●第291話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 4月23日(月)14時30分59秒 「・・・くっ」 力を振り絞って立とうとするクロウ。 『無茶はするな。』 空間が歪み、アグレッサーが現れる。 何時もの様な刀ではなく、禍々しい邪剣の姿で。 「・・・ぐっ、しかし、あれは・・・」 『分かっている。お前の母親の大切な・・・』 アグレッサーが最後の言葉を発する前に、 「大丈夫か?」 トーヤが来た。 少し遅れてコウも来たようだ。 トーヤとコウが来たのを察知して、アグレッサーは再び空間を歪ませ消える。 「くっ・・・」 クロウは力を振り絞って飛び立とうとするが、恐らく、折れたであろう足と肋骨から激痛が走る。 そしてそのまま地に伏す。 「「!」」 驚いたコウとトーヤ、クロウに駆け寄っていく。 (母さん・・・約束、箱を・・・壊ス・・・) ●第292話 投稿者:熱血王  投稿日: 4月23日(月)18時00分25秒 「どうもお世話になったみたいで。すみません・・・」 コウは深くおじぎをした。 「いえ,そんなたいした事してませんし・・・それよりクロウさんは大丈夫なんでしょうか?」 コウと入れ替わるように病院で寝かされたクロウの事を心配しているようだ。 「あの人のことはよく知りませんが,大丈夫だと思いますよ・・・(それにあの時の魔力はどう 考えてもあの人のものだ)・・・それじゃあ僕は自警団という所に荷物の確認をしに行かなけれ ばいけませんので。」 言ってもう一度深く頭を下げて外へ出た。 「(そう言えば自警団ってどこにあるんだろう?・・・まあ走っていればその内見つかるな)」 一日安静にしていたため,体調はほとんど万全だ。しかしケガが直った訳ではない。 何度か深呼吸をしてゆっくり走り出した・・・雷鳴山の見える方向に。 「(さっきのクロウっていう人の魔力はノーマルな人間の持てる魔力ではない=彼は能力的には 人間とは違う所があると言う事か・・・やっぱりこの街は何か面白い事がありそうだ)」 この街に来た時に感じた事は間違いではなかったと確信づける。 結構な距離走って来たが,自警団と名のつくような建物(というか雰囲気)は見つからない。 「(・・・あ)すみませーん。」 人がいたので聞いてみることにした。緑色の髪に金色が混じっている・・・エルだ。 「ん・・・ああ,あんたもういいのかい!?かなりひどいケガのようだったけど。」 「・・・はあ?あのいつかお会いしましたか?」 まるで自分の事を知っているような事をいきなり言われたので少々驚いている。 「ああ,すまないね。いきなりこんな事言っちまって・・・これでも一応ケガしたあんたを運ん だんだよ。」 これを聞いてコウはかなり動揺した。 「あ,すいません。そうとは知らずに,かなりお世話になったようで,僕はコウと言います・・・あの一つ聞きたいんですけど僕の荷物を知りませんか?」 コウはお礼と質問を同時にした。 「ああ,気にしなくていいよあたしはエル。あと荷物は多分自警団にあるよ。ちょっと急いでたんでね,荷物は置きっぱなしにしてきちまったよ・・・すまないね。」 コウは思いがけない返事に申し訳なくなった。 「いいえ,謝らないでください。自分は助けてもらった身なので・・・あと自警団という所は どこにあるんですか?」 「ああ,それは・・・・・・・・・・・・・・・だよ。」 「ありがとうございます。それでは。」 言ってコウは教えてもらった道と方向へ走り出した。 「ありがとう,って昨日あんなケガをしていたのに・・・。」 いきなり走っていくコウに驚きを覚えた。 ●第293話 投稿者:タムタム  投稿日: 4月25日(水)20時53分51秒 「…なあ、どうする?。これ…」 「どうするって、どうするんだよ…」  呆れたように呟くディムルに、力無く呟くケイン。