●第351話 投稿者:YS  投稿日: 6月25日(月)03時36分26秒  それはただ自然に動いただけだった。  身体が自然に反応し、ロイはカイルに飛びかかっていた。 「…消えろ…」  ロイが触れると同時にカイルの姿が不鮮明になる。  …が、それも一瞬のこと。すぐにカイルの一撃がロイを襲い、ロイはその場に倒れこむ。 「やれやれ、君とはまともに戦いたくはないんだけどね。同じ求道者としては…」 「…ふざけるな…お前は封印してやる…」  ほかの誰にも聞こえないような声でロイが言う。もしかするとディムルには聞こえたかもしれないが、聞かれて困ることでもない。 「…あのキマイラはお前のものだろうが…」 「どうやらすでに全滅したようだね」  まるで雨がやんだことを告げるかのようにさらりと言ってのける。その言葉の意味するところは肯定だ。だが、その言葉を聞くと同時にロイは敵意をなくす。 「…それならば、争うだけ無駄だな…」 「理解してもらえて嬉しいよ」  ロイにとっては生きていればいいが、死んでしまったものに対しては何もするつもりはない。そういうことなのだろう。  この間にほかのメンバーはまったく動かない。いや、動けないというべきか。  ロイが平然と動いているのは感情の一部が欠落している為だろう、恐怖をまともに感じることがないのだ。  ほかのメンバーは…まあ、時波がいなくなっているが気にしないとして、カイルの人ならざる気配に動けない。いや、ロイが動けるのはもう一つ理由がある…。 「…結局、最初からこうするつもりだったということですか…」 「まあ、そういうことだね」  だが、ロイは理由を説明するでもなく、ただ会話をしているだけだった。 「…まずはデータですか?」 「それもあるけど、もう一つ欲しくなってね」  何気なくディムルの方を見るカイル。 「…そういうことなら…」  そこまで言うとロイはアーシィに向かって 「…あ、中立の立場を取らせてもらいますから…」  あっさりとそう言いきった。 「さあ、始めようか。今日のところは慣らしだけどね」  カイルは明らかな敵意をジェノアとアーシィ……そして、弟子のディムルへと向けた。 ●第352話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 6月25日(月)16時51分23秒 同時刻 さくら亭 一瞬強烈な光がオルゴールより発せられたかと思うと、箱が開いてフローネが飛び出てくる。 「ん?うおっ」 近くにいたアレフが潰される。 今日は彼の厄日なのだろうか。 そして何時の間にかオルゴールは消えていた。 クラウド医院 「暇だー、暇だ―、なんかねぇかなー。なんかねぇのかー?」 さっきからクロウは大声をあげてベッドにいる。 『五月蝿いぞ、クロウ。』 アグレッサーはまた人間形態でいる。 後ろに手足をしばられて猿轡をさせられた金髪の男がいる。 「ムグー、ムググッ!ムググググっ!!!」 訳:おいっ、これ取れ!きつく縛りすぎだぁ!! こちらも五月蝿い・・・ 「やっほー、アグちゃーん。」 五月蝿い奴一名追加。 『疲れる・・・』 一人溜息をつくアグレッサー。 「で、オルゴールはどうなったんだ?」 クロウが暇つぶしにさっきアーシィに拾って貰った日記帳っぽい分厚い本を見ている。 『ん?リュートの力で無効化された後、圧縮させて異次元に放り出した。』 「なんだ、壊さなかったのかよ。」 日記帳を見たまま話すクロウ。 『まぁ、な。リュートも魔楽器と普通の楽器と交換させてもらったしな。』 といってリュートを持つアグレッサー。 「あ、そうそう。フリュート家特製次元倉庫が復活したみたい。」 アイリが何か窓のような物を出現させて覗いている。 『ほう・・・で、どうする?今までのフリュートの全財産はお前の物になったぞ?』 「別にどうもしねぇよ。なんか起きそうになったら一番強そうな奴(今の所アーウィル)にでも媚びるさ」 「三十一代目君・・・情けないね。」 「言うな、分かってるから。」 アイリの言葉にクロウは落ち込んだ表情で言い返す。 「ムグッ・・・ムグムググムグ」 訳:やべっ・・・苦しくなってきた ●第353話 投稿者:ファウスト  投稿日: 6月26日(火)15時04分36秒 何だか、街の雰囲気が変わった。 