はほとんどいない……て、その例外がこの世界に集まっているからかなり意味が無いんだが……
「で、どうするんだ?」
今まで地面にへたり込んでいたルシードが話しに入ってくる。
ま、確かに現状では何も出来ないだろう。
「六神王と、聖騎士を探すのが、やっぱりベストだろう、ね」
歯切れ悪くそう言う彼に俺も多少言葉を濁しながら言う。
「……そうだな、また、集めるか」
「おいおい、そもそも、六神王と聖騎士ってなんだよ?」
翔が苦笑を交えながら俺に聞いてくる。
だが、俺は首を振ってその言葉に答えた。
「知らない方が良いさ……神の領域の話しなんてね」
「……よく分からないが、大変な事なんだな?」
「そうだね」
セシルもその言葉に答えて苦笑する。まぁ、当然だろうが……
そう、知らない方が良いのだ、あんな馬鹿げた神と魔の最終戦争のことなど……

「ふぇ〜……やっぱ始まっちゃったんだ……」
「トリーシャ?」
今回の当事者であるメンバーの一人……幻王リディア=ハイウィンドウの転生体である少女、トリーシャ=フォスターが突如俺の後ろから話しかけてきた。
その様子に俺とセシルは驚愕しながらも言葉を返す。
今まで話していながら全然気付かなかったのだ。
これは一般的には問題がないが俺達にとっては大ありだった。
そもそも、俺やセシルを全く気付かせないで歩くことなんて不可能である……が、一つだけ方法はある。
それは……
「トリーシャ……穏隠使った上に魔力措置で気配をたったな?」
「あははは、やっぱりばれちゃった?」
俺のじと目で言った言葉に冷や汗を流しながら答えるトリーシャ……全く、こう言うところまでリディアに似るのかよ……
とことん降臨覚醒が厄介だと思い知る俺。
……ふとしたことだが、ティナ(ワールドクエスト〜異世界への探求〜参照)の事は思い出さないでおこう。
いや、結構いろんなことがあってね、たははは……
「……魔龍、今、ティナ……僕の妹のことを思い出したでしょ?」
「(ギクッ)さ、さぁな?何の事だか俺にはわかんないなぁ?」
セシルの言った、非常にドキッとする言葉に身を硬くしながら俺は冷や汗気味に答えた。
さ、流石俺の親友……
「誤魔化しても駄目だよ、だって君とティナ(にやり)」
「そう言えば、そうよねぇ〜(にやり・ムカッ)」
「勘弁してくれよ(泣)」
流し目でにやり、とやるトリーシャ(こっちは青筋も立っている)とセシルに半泣き状態で懇願しながら俺は言った。
だって二人とも目が無茶苦茶笑ってるんだもん。
それはともかく、と、気を取り直した俺は真剣な表情で言葉を紡ぐ。
俺の表情に気付き二人とも雰囲気を変えて俺の話しに真剣に聞き入る。
「……さて、セシル、トリーシャ。六神王は勝手に集まってくるんだよね、時が至れば」
「ああ、その通りだよ。前回もそうだったしね」
「……僕みたいに、エンフィールドにいるってこともあるしね」
二人とも難しい顔をしながら俺の言葉に答えた。
しかし、とことん厄介な話である。
なぜなら、自然に集まるのであるから人為的には集められないのだ。
「ま、それまではがんばるしかないか……」
「そうだねぇ、もう時期ティナも来るだろうし♪(にやり)」
「そうだよね〜もう時期ティナも来るだろうし♪(にやり)」
だから止めてくれよ(泣)
一瞬泣き言を言いそうになったが、とりあえず閉めだけはきちんとしなきゃなな……
「とりあえず、この事は俺とセシルとローザそれに、トリーシャ……そして、シーラと俺だけの秘密ってことにしておこう」

