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悠久幻想曲 ORIGINAL ALBUM

第四話『闇との会合、そして取り戻した記憶との決別』

魔龍銀

光も届かぬ漆黒の空間、奴はそこにいた。
自らが存在し始めたのを意識しても自分が弱い存在だとわかっていても、彼はただひとつのことを理解していた。
―――憎い―――
闇の中にいる存在が憎悪を込めて意識を撒き散らす。
その存在は狂っていた、自らを生み出したものに。そして、自らを生み出せたもののせいで……
いや、その言い方は間違っている、なぜならその存在そのものを生み出したものは故意にそれを生み出したのではないのだから……
闇の中、その存在は叫んだ。
―――憎い憎い憎い憎い憎いぃぃ!!―――
闇の中でそれは吼える、誰にも聞こえぬ声で。
否、それは聞こえるはずも無い声であり聞こえるはずである意識だった。
『闇の落とし子よ』
闇よりも深い闇の中……そして、その最も深い蟠【わだかま】りからその精神の声を聞き届けたものがいた。
奴は……
その声が聞こえた時、それは沈黙した。
『お前を生み出したものを殺したくないか?』
深き闇は確かにそう言った。
深く静かな、それでいて底冷えするような声で……
―――ぐるぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!―――
獣のような声で闇に存在は答えた。

麗らかな朝の一時……まるで、気分が爽快するような感覚、て、変な言い回しだよなぁ。
ここはジョ−トショップ、俺が居候している何でも屋だった。
ある時、この街エンフィ−ルドの端の方で倒れている所をアリサという名の女性に助けられた。
そこで、住み込みで働いているわけだけど……な、ともかく今日も一日頑張るぜ!!
と、気合を俺は心の中で入れたその時、不意に後ろから声が聞こえる。
「魔龍さん、ご飯ッスよぉ〜」
振り向くとそこにいたのは黄色い子犬みたいなものがいた。
ソ−サレス・ドッグ【魔導の犬】と呼ばれる不思議な混血魔法生物だ。
知能も中々高く、一般的に目や鼻、耳や口といった身体的病人や精神的に問題のある病人・怪我人の患者のために生み出されたものだ。
んで、こいつの名前はテディ……アリサさんの…このジョ−トショップの女主人の目のサポ−トをしているソ−サレス・ドッグだ。
まぁ、そんな事はともかくとして……ご飯か。
「分かった、今行く!」
俺は、そう言いながら走り出した。
アリサさんを待たせるのは悪いしな。

「ぷはぁ、おいしかったですよ、アリサさん」
「そう?ありがとう」
微笑みながら俺の感想に、言葉を返した。
その笑顔を見るとものすごく安心できる、やはり母性的な部分のおかげなのだろうか?
なぁんて、ふと考えてみるがようはやはりアリサさんは素晴らしい母親になれる女性だと言うことを再認識させられたのだ。
……アルベルトがべた惚れするのも、なんとなくだけど分かるよなぁ……
あっと…ちなみに、今日の仕事はオフである。
そんなこんなでしばらくボ−としていた(自室に戻っているけどね)
まぁ時々、天空剣を磨いたりして時間をつぶし……外に出ては素振りをしたりして己を鍛えていた。
刻々と時間が過ぎて行く……
そして、丁度昼ご飯を食べ終えた時アリサさんが突如話し掛けてきた。
「あのね、魔龍君。少しいい?」
「あ、はい。なんですか?」
俺はそう言いながら立ち上がる、アリサさんはその様子をみて少し心配そうに言った。
「あのね、今夜なんだけど……」
「へっ!?」
少しだけど声を張り上げてしまう。
いきなり、今夜のことといわれてもなぁ……
「シ−ラさんの家に私とテディと魔龍君が招待されているんだけど……」
「す、すいません。今夜は、予定があるので……」
俺は慌てて言い繕った。
シ−ラの家なんて……ミスしたらただじゃすまないぞ!
……正直言えば行きたいけど。
「そう?それじゃあ今夜家を任せたいのだけど……」
「分かりました」
俺は、そう言うと椅子に座りなおした。

