●第331話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 5月28日(月)17時30分37秒 「…で? あんたはどうするんだい?」  ケインを見送り、リサがアーウィルに問う。 「ん? 決まってるじゃないか。さくら亭を全力で守る。でないと、寝る場所が無くなってしまう」 「あ、そう」  たしかに、さくら亭がこの騒ぎで無くなってしまったら、アーウィルもリサも泊まる所が無い。 それに、二人ともここが気に入っている。 「そういうことだな」  言うなり、アーウィルが大口径の拳銃を構え、空から飛来した翼を持つ影を粉砕した。 「夜妖かい……。こいつも、本来なら地上には出てこないはずなんだけどね…」  夜妖とは、生前に邪悪な魔術に堕落した魔法使いの死体についた蛆が変化した魔物だ。 大まかな人型をしているが顔は無く、完全な無貌。蝙蝠のような翼と鉤爪、蜥蜴のような尾を持つが、 それは外見のみ。  実際は、全身がゴムのような弾力性を持ち、硬い骨や爪などは無い。腐敗した屍のような肌の色をしており、 気色の悪いことでは食屍鬼といい勝負である。 「まったく……。本当にホラー小説の登場人物にでもなったような気分だね…」 「食欲なくなるから、うまくすると痩せるかもよ。ダイエット中なら」 「あいにく、落とすような脂肪は一グラムも無いよ」 「そいつは残念」  言って、アーウィルは棍棒型手榴弾を猛速で投擲。群がってきた雑魚を吹き飛ばす。 「なんだか増えてきたね…。おかしい……」 「たぶん、さくら亭の中のあの「魔楽器」を、どこかに運ぶつもりじゃないか? 出てくる魔物はフローネの夢の産物でも、 大半を動かしているのは別の意思だ」 「なるほど」  言うなり、リサの両手からナイフが飛ぶ。破壊力は小さくとも、正確に急所を射抜けばたいていの魔物は倒すことが可能だ。  破壊力が全てではない。 「相変わらず、冴えてるな。そのナイフ捌き。最近、戦場から遠ざかっていたから、 少しは鈍ったんじゃないかと心配だった」 「要らんお世話だよ。……それにしてもあんた、なんだか楽しそうだね」  怪訝な顔で、リサは改めてアーウィルの横顔を見た。戦いが楽しいのではない。何か…… これから親しい友人に会うのを楽しみにしているかのような顔……。 「そう見える?」 「まあね…。あんたが楽しんでるなんて、事態が最悪な証拠だよ」  言われて、アーウィルは肩をすくめる。 「酷いな。ちょっと古い知り合いが来てるみたいなんでね。あとで挨拶にでも行こうかと思ってるだけだよ」 「そうかい」  それきり、リサはその話題に興味を無くし、アーウィルとともに魔物の撃退に専念した。  そのため、彼女はアーウィルの呟きを聞き漏らしていた。 「久しいな、スシュカル……。自分が会ったのは十代前…女の時だったか……。後にも先にも、力に頼らず自分に挑んだのも、 自分の唯一の弱点を見抜いたのも、君だけだったな……。今回は、首を落とさずにゆっくり話したいものだ…」 ●第332話 投稿者:ファウスト  投稿日: 5月29日(火)15時24分09秒 「こんなもんでいいかな・・・」 ルシードはとりあえず、盆栽を納得いくように仕上げた。 「せいが出るッスね」 どこからか、テディが出てきた。 「何だ。テディ?」 「見にきたッス。何かお手伝いできる事あるッスか?」 しばらく考えたルシード。テディでも手伝える事・・・今はこいつでも使った方がいい、と思ったので。 「・・・じゃあ、どっかから盆栽の切り方の本持ってきてくれ」 「わかったッス」 そう言うと、テディは何処かに行ってしまった。 本当はゼファーを探してもらおうと思ったが、何処にいるのかわからないゼファーをテディに探してきてもらうのは、無理があるだろうと思ったので、この仕事を何とかするために、本を持ってきてもらうことにした。 「ルシードさん、お茶をどうぞ」 台所から、アリサが出てきた。 「すみません、アリサさん」 ルシードも、アリサを呼び捨てには出来ないようだ。で、出された茶を飲む。 「おいしいですね。このお茶」 「そうですか?」 「ええ」 ルシードは仕事の手を休め、アリサと他愛ない会話をしていた。