●第311話 投稿者:熱血王  投稿日: 5月11日(金)00時00分06秒 コウは騒動の中心であるさくら亭を出て,自警団を探した時に見たローズレイク の方へ歩いている途中だった。 目の前には見た事の無い奇妙な化け物。狼男(ワーウルフ)に似ているが身体が 体毛と言うよりは鱗で覆われており,確実に狼男ではない。雑魚と言う言葉はあ てはまりそうにない感じである。 「(やっぱり出てきて正解だったな)」 さくら亭を出て,数分歩いるだけで化け物とはちあわせ。普通の人間なら,こん な事態になると恐怖で逃げ出すだろうが,コウにとっては戦闘の対象でしかない ので逃げ出す事は論外だ。 「(さて,はじめるか・・・)」 目の前の化け物に攻撃を仕掛けようとした時だった。 「「うわあああああああああああ」」 二つの悲鳴が後方から接近してくる。 「?」 コウは化け物への攻撃を中断し振り向く。向こうから赤毛の少年とメガネを掛け 少年が悲鳴を上げて走ってきている。ピートとクリスだ。 二人は別の化け物に追いかけられているらしく,必死で逃げ回っているようだ。 とりあえず自分の目の前の敵を倒すことにした。ピートとクリスが捕まるまで にはケリをつけられそうだ。 「(一撃でやるには・・・首か)」 考え,行動する。一瞬だった。気付くと狼男の顔が無くなっていた。 狼男の向こう側へ飛び,すぐに懐に入り,顔に一撃を放つ。気付いたころには 狼男の顔は地面にころがっていた。 「・・・さて。」 逃げ回っている二人をどうやって助けるか,化け物を倒すのは簡単だが,二人 の目の前で化け物の首を落とすというのも考えものだ。 コウは二人が逃げている方向へ先周りし,二人を抱え建物の屋根へ跳躍する。 ピートとクリスはしばらくなにがあったかわからなかったようだ。 「う,う,だからやめようって言ったじゃないか。ピート君。」 「そ,そう言ったって,クリスも賛成しただろ。」 いきなり目の前で口喧嘩をし始める。 「一体なにがあったのかな?」 コウは子供を諭すように聞く。未だに自分の存在に気付いていない。 「ピート君が町外れに山が出現したって言うんです。だから見に行こうって。」 クリスと呼ばれた少年が丁寧に説明してくれる。 「ちょっと待てよクリス。こいつ誰だ?」 二人はやっと自分の事に気付いたようだ。 ●第312話 投稿者:ファウスト  投稿日: 5月13日(日)14時27分29秒 「はじめまして、コウ・ウィックです。よろしく」 自分のことを知らない二人に名前を教える。 「あ、僕は、クリストファー・クロスです。こちらこそよろしく」 「俺は、ピート・ロスだ。よろしくな」 コウの自己紹介を聞いて、二人とも自己紹介をする。 「で、何で、あんなことになってたんだい?」 「いやー、山に行こうとしたら、いきなりあんなモンスターに鉢合わせたんだ」 「そうなんです。あんなの見た事ない・・あ、助けてくれて有難うございます」 少し話してから、コウに自分たちが助けてもらった事に気付く。モンスターに追いかけられたり、いきなり知らない人に出会ったりで、礼を言うのを忘れていた二人だった。 「あーそうだ、ありがとなー」 「いや、礼を言われる事でもないよ」 改まって礼を言われて、少し照れるコウ。 「とにかく、今は外にいると危ないから家に帰ったほうがいいよ」 「分かりました。でも、コウさんはどうするんですか」 「そうだ、コウはどうするんだよ」 家に帰れといわれて、明らかに反発するピート、クリスのほうは何とか説得できそうだが、ピートは時間がかかりそうだ。 「僕は・・・・・」 エンフィールドのとある場所で、マリアが魔法の練習をしている。 「えーい、ルーンバレット☆」 何も起こらない。 「もうなんでよー何も起こらないってのはどういうことなのー」 「マリア」 「きゃっ。ちょっと、ケインじゃない、おどかさないでよ」 「はは・・すまん、すまん。って、それどころじゃないんだ!!」 空間転移でいきなり現れたケインが、今の状況そして、何が起こっているかをわかりやすくマリアに説明する。 「と、言うわけだ。魔法が全然使えないからモンスターに出会うと危ないんだ。