なんて言ったらいいのか判らない一同が見守る中、グリフレンツは一心不乱に鍋を突付いている。突然のた打ち回ったりしているが、この際放って置こう。 「…魔属なら倒せば良いだけだ」  ジェノアがそう言いながら、背中の王太刀に手をかける。だが、 「馬鹿!」 「やめなって!」  ディムルとリサがすぐにそれを阻止した。別にジェノアがグリフレンツに負けると思った訳ではない。 「…騒ぐんなら出てってもらうわよ…」  パティがジェノアを睨みながら、そう言った。 『…この子はさくら亭の事になると歯止めが効かなくなる事があるからね、二度とここで暴れようとするんじゃないよ!』 『…おれは巻き添え食って自給下げられたくないからな。おれのいない時にしてくれ』 『…逆らわない方が…いい…』  リサとディムルが小声で、イリスが直接ジェノアの意識に語りかけた。三人?から自重するように言われたジェノアは何事も無かったかのように王太刀から手を離し、ただ一言『すまなかった』とだけ言いそのまま椅子に腰をかけた。  そんなやり取りが間近で行われているにも拘らず、グリフレンツは黙々と鍋を突付いている。もしかしたら、聞こえていないのかもしれない。 「とりあえずそいつはほっといて、問題はこいつだ」  そう言うケインの手には箱がにぎられている。その手に持ったままだったのだ。 「どうやっても開かん。壊すならまだしも、開錠は無理だ」 「…魔力の連鎖崩壊が起こせれば良いんだけれどな」  ケインの言葉を聞き、ディムルがぽつりとそう言った。聞いたことの無い言葉に眉をひそめた一同に、ディムルは説明を始めた。 ―魔力の連鎖崩壊。それはアーシィが使う魔法の一部に見られる副作用で、魔力構造を破壊させるため、魔力そのものが消えてしまう。ポチが壊れたのも、この事が一部関係している。  ちなみに、これは魔法の使用者“のみ”に起こる現象で、相手に使える物ではないらしい。アーシィが無事なのはカードのおかげである―  簡単に説明すると、こうなる様だ。だが、この説明だと箱に魔力崩壊を起こさせるのはまず無理だろう。ただディムルが言ったのは其処までしないと箱は空かないんじゃないのか?と言う意味だったのだ。 「違う方法を探した方が良いんじゃない?」 「例えば…中から開けるとかか?」  パティの問いかけに、何故かアレフが変な事を口走った。 ●第294話 投稿者:ファウスト  投稿日: 4月26日(木)08時17分46秒 そして、コウは自警団事務所に着いた。 「すみませーん」 とコウが自警団に着いてから言った。 「どうしました」 と、リカルドがコウの前に出てくる。 「僕の荷物がここで預かってもらっていると聞いたのですが」 「ああ、今もって来るので少し待っててください」 「はい」 しばらくして、 「これですね」 「ええ、これです」 「すみませんが、自警団で預かっていたものなので受取証にサインを」 「はい」 そして、コウ ウイックと受取証にサインした。 「どうも、ところで・・君は怪我はもういいのかね」 「え、あなたも僕を運んでくれたんですか!」 「いや、違う。君を知っているのは、身元不明の怪我人という事で自警団に連絡を受けたからだ。その時、私の耳に入ったんだ」 「そうですか・・すみません、心配かけて。ごらんの通り体はもう大丈夫です」 「そうか、では今度、自警団事務所にまた来てくれないか。怪我をした時の事等聞きたい事があるので。君がいいなら、今すぐにでも・・」 「すみません。この次に・・」 コウは、腹が減っていた。 「わかった。では、これで」 「はい、色々有難うございました。ところであなたのお名前は」 「ん・・リカルド・フォスターだ」 「・・・・リカルドさん、有難うございました(この人がリカルド・フォスター・・・)」 「礼を言われる様な事はしとらんよ、体に気をつけてな」 「はい、それでは」 そして、リカルドは、自警団事務所の奥へと入っていった。 