その数時間前……ローズレイク。
そこには一人の少女が静かに湖畔を流れる水を見ていた。
うららかに流れる水が美しい旋律となり人々を睡眠へと誘う。
美しく、静かに流れる水の音に耳を傾けながら、少女―――ティナはぼんやりとしていた。
あの一件以来俺とはここに来ていないなぁ……などと、考えながら。
「はぁ……」
俺(とは言え、当の本人は今だに気付いてないと言う)を好きになって早一年と半……
その間にあまりにもライバルが増えすぎた……その考えは、ここ、エンフィールドに来てから更に重くなっている。
ふと、思い当たった事にティナは自分の口の中に指を入れ以前は鋭利な刃と言っても過言ではなかった八重歯に触れてみる。
今はもう、普通の歯である自分の歯を……
「魔龍さん……」
ポツリとつぶやくように言ったその台詞は風に乗って消えた。
「キョーッキョッキョッキョッ!!」
ふと、何かがティナは遠くから聞こえたような気がしたが無視した。
「キョーッキョッキョッキョッ!!」
その声は、だんだんと聞こえてくる距離が近くなってくる。
「キョーッキョッキョッ……!!」
「うるさいわよ!!」
突如豹変したその様子にびくりとするケフカ。どうやら、今の一言でいきなり雰囲気が豹変したことに驚いたらしい。
当然だ、ティナのもう一つの人格“アリス”の事は俺とティナ以外は誰も知らないのだから。
「な、なんですか!この僕チンに……(以下略)……略すなぁ!!」
「うるさいわねぇ!!こっちが感傷に浸っているって言うのに!少し黙りなさい!!」
怒鳴るアリスだが、あのケフカがここで引くわけが無い。
「そっちこそ……オトナシクオレニアヤツラレルンダナ!」
「!!」
突如お腹の辺りにきた衝撃波に吹き飛ばされながらアリスとティナの意識は急速に遠のいていった。
「ククク……」
いつものケフカとは違う笑みを浮かべながらケフカは自分の魔力でティナの首に何かを付けた。
それは……
「これで、ボクチンの計画は完璧だ!キョーッキョッキョッキョっ!!!キョっーキョッキョッキョッ!!」
ケフカの高笑いが辺りに響いた。

「……くそっ!拾いたくも無い声を拾っちまった……」
こう言うときは俺は自分の身体能力の高さが頭に来る。
ここはローズレイクのの付近の民家……用は、カッセルじーさんの家だ。
カッセルじーさんは気付かなかったようだがケフカの声が辺りに響いている……全く。
「じーさん、悪いけど急用が出来ちまった」
「ん?そうか、ワシの事は気にするな」
「ありがとう、この埋め合わせは必ずするから」
俺の言葉に苦笑を交えながらじーさんは答えた。
「期待せんでまっとるよ」