アリサさんとテディがジョ−トショップを開けてからしばらくしての玄関のドアが静かに開けられた。
カランカラン
「ん?いらっしゃ……!!?」
スッと顔を上げて俺は扉のほうを向く、そこにいたのは青い髪の毛の不思議な少女だった。
……と、思ったのは俺の見解、ただ、なんとなく普通の少女と違うのが分かった。
なぜなら、その服装はこの辺りに無いもの……つまりである、どちらかといえば最初に俺が着ていた服に似ていた。
しかし、俺が驚愕したのはそんな理由ではなかった。
その少女の肩口からは酷い量の出血をしており服はボロボロ……
俺は、慌ててその少女に駆け寄る。
「おい!大丈夫か!?」
「……は、はい…私は何とか」
そう言い、苦しそうにする。
どうやら、ダメ−ジだけではなく疲労も有るらしく俺の姿を見ると安心したような表情を見せた。
「魔龍……さん…センパイが…みんな…」
ガクリと、そこで力尽きてしまう。
やべぇ!!
「!?俺のことを……」
だが、その事を検索している暇はなかった、ともかく彼女の傷を……
「クッ!ティンクル・キュア!」
俺は、癒しの魔法を彼女に向けて唱える。
しかし……彼女は一体……?
『フロ−ネ!?どうして彼女がここに!?』
心の声が俺の疑問に答えるように驚愕の叫びを上げる。
おい、彼女は一体何者なんだ!?
『フロ−ネ……フロ−ネ・トリ−ティア、シ−クプレストの保安局第四捜査室通称『ブル−フェザ−』の一人よ』
シ−クプレスト?どこだ、そこは?
『この大陸の全く正反対の位置にある大陸にいる人達よ……ただ、まだここに至るまでの移動手段はあの大陸にはないはずよ!』
おい、それっておかしいじゃねぇか!
『だから、迷ってるんでしょ!?』
「く……仕方ない。それならば、俺は急いで『ルシ−ド』達の元へと行くぜッ!!」
『!?!?』
心の声が驚いている。
だが、俺はそんな事を気にしていなかった。
俺は、フロ−ネの表情が安らいだのをみて大急ぎでかけていった。

「ぐわぁ!」
ドガァン!!
俺が駆けつけた時には酷いありさまだった。
冒頭の叫びは、ルシ−ドである。
ルシ−ドは、頭から血を出しており体中に傷を負っている、はっきり言ってフロ−ネよりも怪我と言う点に関しては酷い。
俺は、ルシ−ドを投げつけた男を睨んだ。
「てめぇ!ルシ−ドに……ブル−フェザ−の奴等に何しやがる!!」
「ぎゃははは!なにを、だと!?」
男は、こちらを振り向いた。
その男の肌は褐色で、服は皮の服で真っ黒……目を覆っているのは大きなバンダナ。
そのバンダナもはっきり言って怪しい、なぜなら大きな一つの瞳が描かれているからだ。
はっきりいって目が見えてるかも疑わしいがあの様子だと見えているようである。
「記憶喪失の雑魚がなぁに言ってるんだ?魔龍 銀!!」
「俺の事を知っているのか!?」
「ああ、お前よりもヨォク知ってるゼェ!ぎゃははは!!」
そう笑いながら、手に魔力を貯める。
『いけない!!』
「挨拶代わりに受け取りな!カオス・フレア【混沌の炎獄】!!」
ブォ!
凄まじい炎が巻き起こる、タナトスすら凌ぐ威力だ。
クッ!
『魔龍!あたしとちょっとだけ変わりなさい!!』
なにっ!?
ぐらり、と一瞬にして意識が沈んだ。

「そんなもので……この私が倒せると思ってるのかしら?シャドウ!!」
私は、片手でカオス・フレアを打ち消すと逆に魔術を放ち打ち返す。
「グッ!カオスティック・シルバ−!ぎゃははははははっ!お笑いだな、おめぇみたいなのがいるとはなぁ!」
シャドウは一瞬真剣な顔になる、だが、冷静に魔術を打ち消すと馬鹿笑いをしながら私を嘲った。
迷惑そうに、私はその言葉を怒鳴り返した。
「うるさいわねぇ!それよりもどうしてあんたみたいな雑魚がこんなに強くなってんのよ!」
「ククク……さぁな、強いて言えば邪神の力とあの時の反動のおかげかァ?」
邪神……まさか!奴の力を!?
「気づいたかぁ?けけけ……まぁ、今日はあいさつがわりだぜぇ。そろそろ失礼させてもらう!ぎゃはははは!!」
そう一方的に言うと、シャドウは影の中に沈んで行く。
全く……なんなのよ一体…?あの男は……どうしてあの方の心が……
と、そこまで思った時くぐもったビセットの声が聞こえた。
「うぅっ…そんなことよりも、はやくたすけてくれぇそこのひとぉ……」
あ、ブル−フェザ−の面々の事を忘れてた!
「ごめぇん!フィ−リング・エア−!!」
私は、そう唱えると一瞬にして身を翻し逃げた。

