●第271話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 4月 7日(土)08時40分27秒 「無茶苦茶だな……」  足元の残り火を踏み消しながら、シュウはぼやいた。洞窟の内部は完全に破壊され、 原形を留めているものは無い。 「しかし……これはさっきの魔法のせいばかりじゃなさそうだな……」  どうやら中に居た何者かが意図的に破壊したらしい痕跡が、そこかしこに認められる。 「こりゃあ、もう肝心なのは逃げてる可能性が高いなあ……。うーむ…」  と、シュウが腕組みした瞬間、 「いや、そうでもないよ。シュウ君……と言ったかな?」  突然、目の前の暗闇から湧き出るように一人の男が現れた。手に、巨大な斧を振りかぶっている。 「!」  考えるより早く体が反応。純粋な反射運動と鍛錬の成果が、瞬時に攻撃を開始する。  勝敗は一瞬で決した。モーションの大きい斧での攻撃では、シュウの斬撃のスピードを上回ることはできない。  一撃で男の両腕が裁断され、斧ごとあらぬ方向へ飛んでいく。 「なるほど、見事な腕前だな。人格を偽装した状態でもこれほどとは……。“彼”がこの街に入れ込むのも、 もっともなことだな」 「なっ…!?」  意味不明な言葉の内容はさておき、シュウは愕然とした。両腕を失った男は、 痛がる素振りも見せずに平然と喋っている。 「バ、バンパイア…?」 「おっと、私を彼らと比べるのは、彼らに対して失礼だよ。まあ、ちょっと見には似ているかもしれんがね」  男が喋っている間に、両腕の切断面から霧のようにものがゆらゆらと湧き出し、腕の形を作り出し始める。  数秒後、男の腕は服ごと再生していた。 「さっきは悪かったね。私もたまには派手にやってみたかったんだが……。やはり斧は似合わんか」  あくまで楽しげな口調で続け、ふいにその再生したばかりの両腕を、まるで指揮者のように振り上げる。  閃光と轟音が炸裂し、洞窟全体が爆砕した。 「いいのかい? 行かなくて」  やや他の三人から離れたところで話しかけてきたリサの言葉に、 「大丈夫だ。データ収集は自分の役目じゃないし、結果は最初から解ってる」  アーウィルはそう言うと、再び薬草探しに戻った。  はて、この草は毒草だったかな、などと呑気に呟いている彼を、リサは面白くなさそうに睨み、 嘆息した。  向こうでは、ルーティがパティとエルに薬草の見分け方などを教わってはしゃいでいる。 「つくづく、呑気だね……」 「しょうがないさ。今日薬草を取って帰らないと、パティもエルも商売上がったりだ」  この上もなく呑気な調子でアーウィルは笑い、さきほどから正体を見極めかねていた草を口に放り込んだ。 「……猛毒の味だ。取らんで良かった」  リサの見るところ、その草は葉っぱ一枚で牛も殺せるほどの猛毒のはずなのだが……  やれやれ、とリサは肩をすくめ、自分の周りの草を取ることに専念した。 ●第272話 投稿者:熱血王  投稿日: 4月 8日(日)07時59分19秒 「(なんだろうな・・・この土地は・・・。)」 少年は(青年と言うには少し若い)今自分が置かれている状況に対してそんな事考えた。 少し髪が長く,まだ幼さを残しているため,年齢より若く見られそうだ。着ている服には六芳星と 小さな文字のようなものが描かれていて,大きなリュックを背負っている。 ある噂を聞いてエンフィールドを目指したのはいいが,もうすぐ町に着くというのに見たことの無い怪物と3度目の遭遇をしていた。 「(ここには強いと噂される人間以外にも,こんな怪物がうようよいるのかな・・・?)」 ある意味それはそれ嬉しい事だ。などと思いながら,背負ったバックを戦闘に巻き込まれない所まで投げる。 同じ(?)怪物との2度の戦闘によって痛めた身体(2度目とも不意打ちをうけた)に鞭打つように,ゆっくり構える。 「(・・・今回はなかなか仕掛けてこないな。)」 