●第301話 投稿者:ファウスト  投稿日: 5月 2日(水)14時37分28秒 「あのぅ、すみませんが・・」 リサに聞く時波。 「何だい」 「名前教えてくれませんか」 「え・・・ああ、自己紹介がまだだったね」 「はい」 「よし、それじゃあ、まず・・・・」 自己紹介終了。 「・・・物凄いメンバーだなぁ・・・」 驚く時波。 「それはさておき、みんなはどうするんだい?」 「・・・・何がどうなってんのよ、フローネはどうなったのっ」 「僕も同じ気分です。いきなり、そんなこといわれても・・」 さっきまで、説明を聞いていたが説明が終わったとたん、ケインが喋り出して消えて、驚いていたので、ボーっとしていたが、冷静に考え始めて大変な事になっているということに気付いたコウとルーティ。 混乱する二人、特にルーティはフローネが閉じ込められているということで、よけいにショックを受けている。 リサのかわりにディルムが言う。 「このままだと、さっきケインが言った様に、フローネもろとも・・・」 「・・・・もう、だめ」 「ルーティちゃん!!」 ショックのあまり気絶するルーティ。そして、ルーティを支えるコウ。 「・・・パティ、ルーティを頼む」 「わかったわ」 そういうと、ルーティを奥に連れて行くパティ。 「・・・どうなるのだろう・・・」 呟く時波。他の面々も同じ気持ちらしい。 そして、グリフレンツは鍋から得体の知れないものを食べていた。 ●第302話 投稿者:タムタム  投稿日: 5月 2日(水)20時03分41秒 ―エンフィールドの街外れ―  何の前触れもなく、突如、空間から人の影が染み出てくる。そして、もう一人。片方はローレンシュタインに行ったはずのアーシィ、もう片方はアーウィルを探していたケインである。 「アーウィルを見なかったか?」 「いきなりだね。それよりもこの街の雰囲気、何かあったのかい?」  人の顔を見るや否や、いきなり訊ねて来たケインへアーシィが逆に聞き返す。それもそのはず、たった一日留守にしただけで異様な雰囲気に包まれている。疑問に思わないはずが無い。 「簡単に説明するとだ、<夢宮>と言うアイテムの暴走だ。さくら亭でフローネがそれに取り込まれた。  じゃあな。俺はもうアーウィルを探しに行くから」  本当に簡単な説明だった。そして、それだけ言うとケインは空間転移をかましてその場からいなくなる。アーシィもすぐさま、さくら亭へと転移した。 ―さくら亭―  さくら亭は今、重々しい空気に包まれていた。打つ手の無いまま時間だけが過ぎているのだから仕方ない。そして何の前触れもなく、アーシィがそこに姿を現した。しかし、ディムル以外は気が付いていないのが少し悲しい。 「帰ってくるのがずいぶん早くないか?」 「ん〜、予定を一日早めたからね。ローレンシュタインにいる旅芸人の一座がこちらでも公演したいって言うから、その申請と宣伝を請け負ってきたんだよ」  仕事に行ってちゃっかり仕事を受けて来る辺り、要領が良いんだか、そこまでしないと経営が苦しいのか、理解に苦しむ。一日ずれている様な気がするが、街の外と中で時間差が生まれたと思いねぇ。 「それは置いといて、何が起きたか説明してくれないかい?」 「ああ、ちょっと待ってくれ。時波だったな、もう一度<夢宮>について説明してくれ」 「ええ、良いですけど?」  そこで、先程まで居なかったアーシィの姿に皆が気がつく。口々に色々聞かれたが、それはこの際どうでもいい。軽い自己紹介の後、時波はもう一度<夢宮>について語った。 「ん〜、大体の事情はわかったよ。考えられるかぎり、とれる手段は…5つ」 「そんなにあるのかい!」  その言葉を聞き、リサが驚きの声をあげる。その場に居る面子も驚きを隠せないで居るようだ。頭を抱えているときにそんな事を言われれば誰だって驚く。そして、アーシィは指を折りながら、一つ一つ挙げていく。 「1・破壊する、2・封印する、3・無理を承知でこじ開ける、4・あきらめる…」 「…ふざけてるんじゃないだろうね…」  最後の言葉を語る前に、リサがアーシィの胸倉をつかみ上げた。だが、アーシィはその手を抑え、真面目な声で話し始める。 「ふざけている訳じゃないよ。情報を整理し、考えられる手段を挙げる。それが例えどんなに下らない事でもね。もしかしたら、正解がそこにある可能性だってあるんだよ。」  