「ふう……」
私は息を整えるとシ−クプレストの港のほうへといった。
ただ、すこしだけいつものシ−クプレストとは雰囲気や人の気配が違った。
明らかに、何かに怯えているのだ。
私は不信に思い、辺りを見回してみた。
しばらくきょろきょろとしているミッシュベ−ゼンの前にメルフィがいるのが見えた。
すぐにそちら側に私は駆けて行く。
すると、すぐにこちらに気づいた。
彼女は一瞬ハテナ顔になると私に一言言った。
「危ないですよ、こんな所で……」
「大丈夫、大丈夫。それよりもどうしたの?なにかあったのかしら」
私はそう言うと少しだけ首を傾げてみる。
すると、メルフィはすぐにその言葉に答えた。
「え、ええ……行方不明者が出たんです」
「行方不明者?」
私は、眉をひそめるとメルフィに改めて問う。
「誰が?」
「え〜と、私と同じ保安委員で、ルシ−ド・アトレ−、フロ−ネ・トリィ−ティア、ビセット・マ−シュ、バ−シア・デュセル、ル−ティ・ワイエスです」
一瞬、私はずっこけそうになった。
な、なるほど……
「ど、どうしてそう言うことになったの?」
私はそう問うと彼女は少しだけ俯いていった。
「……市街戦があったんです、魔法犯罪者が出て……それを、捕まえに言った所でいきなりルシ−ドさん達が消えて……」
あんの大馬鹿!!
私は心の中で叫んだ、まさか……こんな事になるなんて……
「な、なるほどぉ、それで探していたんですね?」
「ええ……まぁ……」
もう、なんていえばいいのよ!馬鹿シャド――――――――――!!!!
とりあえず、このことはニュ−達に話しておいてどうにかしてもらおう。
……別件でも話さないといけないしね。

と、まぁこんな事もあり、私は何とかルシ−ド達が現れた理由をなんとか知った。
少し前に彼らとは知り合ったわけだけど……
あの時は、あの方が完全だったからなぁ……
少し困った事になったわね。
「それよりも、そろそろエンフィ−ルドに戻った方がいいんじゃないですか?カオスティック・シルバ−様」
不意に後ろから声をかけられる、私は慌てて振り向く。
そこにいたのは……!?
「ニュ−!?あなたなんでここに……」
「いえね、あなたを探しにいったんですけど、全然見つからなくて……噂を聞いてジョ−トショップというなんでも屋に行こうとしたんですけど、すごい力を感知しましてね……ここに着たんですけど…」
「案の定、いましたね。カオスティック・シルバ−様」
「フィセア!?あなたまで……」
私は驚愕に目を見開いた。
その様子に、さもおかしそうにニュ−は笑った。
「ククク……あなたでも驚かれるのですね?」
「もう、私だって人間よ。驚くわよ」
ぷくぅと頬を膨らませて私は言った。
しかし、その次の瞬間には私は戦士の顔へと戻る。
「今の状況、どう思うかしら、ニュ−」
流石にその言葉に、ニュ−も表情を整えた。
きりっとした真剣な表情に……
その表情のまま、私の言葉に答える。
「そうですね……戻るのが一番だと思いますけど?」
……戻る、ね。
私はふと考えた……
戻るのは……はっきり言って怖い……
彼と私の意識が融合するのだ。
そして……どちらか一方が残り消えるのであれば、間違えなく消えるのは私のほう……
なぜなら、彼が魔龍 銀と言う存在の性格の土台だからだ。
私は、その上にいる力のほうのものだからね……
「怖いのは分かります……でも、あなたと言う存在が消えるわけではないんです」
「そうですね……それに、このまま行けばどちらにせよ無駄死にですし……ね」