モンスターの気配が消え去ったのだ。 それはつまり、ここで、モンスター退治しなくてと良いと言うことで・・・。 「あいつら・・・やったのか!!」 結局あの後、この街にいる事にして、モンスター退治を続けてたケインが言った。 「けど、やたら大きな魔力を三つ感じるし、一つはアーウィルだろうけど・・・。浮遊山は変な状態だしな・・・」 そこで、彼はどうするかを考えた結果。 (・・・・・街が元に戻った→モンスターはいなくなった→もう安全→自警団も動き出す→他の奴らも浮遊山にいける→俺がいかなくても大丈夫→さくら亭でフローネの状態に変化があるかも→見に行こう) と、言う思考パターンにより彼はさくら亭に向かうのだった。 「あ、じゃ、魔法も使えるかも・・・」 空間転移。ケインはその場から消え去ってさくら亭に行ったのだった。 「おい、何をしている!元気なら俺を手伝え!!」 街にモンスターが現われなくなったのはいいが、クラウド医院に患者が押しかけていた。 「何で、俺らが・・・」 トーヤが病院に帰って来た時は、まだ、留守番のディアーナしかいなかった。 そして、血だらけのトーヤを見ていつもの様に失神。ベットに寝かせてから、クロウのカルテを書いていた。 しかし、その後いきなり服が綺麗になった。モンスターがいなくなったから、血も消えたのだ。 いままで、止めを刺さずにモンスターをとやりあってきた為、服が血まみれになったのだ。 それはさておき、クロウのカルテが書き終わったら、かなり酷いケガをしている人たちがたくさんやってきたのだった。 話を聞いた所、街を歩いていたら、いきなりモンスターに傷を負わされ、何とか逃げれたが、まだ他にもいっぱいいたから、すぐ病院に行く事が出来なかった。と、こういう訳らしい。 ケインがモンスター退治していた意味はあまり無かったかもしれない。 モンスターが出たら、すぐに大抵の人はどこかに隠れるだろうし、それから外にも出ないだろう。 だいたい、モンスターが出た直後は、まだそこらじゅうに人がいただろうから、自警団のように沢山の人、それぐらいの退治する人が必要なのだ。 でも、コウがピートたちを守ったような事があるから、あながち無意味と言うわけでもなさそうだ。 嫌そうにしていたクロウにトーヤは・・。 「うるさい!その代わり治療費をただにしてやるから、黙って手伝え!!」 自分一人の力不足を感じて、少し困っているトーヤだった。 「なら・・まあ・・いいか」 『危なくなったら、薬をやれ。人にでも使える薬をやるから』 「わかった」 クロウは仕方なく手伝う事にしたのだった。 「がんばってね〜」 「う・・・っぐ・・ふひょ・・らりひへれぇ・・」 訳:う・・っぐ・・くそ・・噛み切れねぇ この名無しでも、引きちぎったり噛み切ったり、出来ない物で名無しを縛っているのだ。 一体、何で、出来ているのだろうか・・・。 ―自警団事務所― 「隊長、どうしますか?」 モンスターがいなくなって、ようやく、動き出す事に決まった自警団だった。 実は、もうとっくに通報を受けて動き出したのだが、団員のほとんどがモンスターにやられまくって、ケガの治療に大変だったのだ。 「ふむ・・・まあ、まともに使えそうな奴だけでいいだろう。私とアルとシュウ君だけでいいな。あそこに行くのは」 浮遊山のことだ。そして、他の隊はそれぞれ別行動になっている。 「隊長・・・シュウの奴、無断欠勤でいません」 「じゃあ、とりあえず二人で様子見に行くということでいいだろう」 「はあ・・・」 そして、リカルドとアルベルトも浮遊山に行く事になったのだった。 ところ変わって、ジョートショップ。 「・・・と、毎日、こんな感じですよ」 「まあ、大変なんですね」 「出動の無い日は、トレーニングしか出来ないし、出動したら、たいがい魔物の相手ですしね」 アリサさんとルシードの二人は、ゼファーが帰ってこないので、世間話をしていた。 やはり、ここだけは平和なのだった。 ●第354話 投稿者:タムタム  投稿日: 6月26日(火)20時42分03秒 「…やるしかないのか…」 「…どうやらその様だね」  ディムルとアーシィが沈痛な面持ちで呟く。