その言葉に納得したのか、リサが手を離した。そして、アーシィは最後の意見を挙げる。 「最後の一つ、フローネをここに召喚する」 「は?」  誰かが、間の抜けた呟きを漏らした。それはそうだろう、普通人間を召喚しようなんて考えない。 「外部からの制御は受け付けない。だが、外と中の情報は常に交換されている。この状態でも、つながりはあるんだよ。  問題は中枢に取り込まれている以上、どの程度の効果があるのか判らない。それでも、おこなってみる価値はあるね」  そう言うと、アーシィは部屋の中央にあるテーブルに箱を置き、皆に下がるように言い、突き出した右手にカードを握りながら呪文を唱え始める。 『汝ここに在らざる者、されどこの世に存在しうる者よ。我が呼びかけに答えよ。 我が言霊は理を超え、汝が魂に響き渡る。心を開き、その意識を傾けよ』  呪文が流れるに連れ、箱の前に魔法陣がひかれ始める。みなが固唾を飲む中、最後の言葉が放たれる。 『汝は自然ならざる物に捕らえられし者。我が開きし門をくぐり、我が前に現れいでよ。 汝が名は≪フローネ・トリーティア≫』  その瞬間、魔法陣にフローネの姿が薄く重なった。 ●第303話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 5月 4日(金)10時38分47秒 「いけるか…!?」  皆がそう思った瞬間、 「…!」  魔方陣が揺らぎ、乱れる。激しく脈打つように紋様の整合性が崩され、霧散した。同時に、 フローネの姿も掻き消える。 「ん〜…。やっぱりね……」  ある程度予想していたのか、アーシィは得心したように頷き、顎に手をあてた。 「さっきの君の話だと、現在この街も私たちも現実に存在しているわけではないんだね?」 「はい」  時波に確認し、 「ん〜。どうも、あのように」と窓の外の消滅した空と、グリフレンツを指し、 「目に見えるものだけでなく、根本的な世界の法則なども現実とは異なってしまったようだね。 魔法の効力が普段と違う。下手に魔法を使うと、とんでもないことになるかもしれない。まずいな……」  渋い顔をするアーシィに、リサが、 「たしかにそいつはまずいね……。もし強力な魔物が出てきても、魔法には頼れないわけかい」 「くそ……。あいつ、一体どこ行きやがった? 普段はその辺でぐうたらしてるくせに……」  と、ケインの耳に騒がしい物音が飛び込んできた。近い。 「?」  彼が疑問の表情を顔に浮かべきるより速く……  轟音とともに眼前の廃屋の壁が粉砕され、鼻をつく悪臭とともに巨大な影が踊り出た。 「こいつは…食屍鬼…!? 何故こんなところに……」  ケインの二倍はある巨体と、それを差し引いても大きすぎる蹄のついた足、そして鉤爪を備えた手。 人間の体を無理矢理歪めたような均整の狂った体つきをした、不快さでは指折りの魔物だ。  本来、地下に広大な洞窟を掘って暮らしており、地上には夜にしか現れないのだが…… 「そう言やこいつ、ホラー小説にはよく出てきたよな……」  人間の死体を好んで喰らい、人間の赤子と自分の子供を取り替えることもあると言う。 また、自分たちの洞穴を地下室などに繋げて、夜の闇に乗じて殺戮を行うこともあり、ホラー小説の題材にはうってつけと言えよう。 「こいつも、フローネの夢の産物ってワケか……。闇鍋つついてる奴の方がマシだ…!」  言って跳躍したケインの立っていた場所に、鉤爪の生えた手が叩き込まれた。石畳が砕け、飛び散る。 「ち…!」  魔法などは使えず知能も低いが、運動能力はケタ外れだ。舐めてかかるのは禁物。生命力も強く、 強力な魔法で一気に息の根を止めるのが基本だ。 「俺は急いでるんだ。邪魔するな。ヴァニシング・ノヴァ!!」  網膜を焼き尽くすような閃光が不快な巨体を包み込む。が、しかし… 「? 妙だな…」  自分の放った魔法に違和感を覚え、首を傾げるケインの目前に、閃光を掻い潜って食屍鬼が着地した。 「! 効いてない!?」  舌打ちし、再び魔法を放とうとしたケインの背後で、唐突に聞き覚えのある声が叫んだ。 「私の眼前、闇の踊る元素達! 光の咆哮、風の慟哭、そして破壊の宣告達よ!! 聞こえますか!?  私の声が!!」  瞬間。  霧散しつつあった『ヴァニシング・ノヴァ』の光が、それの巻き起こした突風と混じり合い、 集束した。 