「悠久なる無限の時を駆ける存在……それが私」
唄うように私は言う。
言葉が紡ぎだされるたびに光が強くなる。
「魔龍 銀と言う存在が生み出した、三つに分けられし一つ。力と記憶を司る無限なる王女、カオスティック・シルバ−」
大地が光り輝く、そして大きな光の柱が生まれる。
教えて……答えて……オリジナル……魔龍 銀。
ブワァァァァァァァァ!!
風が私の周りに巻き起こる。
「我は、原初の存在と一つなるため……与えられし半身を……今、返さん!!」
私のその言葉が終わった時、光の柱はなお一層強く輝く。
そして……カッ!!
凄まじいまでの光が巻き起こり……

気づいたときには、俺は目を静かに瞑り立っていた。
あたり一体は静かで静寂がまき起こっていた。
そして、視界の中には二人の人間……
「フィセア……ニュ−……」
俺は、静かに言葉を紡ぎだす……
「一年ぶり……だな」
「「はい」」
二人は同タイミングで答えにっこりと笑った。
俺もそれに微笑み……そして、すこしだけ寂しそうに言った。
「……わりぃな、まだもどれねぇ……けりをつけなきゃいけないしな」
「わかりました」
「はい……」
ニュ−はいつもの笑顔で、そしてフィセアは悔しそうに答えた。
俺は、その二人の様子に苦笑した。
「それと、シ−クプレストのほうの護衛も頼む。俺は、エンフィ−ルドに集まりつつある力を抑えるので手一杯になりそうだから」
俺のその言葉にニュ−とフィセアは苦笑しながら頷いた。
「んじゃ俺は、ルシ−ド達の元へ行くわ……じゃあな」
俺はそう言うとひらひらと手を振り、空間転移した。

「行っちゃいましたね……」
「はい」
フィセアの言葉にニュ−が答える。
二人は今、苦笑を漏らしていた。
まぁ……原因は俺なんだろうけどな。
「さて……仕事に戻りましょうか……あの人の仕事の休みへの言い訳を考えませんとねぇ……」
改めて、苦笑しながら彼はそう言う。
「クス…そうですね」

静かな雰囲気の絶壁の下にいる、何人かの人間達……
ルシ−ド、ビセット、ル−ティ、バ−シア……彼等は静かに横たわっていた。
ゆっくりと寝息を立てているところからみても、相当落ち着いたらしい。
俺は、少しばかり苦笑しながら彼らの前に戻った。
「ふっ……」
全員の寝顔に思わず笑みをこぼすと、すうぅ……と、息を吸いすさまじいまでの大声で怒鳴った。
「おきろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「「「「ぶわぁぁ!?」」」」
流石に驚きながら全員が目を覚ます。
その様子にいささかおかしな話だが笑いそうになりながら俺は言った。
「よっ、おっはよぉ?」
俺は、含みのある調子でそう言う。
「え、ああ、おはよう」
「よう、魔龍!!」
「??私たちなんでここにいるの?」
「知るかよ」
最後のル−ティとルシ−ドの声でみな沈黙する。
「ふふっ、あのな……」
どうやら、どんな事が起きても相変わらずの調子のようだ。