だから帰れ。送ってやるから」 少しの間の後、マリアが言った事は、 「わかったわ、その代わり後で魔法教えてね」 「・・・・・・それじゃあ、空間転移」 ところ変わって、アーシィ達は・・・・・ 歩きながら、山へ向かっていた。 「「ところで、君、誰?」」 ロイと時波が同時に同じ事を聞く。 「ロイです」 「空草 時波です」 名前だけの自己紹介終了。 「おい、ところで<夢宮>と、「魔楽器」の違いは何だ。さっきは思いっきり間違ってたからな!!」 「おいおい、ジェノア、そんなに責めてやるなよ。誰だって間違いはあるさ。それに、「魔楽器」と<夢宮>の効果が似ていたから間違ったんだろう」 「えーと「魔楽器」ですが・・・・・・」 時波が口を開いた。 ●第313話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 5月13日(日)17時43分30秒  ブンッと音がしたわけでもないのだが、なんとなく鼓膜にそんな音が残る。  空間転移を発動させてケインはさくら亭を目指した。現状においては直接戦闘こそが最も効力を発揮する。さくら亭にはリサか誰かがいるはずだからマリアを預けてアーウィルの探索、もしくは先ほど聞こえてきた「魔楽器」なるものの調査に行こうとしたのだ。  が。  空間が歪み、また戻ったその時には、ケインとマリアは―何故か―ローズレイクに出現していた。 「あれ?」 「ねえねえ!さくら亭に行くって言ってなかった?」  予想外の光景を目にして呆気に取られるケインと不機嫌に睨み付けるマリア。 「・・・空間転移すら捻じ曲げられている?」  怪訝な顔でうめくケイン。空間を一時的に捻じ曲げて距離を無くして移動、その後元に戻った空間の引き起こす爆発を魔力で押さえ込むのが、ケインの使う空間転移の原理だ。  つまり、転移の発動時の空間の歪曲が変な形で起きれば転移先は変化することになる。  しかし先ほどまでは転移に問題は無かった。となれば、 「例の装置の効力が増加した、のか?」 「ってちょっと、どういうこと?」 「極めて簡潔に言うと、だ。もう通常の魔法はおろか、それこそタナトス魔法ですらまともには働かないかもしれないってことだ」  タナトス魔法は、現在知られているどの魔法よりも強大な力を有している。現存する魔法では対抗すら難しい。そのタナトス魔法を不完全にしてしまうとは・・・ 「ったく!つくづく厄介な!」  毒づくケイン。ここからは歩いていくか、偶然に賭けて転移を繰り返すか、どちらにしても危険なことに変わりは無い。 「ねえ、ケイン。なにか、いるよ!」  手持ち無沙汰にしていたマリアが急におびえた声で言ってくる。周囲を見ると― 「うわあ」  思いっきり嫌な顔をするケイン。そこにいたのは、半透明な白いモノに、やたらと手が長いなにか、でっかい斧を構えた仮面男、その他もろもろホラー物に一度は出てきているようなやつら。 「これもやっぱりフローネの影響かな・・・」 「それ以外になにがある!」  見ると、自分たちは完全に囲まれていた。顔の中には世間一般的な吸血鬼もいる。 「直接倒すしかないな。マリアってど付き合いは得意か?」 「全然」 「魔法の援護もあてにならんし、精霊も呼べそうにないし」  言いつつ、どこから出したのか鋼線と水晶が手に収まる。前に使っていた『ペンデュラム』だ。 「突破して、さくら亭まで走る。マリア、俺のそばから離れるなよ」  言って、腕を横になぎ払う。鋼線がうなりを上げて、こちらを囲むモンスターの群れを両断する。切られたモンスターは、血しぶきを上げる事もなく霧散した。  血生臭い場面を見せずに済む、と安堵しながら、ケインはマリアを連れて、エンフィールドの町をさくら亭へ向かって駆け抜けた。 ●第314話 投稿者:熱血王  投稿日: 5月13日(日)22時07分16秒 「僕は・・・,君達みたいな人達がいるかもしれないから,この街を周ってみるよ。 でも,今は先に君達を送るよ。」 内心‘出現した山’という場所を探す気でいるコウ。 とりあえず今は二人を家へ送ることにした。 