「!?」  そして、長さ三メートルはある巨大な槍の姿をとる。それは震えて切っ先を食屍鬼の背中に向け……  突進した。  ケインの目にも捉えられないスピードで一瞬で距離を詰め、異形を貫いた。同時に爆発。  爆発する閃光に飲まれ、抵抗する意思を持つ間もなく不快な怪物は消滅する。 「シェリル…?」  唖然として振り返るケインの目に、予想通りの少女の姿が飛び込んできた。 「大丈夫ですか!?」  駆け寄ってくる彼女の手には、見覚えのある水晶球が握られている。 「それは……」 「ああ…。これですか……。何だか、さっきから魔法がおかしいんです。でも……これだけは何故か普通に動くんです」 「これ、使えるのか?」  ケインの問いにシェリルは頷き、 「アーウィルさんが、『これは君に上げる。どう使うかは君の自由だ』って…。使い方を練習してたんです」 ●第304話 投稿者:ファウスト  投稿日: 5月 6日(日)01時19分45秒 「ふーん、ところでアーウィルがどこにいるか知らない?」 「いえ、知りませんが・・・・ケインさん、一つ聞いてよろしいでしょうか」 「なんだい?」 「今、一体何が起こっているか、知っていますか?」 「ああ、知っている。さくら亭に行ったら教えてくれる奴がいる。それじゃっ!!」 「あっ、ケインさん」  ケインは空間転移をした。  今のように、こんな夢の産物のモンスターが街中で出現しているかもしれない。  しかも魔法がろくに使えないとなると、まともに戦えるのは、リカルド、アルベルト、シュウ、クロウ、ルシード、アーウィル、あと、魔法兵器を素手で倒したセリーヌや、大会でアーシィと戦ったトーヤ位のものだろう。とは言っても何人かはどこにいるかわからない。他にもいるが、そいつらはさくら亭に集まっている。  だから、ケインはアーウェルを探すついでにモンスターを始末する事にした。彼も魔法を多用するが、久しぶりにペンデュラム主体の戦い方で行けば何とかなるだろう。  そして今のケインは、マリアの事が心配だった。  一人残った、シェリルは考えていた。 「さくら亭に、教えてくれる人がいる・・・?」  そう言った、ケインの言葉に疑問を抱きながらも、他にどうしようもなかったので、シェリルはさくら亭に向かった。 ●第305話 投稿者:タムタム  投稿日: 5月 6日(日)12時01分24秒 ―さくら亭― 「ん〜。こちらから制御できず、魔法の効果も通常とは違う。そして、こちらからの呼びかけにも応じる事が出来ない。さて、どうしようか?」 「…楽しんでないか?…」 「気のせいだよ」  あまり緊張感の感じられないアーシィの声を聞き、ディムルが呆れたように突っ込んだ。が、さらっと受け流され、それ以上突っ込む気にはなれなかった。  召喚に失敗した後、フローネの覚醒を促すためただ単純に呼びかけたのだが、変化は見られなかった。 「おい、何か聞こえないか?」  そう言いながら、ディムルは耳を澄ます。彼の耳には近付いてくる何者かの足音が聞こえている。そして、さくら亭の扉が静かに開かれた。 「えっ!?」  そこにいたのは驚いた顔をしたシェリルだった。さくら亭にいた全員の目がシェリルに注がれている。驚くなと言う方が無茶だ。はっきり言って恐い。 「…シェリルかい、驚かすんじゃないよ…」  リサが力を抜きながら言う。驚いたのはシェリルの様なきもするが…。 「いや、違う…。聞こえないか?。ぺたぺたって足音が」  ディムルが辺りを見回す。足音の持ち主が近くにいるんだろうか?。 「それって、もしかしたらぺたぺたお化けじゃないんですか?」 「何だそれ?」 「ピースクラフト先生の作品にいるんですよ。ぺたぺたって足音だけのお化けが…」 「…くだらねぇ」  シェリルの説明を聞き、殆どの者は思った。ピースクラフトの感性にはついて行けない、と…。  それはそれとして、シェリルのためにマジックアイテム<夢宮>についての説明を時波がまた行った。 「事情は解りましたけど…。それだけの事で法則って変わるものなのですか?」 「普通は変わらないよ。狭い範囲でならまだ可能だけど、ここまで広くなるとね…。  (少々意図的なものを感じるのは私の気のせいだろうか…?)」  頭を振りながら、シェリルの問いにアーシィが答える。