んでまぁ、とりあえずジョ−トショップへと戻った。
何かと話しがしやすい場所といえば、やっぱりこの世界ではここしか思い当たらないしな……
でも、まぁそ・れ・はともかく。
「何でお前がいるんだよっ、アレフにパティにロ−ラ!」
何故こいつ等が……?話しがややこしくなるじゃねぇか!!
「なんだか分からないが、ジョ−トショップの方に美人がいる雰囲気がしたからな!」
「あたしはそれを聞いてあんたが浮気してないか見にきたの」
「私はぁ、おもしろそうだったから!」
と、口々に言うものの……俺にとってみれば頭を抱える要因が増えただけだ。
たくっ……ルシ−ド達が来ただけでも問題なのに……!
俺はやはり頭を抱えるとはぁ……と溜息を吐く。
「もう、どうにでもなれだ!ともかく、お前等は適当に休んで来い!」
びしっ!と、指をルシ−ド達に向けながらいい今度は後ろを向く。
「いや、あのね……魔龍」
ル−ティが何か言うが無視。
「それと……パティに頼みがある……」
「な、なによ?」
いつもと違う、その様子に少しだけ驚きながらパティは質問を返した。
俺は、ガクリと項垂れ……
「飯作っといてくれっ!頼む!!」
「あほぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ボガァン!!……と、いつもならいっただろう。
だが、今回の俺はあまりにも反射神経が高かった。
サッと、横に避け。
そのまま腕を取り……捻じ伏せる!
勿論、反射である。
説明をさせてもらうと、ようは、癖である。
ちなみに今のは瞬き一つしないような状況下で起こったことである。
俺は常に命を狙われてるといってもおかしくない。
そのため、反射的に攻撃を返す癖があるのだ。
「いたっ、コラ!いたい!!」
「……すまん、つい反射的に……!て、お、おい!」
ボガァ!
俺の頬に今度こそパティの右ストレ−トが決まる。
でも……あまり痛くない……
咄嗟に受け流したのもあるが、やはり、俺と言う存在は人間を離れているらしい……
「……な、何か勘違いしてるようだから言うけどな、俺が作って欲しいのはルシ−ド達の飯だ……!」
そこまで言いかけた時……何かすごい力を感じた。
チッ!まさか、シャドウか!?
「ともかく!マジで何とかしといてくれっ!あとは、アレフが下手に手ぇださねぇ用にロ−ラ、見張っといてくれよっ!」
そう言いながら、俺は上着を取った。
それはこの世界にあるはずの無い、黒いウィンド・ブレ−カ−だった。
「ちょっと待て!何で俺が……」
「うん、お兄ちゃん分かった!」
「ああ、もう!貸しにしとくからね!」
俺は三人の言葉を聞きながら大急ぎで走り出した。

一方、その頃。
時間は多少さかのぼることの三時間前、ようは俺が記憶を復活させるよりも前のこと。
ここはシェ−フィ−ルド家邸宅……今、ここではパ−ティが行われていた。
シ−ラは勿論、呼ばれたアリサさんもいる(ついでにテディも)その他の参加者はマリアにクレア、自警団からもアルベルトや翔、それにリカルドのおっさん(まぁ、俺の方が年下だが人生経験はおっさんよりもあるぞ)…その他にも、イブやル−、ディア−ナにト−ヤ先生とかリオ、シェリルも…と、クリスを忘れてた。
パティがいないのは仕事が忙しいからだ。
アレフは……この話しが来なかったのは言うまでもない(笑)
ロ−ラは孤児院の方があるし……
トリ−シャは……俺の家に向かっている。
「でも、どうして魔龍さん来なかったんでしょうか?」
シェリルが、アリサさんにこそこそと話し掛ける。
アリサさんはにっこりと笑いながら。
「きっと、色々な事情があるのよ」
……う〜ん……まぁ、確かにあったが……
だが、勿論これに茶々を入れるものもいる。
「違いますよアリサさん、どうせ着る服が無かったんですよ」
そう言ったのはアルベルト。
……スパイ用とかに家(実家)に戻ればたくさんあるぞ服なら。
レパ−トリ−もまさに百着以上だし。
「違うと思いますよ」
ディア−ナがぼそりといった、無論誰にも聞こえないようにだ。
「でも、残念ね」
シ−ラはそう言うと自分が持っているグラスの中(勿論ジュ−ス)を上品に飲む。
言い忘れたが、ここにいるもの達はみなドレスやパ−ティ用のタキシ−ドを着ている。
しばらくは平和に行われた……
そう、しばらくは……