「僕も何か食べに行こうっと」 ―そのころさくら亭― 「あの、その箱の事なんですが」 と、時波。 「何か知ってるのかい?」 と、リサ。 「ハイ、この箱は・・・・」 時波が説明をはじめた。 ●第295話 投稿者:熱血王  投稿日: 4月28日(土)17時49分48秒 「よし,財布はちゃんとある。」 コウは荷物の確認をして財布があったので安心した。 「(昼ご飯食べたいけど,さっき見たさくら亭が一番近いのかな?)」 ここに来るまで,街の中を走しり周って来たので一応ある程度は街の構造はわかった。 さくら亭までは,ここからだと少し遠い気がした。コウは自分が何日か前から何も食べていない ので,ここまで走った事で体力の限界が近づいている。 「(あ,あの子に聞いた方がいいかな)」 すぐ近くに赤と白でできている服を着た女の子を発見した。 「ねえ。この近くに何か食べる所はないかな?」 まだ背が低く幼さが感じられるため,子供相手の口調で聞いた。 「あれー,もう大丈夫なの!?」 さっきのエルという人と同じような反応をした。 「あれ,もしかして君も僕を運んでくれた人?」 「そうだよ。あ,でも運んではいないや,病院までついて行っただけだから。」 少女は特に恩を着せるような言い方はしなかった。 「ありがとう。僕はコウって言うんだ。」 「うん。私はルーティ。」 軽い自己紹介をし合って,本題に戻った。 「食べるとこだっけ?それならさくら亭がいいよ。」 「(さっきの店か)じゃあ何かご馳走させてくれないかな?お礼に。」 ・・・と言った感じで二人はさくら亭へ向かうことにした。 コウはさくら亭の近くまできて妙な力を感じた。 「(なんだ?魔力に似ているけどなんとなく違うような・・・)」 「どうかしたの?」 横を歩いていたルーティが声をかけてきた。 「うん,ちょっとね。」 この時コウは確実にきずいていた。この力は間違い無くさくら亭という所から出ている事に。 ●第296話 投稿者:タムタム  投稿日: 4月29日(日)10時22分59秒  さくら亭で何かごたごたやっている頃、フローネは何だかよく判らない所にいた。 (…ここは…どこかしら…)  周りを見回しても見覚えはない。何だか水の中にいるような感覚だが、息苦しさはない不思議な所だ。どうしてこうなったのか、順に記憶を辿っていくことにした。  まず、朝起きて…って、そこまで遡らなくてもいい様な気がするが、とりあえず顔を洗ったり着替えたりしながら今日はどうするかを考えていた。食事をしてから読書を始め…何と無く食堂の方に降りていって…、 (…そこであの箱を渡されたんだわ…)  丁度良いタイミングで降りて行ってしまったんだろう。其処にいたアレフから奇妙な箱を手渡され、調べようとした所で光に包まれ…、  その所為でここにいるのである。周りに出口らしきものは見つからない。 ―どうすればここから出られるのかしら?―  あまりハッキリしない意識で物を考えても、答えは出て来そうに無い…。 ―ジョートショップ― 「…なあ、なんで俺達はここでお茶を飲んでんだ?」 「お茶の時間だからだ」 「いや、そう言うことを聞きたかったんじゃなかったんだが」  一方その頃、ルシードとゼファーは事件と全然関係無い所で生活していた。朝方にここに来て、仕事の手伝いをしているのである。本当の用事は違ったのだが、これも成り行きというものだ。 「手伝ってもらって何だかわるいわ」 「でも助かるッス。感謝してるッス」 「それは別にかまわねぇんだが…」  アリサとテディに言われ、少し照れているのかいないのかは判らないが、ルシードはぶっきらぼうにそう言った。 「それにしても、色々な依頼がありますね」 「ええ。人手が足りないから、全部の依頼は無理なんですけど」  ゼファーはそう言いながら、依頼書を手にとって見た。