出来る事なら戦いたくない、だが、戦うしか道は残されていない。だからこそ、既に気持ちは切り替えている。ジェノアも同様。戦う気は充分のようだ。 『エーテル・バースト!』  四枚のカードをその手に持っていたアーシィが、自分を含めた3人へいきなり魔法をかける。世界の法則が元に戻りさえすれば、カードがある以上魔法をかけるには充分だ。  既にジェノアはカイルと接近戦を演じている。ディムルはやや後方、技量の差もあるだろうが、息のあった連携が出来ない以上、魔法での援護に徹するようだ。 「それで全力なのか?」 「なめるなっ!」  挑発的なカイルの台詞にジェノアの攻撃が激しさを増す。左の同を狙った一撃をカイルの手にしている剣で受けられると同時、切り替えして左腕を狙う。だが、カイルは軽く左半身を引くだけでその攻撃をやり過ごし、がら空きになっている胴へ剣を繰り出す。が、 ―ガキッ!―  いつのまにか手にしたナイフで受け止められる。ジェノアは振り切られている剣を右腕だけで操り、袈裟切りに振るう。カイルが左腕で受けようとするが、手首を返し、やや無理やりに逆袈裟へと持っていき、振りぬく。 ―ザッ!―  奇妙な音がし、ジェノアの王太刀がカイルを切り裂いた。 「…なかなかやるね、だが…」  切られてなお、平気な顔でカイルが言うが、何かを言い終えるより早く、 『アブソリュート・ゼロ!』 『カーマイン・スプレッド!』  アーシィとディムルの二人から魔法が飛ぶ。避け様としたカイルだが、押し潰されそうなほど強力な重圧を受け、体の自由が奪われる。そこへもう一撃。被弾した紅球は無数の小爆発を起こし、その姿を飲み込んで行く。 「やったか?」  ジェノアが聞いてくるが、その様子を見ながら、アーシィはさらに呪文を唱えている。 「……いや、まだだ!」  ディムルの叫び声が聞こえた頃には圧倒的な熱量を伴った閃光が目の前へとやってきていた。 「残念だったね。体術を封じるまでは良かったが、私は魔法の方が得意なんだよ」  ヴァニシング・ノヴァを放ち、カイルが言う。体力は削られていくが、お構い無しと言った状態だ。だが、自らが放った魔法が収束していくのを見て、一瞬怪訝な表情を見せる。 『静かに燃える煉獄の炎。滅びをもたらす紅き吐息。冥府より来たれ、焔の鉄鎚』  朗々たる声と共に、収束された魔法が炎へと変換され、上空に赤い魔法陣が引かれる。 「これは…タナトス魔法!?」  魔方陣の中央から赤い光がドーナツ状に広がり、深紅の帯が叫びを上げたカイル目掛けて降り注ぐ。 「…残念だったね。私も魔法は得意なんだよ」  左手にスペルサインを出現させたまま、アーシィが呟く。<ディレクション・フィールド>の魔法で完全には防ぎきれなかったのか、三人ともダメージを追ってはいるが、戦闘を行うには支障は無いようだ。 「これほどの魔法の使い手でありながら、なぜ、組織の情報網に引っ掛かっていなかったんだろうね?」 「さあ?。私だって君の事はほとんど知らないんだ。お互い様という事にしとか無いかい?」  体の所々を焦がしたカイルと、コートの左腕を灰にしたアーシィが戦闘中に相応しくない、とぼけた会話を交わす。そして、四人はまた戦闘態勢をとり始めた。 ●第355話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 6月27日(水)17時17分41秒 「ふむ」  小首を傾げ、カイルは一瞬考え込んだようだったが、 「少々早いが、私も少し本気を出させてもらおう。防御しようなどと考えないほうが良いぞ。 ちゃんと避けることだな」  そのまま何の呪文も唱えず、緩やかな動きで右腕を上げ、掌を三人に向ける。  瞬間。  カイルの右手の周囲、その空間が猛烈な勢いで歪曲した。 「!?」  だが、そこで終わらない。その歪みは急速に前方に向けて集束し、人間の反応限界を超える速度で凝縮。 虚空を吹き伸びる槍と化した。 「なっ…!?」  “それ”は、ほとんど反射神経の働きだけで回避した三人の傍ら、岩石で構成された地面に突き刺さり、 突き抜けた。  一拍の間があり、次いで、遥か下方で何かが盛大に打ち砕かれる破壊音が響いてくる。  