前回の2度が不意打ちだったためにかなり注意深くなっている。 その場に人がいればごく当然のような疑問を覚えるだろう,その少年は武器を持っていないし,構えも格闘のスタイルだ。この様な怪物相手に素手で戦う気なのだ。 「よし。」 攻撃してこないので,先手を打つ決意をした時だった。目の前の怪物腕が一瞬と言って良いほどの速さで腕を突き出してきた。 「ぐぅ!!」 避けることができず,10メートル程後方にあった木に激突。 「(まずいな・・・。)」 今のので骨にひびがはいっている事にいっさいの疑問をもたなっかった。 怪物の高速パンチを受ける所はよかったが,後ろの木に激突しのは計算外だった。 「(こうなったら,手加減はできないな・・・あれを使うしかないか。)」 自分の置かれている状況に危険を感じ本気を出す決意をする。 様子を見ていた怪物が,自分が生きている事にきずいたらしく,接近を開始していた。 「我に纏われし者よ汝に命ずる姿を現し鎧となれ。我が名は『コウ・クイック』」 喝を入れるように口にした言葉を放ったと同時に少年の服が光り出した。 「水よ拳に纏いてその姿は変えよ。氷雪刃」 コウと名乗った少年の右腕が青く光り出し,地を蹴り怪物へ飛ぶ。 しかし,少年の身体はまたも怪物のパンチを胸に受けて後方に吹き飛ぶ。 「(・・・く!)」 先のダメージが響くが気にせず,先ほどとは違い器用に木に着地し木を蹴り,怪物の懐に入った。 「・・・はぁ」 小さく息をし,怪物に拳を埋め込む。少年がその場を後ろに離れた瞬間,怪物の身体が凍りつく。 「よし・・・とりあえず,死なずに・・すん・だ。」 くらったダメージの大きさのため少年はその場に倒れこんだ。 「(そういえば・・・丸一日・・何も食べて・・なかった・・・)」 そんな事を思いコウ・クイックの意識は闇に沈んだ。(要は気絶である。) ルーティーはパティとエルに教わった薬草を探す事が楽しく,辺りに怪物がいることを忘れてみんなと少し離れた場所で薬草を探していた。 「?」 薬草を探すため地面ばかり見ていたルーティは,目の前に大きなリュックを見つけた。 「落し物かな?」 そんな事を思い中を覗くとテントや日用品が入っていた。 「(山の中でこんなの落としていく人いるのかな?)」 よくよく考えるとおかしく思い辺りを少し探すと,先ほどアーウィルが倒したのと似た怪物と,その少し離れた所に,少年が倒れていた。 ●第273話 投稿者:美住 湖南  投稿日: 4月 8日(日)17時22分39秒 「・・・煙が出てきてるが、何やったんだ?」  そういいたくても恐くて言えないディムルは見慣れない人物−クロウだ−に話しかけることにした。シュウのいない今、状況を訊けるのはクロウしかいないと判断したためだ。 「おれはディムル・マークレット。あんたは?」 「クロウ・フリュートだ。何か?」 「アーシィとアルベルト、いったいどうしてあんなになってんだ?」 「あぁ・・・それはな」  言おうとしたところで大爆発が起こった。閃光の所為で視界がきかなくなる。 「いっ・・・!!」  シュウが吹っ飛んできた。受け身をとって地面を転がる。 「シュウがやった、・・・訳じゃないよな」 「・・・・・・魔法が使えないことは知っているでしょう」  いくら受け身をとってもあれだけの速度でと飛ばされたのだからかなり痛い。間をおいてシュウは答えた。 「うーん。もう少し芸術的に壊れればよかったんだが。まあ、これは久しぶりなんだ、よしとしよう」  瓦礫と化した元洞窟の前にシュウと対峙した男が立っていた。  すでに全員、それぞれ武器を構えている−さすがのケインもロイは降ろした。シュウは何とか立ち上がっているが骨を何本かやられたようだ。 「大丈夫だよ。私はこれ以上やる気はない。・・・君たちがやろうというのなら別だけどね」  最初は気さくに、後は楽しそうに−歪んだ楽しさだが−言う。  