街の清掃や公演の手伝いならまだしも、要人警護から遺跡の発掘。悪霊の除霊に臨時講師など、頼む所を間違えているんじゃないか?、と言われそうな物まである。  が、アーシィがそういう依頼ばかり受けるのもまた事実。(要人警護はディムルに回る事が多いが)  すでに、エンフィールド学園の“臨時”講師が“定期”講師に変わっていたりする所に時の流れを感じてしまう。 「さて、そろそろ再開するか」 「お願いしますね」  そして二人は作業を再開した。ちなみに作業(仕事)内容は“盆栽の手入れ”である…。 ●第297話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 4月29日(日)11時19分16秒 「この箱は、通称<夢宮>と呼ばれているマジックアイテムです。千年前にタナトス王が造ったと伝えられていますが…… 詳しいことは解っていません。それに、これは彼の下僕たちが全て破壊して残っていないはずなんですが……」 「ふぅん……。タナトスがね……。相変わらず、ワケの解らないものを造る奴だね……。 で、どんなものなんだい?」  リサの問いに、時波は一瞬宙を睨むようにして記憶を探り、話し出した。 「具体的な効果についても伝承はちょっと曖昧なんですが……。“現実と非現実の境界を消失させるもの” だと言われています」  全員が首を傾げた。 「うまく説明できるか解りませんが……。人が頭の中で考えた事は、その時点では外界になんの影響もない いわば非現実のようなものですよね? それは、考えた人が言葉にするなり行動で表すなりしなければ、 全く無意味なものです。しかし、これはそういった手間を省き、さらにもっとダイレクトに現実と非現実を繋ぐ…… と言うより、“混ぜる”んです」 「“混ぜる”?」  ……と、不意に店の外に見えていた空が消えた。一瞬で、エンフィールドの街は闇に包まれる。  慌ててパティが灯りを点けた。 「効果の有効範囲が広がったようです……」 「……このまま行くと、最終的にはどうなる?」 「難しい質問ですね……」  もう一度、時波は記憶を探り、 「どうなるかは、使用者次第ですね。これの効果範囲がどれぐらいかは解りませんが、その効果の及ぶ地域は、 全て使用者の夢の中に取り込まれているようなものですから」 「夢の中、ねえ……」 「現在、この街は現実に存在しているとは言えません。しかし、非現実になってしまったわけでもありません。 言うなれば、亜現実の存在になっているんです」 「亜現実?」 「ええ。この箱の正式名称は、広範囲亜現実領域発生器<夢宮>。内部に取り込んだ人間を システムの一部に組み込み、際限なく現実を侵蝕する“創造する兵器”です。外部からの制御は不可能。 内部の人間もほぼ完全に眠らされている状態ですから、そちらも駄目ですね」 「おいおい……。じゃあ、どうやってこいつを止めるんだ? 制御できない兵器ほどタチの悪いもにはないぞ。 何か、制御する方法があったはずだ」 「これを破壊する時に、タナトス王の下僕たちがその資料も破棄してしまっていて……」 「……つまり、解らないんだな?」 「はい…」 ●第298話 投稿者:ファウスト  投稿日: 4月29日(日)13時32分47秒 「・・・・・」 しばし、沈黙。 「では、話が落ち着いた所で注文いいですか」 「まって」 「その前に・・」 「何です」 「君、何でそんなこと知ってるの?」 「俺も、それが聞きたかった」 と、アレフとパティが同じ事を聞く。 「言われてみれば・・・」 と、リサ。 「そうだな・・」 ついで、ジェノア。 「本なんかに載っている事じゃないと思うぞ・・」 次に、ケイン。 「本とかそういうことじゃないと思うよ・・・」 そして、ディルム。 「ふみゅう・・よくわからなかったのぅ・・」 最後にメロディ。 「カレーライス一つ下さい」 「誤魔化すな!!」 