「このバカケフカァァァァァァァァァァァァァァァァ!!来てやったぞ!」
「来たんですねぇ!漆黒の騎士!」
とりあえずこのバカの事を叫びながら俺はこのバカがいる場所のところまで来た。
だが、その場にいたもう一人の存在に俺は呆気に取られた。
「!!まさか……ティナか!?」
「ご名答!キョーキョッキョッ!」
「お前!また、操りの輪を……“クラウド”を使ったのか!?」
「キョーッキョッキョッキョッ!流石魔龍 銀!!冴えてますねぇ!」
こ、こいつはぁ!
頭に青筋を浮かべつつ俺は問答無用で特上の魔力を込めてやった……んで、ついでにそれを剣に思いっきりのせる。
「お前はふっとべぇぇぇぇ!!ノヴァ・エンド・オブ・スレッド!!」
スカァァァァァァン!!
いい感じの音がして吹っ飛んでいくケフカ。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
きらりん☆
ザマミロ(笑)
ズドォォォォォオォォォォン!!
……あれ?
……それはともかく。
俺は、視線を地上に戻しティナをゆっくりと見る。
瞳に光は無く、薄暗い色をした目が無気味なくらいだ……
命令はされていないだろうがから……行動はしないと思うが……
俺は、静かに近づく。
だが、彼女は微動だにしない、いや、命令も何も無い今、彼女は傀儡としての力すら持っていないだろう。
俺は、彼女の目の前にいた。
彼女も、俺の目の前にいる。
「ティナ」
静かにそう囁くと、僅かに“ティナ”の肩がびくりと震えた。
「ティナ……」
“ティナ”にもう一度そう囁きかける、優しく……強く。
「ティナ……!」
「う……あっ……」
頭を抱えて頭をいやいやと振る“ティナ”……
「ティッ……!」
もう一度名前を呼ぼうとした俺に、いきなり魔力の塊が降って来る!!
それをバクテンでかわしながら俺は、そのために崩したバランスを整える。
「お前……しつこいぞ!!」
「キョーッキョッキョッ!!あの程度でボクチンを倒せたつもりでいたようですねぇ、けど!!」
ザンッ!と、自らの持っていた魔力の杖を大地に突き刺し俺をねめつけるケフカ……
そして、自らの止めた台詞の後を言う。
「あの程度でやられるほどボクチンは弱くは無いのだ!!キョッキョッキョッ!キョッキョッキョッ!キョーッキョッキョッ!!」
「うるさぁぁぁぁぁぁい!!お前は消えろ!!闇色に染めし 全ての闇の王よ!今汝の力を我に貸し与え 我が前の愚かなる者を滅せよ!!ハーデス・イン・ダーク!!【闇の中の冥王】」
全ての力を使って、俺は凄まじい闇の力を生み出した。
闇の力は、まごうことなくケフカを狙った。
「キョーッキョッキョッ!!このときを待っていたのだぁ!!私を守れっ!!」
「なにっ!?」
闇の力がケフカに当たろうとする寸前……一人の少女がケフカの前に飛び出した。
「ちぃっ!!」
俺は慌ててケフカに向かった魔力を上空に移動させる。
すると、俺の意思に従いハーデス・イン・ダークの魔力はケフカを……いや、ティナを逸れて空へと吸い込まれていった。
「貴様っ!!」
俺は、声を荒げてケフカを睨み付けた。
だが、その睨み付けをケフカはあっさりと跳ね飛ばした。
「ククク……コノワタシニソンナコドモダマシガキクトオモッテイルノカ?」
邪神モードに入りながら奴は俺に笑いかける……
「子供だましだ?ふざけるなよ!!大馬鹿ケフカ!!」
サッと黒神と光王を抜きながら俺はケフカに向かって構える。
そして、叫ぶような言葉を相手にぶつけながら手元の剣に刃を生み出す。
「フハハハハハッ!!オマエニワタシガキレルカナ!?」
そう言うと、ケフカは邪神モードの時の力を解放した。
するすると触手がティナへと向かう。
「ティナ!?」
慌てて救出しようとするが相手の方が距離的にも時間的にも有利だ。
結果……
ティナは邪神モードのケフカの腹に貼り付けられるように浮き上がった。
「………ケフカ………」
俺は手をわなわなと震えさせて怒った。
しばらくぶりである、これほどの怒りを感じたのは……
「俺は、お前を許さないっ!!」

「ククク……ユルサナケレバドウスルトイウノダ?」
ケフカは邪悪な笑みを浮かべたまま俺に話しかけた。
……確かに今の俺に、なす術は……ない。
いや……せめて、ティナだけでもすくわなきゃいけない!!
そう心に決めると、俺は黒神と光王を大きく振りかぶった。
「地雷震!!」
ズガァ!!
俺が大地に剣を刺した時、大地は突然凄まじいまでの揺れを起こした!!
とてもじゃないが立っていられないだろう。
「クッ!!」
「……………」
ケフカは静かに空中に飛び上がった。
その衝撃波が俺をに襲い掛かる。
チッ、やはり愚者でも神の力を持つだけはあるな。
内心舌打ちをしながらも、俺は、奴と同じように空中に飛び上がった。
黒神が煌びやかに光り輝く。
そう、本来の色とは全く違う色に!
だが、奴の羽根とそして、ティナ両手の辺りが紅い炎に包まれる。
「エンジェル・ダスト!!」
「ヴァニシング・ファイア」
ブォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!
二つの赤光が俺に向かって放たれる。
その赤光をギリギリの所でかわしながら手にある剣を構え、突っ込む!!
無論ケフカの前だ。
「クゥ……」
「氷炎倒壊斬!!」
片方の剣から凍える冷気がもう片方の剣から紅く燃える炎が飛び出す!!
瞬間……
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!
まるで水蒸気が爆発したかのように凄まじいまでの一撃が全てを覆い包みこむ。
「チィッ!」
「……………」
ケフカは舌打ちをしながら、煙の外へと慌てて移動し、ティナもそれに従う。
よし!分離させる事には成功したぞ!!
そして、一瞬後……
ブワリッ!と煙の一部がぶれそこから俺が姿をあらわす!
一閃!
ズバァ!
「ぐぎゃあああああああああああああああっ!」
鈍い音が響き辺りにケフカの悲鳴が木霊する。
そう、俺は奴の脇腹の辺りを凪いだのだ。
それを好機と取り、俺は、一気に攻め立てようとする!!
「ケフカッ!!」
「……!?」
「貴様に俺の人を活かす剣【つるぎ】が受けられるか!?」
ふぃぃぃん……
俺の刀が淡く発光する。
その光は俺の魂の色を示すかのごとく強く蒼い光を放っていた。
「行くぞ!!破邪・龍聖流!光四魔闘陣!!」
その光は更に強くなり、全てを圧倒する光を放った!!
これが俺の……心だ!!
「ぐぉ……!ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?消える!?また、ワタシは……!!」
そして……音もなく、ケフカは光の中へと消えた。
残すは……