それぞれに目を配る。ロイは無視し、ディムルに目をやると唇に笑みを刻む。 「どうするかい?」  誰も何も言わずに数分が過ぎる。──とアーシィが、 「この魔物を創ったのは?」  殺気も押さえずに言い放つ。 「私だよ。少々、他人の知識もあるがね」  口も身体も暴れ出しそうなアルベルトをケインとディムルが押さえつける。 「・・・・・・」 「そんなに殺気を出さないでくれ、疲れるだけだよ。・・・もう時間のようだ。また会おう。その時は楽しみたいものだ」  マントを翻すような動作をするとその場所から忽然と消えていた。 「なんだったんだ?」  不意にケインの力がゆるむ。それをふりほどくとアルベルトは大声で抗議した。 「なんだって押さえた!今やればあいつを捕らえられたかもしれないんだぞ!!」 「・・・死にたきゃ一人でやれ。おれは犬死にはごめんだ・・・」  ぱきっ  細い木の枝を折った。  その音がディムルの言葉に込めた感情をさらに強調しているようだった。 ●第274話 投稿者:タムタム  投稿日: 4月 9日(月)20時30分23秒  しばらくの間、静寂が訪れた。それぞれに思う所があるのだろう。誰も何も言わず、目線も合わせ様としない。 「…ディムル。一つ聞いていいかい?」  右手で髪をかき上げながら、唐突にアーシィが尋ねた。ようやくと言うか、徐々にだが普段の落ち着きを取り戻しつつある。その言葉に、もう殺気はこもっていない。 「…あいつの事か?」  ディムルはため息混じりにそう言うと、手近な岩に腰をおろす。そして、なんて説明すれば良いか思考を巡らせる。その様子を見て、時間がかかると思ったのか、ケインが口を開いた。 「あいつは大武闘会の時、ランディと一緒にいた奴だ。確か…技師と言われていたはずだ」 「…名前はカイル・ゼルレーム。おれの…魔法の師匠だ」  ケインの台詞を継ぎ、ディムルが吐き捨てる様にそう言った。思い出したくも無いのか、指が白くなるほどに拳を握り締めている。 「…あいつは強いからな。戦おう何て考えないでくれよ」  そして、誰かが何かを言う前にそう付け足す。そうしなければ、すぐにでも飛び出して行かれそうな気がしたからだ。  戦って、倒せない相手だとは思えない。アルベルトの言う様にここにいる全員で仕掛ければ倒せただろう。だが、必ず犠牲は出る。幾ら強い相手でも、幾ら戦い慣れした相手でも、如何にかする手段は有るのだ。  あくまで手段でしかないのだが、一人で堂々と出て来ていた以上、何らかの罠は仕掛けてあったのだろう。 「ん〜。取り合えず山を降りようか。調査は終わったのだし、話の続きはジョート・ショップに帰ってからにしよう」  いつもの調子に戻ったアーシィが落ち着いた口調でそう言った。と、その時。アーシィの持つ水晶球に通信が入った。 『アーシィ君か?。わたしだ、リカルドだ』 「リカルドさん?。一体どうしたんです?」  そう言ってから不思議に思う。なぜ、リカルドが通信球を持っているのか?と。 「ああ、俺が渡しておいた」  眉をひそめたアーシィを見て、ケインがさらっとそう言った。渡したなら渡したと、早めに言って欲しいものである。 『いや、大した事ではないのだよ。そちらの調査はもう終わったのかね?』 「ええ、終わりましたよ。これから帰還する所です」  よく考えたら、こういう会話はアルベルトがしなくてはいけない気がするが、通信球を持っていないのだから仕方ない。 『そうか。では後で自警団事務所まで来てくれないか。少し話がある』 「では後ほど」  そう言って通信を切る。おそらく、今回の事について情報を整理したいのだろう。  取り合えず、全員下山を開始した。 ●第275話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 4月11日(水)15時28分31秒  町にたどり着く頃には既に夕暮れが迫ってきていた。