「<夢宮>は,中に取り入れた人の夢が具体的な舞台になる事はもう言いましたよね。」 ジェノアが怒り気味なので,すぐに説明を始める時波。 「現実が,ある範囲で夢が混ざった世界・・・非現実に変えられて行く。使用者の思考を中心 とした世界に,フローネさんの場合は,怪物は出てきますが土地についての変化は無かったよ うです。」 淡々と説明を続ける時波,しかしジェノアはそれが<夢宮>の説明である事に苛立ちを感じて いる。 「それはさくら亭で聞いた,今聞きたいのは『魔楽器』の事だ!」 「わかっています,しかし順を追って行った方が納得できると思うので。」 「落ちつくんだジェノア,それじゃあ説明を続けてくれるかい?時波君。」 「はい。<夢宮>はその箱の効力は広がりますが,使用者にも思考的限界があるので,そこで 範囲的な効力は止まります。後はなんらかの方法で箱のを無効化すればいいんです。<夢宮> は使用者の体力を常に維持しています。しかし・・・。」 重要な所で考え込んでしまった時波,それをアーシィが促す。 「しかし・・・なんだい?」 「『魔楽器』は夢を混ぜるのではなく,実際の現実の存在を変えてしまうんです。中の使用者 の肉体を代償に。」 「「なっ!!」」 時波の最後の一言が,周りの人間の現状の重みを理解させる。しかしロイは冷静だ。 「それで,フローネさんはまだ大丈夫なんですか?」 「待ってください,まだ説明は終わってません。使用者の事は,まだ当分大丈夫です。人間と いうのは飲まず食わずでも2,3日は死にません。それより『魔楽器』は効力の方が問題で, 効力は現実を変えますが,結局これも使用者が生きている間に無効化すれば戻ります。しかし 使用者が死んだでしまったら,後も効力が続くんです。」 「死んだ後・・・思考なんかあるのかい?」 「そうなんですよアーシィさんそこなんです。当然死者に思考はありません。そこにあるのは 何も考えていない死体だけです。だから現在効力の及んでいる範囲は少しずつそれを実行しま す。」 「まさか・・・。」 「あ?最後をもうちっとわかり易く言ってくんねーか?」 「俺も・・・。」 なにかを察したアーシィ,ロイに対し,まだ完全に理解しきっていないジェノアとディムルが 更に説明を求める。 「そうですか・・・,わかりました。何も考えない死体の思考を『魔楽器』が実行します。 しかしそには何も無いんですよ,土も,水も,木も,全て・・・地表もクレーターのように なってしまうと思います・・・」 「マジかよ・・・。」 ジェノアとディムルは最後の説明でようやく全てを理解した。 ●第315話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 5月14日(月)17時34分53秒 『論理ゲート・作動正常 展開続行  非論理ゲート・作動正常 展開続行  概念ゲート・作動正常 展開続行  蓋然ゲート・作動正常 展開続行 ……予定通りね。全て問題無いわ』 「フローネの様子はどうだ?」 『よく眠ってるわよ。接点も途切れてないし、いざとなったら引き摺り出せるわ』 「「魔楽器」の改造も、成功のようだな」 『解析も、ね。これで、必要があればいくらでもあの力を使えるわ。……まあ、滅多に使わないでしょうけど』  …と。不意に、人外の会話に人の声が割り込んだ。 「……これが、お前達の目的か」 『違うわよ。ゼファー・・・・・・だったかしら?』 「とぼけるな。常にこの街全体を監視しているお前が、そこに居る人間の名前を知らない筈が無いだろう」  その静かな声に対し、やや芝居がかった化物の声が応える。 「やれやれ・・・・・・、流石は我が主が選んだ人間だけはある。・・・・・・安心して良いよ。 この実験では誰も死なない。当然、フローネも無傷で帰ってくる」  ふん、と鼻で笑う気配がし、 「選ばれた、か。・・・・・・それで、俺に具体的に何をさせるつもりだ?」 『何も。あなたは、ただ知っていれば良いのよ。私たちの存在と、その目的を。あなたの他にも、 何人かは知っている人間は居るわ。