普通こういう物を作る際、必ず最低限の制御が出来るようにするものだ。もしくは抑止力となる物が存在するはずである。 「でも、これだけは普通に使えたんですけど?」  そう言いながらシェリルが差し出したのは例の水晶球だ。見ただけでは効果はわからない。簡単に説明を始めた。 「…それを使えば…もしかしたら…」  状況を変える事が出来るかもしれないとアーシィは思った。使い方次第では恐ろしい事になるアイテムだが、それはこの際置いておこう。  ここら一体の変異させられた法則を元に戻す事ができれば、最低でも普通に魔法が使えるようになる。 「シェリル、頼めるかな?」 「はい」  その言葉に頷きながら、シェリルは水晶球を硬く握り締めた。 ●第306話 投稿者:熱血王  投稿日: 5月 7日(月)00時01分00秒 アーシィはシェリルから水晶球を受け取ろうした時だった。 「あの・・・。これから何が始まるのかは知りませんが,僕は失礼させていてだきます。」 今までじっとしていたコウが急にここから離れると言う。 「あんた何を言い出すんだい!?」 「あれ,君はこの前雷鳴山に倒れていた子かい?」 少し怒っているとも思われるリサを遮ってアーシィが聞く。 「あ,はいコウと言います。アーシィさん。」 「ん〜なんでここを離れるんだい?しかもこんな時に。」 なぜ名前が知れているかは気にせず,ただ理由を聞こうとする。 「じゃあここにいて何かあるんですか?」 「ん〜,それはわからないけど,ここにいるのが一番良いと思うよ。それにこの中に入ってしまっているフローネさんを助けるのに協力してほしんだけど。」 「なにかあるんですか?」と言われても,そんな事はわかるはずがない。 ただ現在このエンフィールド内では,ここは安全な場所の一つだと思っている。フローネの考える 事が具現化するなら,ここでこの件の解決に努めるのが一番まともな選択だろう。 「フローネさんの事については僕がいなくても,ここにいるメンバーで事足りると思います。どこにいた方がいいかを決めるのはあなたでも,どこに行くかを決めるのは僕ですので。それでは。」 正しいのかどうかよくわからない事を言い残してさくら亭を出ていったコウ。 「いったい何考えてるんだあいつ?」 「決めるのは僕・・・か。いいんじゃないかな本人がそうしてければ。」 アーシィが意味深なこと呟く。しかし周りでも同じように口々に何かを言っているので,誰に聞かれた訳でもない。 「あの,あの人誰ですか?私見た事ないんですけど。」 シェリルは知らない人が訳のわからない事を言って出ていってしまったので混乱している。 「ん〜,実はよく知らないんだけど,なんか名前で呼ばれてたな。彼の事はここにいる自分 以外に聞いたほうがいいんじゃないかな?」 「そうですか。」 それを聞いてシェリルはリサの方へ行った。 「じゃあ,話を本題に戻そうか。」 ●第307話 投稿者:ファウスト  投稿日: 5月10日(木)00時03分16秒 「ようするに、シェリルに魔法で法則を直してもらうんだろ」 アレフが、アーシィにたずねた。 「ん〜、そうだけど」 「そしたら、アイツに何か起こったりしないのか?」 さっきから、ず〜っと闇鍋をつついている、グリフレンツを指さして言う。 「どういうことだい?」 アレフの言葉に反応して、リサが怪訝そうな顔して聞く。 「なんと言えばいいのか、その・・」 「わかった、つまりこういうことですね。グリフレンツは<夢宮>によって、発生した。その時すでにもう、法則が変えられていたかもしれない。グリフレンツは、法則を変えられているから存在出来るけど、元に戻したら何が起こるかわからないと。こう言う事ですか?」 「そうそう、そういうこと!」 時波がアレフにかわって説明した。 「おい、お前。でも、その箱からは魔力を感じたぜ。だったらそいつは魔法によって召喚されている様なもんじゃねえのか」 「確かに、魔力は感じたな」 ジェノアと、ディルムが同じことを時波に言う。 「だから、おかしいんですよ。<夢宮>によって、普通の魔法はかけられなくなっている。となると、グリフレンツが魔法で召喚されているにしても、普通の魔法じゃないという事になります。普通に召喚したら、<夢宮>で法則が変えられているのだから召喚できませんしね」 「なるほど・・・。でどうするんだ?アーシィ」 と、ディルム。 