まあそれはそれとして、ディムル、アーシィ、シュウ、ケイン、クロウ、ジェイス、アルベルトは自警団事務所に集まっていた。  ちなみに、ロイは奥で寝かせてある。ケインは拷問を行おうと言い張っていたが、リカルドの一喝で拷問はなしということになった。 「・・・と、いうわけです」  シュウが雷鳴山であったことの一部始終を報告する。なぜアルベルトではないのかというと、アルベルトは当時、アリサさんの弁当をつぶされたことにやたらと腹を立てており、まともに周囲の状況を記憶することが出来ていなかったからだ。 「カイル・ゼルレームか・・・一体なにを企んでいるんだ?」  リカルドが眉間にしわを寄せて呟く。 「一応、シュウの話や俺の見た時の感じなんかを総合すると、だ」  ケインが紅茶をすすりながら答える。 「ディムルの師匠で、腕を切られても生えてきて、やたらと魔力が強くて、ロイのポチを真似る技術を持っていて、ランディとも関わり有り、といったところだな」  いい終わる頃にはケインも眉間にしわをよせて難しい顔をしている。 「謎だらけの男・・・まさに『ミスター・謎』ってところだな」 「それ、あだ名のつもりかい?」  ケインの呟きに言い返してきたのはアーシィだ。こちらもいすに腰掛けている。 「悪いか?」 「悪くは無いけど、ちょっとひねりが足りないね」 「んなこたぁどうでもいい!」  怒鳴ったのはアルベルト。 「あいつは、あいつは、アリサさんの作ってくれた弁当の仇なんだ!とにかく、見つけ次第ぶっつぶす!」  背後にオーラを背負って意気込むアル。その場にいる全員―アーシィは除く―が半眼になっているのも気づいていないようだ。 「・・・とにかく、やつの、というよりもランディ達の目的もなんもわからないってのだけは間違いなさそうだな」 「うむ。自警団の町の見回りも、これまで以上に強化する必要がありそうだな」  ディムルの台詞を継いでリカルドが意見を口にする。  結局のところ、後手後手に回るしかない。そのことがケインの癪にはさわる。 (アーウィルは・・・絶対になにかを知っているよな。でも、あいつを尋問するのは無駄か・・・)  そう考えながら、考えを巡らしていたとき。 「こんばんわ〜」  扉を開けて入ってきたのは、ルーティやパティ、エル、アーウィル、リサ。要するに薬草を採りに言っていた面々だ。 「どうかしたのか?」  リカルドが尋ねる。ルーティが軽く肩をすくめて、 「薬草採りをしていたらね、この人が倒れてたの」  と、アーウィルが抱えている少年を指差した。 ●第276話 投稿者:熱血王  投稿日: 4月13日(金)00時41分41秒 「なんだいその少年は?」  アーシィは,アーウィルが軽そうに(実際軽いんだろうが)抱えている少年の事を聞く。 「さっきルーティが言った通りなんだが・・・」 「そうそう,薬草探してたら荷物があって,近くで気絶してたの。」 「すぐそばに,バケモノもいたよ。もう死んでたけどね。」  アーウィル,ルーティ,リサが言う。 「この少年の物と思われる魔力を感じる多分この少年がやったのだろう。 戦闘の後のようなケガもしている。」 「ケガだって!?なぜそれを言わない!」  アーウィルの言葉に,リカルドは怒ったように言う。 「このバカがトーヤ先生の所のに行こうとしなかったんだよ。それに応急処置をしている 間に起きたらいろいろ聞けるとおもったんだけど・・・無理そうだね。」 「そうか,この非常事態だ,しかたがない。それより応急処置がまだのようだが?」  リサの言葉に少し納得するリカルド,事態が事態だけにしかたないようだ。 「それなら私とパティでやるよ,その後トーヤ先生の所に行ってくる。」  少年の処置にエルが立候補した。パティは急に自分の名前が出たが事に驚いたが, 自分が今できることはその程度なので何もいわなかった。 「んーそれじゃあ,頼むよ。アーウィルもきたことだし,もう少しみんなで話したい事 もあるから助かる。」  