ドゴォォォン!!
突然の爆発音、それはシ−ラのいえの中庭……つまり、パ−ティが行われている所でおこった。
余りの事に全員一瞬理解できなかった。
いや……数人理解できたものがいた。
アルベルトとリカルド、それに翔くらいだ。
やはり、自警団らしく武器を携帯しており即座に武器を抜く。
そして、すぐさま前に出ると皆を庇うように立ちはだかった。
リカルドは自らの武器……なもない名刺の造った剣を抜くと凄まじい形相で煙の中を睨みつけた。
「何処の誰だか知らないが、いきなりの無礼……何者だ!でてきなさいっ!!」
ブワァ!!
その言葉が終わったと同時にその煙が霧散するように辺りに散る。
中からでてきたのは……
「…………………」
「あ、あれは!」
そう、シ−ラには見覚えがあった、黒光りの洞窟にいた……黒い何か、ダ−ク・シルフだった。
スッと奴は手を上げ何か文字みたいなものを描く、そして……
キィン!
「うっ!」
あたり一帯に金属をひっかいたような音が響く。
しかも、この音を聞いていると……
「体が……動かない!!」
がくりと膝を突きながらアルベルトが囁く。
「くそっ……!」
翔も毒づきながらもがこうとする。
同様に皆、動けない。
ザッザッと少しずつ近づいてくる。
全員何とか動こうとするがそれでも動けない。
ザッザッ……ざっ。
そして、立ち止まった先にいたのは……シ−ラだった。
ダ−ク・シルフは立ち止まり、シ−ラに手を向ける。
「シ−ラ・シェフィ−ルド……承認。ユメ・フィセアを確認……これより、イレイズ【消去】を実行する」
「!?」
以前と違いすらすらとしゃべるダ−ク・シルフに違和感を持つが。
それ以上に、ユメ・フィセアという名前に何か違和感を感じた。
―――ユメ・フィセア!?―――
どこかで聞いた事があるような感覚、そして……とても辛く痛い。
「いや……」
キィィィィィィィン……
先程よりも低くそして強い耳鳴りがする。
それは、シ−ラの心が発していた強い音だった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その余りの心の鼓動に頭が割れそうだった。
ブワァァァァァァァ!!
凄まじい光がシ−ラのあたり一帯を包む。
それは、俺が出したあの光に似ていた。
丁度その時、黒い光がその合間を縫うかのように彼女に近づく。
一瞬、何かか確認できないでいる。
そして……それは……
「みんな!……シ−ラ!?」
それは……俺だった。
即座に、シ−ラの元に近づき、抱きしめる。
「良かった……魔龍…さん……なんです……」
!!??
すると、光が弱まっていった。
「………ね」
そして……シ−ラは、静かに目を閉じた。
だが……どういう……?
「ククク……ぎゃはははははは!」
突如隣りから聞こえる声に、俺は睨みつけながらそれを見た。
「ふざけた真似しやがって……てめぇ、シャドウ!!」
俺がそう叫ぶとシャドウは遂に正体をあらわした。
大きく開いた黒い皮の服にとんがったダ−クシルバ−の髪の毛……
そこには、ダ−ク・シルフの姿から元に戻ったシャドウがいた。
「ぎゃはははははは!!こいつはいいぜ、前世のあの女がそいつだったとはよォ!ひゃははははは!!」
「あの女……?なに言ってやがる!」
俺は、憤慨しながらシ−ラの体を地面に横たえる。
「光王よ!黒神よ!」
ブワァン!!
クロスさせた左右の手に俺の本当の剣……光王の剣と黒神の剣が現れる。
「はぁっ!!」
その気合を合図に両方の剣に刃ができる。
俺は、クロスさせた状態のまま斬りつける。
真空波が奴に向かって放たれる。
その真空波はシャドウに当たる直前消失する。
なぜなら、奴が剣を出現させその真空波を切り裂いたからだ。
勿論、俺もこれで奴を倒せるとは思っていない。
「ケッ!舐められたもんだな!この程度でこの俺様が殺せると思ってんのカァ?」
そう言いながら自らの両手で剣をもてあそぶ。
「興ざめしちまったぜ、合体したからにはある程度まで強くなってると思ったのによぉ、やぁっぱ心が欠けてるせいかぁ?」
そう言いながら影へと身を沈めて行く。
「クックック……また来るぜ」
「二度とくんじゃねぇ、大馬鹿野郎っ!!」
俺はそう言いながらも剣の構えを解かない。
油断して後ろからばっさりなんて冗談じゃねぇからな。
そして……奴は影の中へと消えた。
残されたのは、呆然とする仲間と今だにその影を睨みつけた俺だけだった。

「……魔龍君」
その静寂をふと破ったのは深く静かな声で言ったアリサさんだった。
俺は、黒神と光王の刀身を消し、二本の刀をそれぞれ背中と肩にしまい、シ−ラを抱き上げながら振り返った。
そのまま背を向け皆にこう一言だけ言った。
「なにも聞かないでください。時期になったら必ず…………話します」
そう言い、シェフィ−ルド邸宅へと向かう。
「ちょ、ちょっと!魔龍、それってあんまりなんじゃ……」
マリアが反論しようとする、が。
「わかったわ」
≪アリサさん!?≫
俺とアリサさん以外の全員が声をあげる。
だが、アリサさんは頭を振り言った。
「……大丈夫よ、きっと……」