「ん〜、でも、他に何も出来そうにないし、何か起こっても仕方ないさ。では、シェリル頼む」 「分かりました。アーシィさん」 そして、シェリルは魔法を唱え始めた。 ●第308話 投稿者:YS  投稿日: 5月10日(木)00時17分13秒  ロイは限界に達していた。 「・・・・ううう・・・・」  さっきから奇妙な足音が聞こえてきていたり、外をみると見たことのない生物ーーおそらく、生きてはいないーーが徘徊しているためだ。 「・・教会なら大丈夫ですよね・・」  神を信じていないといってるわりには、かなり神に頼っている。 「・・でも、何も解決もしないんですよねえ・・」  そして、黙考。  結局、原因究明のために外に出ることにした。 「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・!!!!」  ロイは叫んでいた。外に出たのはいいが、よく考えるとどこに行けばいいのかもわからない。  すぐに教会に戻ろうかとも思ったが、迷って帰ることもできない。  ローズレイクを無意味に泳いで逃げたり、そこで大顎月光魚に襲われたりもしたが、それは恐くはなかったらしい。  しかし、運がよかったのか、さくら亭の裏口に無事たどり着いた。 「・・し、失礼します・・」  先ほどから、どこにいっても何か得体の知れないモノがいたのでかなり警戒している。 「・・誰かいませんか・・」  いないわけではない、声は聞こえてきている。しかし、何かしているらしく、返事が帰ってこないのだ。  ぺたぺたと水に濡れた身体で、調理場を抜け客席の方へ向かうと、ちょうどシェリルに説明しているところだった。 「・・あの・・」  そこまで声を出して固まる。  なぜなら、そこにグリフレンツがいたからだ。  別に危害を加えるわけではないだろうが、ロイにとっては恐怖の対象でしかない。  そして、コウが出ていった。  ロイはグリフレンツを過剰なまでに迂回し、グリフレンツが見えない場所まで移動した。  この時すでにシェリルは呪文を唱え始めている 「・・あの、フローネさんが原因だったんですか?」  ロイが寒さに震え、小声で問いかける。  するとなぜか、何人かが悲鳴をあげた。 「ああ、ロイ君か。そうみたいだよ」  アーシィが平然と答える。  ちなみに今のロイの姿は泳いだために全身が濡れていて、水草が絡まっているためかなり恐いものがある。 「・・それで、これからどうするつもり何ですか?」 「この水晶球を使えば、これ以上の被害は抑えられると思ってね」 「・・それはこれ以上被害を広げないだけじゃないんですか?」 「そうだね。フローネを外に出す方法はまだないわけだし・・」  シェリルが水晶球を使い中和したところで、フローネが中にいる限りは切りがないのだ。フローネまで中和するわけにもいかない。 「・・まだ他にも方法はありますよ・・」  ロイには自信はないがもう一つの方法を提案することにした。 「本当かい?」  リサが聞いてきた。 「・・ええ、これがフローネさんによって作られたのなら、ピースクラフト氏の作品に忠実ならばコンタクトを取ることができるはずですよ。ひょっとすると内部に直接は入り込むことも・・」 「なるほど・・それなら可能かも知れないな」  アーシィが同意する。  残る問題はこの場にいるほとんどの人がピースクラフト氏の作品を知らないことだけだった。  そして、ロイの怪談話がいろんな意味で脚光を浴びた。 ●第309話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 5月10日(木)10時17分18秒 「・・・くっ。」 クロウはその頃目を覚ました。 トーヤは他の患者を見に行ったようだ。 「にげるなら今・・・か。」 すうぅぅ・・・ 邪剣状態のアグレッサーがまたも出現する。 『あれは<夢宮>では無く、元になった「魔楽器」の一つ、肉体を代償に願いを叶えるオルゴールだろう?』 「よく分かったな・・・ってか、まず脱出手伝ってくれ。」 『ん?あぁ、いいだろう。』 その頃さくら亭 「・・・無理だったみたいですね。」 状態はかなり悪化した。 さくら亭には大した変化がないが、それ以外では大量に珍騒動などが増えていた。 『あー、あー、エンフィールド全市民に告ぐ・・・』 「誰だっ!?」 