カイルの一撃が巨大な浮遊山を貫通したのだ。 「やってるな。まだほんのウォーミングアップだが、あの力に真っ向から対抗できる存在は少ないだろう」 『相変わらず、とんでもないこやってるわね…。あの時、完全にとどめを刺しておくべきだったわ。 まさか、首を切断しても滅ぼせないなんてね……』  能天気な声を上げるアーウィルを苦い顔で睨み、ルリアは嘆息した。 『いったい、あのカイルって何者なの? あの力はまさか……』 「大当たり。そのまさか、さ」  自分のお気に入りの生徒が、良い回答をした時の教師のように嬉しそうにアーウィルが応える。 『なんてこと……。あのカイルの力は、どういう種類のものなの?』  ルリアの問いに、ふむ、とアーウィルは頷き、 「カイルの手に入れた能力は、"加速"だ。触れたあらゆるものを“速い”と“定義する”ことにより、 空間を"加速"して今のような“空間衝撃波”を放つこともできるし、 “時間の流れ”を"加速"すれば、どれほど強固な障壁さえ崩壊させることができる」  すらすらと答え、アーウィルは伸びをした。 『“定義”を操る、古代の魔法ね…。今あるタナトス魔法などと違って、完全に歴史上から抹消されたはずなのに……。 やっぱり、あなたたちが彼にそれを教えたのね』 「そのとおり。因みに、カイルはもう人間じゃない。自分自身の存在を“書き換えた”からな。 あの能力は、すでにカイルという存在を構成する要素の一つだ。ゆえに、どれだけ使おうと消耗することはありえない」  頭痛を覚えたようにルリアはこめかみを押さえ、 『"破壊"という概念そのものを生成、増幅、半固体化させて撃ち出す、あなたの<戮皇>と良い勝負ね……。 あの時、どれだけその力を封じるのに苦労したか……』  その言葉に対し、アーウィルは微塵の悪意も含んでいない表情で、 「あれは見事だったよ。冷静に自分の弱点を見抜き、入念な計画を立て、そしてなにより、 あれだけの大仕掛けを実行するだけの度胸は賞賛に値する」 『あなたに誉められても、全然嬉しくないわよ……』  うんざりした表情のルリアの遥か背後で、内部を打ち抜かれた浮遊山は、急速に崩壊の速度を上げていく。 ●第356話 投稿者:レイズ  投稿日: 6月28日(木)12時09分06秒 「ここがエンフィールドか…」  近頃ほぼ常に部分的にものすごーく騒がしいエンフィールドに、またも新参者がたどり着いた。 「…昼なのに静かだね。」  言った瞬間、どこかで何かが爆発するような音が聞こえる。 「…静かだね。」  無理にそう思い込むことにしたらしい。どこかの空が一瞬赤く染まったような気もするが…気のせいだろう。  ちなみにこのとき、カイルにアーシィたちが攻撃魔法を叩き込んでいたことは言うまでもない。 「…いいかげん、見るのはやめてほしいんだけどなぁ…」  誰にも聞こえないように、声にも出さず、しかし口の形だけでそう言う。誰が彼を見るというのか。周りには誰もいないのに。 「とりあえず、町に入りますか。」  呟くと、その青年…シェイドは静かに歩き出した。  町の中は、結構ぼろぼろだった。  建物は無事だが、石畳は割れている。今にも魔物が飛び出してきそうな雰囲気があるが、それはないと彼は確信していた。 (この辺には魔物の存在は『感じ』られないしね。あるのは瓦礫と家と家財道具のみ…ん?)  歩いていて何かに気が付いたのか、急に走り出す。そのまま進み、角を曲がったところで倒れている人を見つけた。 「…大丈夫?」  とりあえず近づき、声をかけてみるが返事がない。どうやら気絶しているらしい。 「…あ〜あ…女の子が顔に怪我して…」  仕方がないのでその少女…事件が起こる前に町に出ていたシーラ…を抱えあげたシェイドが、彼女の顔を見て言う。 「回復魔法でも使っておくか。」 『…な!?おい、やめ…』  呟いたシェイドを、どこからともなく聞こえてきた声があせって止めようとするが。  時、すでに遅し。 『ティンクル、キュア』  シェイドが唱えると同時、爆発するように広がった光が町を包む。  光が収まったあとには、傷が消え、何事もなかったかのように眠るシーラと、吹き飛ばされたらしく壁にめり込んだシェイドが残った。 ●第357話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 6月28日(木)17時40分56秒 「ったく、俺は一応鍛冶師なんだがよ・・・」 クラウド医院。 クロウは手際よく治療を手伝っている為、はかどってはいるようだが。 人が多すぎる。 「あーっ、たく。」 少々、うんざりだ。 「おーい。」 玄関辺りで声が聞こえる。 ほとんどが呻き声だから目立つ。 「あー、何だー?」 帽子がちょっとずれたのでかぶり直しながら玄関へ行く。 「・・・あんた、誰だ?」 赤毛の少年・・・ピートがいた。 「俺か?俺はクロウ・フリュート。で、何の用だ?」 「おう!俺はピート・ロス、壁にめり込んでたんで、連れて来た。」 暇だったので外に出たら魔物は消えていて、暫くしてから爆発が起きたのでそっちに向っていたらたまたま、シーラと壁にめりこんだ人がいた。と言うことらしい。 「壁に・・・その割には大した怪我じゃないな・・・で、シーラとやらは?」 確かに、壁にめり込んだらしき人はいたが、シーラとかいう人はいない。 「シーラならテディが来たから任せた。」 「・・・喋る犬に人担げってか。お前は。」 ジョートショップの手伝いでテディには面識がある。 「あ・・・。」 どうやら頭があまり回ってなかったらしい。 「・・・おい。」 クロウは呆れている。 「おいっ!何をサボっている!!手伝え!!」 「おっと、じゃ、さっさとその場所に行くんだな。ピート」 そう言って玄関を後にするクロウ。 「・・・だから俺は鍛冶師だって。」 今だに治療をしながらぶつぶつと言っているクロウ。 「そーいえば、さっきの奴。旅の人かな。・・・ん?荷物無かったぞ?」 今頃、重大なことに気づいても遅い。 「まぁ、なるようになるか。」 そしてまた治療に専念する。 ●第358話 投稿者:ファウスト  投稿日: 6月29日(金)15時31分50秒 (どうしよう・・・・・) セネカは困っていた。復讐の手伝いについてきたのに、トキハは平気でその相手と喋っている。 彼を無視して。 (う〜ん・・・。とりあえず、しばしこのままでいるか) 実は、自分がほっとかれていると思った辺りから時波を抱いて、座っていた。 時波は失神したままだが、起きてもすぐにまた意識がなくなることだろう。 (ふっ・・・自分がどういう状況に、おかれているかも知らずに眠ってる) 寝ているというより、気絶しているのだが、あまり違いはないだろう。 (・・・じっくり見てみると、結構かわいいな、この子・・・・・魔法で、女の子にしてみようか・・・) セネカが10歳の少年に対してそんな事を思っている時、トキハはアーウィルとまだ喋っているし、カイル達は戦闘中だし、街では何か光ったし・・・。 それはさておき、アーウィルとルリアは。 「ところで、あの男は守り神の一人だったかな?」 「ええ、何か知らないけど、スシュカルと仲がいいみたい。もともとスシュカルは人間だったし、友達ぐらいいるわ。大抵死んでるけど」 時波の前世には、いろいろな種族がいる。人が一番多いが。 「ふ−ん。で、守り神達の実力は?」 「さあ、スシュカルの記憶だともともと人間だった見たいだけど・・・。何でこんなとこにいるのか・・・。何で人じゃなくなっているのか・・・」 さっき、二人で話したときもセネカは自分の事をあまり話していなかった。 「謎の多い奴なんだな・・・」 「ま、知ってたとしても教える訳ないでしょう。あなたとの勝負の切り札になるかもしれないんだから」 「む・・・・」 実は、アーウィルはクロウの呼びかけの時に、自分と同じクラスと言っていたのが気になっていた。 実際の所はどうなのか。ただ単に、強いと分からせるために自分でたとえただけなのだろうか。 そして、ルリアは嘘をついている。実はセネカの事をもう少し知っている。 セネカは人間の時から、かなりの魔導士だった。得意なのは精霊、召喚魔法だった。 そして、ある程度魔法を極めた所で、新しい魔術を極めるといって、どこかに去っていった。 だいたい、これがスシュカルが知っていた事。で、さっきの会話で聞いたのは・・・・。 