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白い魔剣

浅桐静人

 朝、パティがさくら亭の一階に下りてくると、何かいつもと雰囲気が違うような気がした。
「なんだろう」
 何気なくあたりを見回すと、ふと何かが光ったような気がした。
(……?)
 目をこすって、もう一度目を凝らす。確かに、何かある。
 パティはそれに駆け寄った。僅かに鞘からはみ出した刃元が光を反射していた。

 白い魔剣は、こんな感じで始まる。ここから分かるとおり、この剣の謎を解くというのが物語の中心となる。
 尾身さんのHPに投稿するために書いていた、記念すべき第1作である。いや、そうなる予定だったSSである。結局は途中で中断して「サクセス・アンド・リング」という、マリアの誕生日のお話を投稿することになる。パティ、リサ、マリアの3人という構成だけがそこに残っている。
 あとがきでも書いたが、これは第10作「Uncontrollable Force」の原形となるお話ということになる。ただし、かなり書き換えて、実際はかなり別物の作品に仕上がっている。

 パティは剣に触れてみる。
「……わっ!」
 パティは反射的に飛び退いた。
「何、これ」
 唖然としたまま呟いた。手にしびれが残っていて、パティは顔をしかめた。

 第一の相違点は、剣に触れないこと。当然ながらさくら亭にそんな剣を置いていては問題なので、どこか人目に付かないところへ運ぶのが先決となってくる。
 そこで出てくるのがマリア。物を持ち上げる魔法で、さくら亭の奥に保管する。この作品、マリアの魔法失敗は1回だけである。他にマリアが出てくる作品、第11作「とおいせかいのくろねこ」、第13作「時間よ、戻れ!」、第16作「Passport to Sheepcrest」と比べると、非常に少ない。
 あくまで、主役はパティ。実は、マリアは結末への伏線なのだ。いや、その結末を書く前にボツにしてしまったんだけど。

「でもさ、これって魔力を感じないよ」
 そう、マリアが言った。マリアは魔法を失敗することで有名だが、知識だけはけっこうあるし、魔力を感じるかどうかで失敗はあまり考えられない。
 なにより、パティも魔力を感じないし、リサも同じだ。

 中盤にさしかかるあたりで、魔剣と読んでいたものが魔力を持っていないことが発覚する。ことは、「魔剣みたいな厄介なものなら、魔術師組合が動かないはずがない」というパティの意見である。
 でも、魔剣と説明する以外になく、魔術師組合に持っていくことになる。もちろん、マリアの魔法を使って。(物を持ち上げるのは、初歩の初歩という設定)

「魔剣? そんなものはエンフィールドには存在しない」
 冷たく言い放たれた。そして、扉が重く閉ざされた。

 魔術師の3つめのセリフである。これ以前に「……」というマリアを見ての無言と、「いい加減にしろ」という怒鳴り声がある。
 マリアがしつこく扉を叩くのである。第4作「クラウド医院の魔法戦争」の、マリア&ディアーナのシーンとほぼ同様のこと。

「だったら、あたしの目の前にあるこれは何なのよ!」
 パティが怒鳴る。
 魔術師はとりあえずその剣を見てみた。
「少なくとも魔剣じゃないな。魔力を感じない」
 扉は再び閉ざされた。

 このあと、諦めてさくら亭に引き返すことになるわけだ。ちなみに、ここまで書いて終わった。点々と、セリフとか数行の文とかはあったけど。

 で、予定していた結末は、「剣はショート科学研究所の試作品である」というもの。
 魔剣の正体は、科学技術が生み出した「電気の流れる剣」なのである。ちなみに、「電気」という単語が理解できず、ごちゃごちゃと妙な会話が飛び交う、という案もあった。(でも、エンフィールドに電灯はあるから、電気って言葉も知ってるかも……)

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