ここだけは、平和なようだ。 一方、時波たちは・・・・・だれも来なくて暇だった。 『時に、セネカ』 「何でしょう?」 『この騒動が終わったら、ちょっと手伝ってほしい事があるんだが、いいか?』 「内容によりますね」 何もいわずに手伝ってくれるわけなかった。 『何、復讐だよ。そいつに、5、6回殺されたり、滅ばされたり、色々されたのでね。そいつがどうも、この近くにいるらしいのでね』 顔は笑っているが目は笑っていないと言う、恐い表情を浮かべていた。 「・・・あなたなら、一人で十分じゃ・・・」 セネカの言葉をさえぎって、スシュカルが言う。 『君くらいのレベルの協力者が必要なのだ。時波を守ってくれる奴と、私の媒体になってくれる奴が』 「・・・まあ、いいですよ。断る理由もないし、あなたの頼みですしね」 『ありがとう。ところで、私の名前だが、いっぱいありすぎて、いちいち名前を変えるのは面倒だから、時波で統一してくれ』 「ああ、はい」 『私の場合、時波と区別つけるため、トキハで』 「・・・・はい」 どっちでも一緒じゃないか、と思ったが、反論してもしょうがないので言わなかった。 『それじゃ、私は寝る。他の奴と変わるよ・・・』 「えっ?」 いきなり、スシュカルは寝て、新しいトキハが出てきた。 「ここはどこだ〜?」 金髪の男がそう言った。 「くそっ、下山するつもりが迷っちまった・・・」 悪態をついても、迷っている事には変わらない。うろついているうちに、開けた道にでた。 「やれやれ・・・うん?」 少し離れた所に人が見える。モンスターではなさそうだ。 「ラッキー、お〜い」 金髪が襲いたいのを我慢して近づく、そして、その人とは。 「何だ。お前は?」 トーヤだった。 ●第333話 投稿者:タムタム  投稿日: 5月30日(水)21時09分10秒 ―遺跡内(浮遊山)―  ……相変わらずアーシィはトラップを解除していた。何故か作業がなかなか進んでいない。何処を如何すればこういう発想が出てくるのか?、と言いたくなるようなトラップが続く。  作る方は相当な気合の持ち主だったようだ。かなり根気のいる作業だったろう。…良く考えれば三人いた守り神の中に、トラップが好きな女がいたはず。作ったとしたら、彼女くらいのものだろう。  このまま進んだら、彼女に出会うのだろうか?。そんな事を考えながら進んでいくと、何故かまた表に出てしまった。トラップの通路から出て、周りを眺めてみる。  良い景色だった。…違う、山頂と思われる場所が遠目にもわかる。何故か第二、第三の守り神のいる場所を通らずに、山頂付近に出てしまったのだ。かなり不思議な状態だ。  何か理由でもあったのだろうか?。考えてみる、推測ならいくつか出てくるが、答えは出て来そうに無い。自分で作ったわけでもないのだから、答えが出て来る訳が無いと思う。  仕方ない…と言うよりはできる事が無いので、アーシィはそのまま山頂に向かって歩いていった。 ― 一方さくら亭内部 ― 「…俺たち、完全に忘れられてるよな…」 「…ほんとよね…」  アレフとパティがそんな事を言いながら、イスに腰をかけていた。やたらと人間が集まっていて、一時期騒然としていたさくら亭だが、今は全然人がいない。  事件の解決に出て行ったり、街を守るために出て行ったり、さくら亭を守るために出て行ったりしたのだから当然と言えば当然なのだが。 「こんな状態じゃお客なんて来ないわよね」 「そりゃあ…」  来る訳が無い。よしんば来ようと思っても、それは文字通り命がけだ。わざわざ命をかけて食事をしにさくら亭に来はしないだろう。…来ようとする奴だって、いるにはいると思うのだが…。 「…ふみぃ…。もうたべれないのぉ」  こんな時でも(と言うか、誰もいなくなったからかも知れないが)メロディは気持ち良さそうに眠っていた。  ちなみにグリフレンツは未だに闇鍋を突付いていたりもする……。 ●第334話 投稿者:熱血王  投稿日: 6月 1日(金)23時57分42秒 「(この程度か,想像による物に強さなんて・・・強さより量と言った感じかな)」 コウはふと考えた。辺りには化け物の死骸が散乱している。 