「やっぱ無理・・?」 「「「「「「うん」」」」」」 アレフ、ケイン、ジェノア、ディルム、パティ、リサの声が重なった。 「えっと、・・・自分の名前をいつ覚えたか思い出せないのと同じ様なもの・・かなあ」 「いつ覚えたかわからないって事かい?」 「わかったような、わからんような・・・」 「ま、いいわ。カレー一つね。他になんか注文ない?」 「なんか、ようやく少し落ち着いたような・・・パティ、コーヒーくれ」 「わかったわ」 「あ、俺も」 「俺にも」 「今いれるよ」 「落ち着いてる場合じゃないのに・・・」 リサが呟く。 結局、アレフとケインとジェノアがコーヒーを頼んだ。で、ディルムが入れてくれた。 時波は、カレーを待っている間、メロディと話している、というよりメロディが興味本位で色々聞いているだけの様にも見える。 パティはカレーをつくっている。 グリフレンツは、鍋をつついている。そして、 カラン、カラン、 カウベルを鳴らして、コウが入ってきた。 「いらっしゃーい」 ●第299話 投稿者:熱血王  投稿日: 4月29日(日)16時06分40秒 「ただいまー。」 コウの横でルーティはなぜか家に帰ってきたような感じだった。 「あれ,ここは君の家なの?」 「違うよ,仲間とここに泊まってるの。」 二人は周りが注目してるのを特に気にする様子もなく会話していた。 「あ,リサさん。この人この前助けた人,コウって言うんだって。」 「ふーん。」 リサはなぜかコウの事を少し鋭い目つきで見つめた。 「あ,あのなにか僕悪い事でもしました?」 流石にリサに睨まれっぱなしでは怖いのでコウは口を開く。 「別に,ちょっとアンタの事を小耳にはさんだ事があってね。」 「?」 なぜ目の前の女性は自分の事を知っているのか,コウは不思議に思ったがあまり気にしなかった。 カウンターの席に座った時には,もうリサの目つきは戻っていた。 「(なんで僕の事知っているだけで睨むんだろう?・・・しかしこの場に感じる気はなんだ? 強い魔力を幾つも感じる,その内一つは上級魔属級だ。それに自分と同じ対魔属系の魔力もか。 後はこの魔力とは似ても似つかないような力か・・・一体どこから?)」 コウは席に座った瞬間にいろんな事を考える。周囲の目はほとんどこちらに集中しているため, 全く顔に出さない。 「あの〜。セットのメニューを見せてもらえませんか?あ,ルーティさんは自由に注文していいよ。」 「ほんと?じゃあね・・・」 「「なに!!」」 今のコウの言葉になぜかケインとディムルが叫ぶ。コウはパティにメニューの一覧を渡された 瞬間だったので落としそうになった。 「おいルーティ,一体どういう事だ!?好きなもの頼んでいいって。」 「そうだ,おまえ俺達に対する嫌味か!?」 ケインもディムルもなぜか激怒している。完全に混乱しているようだ。他の面々はバカらしそうに 見ている。 「あの,怒られても困るんですけど。ルーティさんは僕を助けてくれた一人ですから。」 「ふーん,じゃあ私もその一人なんだけど。」 リサも森でコウを助けた一人というのは事実だった。 「本当かな?ルーティさん。」 「うん,リサも自警団まで運んでくれたよ。」 「じゃあ,リサさんもご自由に注文して下さい。」 「いいのかい?私はそうとう食べるよ・・・(フ)」 「そうよ,あなたそんなにお金あるの?」 パティがはこちらの財布の心配をしてきた。リサが言葉の最後にケインとディムルの方を見て 唇の端を少し上げた。 「あ,はい。今のところはお金は大丈夫です。まえの街でたくさん蓄えたのが残ってます。」 「(おい,ディムルいまのリサ見たか?)」 「(ああ,俺は「フ」っていうのも聞こえた。)」 また二人が何かしているが完全に無視した。しかし相当頭にきているのだろう,ものすごい形相で こちらを睨んでいる。 「じゃあ僕は・・・・・・・・・・・・・で。」 「じゃあ,私も同じのを頼むよ。」 