アーシィがいうと,エルとぱパティは少年を別室へ運んでいった。ルーティもついて いったようだ。 「あんな子供があのバケモノを倒したってーのかよ?」  アルベルトはまだ信じきっていないようだ。するとアーシィが口を開いた。 「世界は広いってことだよ。それより悪いがこの荷物を少し見せてもらおうか。 もしかすると,今回のことに関与してるかもしれない。」 「いいのか?」 「んーしかたないよ。こちらには情報が少なすぎる。それになにもないなら別に 問題ないよ,彼には悪いけど。」  いまの出来事で全員が落ちついたなか,ケインが言うが,アーシィの言う事に 一理もニ理もある。      そしてルーティが持ってきた荷物をアーシィが調べ始めた。 「これは・・・」 「どうかしたのか!」  アーシィの意味が深そうなつぶやきにアルベルトが反応したが。 「いや彼は全くの白だ。入っていたの小さなテントにマッチに鍋といった キャンプ道具のようなものばかりだね。」 「そんだけかよ・・・」 かなりの期待をしていたアルベルトはかなり期待はずれの答えにがっかりしていた。 「んー彼はトーヤ先生の所に行ったみたいだし,これからどうしようか?」  今の出来事に全く情報が手にはいらなかったため,結局なにも話は進んでいなかった。  わかった事といえば,騒動続きのエンフィールドにまた騒動の元のような人間が 増えたことだった。 ●第277話 投稿者:タムタム  投稿日: 4月14日(土)17時25分57秒 「ん〜。それでは少し情報を整理しようか。まず、ポチもどきの出現について、これはカイルの仕業で間違い無いだろう。  目的はおそらく、戦闘データの収集。何を企んでいるかは判らないけどね」  アーシィはそう言って肩をすくめる。整理するまでも無いような事ではあるが、一つずつ口に出していく事で思わぬ事に気が付く可能性がある。 「まずはこれを見てくれないか?」  水晶球とカードを置いてから、軽く指を打ち鳴らす。すると、壁にどこかの映像が映し出された。そこは 「ローズレイクで行われた戦いの映像だよ。これはケイン達が戦ったときのものさ」  しばらく戦いの映像が流れ、戦闘は結界を張ったポチもどきの自滅と言う結果で幕を閉じた。  そして、次に映し出されたのは雷鳴山の映像だ。こちらはポチもどきの逃走、そして、発見した時にはすでに自滅。 「ちょっと待て、なぜこんな映像が有る?」 「気にしてはいけないよ。世の中には不思議な事もあるものさ」  しばらく唖然としていたケインだが、すぐにはっとして突っ込みを入れてきた。アーシィはと言うと、答えにならない答えを返しただけだった。 ―只今議論中に付き中略―  議論が終わり何が決まったかと言うと、実は何も決まっていない。こちらから打てる手が少なすぎる以上、警備の強化及び情報収集位しか出来る事が無い。  向こうから手を出してきたら尻尾をつかむ。今は後手に回るしかない。 「ん〜、今日の所は解散だね」  アーシィがそう言い、全員席を立った。 ●第278話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 4月15日(日)13時45分30秒 「カイル・ゼルレーム、ね。そう言えば、前にディムルが訊いて回ってたね……」  眠ってしまったルーティを背負い、さくら亭へ帰る道を歩みながらリサが言った。 「“こちらの領域”ではけっこう有名な奴だ。連邦やら帝国やらがマークしていてね。 特SSS級危険物のリストの上位にランクインしてる」  自警団事務所からくすねてきたらしい菓子を食べながら、アーウィルがそれに応える。 「あんたと同じかい……。“その能力・知識・技術と、それらを用いる目的及び思想が極めて危険と判断され得る人間、もしくは非人間” これが特SSS級危険物指定を受ける最低条件だったね」 「詳しいな」  晴れ渡った夜空に浮かぶ月を眺めながら、アーウィルは二つ目の菓子を口に放り込んだ。 