とさっ。
軽い音がし、ベッドの上にシ−ラを寝かす。
そのままきちんと布団をかけ、眠らせる。
俺は、そのまま立ち去ろうとした。
だが……
「待って……」
後ろから声がした、俺が振り返ると……
「………………」
そこには、無言で俺の方を見るシ−ラがいた。
俺は、少し伸びた髪の毛を邪魔にならないように掻き揚げる。
「どうした?」
微笑みながら近づきシ−ラの前に立つ。
だが、はっきりと信じられない事が起きる。
ドサッ!
「おわっ!シ−ラなにを!?」
俺はいきなり抱きついてきたシ−ラに非難(?)の声をあげる。
だが、シ−ラは抑えきれないといった調子で言った。
「魔龍君……魔龍君……やっと、やっと出会えた!!」
「!?」
シ−ラのその少し違う雰囲気に少しおされながら俺は苦笑気味に聞いた。
「逢えたって、なぁに言ってるんだ昨日会ったばかりじゃないか?」
俺は、苦笑気味に言うと頭をぽりぽりとかく。
だが、次の瞬間シ−ラの口から出た言葉はとんでもないものだった。
「ふふふ……そうね、気付かないわよね?私は……フィセアよ、ユメ・フィセア……」
「ふ〜ん、そうかぁ〜………………………」
長い、長い、ほんっと〜〜〜うに長い沈黙の後……
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?」
俺は思わず大声を出してしまった、予期せぬ言葉だった。
だが……
「マ……マジで、フィセア……なの…か……?」
掠れる声で言う……一瞬、唖然としているのが分かる。
その言葉にフィセアは目を潤ませながら答えた。
「うん……本当よ……魔龍…さ…君……」
さん……と、言いかけたのだろう。
そう呼ぶのはフィセアの癖だった。
何度も銀って呼べよって言っても最後まで呼んでもらえなかった。
そして、今も……
「………………」
「………………」
見詰め合ったまま静寂が起きる。
はっきり言って、何を言っていいのかが分からない。
頭の中がぐちゃぐちゃで錯乱しているといってもいいだろう。
どちらとも……おそらく、シ−ラも話したいことがそれこそ積もるほどあるだろう……
だが、なんだか分からない……そんな感覚になっていた。
「あのね、魔龍君……」
「ストップ」
俺は彼女の言葉にストップをかけた。
確かに彼女はフィセアかもしれない……だが。
「シ−ラ……君の気持ちはわかる」
その言葉は普段の俺の言葉よりも約1オクタ−ブ程下がっていた。
俺にも、そしてシ−ラにも分かっているのだ、彼女自身がこんな風に言う理由が。
「同情してくれているのだろう?俺とフィセアの関係に」
「!!」
ビックリした様子だった。
だが、事実を当てられて少しだけその部分の驚愕も見て取れる。
「君は、あくまでフィセアの心でフィセアの記憶を見ただけだ、フィセアではない……なぜなら、君がシ−ラ・シェフィ−ルドと言う女性だからだ」
きっぱりとした口調で俺は言う、それはある意味俺自身への決別だった。
そう、過去の……ユメ=フィセアという名の女性との……
俺は、先程まで過去に一瞬浸りかけた。
シ−ラをこの手で抱き留めてしまいそうになった……
だが、あえてそれはしなかった。
フィセアはこうとも言ったのだ、過去に囚われないで明日をみて……と。
今の一瞬だけでも、俺は過去をみていたのだ。
それは、引いてはフィセアとの約束を破ったことになる。
「シ−ラ、君にも分かるはずだ、俺の言っている言葉の意味が」
「魔龍君は……それでも辛くないの?」
俺はその言葉に一瞬答えを窮したが……
「ははは……辛くないと言えば嘘になるよ、だけどな、超えて行かなきゃいけない物だって有るんだ」
俺は苦笑しながらそう言うと扉を開いてシ−ラの部屋を出た。
そして……これからしばらくは、フィセアの家の中にはいる事はなかった。
そう言えば今日は七月の八日の日……七夕の後日である。気が付かなかったが今日は……