「(ここはどこなんだろう?まあいいか)」 化け物の姿を追って来たので,今現在どこにいるのかよくわからない。森と言うか山の前辺りのような場所だ。帰ろうと思えばいつでも帰れるが。 「(あれ,向こうで物音が・・・)」 木々の向こうで何か音が聞こえてくる。とりあえず行ってみることにした。 数十メートル近づくと,そこで誰かが化け物と戦っている。いやどちらかと言うと防戦一方らしく 避けてばかりで今のままでは危険だ。 「大丈夫ですか!?」 「いや,少しばかりマズそうだ。」 答えた男は,長身で栗毛色の髪の毛が腰の上辺りまで伸びている。ゼファーだ。 ゼファーは足のケガのせいで大きな動きができない。化け物の攻撃を最小限の動きで避けている。 「僕がやります。離れてて下さい。」 言われてゼファーは攻撃の隙をついて一気の距離をとる。 化け物には頭が三つほどあり,それぞれが違う生き物の形をしている,尻尾は蛇にようだ。 「(これは・・・キマイラ?今までのとは違うようだ。しかしあの人はよくこんな化け物を相手に 防戦を続けられたな)」 そう考えたコウもキマイラの攻撃を最小限の動きで避けているがゼファーほどではない。 コウは避けながらも確実にキマイラにダメージを与えているが,キマイラほどの大物となると素手 では限界がある。 「(仕方ない,あまり人には見せたくないけど・・・やるか。)」 コウは考えてすぐに後退した。 「・・・纏われし者,その真価を問う。」 「・・・!」 ゼファーが近くにいるため,本来より短い詠唱で力を引き出す。そして六芳星の描かれたシャツが 光り出す。 ゼファーは目の前で交戦している少年の変化に一瞬だけ驚きを見せる。何か武器を出すのかと思ったが少年を見る限りなにかを隠し持っているようには見えない。 コウは両腕に神経を集中して力を篭める。突進してくるキマイラを紙一重でかわすと,胴体に手の 掌をつけた。 「・・・ッフ!!」 コウが一瞬力を篭めるとキマイラの身体が少しだけ押されたように見えた。しかしキマイラは何事 もなかったのようにコウの身体を数メートル向こうへ弾く。とどめを刺そうとコウの所へ振り向いた時だった。 ―ずうぅぅん― と言う音を立ててキマイラが倒れた。流石のゼファーも何が起きたのかいまいち理解できない。 キマイラの一撃をくらったコウが,まるで何事もなかったように立ち上がり話し掛けてきた。 「とりあえず助かりましたね。僕はコウと言います。名前を教えてもらえませんか?」 「ああ,ゼファーだ。(コウ・・・なるほど,どうり強い訳だ)」 「一体何をしていたんですか?」 「ああ,盆栽用に土を取りに来たんだがな・・・。アレに襲われて,助かった。」 「土・・・ですか大変ですね。」 ●第335話 投稿者:ファウスト  投稿日: 6月 2日(土)16時10分10秒 浮遊山山頂・・・・。 「・・・・・・どうやら、新しいトキハさんと、話している暇はなさそうだ」 セネカの前には、ローラとマリアを足して二で割ったような女の子がいた。 『ちょっと、あなたにあたし達が作った魔法を教えようと思って出てきたのに、もう、オワリ!?』 「だって、もうすぐ人がきますよ。あなたの事が僕意外に知られたら、時波くんの耳のも入るかもしれないじゃないですか」 『う〜・・・・わかったわよ。とっとと、あなたを何かにに変えて時波を起こせばいいんでしょ!!』 「・・・・・・・それでは、宜しくお願いします」 『いくわよっ!3、2、1、ヤアッ!!』 その頃アーシィは・・・・・・・・。 「後、もう少しって所で・・・・」 アーシィの目の前には、フローネの想像で出たモンスターがいた。 見た目は、人型で人間みたいに歩いてきそうだが、どうも四本足で歩くタイプらしい。そして、両手両足に全長30cmくらいの爪がある。これがこいつの武器のようだ。 そして、自分がキーアイテムの一つを持っているのだから、自分がいかないと扉を開けられない。 で、先にモンスターが仕掛けてきた。アーシィ向かって、襲いかかる。 「おっと、危ない」 簡単にかわすアーシィ。これくらいのスピードなら、アーシィのほうが上だ。 しかし、よけたすぐ後に次の攻撃を食らってしまった。 