「あんたとの腐れ縁のお陰だよ……。そう言えば、さっきの行き倒れ」 「行き倒れって言うのか? あれ」 「似たようなものだよ。とにかく、本当に『ウェポン・ファイター』なのかい?」 「間違いない」  ずり落ちそうになったルーティの帽子を、定位置に戻しながらアーウィル。 「当然、今日が初対面だが、データとしては知ってる。こちらに向かっていると言う情報は入っていたしな」 「そう言えば、あんたたちの情報網は大陸全土をカバーできるんだったね……。しかも瞬時に」  羨ましい話だこと、とリサは呟き、ルーティを背負いなおした。  そして、やや意地の悪い笑いを浮かべてアーウィルに問う。 「とりあえず、明日にでも見舞いに行くかい?」 「遠慮する」  心底まいった表情でアーウィルは辞退した。  さくら亭。 「肋骨にヒビが入っただけだって。体力もありそうだし、明日はもう退院して良いって」 「ま、肋骨の骨折は、余程ひどくなければ放っておいても大丈夫だからな」  パティの報告に、採ってきたばかりの香草で焼いた川魚の料理をつつきながらアーウィルは言った。  やはり、採れたてだけあって良い香りがする。  向こうでは、意気投合したバーシアと由羅が果てしなくテンションを上げながら酒をかっくらっている。  由羅がぶっ倒れたらアーシィを呼ばなくてはいけないな、とアーウィルは思い、頭を掻いた。 「なるほどな……あのカイル・ゼルレームが、か」 「こいつはいよいよ俺たちの仕事だな……。例の組織の連中も居るようだし。まとめてぶち込んでやる」  ゼファーとルシードは二人だけで何やら話し合っている。 「さてと、ずいぶんとまた豪華な役者が揃ったものだな……。これからが楽しみだ」  アーウィルは笑い。そして、無理矢理酒を飲まされて酔っ払ったリサの回し蹴りを喰らって吹っ飛んだ。 ●第279話 投稿者:紅の狸  投稿日: 4月15日(日)23時27分09秒 解散した後ジェノアは一人夜の道を歩いていた。 「(まさか、カイル・ゼルレームとはな・・・)」 ジェノアはこれまで起きた出来事を考えていた。 「(<コードΩ>にカイル、それにバンパイア・ロードか他にも異様な力を持った奴らがこの街ゴロゴロ居やがる・・・どうなってんだこの街?)」 国を破壊できる力を持った奴等が一つの街に集まっているのだからそう思うのは当然といえば当然。 「(それに確かアイツ『ウェポン・ファイター』じゃねェか・・・たしか無限流とかいう『魔法式格闘術』の使い手だったはず・・・)」 レイブンは魔属の知識の他に魔属と闘う力を持った者のことも大体は知っている。素手で魔属と闘えるヤツはそうは居ないからすぐに思い当った。 「(・・・考えても仕方ねェな・・・取りあえずあの異様な魔獣の事を調べるか・・・)」 ジェノアは懐から通信球を取り出した。 「(カイルが創ったとしても一人じゃまず無理なはずだ・・・)」 何かやろうとしたらまず資金が要る、そうなると裏にスポンサーが居るはずだとジェノアは考えていた。 「オイ、聞こえるか?」 ジェノアは通信球に向かって話し掛けた。 『・・・・・誰だ?・・・』 通信球から老練な感じのする男の声が聞こえてきた。 「俺だよ・・・」 『・・・ジェノアか・・・』 それだけで判るところを見るとかなりの知り合いのようだ。 「・・・よく”俺”だけでわかったな・・・」 『・・・知らないワケではないからな・・・で、何のようだ・・・』 「調べて欲しい事がある、エンフィールドという街で活動してる組織があるか調べてくれ・・・」 『・・・エンフィールドか・・・』 「知ってるのか?」 ジェノアは相手の声の感じからそう感じた。 『・・・ああ、その街の大地の魔力は以上だからな我々も目を付けていた・・・』 「だったら話は早ェ・・・調べてくれ」 『・・・良いだろう、ライゼスにもカリがあるからな・・・』 どうやら先代のレイブンとも面識があるようだ。 