「俺の、誕生日か」
苦笑しながらそう言う。
最も、シ−ラ以外は誰も知らないし知るはずが無い。
なんてったって、記憶喪失だったのだから。
第一、 教えて祝ってもらう気なんて、0に等しい、と言うか無い。
『ある意味、欲がないよなぁ……本気で俺って』
以前の口調からいつもの口調に戻りながらいう。
「ジョ−トショップに戻るか」
心なしか苦笑しつつ俺は自らが居候している場所、ジョ−トショップに戻ることにした。

≪ハッピ−バスディ!!≫
パンパンパパン!!
と、ジョ−トショップに戻ってきた俺を迎えたのは盛大なクラッカ−の音であった。
「どうやら、ギリギリ間に合ったようね」
バ−シアがにやりと笑いながら面食らってる俺にいう。
そう言えば……こいつ等もいたな……
俺は更に苦笑すると頭を掻いた。
だが、無言で笑顔になる。
……やはりこう言うのは嬉しいらしいな今でも。
「あのねぇ、こう言う行事があるんだったらとっとと言いなさいよ!」
そう言いながらも笑顔で料理を見せるパティ。
おそらく、フロ−ネやパティ、その他もろもろのメンバ−がこの料理を見繕ったのだろう。
「ホントだぜ、この人たちに聞くまで分からなかったね−か」
アレフもそう言う。
トリ−シャも同様に俺にこう言った。
「うんうん、普段祝ってもらってるんだからこれくらいお礼はしたいよね〜」
もう、そういわれたら思いっきり苦笑するしかない。
「とは言え、記憶喪失の奴にそう言うのも刻だと思うぞ?」
ルシ−ドが珍しくフォロ−する。
ちなみに、以前の事情の時俺とルシ−ドは共闘した。
そのせいかかなり息も合っているコンビネ−ションをもっている。
まぁ、性格が近いというのもあるかもしれないが……
「その点に関しては大丈夫、記憶はかなり戻ったから」
俺はそう言う。
そして勿論、この後に起きる反応を楽しみにしているのだ俺は。
……少し、意地が悪いかもしれない。
そして勿論、予測通りにことは起きる。
≪えええ〜〜〜!!??≫
俺は、クスクスと笑いながら部屋の中に入った。

そして、その後アリサさんや同じみのメンバ−を加え(シ−ラも覚えていたらしく慌ててプレゼントを持ってきた)大騒ぎとなった。
ただ、その仮定でトリ−シャが酒を飲んで俺に愚痴りだすは、由羅はクリスに迫りだすはで大変なことになったがジョ−トショップはおおむね平和だ。
……最もやばかったのは、シェリルが脱ぎ上戸だったことくらいか。
あれを止めるのには、はっきり言って俺以外の止める面子が潰れているせいで結構苦労した。
意外だったのは、リカルドが日本酒(勿論、産地直さん)二本で潰れた所か……
だが……俺は、いつまでここにいれるのだろうか?
この環境に、いつまで甘えていられるのだろうか……?
それは、これからの俺の行動で決まるのだろう。
ただ言えることは、まだ頑張らなきゃならないのだ。
全く、運命とはいつも常に皮肉だ。


登場人物たちによる座談会

魔龍:久しぶり、魔龍 銀だ。
シ−ラ:お久しぶりです、シ−ラ・シェフィ−ルドです。
魔龍:あんの作者…こじつけたな……!
シ−ラ:そこまで言う必要はないと思うけど(今回の話でパティちゃんたちよりも一歩リ−ドできたしね☆)
魔龍:いや、第一これは終わりから数えたら早いほうにはいるはなしだろう!普通は?
シ−ラ:まぁ、そうですけど。
魔龍:しかも、裏設定ほとんど公に出ちまったじゃねぇか!?ブル−フェザ−もいるし、当然、これを見ている人は悠久シリ−ズやってるだろうし……
シ−ラ:元も子もないですよ(汗)
魔龍:これで、例の設定が出てこなかったらやばいな。
シ−ラ:あはは……

銀:むぐぅ……うぐぅ……
と、微かなうめき声が……

魔龍:トリ−シャ出番だ!!
トリ−シャ:は〜い!

そう言い、何かにトリ−シャは狙いをつける。
ちなみに目が血走ってて怖い(冷汗)

トリ−シャ:え〜い、ウルトラ・ス−パ−・ミラクル……必―――殺!トリ−シャ・チョッ――――プ!!

グキィ!

そして、赤い物が飛び散り……照明が落ちた。

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