残すは……ティナのみだ。
俺は、改めて振り返る。
クラウドの効果は命令したものの命令がきちんと終わるまで続く、故に今の彼女には近寄れない。
過去の昔……ティナに使った手は使えない。
理由は簡単だ、先ほどティナが使った魔法の威力にある。
あれは……俺がくらってもやばいくらいの威力だ。
そして、俺か彼女どちらかが犠牲になってはいけないのだ、どちらかが犠牲になれば……必ず、俺たちの仲間は後悔するから。
「ティナ!目を覚ませ!!」
俺は、ティナに向かって叫ぶ。
ティナの美しいはずの赤い瞳が今はどす黒くにごっている。
闇の力に……心を捕らわれている証拠だ。
ふと、突然にティナが両手を自分の胸の前に構える。
……まさか!
「闇来たりて滅せよ
 滅びと共に新たなる光を生み出せ
 ライト・オブ・ダーク」
抑揚のない声で彼女はそう言うと、俺に向かって、無の塊を放つ!
俺は、それは右手で弾く!
「ぐっ!?」
ティナの攻撃とは思えないほど強い一撃だった。
その無を弾ききったと思ったのだが……かすかに視線を手に向けてみる。
俺の手は、黒い皮手袋を破り黒くただれていた。
まさか……これほどとは……
もしかしたら、ケフカよりも強いかもしれない。
しかも……これは……!!
「炎と水よ今こそ混ざり合って対極の力を示さん
 バーニング・アイス」
合成魔法!!無茶苦茶高位な!!
ハイレベルな魔法合成は凄まじく危険で失敗すれば大陸一つを軽く吹き飛ばしてしまう。
しかし……成功すれば、星一つを破壊できるほどの力を下手すれば作り出すこともできる。
ライト・オブ・ダークなんてそれの代表格だ。
だが、ティナ……ティナ=ハーヴィが使う、あれに比べれば……
「ヴァン・ヴィージア!」
俺は出来る限り被害を抑えるために、同じくらいの魔法を放つ。
バチィ!
相殺効果によって双方の力が消滅する。
「目を覚ましてくれ!ティナ!!」
俺の悲痛にすら聞こえる声に、一瞬ティナがピクリと反応する。
だが、それすらも一瞬……ティナはもとの表情に即座に戻り、次の魔法を放つ。
「探求の風
 慈愛満ちたる水
 誇り高き炎
 大いなる母 大地よ」
「ちょっ……その魔法は!!」
や、やばい!その魔法は……
「天 落ちたる光の神
 地から這い出しし闇の王
 天地鳴動のその時
 全ての者を消滅させん」
「やめろ!ティナ!!」
グングンとティナの中に魔力が集まっていくのが分かる。
それは凄まじく強大な力だ。
この街どころか、この世界そのものを下手すればけしてしまうだろう……
そんな事……絶対にさせない!!
俺は、即座に走り出しティナの元に近寄る!
「インフィニティ……」
「ティナーーーー!!」
俺は、がばりと彼女を抱きすくめる。
とたん、彼女の表情が驚愕に包まれる。
「ティナ……戻って来い!……俺の元に……みんなの元に……頼む……」
「………?わ……た…し…は……?」
ティナの意識が覚醒し始めているのが俺には今理解できた!
「ティナ……!俺だ!魔龍だ!がんばれ!操りの輪になんか負けるな!!」
俺の叫びはティナに届くのだろうか……?いや、届けねばらない!!
「ま……りゅう……さん……わた…し…は……?」
「お前は……お前は、ティナだ!ティナ!目を……覚ましてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
その叫びと共に、ティナの瞳に光が戻る……
だが……彼女の瞳の色は赤ではなくなっていた。
彼女の瞳の色は……緑……まるで、野に咲く美しい草木の如く色だった。
「魔龍……さん。魔龍さん……なの……?」
「そうだ!俺だ、ティナ!!」
パチン!カラン……
ティナの首から静かにクラウドが落ちていく……
彼女は、ついに自分の力で目覚める事が出来たのだ。