『・・・2,3日中には知らせるそれで良いな・・・』 「ああ、恩に着る・・・」 『・・・気にするな、では・・・』 通信が切れた。 「・・・後は待つだけだな・・・」 ジェノアは通信球をしまいながらそう呟いた。 『・・・星が・・よく・・見える・・・』 今まで黙っていたイリスが突然喋った。 「・・・ああそうだな」 ジェノアも慣れているのか話を合わしている。 『・・・あそこが・・いい・・・』 イリスはいつかと同じように今度は陽のあたる丘公園を指して言った。 「・・・まあ、それも良いか・・・」 どうやらジェノアは面倒な事は考えない性格のようだ。 そうして星を見ながら今度は陽のあたる丘公園を寝床に決めたようである。 ●第280話 投稿者:YS  投稿日: 4月16日(月)07時15分26秒  暗い闇の中、その契約は結ばれた。 <・・力が欲しいか?>  その言葉はその子供にとってはまさに望んでいたモノだった。 「ああ、誰もが認める力が欲しい」  その子供は迷うことなく、そう答えた。 <・・すべてを失ってもか?>  ”それ”は再度確認の意味を込めて、そういった。 (・・これ以上何を失うモノがあるというのだ・・) 「しつこいぞ!!」 <・・わかった、封印と共に我が力を授けよう・・>  それは意味のない契約だったのかも知れない。すべてとはこれから手に入れるモノをも含んでいたのだったのだから。  暗い闇の中、その声ははっきりと聞こえていた。 「ん〜、今日の所は解散だね」  その言葉はロイにとって、まさに望んでいたモノだった。 「・・そうか、やっと終わったか」  ロイは久しく使うことのなかった口調でいった。 「クロウとかいったな」  ロイは懐から一枚の布を取り出した。 「力を封じるといっていたはずだが・・」  ロイはその布を左腕に巻くと呪文を唱える。不思議と痛みはあまりなく、呪文は歌のように室内に響いた。 「なるほど、少しは封印を封印できるかも知れんな」  ロイの身体の火傷はすっかりなくなっていた。 (・・結局、この街ではあの程度のことでは変わらないんですよね・・)  ロイは久しぶりに訪れた旧王立図書館で、久しぶりにのんびりと普通の本を読んでいた。普通とはいえ、子供の読む本ではない。  窓の外では無邪気に子供達が遊んでいる。本来なら向こうにいるべきかも知れないが、それはできない。  ただ、運動がやりたくないだけだが、重い本を片手で読むのは多少は運動にはなる。ついでに背もまだ高くないので人一倍足腰も使わなければいけない。放っておいても運動不足にはならない。  ケインは教会のために(無理やり)働かされている頃だろう。  シュウやアーシィ、ディムルにクロウも仕事だろう。  最近はローズレイクなどに浮浪者(ジェノアやコウ)も増えたが、気にするほどのことはない。 「・・あ、トゥーリア・・」  人形である彼女が窓の外を横切る。リオの手を引っ張って、他の子供達と仲よく遊んでいる。 (・・あの子はどうしてるんでしょうかね・・)  あの子とはロイが手を加えた合成魔獣のことだ。  基本的に”無”から生み出されたその子はアーウィルやケイン、アーシィやディムルにシュウ、クロウ。それにレイブン(ジェノア)やウェポン・ファイター(コウ)といった対魔属戦闘のエキスパートのデータを元に作ったのだ。  ほかにもエンフィールドの人間のデータもあったが、組み込まれていたかどうかはロイは知らない。最初の設計と最後の調整だけがロイの仕事だったからだ。 (・・もし、あの子が戦うことだけを教えられたら・・)  おそらくは数日もしないうちにすべてをマスターするだろう。あとは何に使われるのかわかったモノではない。 「・・だからといって、どうしようもないんですけどね・・」  ロイにできるのは束の間の平和を楽しむことだけだった。