「グッ・・・・・・しまった・・・」 そいつは爪を飛ばして攻撃したのだった。それはアーシィの右肩に命中した。 貫通してない。抜いたら出血が酷くなるだろうから、抜くのは後にする。 モンスターが近寄ってくる。もう、仕留めたと思っているのか、二本足で歩いてくる。 「まさか・・・・爪を飛ばせるなんて・・・・」 どこかに、逃げるかしないとやられる。ただ走ったら、追いつかれるので、砂の目潰しを食らわす。 「今のうちに・・・・・・!」 それから、適当にうろついて、隠れそうな所を見つけたアーシィは、何とか隠れる事が出来た。 「ん〜・・大ピンチ・・・・だな」 そう呟いて、傷を見た。 「・・・!?」 血が固まってない。止血をしなければ失血多量で死ぬ。 そう思って、服を破って包帯の代わりにしようとして、爪を触ったら。 「あ」 爪が取れた。一気に血が吹き出してしてくる。もう、包帯程度では止まらない。 しかし、なぜか傷に痛みを感じない。爪に血を固まらなくする毒が入っていたのだろう。それが麻酔の役目になっているのかもしれない。 そのうち意識がなくなっていくだろう。出血多量による意識喪失に・・・・。 だが、アーシィの血の匂いを嗅ぎ付けて来たのか、さっきのアイツに見つかった。 しかし、その瞬間。 「ハアッ!!」 モンスターは真っ二つ。 後ろに見慣れた顔がいる。クロウがいた。 「何、やられてんだか・・・まあ、運が良かったな」 「一応・・・・金髪は倒したんだけどね・・・・」 「もし、俺が罠に引っ掛かってここに飛ばされてなけりゃ、今頃あの世生きだったな。色々聞きたい事もあるだろうが、今は手当てが先だ」 「・・・わかった・・・・」 「よし、こんなもんで良いな」 アーシィの傷の手当てが終わったようだ。 「ああ、ありがとう。それじゃ、山頂に行こうか」 「あまり、無理するなよ」 「わかってる」 その後すぐに、歩き出す二人。 そしたら、 「おおっ!!やっと見つけた!!」 「ジェノア」 「ん〜どういう事かな?」 「色々あってはぐれてたんだ」 「どうする、ついてくるか?」 「当たり前だろう」 「じゃ、行こう」 そして、アーシィ達は山頂に着いた。そこには、時波が寝ているだけだった。頭に髪飾りがとめてある。 「ん〜・・・・女の子みたいで可愛いね」 「・・・お前、まさか、シ・・・グハアァッ!!」 無表情で、アーシィの鉄拳がジェノアのあごにヒットする。ジェノア、ダウン。おそらく気絶しただろう。一体何を言おうとしたのか・・・。 「・・・バカな奴だ。ところで、これもキーアイテムの一つだな」 「じゃあ、後はもう一つのキーアイテムとともに皆が来るのを待つだけだね」 「そういうことだ」 ●第336話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 6月 3日(日)17時12分17秒 「あらかた儀式は済ませておくかな・・・」 そういってクロウは山頂の封印の扉に向っていく。 「あぁ、そうだ。この日記帳、君の先祖の者かな?」 アーシィはさっき見つけた日記帳をクロウに渡す。 「どれ・・・ふむ。これはどうやら初代から七代当たりの物らしいな。ま、俺がもらっておくか」 そして再び扉に近づき。 「我、作品の一つ、フリュートの血族也・・・」 持ってきた短剣で腕を切り、五つある石版の内の、グラスのような物が乗っている石版に血を注ぐ。 『我、作品の一つ、滅びの邪剣、アグレッサー也・・・』 そしてアグレッサーをクロウが石版に突き刺す。 アーシィから受け取っておいた宝玉を手にとり、 「作品の一つ、魔元の宝玉也・・・」 くぼみがある石版の上に乗せる。 そして時波からとった髪飾りを手にし 「作品の一つ、魔集の髪飾り也・・・」 石版の中でも一番綺麗な場所へ置く。 「ふう・・・後は魔放の書か。」 そう、溜息をついてクロウはとりあえず扉の前に座る。 「作品?」 後方から聞いていたアーシィが顔を歪める。 確かにクロウは自分のことを作品と言った。 「そ、俺も作品の一つ、初代はいかれてたからな。特殊な魔力を使って自分の血族すら作品にしたのさ。先祖は色んな種族と交わっていった。そして、俺が人間と交わる事によって最強の作品が生まれる。