「わたしフルーツパフェ。」 「ほんとに?・・・まあうちは繁盛するからいいけど。」 コウが頼んだ量は普段のリサをも凌駕してしまいそうだった。しかも,その量×2+パフェの代金 もかなりのものだ・・・,パティは動揺を隠せない。 数十分後,二人は莫大な量の料理を苦ともせずたいらげた。そしてコウが口を開く。 「あの〜,さっきから気になってたんですが,ずっと妙な気を感じるですよ。一体なんですか? あなたがたはもう知っているでしょう?」 いきなり全体の話題を元に戻された。 そもそもここでは<夢宮>と呼ばれる箱に,フローネが閉じ込められているのだった。 「あの,僕がカレーを食べ終える待ってもらえませんか?もう少しですから。」 その時コウ達とは少し離れた所で静かにそしてゆっくりカレーを食べている時波が口を開いた。 ●第300話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 5月 1日(火)10時55分03秒  広範囲亜現実領域発生器〈夢宮〉。その暴走(といってしまっていいだろう。制御されていないのだから)からもうどれくらいの時間が経っただろうか?ケインはもうかなりの時が流れていったような気分に捕らわれていた。  実際には、まださほどは経ってはいないだろう。だが。  打つ手が無い状況で出口の無い推測と思考を行うとき、時間はやたらとゆっくり流れるものだと、そう思う。コーヒーをのどに流し込みながらそんなことを思う。 「で、だ。これからどうする?」  口を開いたのは、ディムルだった。 「えっと時波っていったよな?このまま放っておくと、この世界中がその〈夢宮〉ってのに取り込まれちまうんだろ?」 「はい。この装置の効果範囲はほぼ無限ですから」 「そして、世界はフローネの夢の中に取り込まれる、というわけだな」  ケインが後を継ぐ。 「はい」 「その世界は、つまり、こういうものが満ち溢れる可能性もあるっていうわけだな」  指差す先には、周りでなにがあろうと関係なしにひたすらに、鍋をつつきつづけるグリフレンツ。 「え・・・と。どうなるかは本当にわかりません」 「なら、現状がこれより悪化することもあり得るわけだな」 「・・・はい」  沈痛な面持ちでうなだれる時波。 「・・・物質崩壊という系統の魔法がある」 「物質崩壊?」  ふとケインが呟いた言葉にリサが反応する。 「ああ。俺が知る中で最強クラスの破壊効果をもつ魔法だ。対象に、対象を構成する物質の強制崩壊を命じる因子、情報を叩きつける魔法だ。  この世に崩壊を命じられてそれを拒否できるものは存在していない。崩壊しないっていうことは魔法の障壁で因子が相手に届かなかったか、永遠不変なまでに固定化した物質であるってことだけだからな。  要するに相手がなんであれ、問答無用で消し飛ばす魔法ってわけだ」 「何が言いたいんだい?」  リサの質問に、ケインはしばらく沈鬱な表情をとったあと、 「最悪、この箱を消し去る以外に方法がないんなら、そうするしかないって意味だ」 「んだとぉ!」  言い切るより早く、異論を唱えてきたのはアレフだった。 「貴様、フローネちゃんの命をも消し去ろうと言うのか!そんなことはこのアレフが許さん!」 「いや、俺だってやりたかないさ。けどな。世の中には選ばなきゃならない時ってのがあるんだ。俺たちは、万能の神様じゃないんだからな」  言って立ち上がり、戸口へと向かう。 「どこへ行くんだ?」 「・・・アーウィルのやつを探してみる。あいつならなんかいい知恵があるかも知れないしな」  言うと、姿が掻き消える。空間転移をかましたのだ。 「のお?!」  コウが真顔で驚く。時波も声こそださないが驚いているようだ。もっとも、他の面々はあまり驚いてもいないが。  ちなみに、グリフレンツは闇鍋をつついている。鍋の中身には底が無いのだろうか?