聞きなれない声がいきなり聞こえたのだ、誰でも驚くだろう。 『私はアグレッサーという「物」だ。この通信は一方的なモノだから落ち着いて聞け。』 落ち着いて聞けるような状況ではなかった。 「一体何なんだ!?」 「誰かの悪戯かっ!?」 外・・・は危ないからして恐らく隣の民家等からだろう。こんなざわめきが聞こえてくる 『何処かに箱がある筈だ。その箱は「魔楽器」と呼ばれる物で・・・既に発動しているようだな。それを止めるには方法は二つ。』 止める方法がある。というコトと共に、「魔楽器」なる聞いた事もない単語が出てきた。 「<夢宮>って物じゃなかったのか?」 アレフがなんとなく吐く。 『いや、違う。』 「あ!お前聞こえてたな!?」 『・・・そう言った方が話がスムーズに進むだろう?』 ・・・仕切りなおして。 『一つは箱ごと使用者を殺すコト。箱は魔法物質だと攻撃が可能だ。これは無理だろうな。』 『後もう一つは「魔楽器」と「魔楽器」の共鳴で異次元から浮遊山なる巨大な山が出現している。』 「・・・それがどうかしたのか?」 「魔楽器の共鳴・・・って事はそこにもう一つ魔楽器が?」 『そう、そこにあるのは「魔楽器」のリュート、これでオルゴールの力を消せる。』 「なら急いでそこに・・・」 『・・・そこには守り神として三体のフリュート家初代の最高傑作がいる。』 「それがどうかしたのか?」 『・・・コー・・・いや、アーウィルクラスが三体いると思えば計算が楽だろう?』 「化物が三体いるって事かい・・・」 『・・・まぁ、それ以上に弱点が凄いがな。それは後で説明する。浮遊山はちょうどこの街の外にある。では、そこで会おう。』 通信は切れた。 「で、どうだ?」 『・・・身支度も考えると後少し・・・だろうな。』 「よっと・・・俺の方も完治したみたいだ・・・にしてもよく効くよなー、お前の調合した薬。」 『実際に作ってるのはお前だがな。』 「・・・さて、皆到着するまで待つとしますか。」 ●第310話 投稿者:タムタム  投稿日: 5月10日(木)20時21分31秒 「さて、それじゃ行こうか」  アーシィの言葉に、そこにいた全員―ディムル、ジェノア、時波―が移動…足りない。見ると、ロイとリサが動こうとしていない。 「行かないのかい?」 「あたしはここに残るよ。ここに誰もいなくなるのは問題だろう?」 「…そうですよ」  その質問にリサとロイがそう答えた。言われてみれば確かにそうだが、ロイが少し震えているのは気のせいだろうか? 「ロイ君。本当に行かないのかい?。新たな発見があるかもしれないよ?」  ロイの体がピクッと動いた。外にいる得体の知れない怪奇現象は確かに恐いが、新たな発見と言う言葉にも魅力を感じる。 「…着替えますから少し待ってて下さい」  ロイの中で知的好奇心に勝る物は何も無かったようだ。そして十分後、リサとパティに着替えを手伝って?もらったロイを連れて、五人はさくら亭から出て行った。  そして、今は街外れにある浮遊山へ向かう途中。かなり重大な問題が持ち上がった。 「ん〜、魔楽器を見つけたとして、この中にリュートの演奏を出来る人はいるかい?」  その何気ない一言に全員の表情が一瞬強張った。 「私はフルートしか吹けないし」 「おれはヴァイオリンだし」 「…ピアノだけです」  アーシィ、ディムル、ロイの使える楽器は周知の事実だ。問題は他の人間である。 「僕は木琴が出来ます」 「俺に訊くな」  時波とジェノアから、わかりやすい答えが返ってきた。早い話、ここには演奏が出来る人間がいないらしい。 「ん〜、仕方ないね。ディムル、同じ弦楽器だ。最悪の場合は練習してもらうかもしてないよ」 「無茶言うなよ」  いくら同じ弦楽器だからと言っても、ヴァイオリンとリュートは別物だ。頼まれたからと言って、良いですよと手軽に出来る物ではない。  アーシィもその事が解っているからこそ、練習してもらうと言ったのだが、無茶な事には変わりない。 「…ここで言ってても仕方ありませんね。それはあとで考えましょう」  そう言いながら、早足に歩いていく。が、 「ロイ君、どこに行くんだい?」 「そっちじゃないよ」  アーシィとディムルに声をかけられ振り返る。いつの間にやらはぐれそうになってしまっていた。 「…今行きます」  そう言って、ロイは後を追った。