あなたに続く候補も、既に決めてある』  何も無い空間に、沈黙が降りた。が、数呼吸分の時間が経過したところでそれは破られる。 「・・・・・・そろそろ出るか。あまり行方をくらますと怪しまれる。適当に暴れてくるから、 転送してくれ」 『はいはい。あれはもう組み込んだわね?』 「組み込んだ。問題ない」 『特殊防御兵装<散夢>・起動 出力加圧  対現実侵蝕領域発生』 「うわ。また出た!」  そう言ったピーとの声を掻き消すように、石畳が粉砕される音が大気を震わせる。 「今まで見た中で最悪な・・・・・・」  少々食欲を無くした声で、コウは自分の相対している魔物を評価した。  食屍鬼。  ただでさえ、胸糞の悪くなるような均衡の崩れ方をした体つきに加え、鼻の曲がりそうな悪臭が漂って来る。 鼻だけでなく、舌で味わえそうなくらい濃厚な悪臭だ。  あまり組み手したくない相手だな、とコウはげんなりと思考し、そう甘いことも言っていられない、 と気を引き締めなおした。  どれほど吐き気のするような相手でも、倒さないことにはラチがあかない。 「・・・・・・っ!」  石畳を蹴り砕き、気色の悪い巨体が似合わない身軽さで跳躍する。  迎撃しようと身構えたコウは、視界の中央にそれを据え、カウンターで拳を叩き込もうと構えた。  が、その動作は唐突に響いた銃声によって中断される。  二発。  食屍鬼の両膝が砕かれた。  両足にハンマーで殴られたような衝撃を受け、巨体がバランスを崩す。そのまま、 無様に路面に突っ込んだ。 「………」  油断無く振り返ったコウの視界に、異形の右腕を持った人影が飛び込んできた。 「おや、元気になったみたいだな。でも、病み上がりで激しい運動は控えたほうが良いよ」  やたらと口径の大きい武骨な大型拳銃を構えて、その男はノホホンと場に相応しくない笑いを浮かべた。  そして、左腕一本でその巨砲を有する拳銃を構えて三連射。  12.3口径の拳銃弾を三発も喰らった食屍鬼の頭部が、ひとたまりも無く爆散する。  男の拳銃はたった五発で弾が切れたらしく、男はリボルバー型の弾倉を振り出し、排莢、再装填。  これで打ち止めだろうか・・・・・・  何となく疲れを感じながら、コウは尋ねた。 「あの・・・・・・もしかして、山からこの街まで運んでくれた人ですか?」 ●第316話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 5月15日(火)13時46分55秒 「・・・「魔楽器」生贄のオルゴールが「魔楽器」じゃなくなったな。」 クロウは浮遊山への陸上での移動可能場所の巨大な鎖の前に座っている。 『仕方あるまい、初代フリュートの暇つぶしで作った道具だ。』 「暇つぶしってさー・・・暇つぶしの割には案外有名だよなー。」 『初代フリュートの史上に出回っている作品は全て暇つぶしで作った道具だからな。』 「・・・あんたも最高傑作の一つだよなー?」 右手に持っている禍々しい剣に向ってクロウは質問する 『・・・人間の意識を物質に注入する。極めて危険性の高い実験だった。』 遠い目――剣だから表情は分からないが――をするアグレッサー。 「おっと、来たみたいだな。」 「えーと・・・自己紹介は後にしとこう。説明はこいつがする。」 といって右手の剣を上げるクロウ。 『私がアグレッサーだ。』 「・・・剣?」 ディムルが疑問の声をあげる。 剣が喋っている事と、あまりにも禍々しすぎて剣には見えない事の二つ同時の意味のようだ。 『細かい事は気にするな。』 この一言で全員とりあえず納得している、結構図太い神経らしい。 もっともロイは何かじーっと、アグレッサーを凝視しているが。 『・・・まず、三体の守り神、先程も述べたように敵う相手ではない。』 アグレッサーの指示で三つの玉を地面に転がすクロウ。そこから人の形をした三人がでてくる。 『まず、右端の金髪の目がいかれてる男。こいつは要注意だ。だれこれ構わず戦闘を仕掛けてくる。馬鹿だから幻覚によく惑わされる。』 『そして真中の優しい雰囲気を放つ男。こいつは人を疑う事を知らない。