新しい魔術を会得しに東洋にわたって、修行と研究していたが、修行の最中に遭難して記憶喪失となり、あてもなく彷徨っていた所、 『記憶を取り戻させてあげるから、我々の実験に協力してくれないか?』 と、謎の軍団に言われ承諾したが、人体実験をやられてこんな体になり、浮遊山の守り神になっていた、と。後でそれがフリュート家の一族と分かったが・・・。 もともと独り身だったし、なんだかんだで記憶も戻ったので大人しく従う事にしていたのだった。 そしたら、時波と出会った。 ちなみに、新しい魔術はもう極めたらしい。それがどんな物なのかは、まだ聞いていないが。 で、二人は・・・。 「と、言う事は、また自分と戦うのかい?」 「うーーん。あたしよりも他の奴らがやるって五月蝿いのよ。だから、他のとやってちょうだい・・・・」 ルリアは、他のと代わった。 ところ変わって、さくら亭。 フローネが元に戻って、もう波茶滅茶に騒ぎまくった後、よくわからないけど街の様子も元に戻ったみたいだったから、これで丸く治まった、と言う事を祝って宴会をやることにした。 そして、そんなごちゃごちゃしている所に客が来た。 ケインだった。 ジョートショップでは・・・。 「重いッス〜〜」 テディが根性でシーラをここまで運んできた。ついでに、シェイドの荷物も。 そしたら、何故かルシードはジョートショップの入り口で休んでいた。 「お、テディ。どうした?」 「実は・・・・」 説明終了 「と言う訳ッス」 「なるほど、だから荷物まで持っているのか。じゃあ、それをクラウド医院に届けならなくちゃいけないな・・・」 シーラはアリサさんに任せて、ルシードは荷物を届けてやる事にした。 ●第359話 投稿者:タムタム  投稿日: 7月 1日(日)07時50分15秒 「…ん〜、参ったね。随分嫌な攻撃を仕掛けてくる…」 「…なんでおれらの相手はこんな奴等ばかりなんだよ」  カイルを前にアーシィとディムルがなんだか愚痴のような呟きをもらす。どうも、能力差の激しいような奴ばかりと戦う羽目になるようだ。…最も、もともとの能力が他と比べて低いと言われてはそれまでなんだが…。 「で、どうする気だ?」  ジェノアが聞いてくる。今の能力を見て、一人では分が悪いと思ったのだろう。まあ、慎重でなくては生き残って等来れなかったんだろうが。 「そうだね、まずはあの両腕を封じたい。……シュウ、頼んだよ…」  アーシィがカードを構えながらそう言った途端、二条の剣閃と共にカイルの腕が宙を舞う。気配も魔力も感じなかったためか、シュウの存在に気付かなかったようだ。 「…ふん、頼まれるまでも無い」  そう言いながらさらに刀を振るい、再生しかけている腕を切り裂いていく。どんな能力も発動しなくては恐くない。 「ディムルはシュウの援護を…上手くあわせてくれよ…」  アーシィの意図する所を察して、ディムルが突撃しカイルの動きを止める。シュウとディムルの連携攻撃はそう簡単に破れないだろう。そして、ディムルが目で合図を送り、ディムルが首をシュウが足を狙った一撃を繰り出す。  両腕の無い状態では両方を防ぐ事は出来ず、カイルは足を切り裂かれ、バランスを崩す。それと同時に飛び退く二人。 『クリムゾン・フレア!』  アーシィの左腕から生まれた、四つの火球を伴う紅蓮の火球は真っ直ぐカイル目掛けて突き進み、着弾。それと同時に四つの火球も破裂し、強烈な熱量を持つ炎を内側へと封じ込める。 『(精霊よ力を貸したもう、我が名はディムル、火を属性とし土を生ずる者、行け精霊たちよ、世界の理(ことわり)を崩す者に鎖を与えよ)』  間髪いれずディムルが魔法を放ち、大地から生じた土の鎖がカイルを締め上げる。その隙にタイミングを見計らっていたジェノアが飛び出し、炎に包まれた王太刀を振るう。カイルは炎の斬撃を受け、地面に膝をつく。だが、それだけでは終わらない。 『亜楠流剣術奥義ノ壱 速水』  シュウの超高速の居合切りがカイルを上下に分断する。が、止めを刺すまでは油断出来ない。復活する可能性だってあるのだ。 『あらゆる力を打ち消す光の結界。汝に白き静寂が訪れる<ホワイト・ミュート>』  呪文と共にアーシィの手にした白いカードが形を失い消失する。続いて、白い霧のようなものがカイルを包み込み、戦いは終結した。 