しかし……この時の勘違いは痛かった……
そりゃあもうとんでもなく。

ガシッ!と、ティナを抱きしめる力を少し強めて俺は本当に安心した……
瞳の色は変わってしまったものの、ティナが戻ってきてくれてよかったのだ。
「ティナ……本当に良かった……」
「魔龍……さん……」
彼女も俺に抱きつく。
しばらく俺とティナは抱きしめあっていた。
本当に安心していたのだから。
ほんのりとティナの頬が赤くなっているが、今は余り気になっていなかった。
「ごめんなさい……私……また、あなたに迷惑かけちゃいましたね……」
「そんな事はない、けして」
俺は、きっぱりと答えた。
とりあえず、ティナを離す。
「でも良かったよ、本当に、ティナが目覚めてくれて」
改めて確認するように、俺は言った。
「はい、私もようやっと“自分”に戻れました」
何故か自分の所にアクセントを強調していう。
彼女の赤かった瞳……今は緑色の瞳が俺を見つめている。
……俺は、ようやっと普段の俺に戻り恥ずかしくなり視線をそらした。
「魔龍さん……改めて、言わせてもらいます。お久しぶりですね」
「……はっ?」
ティナのその台詞に一瞬……俺は、恥じる事すら忘れて呆気に取られてしまう。
彼女の言っている言葉の意味が一瞬理解できなかった。
「気付かれてないようですね……」
「気付くって……なにを?」
彼女の苦笑して言う言葉に、俺はハテナ顔で答えた。
「私の名前は……ティナ=ハーヴェル……そして、前世の名は“ティナ=ハーヴィ”……セシルお兄ちゃんの妹で、あなたをお慕いしていた者ですよ」
ほんのりと頬を染めてティナ……いや、“ティナ”は答えた
……はっ?
一瞬、俺は彼女の言った言葉に、戸惑い、困惑する。
「ティ……ティナ……?」
「付け足すのなら、六神王の一人、“魔力”を束ねる聖神王、“魔王”です」
……彼女の知識には一片の間違えもない。
「……マジですか?」
「マジですよ」
俺の言葉に笑顔を持って答えてくれる。
彼女と俺の間に、なぜか意味もなく沈黙が落ちる。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………じゃっ。」
俺は、そう言うと走り始める。
彼女は……おってこなかった。
「あらあら……最後に行き着くところは一緒なんですけどね♪」
不吉な事をなにやら囁きながら……

座談会

作者:うわあああああん!やったぁぁぁぁぁぁ!!ようやっと六神王編『ティナの覚醒』が終わった!!
魔龍:長かったなぁ……
ティナ:そうですね、その間に魔龍さんの性格もころころ変わってますし……
シーラ:あら……?そう言えば、今回って……
トリーシャ:うん、僕達しかいないよね?
魔龍:まぁ、一々全員出していたら大変な事になるしね、今回は覚醒した人間しか出さないらしいんだ。
作者:おお!説明的口調!ありがとう、魔龍【キャラ】!!
シーラ:そうなんですか?
ティナ:……みたいですね。
トリーシャ:そんな事よりも、ティナさんが覚醒したね!!
ティナ:はい。でも、ちょこっと設定が安直過ぎるようなきがしますけどね……
魔龍:確かになぁ……だって、ティナ=ハーヴェルだからティナ=ハーヴィ【本当はティナ=ブランフォードなんだけどね】だもんな。
作者:うぐっ……それ言われるとひじょーに辛い。
シーラ:でも、六神王は全員覚醒するんですか?
作者:予定では……ね。
ティナ:当てにならないですね。
グサァ!

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