戦闘能力より知識が優れている、こいつは自分の持つ知識を全て理解できる人を探している。』 『この左端の女はかなりの罠好きだ。こいつの仕掛けた罠は解くのが難しい。ただ、珍しい物を見ると欲しがって断ると駄々をこねてくる・・・こいつもある意味要注意だ・・・』 何か最後の女の紹介で気力が尽きたような紹介をするアグレッサー。 『大雑把に言うとこうだ。・・・簡単に覚える方法は、馬鹿と賢者と我侭娘だと思ってればいい。』 「・・・なんか、個性的だな。」 またもやディムル。疲れそうだな。と思っている顔だ。 他の面々も何か疲れそうだなー。って顔をしている。 『後は・・・全身強化されたモンスターがいる位だったかな、罠もあるし、財宝も少しはあるし・・・他の遺跡と変わらんかもしれん。只、遺跡ではなく山だが。まずは登ってから決めようか。』 ・・・とりあえず皆、浮遊山に登る事にした。 『「魔楽器」を改造等・・・誤作動がおきるやもしれんぞ・・・』 ●第317話 投稿者:タムタム  投稿日: 5月15日(火)21時23分40秒  浮遊山。そこはやはり山だった。山頂まで、一本道が続いている様にも見える。最も、それが見た目通りには思えないのだが。  ほとんど獣道と変わらないような所を辺りを警戒しながら登っていく。そしてしばらく無言で登って行くうちに、分かれ道へと出た。 「アグレッサー、どっちだ?」 『判らん。ただ、どちらも山頂へ続いている事には変わりない』  クロウの質問に対し、即刻、答えが帰ってきた。 『道が少し違うだけで、どちらも正解と言えるからな。好きに決めてくれ』 「ん〜。それなら…」  アーシィが例の杖を出し、地面に軽く突き立ててから放す。杖はゆっくりと右側へと倒れて行った。 「よし、行こうか」  ディムルが声をかけ、右側の道へと進んで行く。クロウは呆れているのか何も言わないし、時波は不思議そうに後を付いて行く。  何事も無く進んで行くが、突然辺りの景色が変わった。“朽ち果てた遺跡”と言うのが相応しいようなだだっ広い所だ。  敷石が敷き詰めらていることから、大広間のような所を連想させるが、部屋が円形になっているため闘技場と言った方がしっくりくる。 「…あからさまですね」  ロイが呟く。今いる場所から見て、真正面の方に先へ続く道があるのだ。ここに守り神の一体がいると言っている様なものである。  そして、中央辺りまで進んだ時、一体目が現れた。金髪の男だ。何か言うのかと思ったが、こちらに気がついた途端、いきなり襲い掛かってきた。  だが、皆は散りじりになって攻撃をかわし、その拳は地面へとめり込んだ。 「ん〜。速いが、かわせない速度じゃない」  そう言いながら、地面へと魔法弾を打ち込み、呪文を唱える。魔法弾が敷石を砕き、粉塵が舞い上がり全員の姿を覆い隠す。 「よし、先に行こう」 「おう!」  アーシィが言い、ディムルが答え、全員走る。粉塵が消え、先へ続く道へ向かって走る一行を確認した金髪の守り神は一気に近付き、拳を振るい“瓦礫へと突っ込んだ”。ものの見事に幻術に引っ掛かったのだ。 「さて、皆先に行ってくれ。私が何とかするよ」 「解った。後は任せた」 「…さて行きましょうか」  アーシィの言葉にディムルとロイはあっさり同意し、先へと進む。ジェノア、クロウ、時波もどうするか一瞬悩んだ様だが、先へと進む方を選んだようだ。  フローネを助ける、もしくは魔楽器の効果を打ち消すという目的がある以上、ここで時間を食っている暇は無い。  アーシィも、多少の(簡単な)魔法なら問題なく使えることがわかったから、残ると言ったのだ。勝算も無しに、こんな奴と戦う気は更々無い。 「力だけで倒せるほど、私は甘い相手ではないよ?」  そして、金髪の守り神はまたも幻に包まれる…。 「本当に残して来て良かったのか?」  走りながら、ジェノアが口を開く。どう見ても、戦闘能力に差がありすぎる。死ぬ可能性の方が高い様に思えたのだ。 「大丈夫だろ」 「…それに、幻術を使う以上、大勢いたら邪魔になるだけですよ」  ディムルとロイの口調から、心配している様子は聞き取れなかった。 ●第318話 投稿者:ファウスト  投稿日: 5月16日(水)15時45分01秒 「ディムルさん」 「何だ。時波」 「アーウィルって、誰ですか?」 「え、ああ、お前は知らなかったんだよな。え〜と、ウィップアーウィルと言う名前で」 「・・・ウィップアーウィル・・・死にかけの人の周りに沢山よってきて、その人の息と同時に鳴いて、死人の魂を奪おうとする不吉な鳥・・・そして、この鳥のモデルになった鳥は・・・」 「待てぃ、奴の名前の事なんかどうでも良い」 「あ、すみません・・・」 嫌いなホラーの話に、引き込まれそうになって時波のセリフをとめるディムル。時波はよけいな事を言ってしまったという顔をしている。 「そして何より、右腕全体に馬鹿でかくて巨大な義腕をつけているんだ。まあ、悪い奴じゃないと思う。変なやつだが。でもって物凄く強いな」 「あいつだ・・・<城砦潰し><機甲裁断師><全方位殲滅師>と呼ばれる男・・・偽名など使って、何をしているんだ?」 時波の額から、涙がこぼれた。今の気持ちは、恐怖と、悲しみと、怒りが混ざったような気分だった。何で、こんな気持ちになるのか、時波にはわからなかった。 「ど、どうした、時波」 いきなり泣いて、ぶつぶつと喋りだせば誰だっておかしいと思うだろう。 「えっ?大丈夫ですよ、何でもありません。が、本当にアーウィルクラスの敵ならシャレになりませんね」 「何とかしなきゃならんのだ。ところで、お前、ついて来て大丈夫か?」 と、ジェノア。 「それをいうなら、ロイ君だって・・・ね、ディムルさん」 「俺に同意を求められても・・・・」 「僕は平気です」 と、ロイ。 「まあ、いれば役に立つんじゃねえか?少なくとも、こいつの知識は重宝すると思うがな」 「そうですか?」 少し照れながら言う時波、ちょっと嬉しそうである。 「おい、来たぞ!!」 ディルムが叫んだその先には、男がいた。金髪の男はもう出て来たので、賢者の方だ。 確かに、先の映像のような感じだった。目は、セリーヌとそっくりだった。つまり細い。そのせいで、優しく感じられるのかな・・などと皆が思っていた。 「こんにちは」 「こんにちは」 何人かが、男のしてきた挨拶に答える。そして、ジェノアが口を開いた。 「通してくれ」 「いいですよ。でも、私の謎かけを解いてからです。無理やり通ったら、やっつけます」 自分の知識を全て理解できる人を探しているのだから、謎かけをするのは、結構いい方法かもしれない。謎かけが解けるということは、その問いを理解していると言う事だから、自分の言っている事がわかっていると言う事になる。 「どうする?」 「面白そうだし、やってみようぜ」 ジェノアの言葉に反対する者はいなかった。 「それじゃあ、だしてくれ」 「わかりました、全50問で第1問」 男が謎かけを始めた。 ●第319話 投稿者:YS  投稿日: 5月18日(金)00時20分34秒 (・・全50問・・)  ロイは憂鬱になっていた。今のところ知っていることが多い。ロイにとって知っていることは何の利益にもならない。  ちなみに、まだ10問目にも到達していない。 「・・ここは時波さんに任せて、先に進みませんか?」 「そうだな」  ジェノアが同意する。クロウも時波の知識を思い知ったのか、うなずいた。どうやら、任せても大丈夫だと判断したようだ。 「・・ディムルさんも、ここにいたら財宝が手に入らなくなりますよ・・」  その一言でディムルもロイに同意した。  時波は黙々と問いかけに答えている。 「・・時波さん。余計なことかも知れませんが、知識ある者が本当に求めているのは知識ではなく知恵ですよ・・」  その声が聞こえたかどうかはわからなかったが、ロイはすぐに歩き出した。 「ちょっとロイ君、そっちは来た方向だよ」  そして、ディムルに手をとってもらい、再び歩き出した。 「・・そういえば、3人目は罠を使うんでしたよね・・」 「ああ」 「・・楽しみですね・・」  周囲の皆を底冷えさせる笑みを浮かべ、ロイはいった。 「ところで、さっきから持っているその包はなんだい?」 「・・これですか?」  ディムルに聞かれ、包を開くとそこには・・なんだかよくわからない生物がいた。 