くだらねぇ・・・」 クロウはそう吐いた後に、 「その為に俺を人間が多い場所を転々とさせているのさ。初代の魔力には逆らえないからな。」 その言葉が終るか否かと要った所で、寝息が聞こえる。 クロウは先程の薬で回復した訳ではない。完璧に治すには深い睡眠が必要なのだ。 アーシィは少し難しい顔をしていたが、疲れていた為か、暫くして眠気に襲われる。 ●第337話 投稿者:タムタム  投稿日: 6月 5日(火)19時22分26秒 ―浮遊山内部のどっか― 「むぅ、やっぱり見つからないねー」 「…やっぱりって…、見つからないと困るんだけど?」 「…それどころか、捜すものが増えてさえいる様な気がしますけどね」  浮遊山内部を適当に移動しながら、アイリとディムルが辺りを見回しながら進んでいる。ロイは後ろから付いていきながら見落としそうな所を見ていく。  そして、その頭の上ではポチがクルクル踊っていたりもする。しかも、時々風船を膨らましたり、それを破裂させたり、スプーンをぴこぴこふって遊んでいたりしたと思ったら、はなちょうちんを膨らませて眠り始めたりもする。  じっと見ていても退屈はしないだろう。ロイが何故愛玩用を創ったのか、解る人には解るのかも知れない。  今は三人だけ、ジェノアはアイりに出会う前にどこかへ飛ばされ、クロウも“魔放の書”を探している途中に何処かへ飛ばされている。テレポートの罠が多いようだが、何処に繋がっているのかはアイリも知らないらしい。  そのため、なるべく罠を作動させないように移動していた3人だが、 「あー!」 「見つかった!?」  突然叫び声?を上げたアイリにディムルが反応した。魔放の書が見つかれば、さっさと山頂を目指すだけでいい。ディムルはいつまでも罠に囲まれて居たくは無いので当然と言えば当然の反応だ。 「あたしの罠が解除されてるー。誰かなー、こういう事するのー!」 「…罠があれば解除するのが当然でしょう…」 「…罠を片っ端から作動させていた人の言う台詞じゃないと思うけど?」 「…気にしないで下さい。ただ単に最優先事項の違いです」  罠を気除されて怒っているアイリを目の前に、ディムルとロイが傍から見れば漫才のような事を言っていたりもする。 「犯人の心当たりは無い?」 「犯人って…、解除したのはアーシィかも知れないよ?。ここを通っていればの話だけど」  何故かアイリの質問に律儀に答えてしまい、ディムルは考えた。アーシィがここを通ったと言う事で考えた場合、とりあえず生きている可能性はあるな、と。  その頃トーヤは…頑張って山道を登っていた。途中で出会った落ち着きの無い金髪は下山する道を教えてあげたら、嬉々として走り去っていったのだ。名前も言わないとは無礼な奴だと思っているようだ。  それはそれとして置いておいて、重症患者を脱走させたまま放って置くほどトーヤは甘い奴じゃない。今も、クロウを捕獲し監禁する位の気持ちはバリバリにある。そのために今山を登っているわけだが。  ちなみにジョートショップには平日に病院へ放り込まれた場合、完全に完治するまでは出て来れないという規則?がある。この規則にのっとり、アーシィも協力するだろうとトーヤは考えているようだが…どうなるかは当事者だけが知っている。 ●第338話 投稿者:YS  投稿日: 6月 8日(金)03時21分37秒 「…アーシィさんがここを通ったとすれば、罠は解除されてますよね…」  唐突にロイが口を開く。 「ああ、そうだろうね」  ディムルが答える。  もちろん、すべての罠を確実に解除できなければ、途中で罠にかかって困っている可能性もないわけではない。 「…彼が道端に落ちている本を見落とすとは考えにくいですよね…」  いつものように独り言を言い始めるロイ。 「…だったら、ちまちま移動するのも無駄ですね…」  そういうと、ロイは頭上のポチを下ろして、命令を下す。  基本的にポチは、以前と同じように、ロイの命令しか聞かないようだ。 「ぐっ!」  奇妙な掛け声と共にポチがその小さな手を振り下ろす。  何かが砕ける音と共に、ロイ達の姿はそこから消えた。  そして、無事山頂に着いた。 (…やはり、歪みを強制的に封印してポチに転移させても負担は大きかったか…)  激痛に苦しみながらも、ロイはあくまでむいつものように振舞っていた。汗は噴出していたが、歩き疲れていたためとでも思われるだろう。  転移の際に近くにいたのか、ドクターまでいっしょに来ていた。 「…歩きつかれたので、少し横になりますね…」  皆が現状を理解する前にロイはそういって、座り込んだ。  ドクターが現状を把握したら、下手をすれば巻き込まれることも考慮しての行動だ。 (…さて、あとはゆっくりと見物させてもらうか…)  そして、ロイは目を閉じて眠った振りをすることにした。 ●第339話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 6月10日(日)12時57分04秒 (・・・んぁ?魔放の書の気配・・・) 状況を把握したトーヤはとりあえずクロウを連れて行こうとする。 「ふわぁ・・・あんだ?起きたらいきなりさっきのヤブ医者さんか。」 「ヤブ医者とは失礼だな。脱走した患者を連れ戻しに来たんだぞ?」 「・・・あぁ、うん。まだ完治はしてないな。秘薬のおかげで随分治ったけど」 「・・・?」 そしてクロウの骨折した箇所を調べてみるトーヤ ほぼ外傷は完全にふさがって、骨折は後一週間もすれば完治するだろう。 「・・・どういう事だ?たった数時間でここまで治るとは?」 「・・・まぁ、少し待っててくれよ。書。持ってるんだろ?」 といってトーヤにむかって手を差し伸べる。 「これか?」 トーヤが拾った魔放の書を取り出す。 「あぁ、それ。さて。」 といって立ち上がるクロウ。 「作品の一つ、魔放の書也・・・いざ開かん。封印の扉ぁ!!」 そう言うと、血が煮え立ち、アグレッサーが邪気を放ち、宝玉が割れ、髪飾りが発光し、書が魔力を扉に向って放出する。 「・・・開いた、さて、と、病院は嫌いだ」 「今更何を言う、さっさとついて来い」 「はぁ・・・」 何時の間にかクロウを縄で縛り上げ、無理矢理連れて行くトーヤ。 「あ、そうそう、早くリュートを取れよ。浮遊山が役目を終えて落下するから。」 さらりと危険な事を言って、トーヤに連れ去られるクロウ。 「じゃ、皆さん、アタシも下山するね〜♪」 空間が歪んで歪みがおさまった頃にはアイリはいなくなった。 眠った振りをしていたロイは・・・ 「危険・・・ですかね。皆さんを起こしますか」 ちなみに、皆さん、過労か着地失敗かで倒れてる。・・・いや、眠っている? ●第340話 投稿者:美住湖南  投稿日: 6月10日(日)19時57分58秒  ロイが口外できないようなやりかたで眠っている全員を起こす。 「・・・・・・」  皆さん、いまいち状況が把握できていない様子だ。が、これだけはわかっていると思われる。〔リュートを取ってとっとと帰らねぇとマジでヤバイ。しかもエンフィールド全体がヤバイかも〕 「リュートはどこにあるんでしょうね」  どこにも見あたらないリュート。また探すのか?と少々うんざり顔の「魔法の書探索」メンバー。 「ここにあるよ」  と、いきなりアーシィが出してみせる。 「・・・おめぇ・・いつの間に・・・。いや、聞かないことにする」  疲れている頭にアーシィの説明は限界まで砂糖をぶち込んだ砂糖水にさらに砂糖をぶち込むようなものだ。 「?そうかい。まあ、後で説明してあげるよ。このままだと危険みたいだし」 「・・の、ようだな」  と、これはジェノア。 「どうやって帰るんだ?」 「じゃあ、ポチを」  使えば簡単だろうがロイに無理をさせる事になり、さらに他のメンバーにも負担がかかるため、 「やめたほうがいい」  ・・・と言ったのは誰だろうか。 「・・・・・・」  考えている間にももう、がらがらと浮遊山は崩れ、落下していっている。そろそろ、帰らないとエンフィールドを無事に保護することは無理だろう。 「アーシィ、ジェノア、ちっとばかし無理する気はあるか?」 「そこまで身体は酷使していないからな」 「私達が無事に着けてエンフィールドをちゃんと護れるならば」 「・・・・・・多分、大丈夫だ・・・・・・」 「なんだい?その間は」 ――それは、“ちょっと”危険かもしれない