「…そんな状態でまだ生きていたんだね」 「貴様……」  結界内に捕らえられているカイルを見下ろしながら、アーシィが冷たく言い放つ。カイルはこちらを睨みつけているが、再生能力を欠いていて動く事すら出来ないようだ。 「知らないわけじゃないだろう?。どんな力にも“抑止力”となる物は存在するんだよ。もう、十分生きただろう?。…さよならだ…」  そう言いながら、アーシィは結界ごとカイルを封印した……。 ●第360話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 7月 1日(日)10時41分43秒 『残念〜。そう簡単に終わっちゃ、面白くないわよ』 「…!? 誰だ?」  不意に虚空から響いた声に、全員が身構える。  ジェノアとシュウは、あからさまに嫌そうな顔をした。 『まったく…。もうちょっと慣れてからにしなさいって言ったのに……。最近の若い人は血の気が多いわねー』  どう多めに見積もっても十代前後の少女のものにしか聞こえない声が、呆れた調子で続ける。 「うるさい。少々遊びすぎただけだ。さっさと何とかしろ」  苦い顔でカイルが吐き捨て、虚空を睨んだ。 『はいはい』 『<コードα>・空間概念操作 精密 空間切断結界発生・実行』  危険を感じた者が行動を起こすより早く、周囲の空間が悲鳴を上げた。 「くっ…!」  聴覚を掻き毟るような高音を奏でつつ虚空に青白い直線が走り、 アーシィの張った結界を無視してカイルを中心とした立方体を描く。  一瞬、抗うように結界は揺らいだが、次の一瞬には跡形も無く砕かれた。 「ふん…。全員、ずいぶんな腕前だな。あの程度で相手するのは失礼だったようだ。次は、 こちらも礼儀正しく全力でやらせてもらおう」  結界から解放され、瞬時に体の再構成を終了させたカイルが言い、大気を打ち付けるように腕を振った。  同時に、カイルの周囲の大気が爆発。その爆風に乗り、カイルは崩れつつある浮遊山から離脱していった。 「まて…!」  無意味。生身の人間には耐えられない速度でカイルは遠ざかり、消えた。 『さて、次はあなたたちね。今から走っても、ここが異空間に飲み込まれる前に逃げられるかどうか微妙だけど、 送って上げましょうか?』  無言。 『女性の申し出を無視するなんて失礼ね。まあ、良いわ。勝手にやっちゃうから』 『<コードα>・空間概念操作 精密 空間切断/空間互換結界発生・実行』  反応する間もない。一瞬で青白い直線で構成された立方体に閉じ込められ、視界が白濁する。  気がつくと、エンフィールドの街外れに全員が立っていた。少し離れた場所にコウもいる。  その直後、度重なる破壊と崩壊に耐えられずに浮遊山が内部から破裂した。飛び散った破片は、 地上に落下する前に別の空間へと飲み込まれ、霧散する。 『終わったわよ』 「そうか」  喧嘩腰のスシュカルと話していたアーウィルは、声の方へ首だけを向けて応えた。 『<コードα>か…。貴様もここにいたとは……』  苦い顔でスシュカルが言い、 『セネカ……すまないが、これ以上戦っても無意味なようだ。時波を起こしてくれ、私は一度消える』  セネカは怪訝そうな顔で、 『良いですけど……。こちらは他の守護者の協力をもらえれば四人ですよ? 何故退くんです?』  鈴を転がすような笑い声が虚空から響いた。 『わたしたちの能力を知らないから、そういうことが言えるのね。わたしたちの最大の強味は、 単純な力の強さではなく、その特殊性。カイルも同じね。彼は総エネルギー量では“ロード”クラスには敵わないけど、 油断さえしなければその特殊性を生かして互角に闘えるわ』  アーウィルは頷き、 「自分は攻撃、そして」 『わたしは防御と支援に、それぞれ特化してるの。これがどういうことか、解るかしら?』  スシュカルは面白くない顔で、 『そういうことだ。こいつらが合されば、単純な1+1=2の公式には当てはまらない強さを発揮する。 一度、作戦を練り直して出直しだ』 「頑張るんだな」  アーウィルは嫌味の無い口調で、 「力に頼っていては、自分たちは倒せん。以前のあの作戦も、もう通じないからな」 『後悔するぞ…』 「させてくれ。是非とも」