「・・これはなんだい?」 「・・ポチです・・」  ディムルの知っているポチは2mを越える巨人だったはずだが、目の前にいるそれは30cmほどの小さな黄色い生き物だった。  長い耳、短い手足。そして、器用に踊っている。 「いったいどこをどうしたらこんな風になるんだい?」 「・・愛玩用魔法兵器を作ろうとしたらこうなりました・・」 「なんというか・・ものすごいことを平然とするね、君は・・」  そうこうしていると、ロイが最初の罠を発見した。 「・・どうやら、ここからが彼女の縄張らしいですね・・」  喜びと警戒の意志を乗せて言うロイの顔は笑っていた。 ●第320話 投稿者:タムタム  投稿日: 5月18日(金)21時41分04秒  アーシィと金髪の守り神の戦いは膠着状態へと陥っていた。アーシィは魔力の消費による疲労が激しく、金髪の守り神は体に弾痕や傷跡を残している。が、疲労している訳でも、ダメージを残している訳でもない。  だが、幻術に阻まれている以上、金髪はアーシィを傷つける事が出来ないし、また、アーシィも強力な魔法が使えない以上、金髪を倒すことも出来ていない。そして、アーシィは金髪との戦いを振り返り、次の手を考える…―。 ―アーシィの術中にはまっている金髪はアーシィの虚像を相手に拳を振るっている。強力な攻撃力を持っている様だが、当たらなければ意味が無い。その間にアーシィはリボルバーに弾丸を込めていた。  手にしているのは何時もの銃<食らい尽くす者>ではなく、古びた拳銃<ネメシス>だ。条件が悪い上に相手が相手、魔力は出来る限り温存したい。この様な時のための<ネメシス>なのだから。  そして、弾を込めるとすぐさま狙いを定め、六連発。銃声が一発に聞こえるほどの早撃ちで精密射撃。頭、両肩、胸部中心、腹部、下腹部へと狙い通り弾丸は叩き込まれたが、金髪は衝撃でバランスを崩しただけで、ダメージを受けた形跡が見当たらない。 (ん〜、効かないか…)  銃を撃った後、弾丸を装填しながらすぐさま移動し、今現在の位置を知られないように勤める。間を置かず、黄色いカード(雷)を取り出し、前方へ放る。今度はカード目掛けて六連射。  銃弾はカードの魔力を吸収し、全て胸元へと打ち込まれ電撃を撒き散らす。だが、それでもろくに通用しない。またも、弾丸を装填し直し移動。 (仕方ない…あまり気が進まないけど…)  位置がばれる為、声には出さずに考える。次に取り出したのは両端に重りの付いたピアノ線。魔力強化されている為、ヴァニシング・ノヴァの衝撃にも耐えることが出来る。問題は長さの調節が出来ない事にあるのだが気にしてはいけない。  片方を柱へ投げ付け巻きつける。次に、頃合を見計らい金髪へと放る。首に一回りした後振りかぶった右腕にまきつく。だが、金髪はそれに気が付かないのか、虚像に向かい拳を振るい、―プッ…―  短い音を立て、何かが切断される。金髪の首…ではない。それなら良かったのだが、切断されたのは柱の方だ。恐ろしく頑丈な奴である。切断された柱は次第に傾き、金髪の方へと倒れこんだ。  ―ズゥゥゥゥゥゥ…ン―。直撃した柱は低く響く音を立て、金髪はその下敷きになる。だが、やはりと言うか何と言うか、金髪は何事も無かったかのように立ち上がり…、 ―…現在にいたる。銃が効かず、強力な魔法が使えないとなるなら、打つ手は一つしか残されていない。やはり気が進まないが、赤い宝石の付いた杖<死を招き、魂を導くもの>を取り出す。 (…生命力をギリギリまで使い、一撃で決めるしかない…)  アーシィは殺気と気配を消し、集中する。そして、自らの虚像をすぐ隣に設定する。こちらから動かず、待つ。そして、金髪が動いた。急接近をし、拳を振るう。虚像を撃つと同時にアーシィも動く。  生命力をギリギリまで込めた大鎌を一閃。赤い軌跡は金髪の首を何の抵抗も無く切断した。ようやく活動が終わったのか、金髪はその場に崩れ落ちた。 「…結局最後は…力任せか…。私も修行が足りないね…」  生命力を消費し過ぎたのか、青ざめた表情でアーシィは呟き、数歩、歩いた所で地面に座り込んだ。