●第261話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 3月28日(水)14時44分33秒 「・・・」 「どうかしたのかい?」 さっきから、無言のままのクロウに違和感を感じたのか、アーシィが話しかけてくる。 「あぁ、ちょっとな。少し、待っててくれるか?」 そう言ってクロウは返答を待たずして、その場に座る。 「おい!何をするんだか知らんがなぁ・・・」 アルベルトが大声で怒鳴る。 それに対してクロウは無言のまま、布を持って、瞑想している。 「おい!手前ぇ、人の話をだなぁ・・・」 「アル、少し待ってみよう。何か策があるようだし。」 「・・・ちっ。」 そして暫くしてから。 「・・・即席だからな。」 そう言って立ち上がり。 「この魔防布があればあるいは・・・」 「魔防布?」 シュウがオウム返しで聞いてくる。 「俺の家系に伝わる特殊な魔力でな・・・」 「御託はいいから、さっさと話せ!!」 今にも襲ってきそうな目をして、アルベルトが怒鳴る。 アーシィは怒ってはいても理性で保っているからいいものの、アルベルトは既に、「打倒!アリサさんの弁当を滅茶苦茶にした奴!!」としか頭に無い為、ブチ切れている。 「ちっ。わかった。要は俺の力で、あの怪物の極限まで能力を下げる布ができた。という訳だ。」 その後も少し説明したが、敵にこの布をかぶせれば、一瞬にして全ての能力を下げられるから、あの怪物との戦いで、自滅を待つより一瞬で片付けられる。といった説明であった。 移動に関しては、対策がないからアーシィに任せるようだったが・・・ 「なら、さっさと行くぞ、あの野郎共、覚悟しやがれぇ!!」 アルベルトの怒声が周囲に響いた。 「ふう。地獄の業火の出番か。」 クロウはそういってアクセサリーをひとつ掲げて刀にした。 ●第262話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 3月29日(木)16時02分10秒 「相変わらず派手好きだね、あのバカは」  高速で回転しつつ飛来した木片を叩き落し、リサは毒づいた。  ひときわ大きな轟音が生まれ、もうもうと立ちこめる土煙の中からアーウィルが吹っ飛んできた。  さらに、まだ空中にある彼を追って、人間の認識できるスピードを遥かに超える速さで怪物が姿を現す。 両の拳を組み合わせ、アーウィルを地面に叩きつけようとする構えだ。  だが、拳が振り下ろされた瞬間。アーウィルは眼前に迫ったそれに左手をかけ、そこを支点として、 自分の体を後方……現在の進行方向とはまったく逆向きに移動させた。  その慣性の法則を無視したような動きに怪物の打撃は外れ、空しく地面を抉る結果に終わる。  そして、一回転して怪物の背後に着地したアーウィルは、間髪入れずに無防備な体勢のそれに蹴りを放つ。  今度は怪物が派手に吹っ飛ぶ番だった。騒々しい音を立て、森の中に粗雑な道を作りつつ、 視界から消える。かなり遠くまで飛んだようだ。  同時に、アーウィルの左腕が落ちた。肩口から外れ、妙に軽い音を立てて地面に転がる。 「流石に無茶だったかな。通常駆動状態であれをやるのは」  一滴の血も流さず細い丸太のように転がる自分の腕を見、頭を掻こうとしてアーウィルは失敗した。 普段、頭を掻くのに使っている手は、目の前に外れて落ちているのだ。 「通常駆動状態で今のをやったのかい? つくづくバカだね、あんたは。第一、今までのは全部遊びでやってただろう?」 「バレてたか」とアーウィルは笑い、頭を掻こうとしてまた失敗した。  いい加減呆れ果てた、という表情でリサはアーウィルに歩み寄り、一発頭をはたいてから腕を拾い上げる。 「ほら」 「どうも」  リサがアーウィルの肩の切断面に腕を押し当て、数秒待ってから手を離す。腕は落ちなかった。 「呆れたね。もう治ってるのかい」 「腕や脚なら、大した問題じゃない。構造が単純だからね。頭を潰されると治るのに時間がかかるけど」  完全に蚊帳の外なルーティとパティは声も出ない。エルは、なにやら考え込んでいる。 (なるほど、やっぱりこいつは……) ●第263話 投稿者:タムタム  投稿日: 3月30日(金)10時43分26秒 「次はこっちか」  倒れた杖を見て、アルベルトが怒りを含んだ声を上げながら、先頭になって進む。どれほど進んだのだろうか、四人はかなり山奥へと入り込んでいた。 「本当にこっちであっているのか?」  何とも言えない様子で、クロウが言う。いくら手段が無いとは言え、かなり怪しい方法で進んでいるのだ。しかし、三人は何の疑問も持っていない。これでは正しいのかどうかの判断がクロウには下せ無い。 「大丈夫。…もうすぐ辿り着くよ…」  アーシィがアルベルトとは対照的に、こみ上げる喜びを噛み殺している様な台詞を吐いた。アリサさんの弁当を台無しにした奴らに近付いていると言う確信が、アーシィには有るのだろう。  その台詞を最後に四人は黙々と歩き続ける。そして、幾らも歩かないうちに“いかにもここは怪しいです”と言う様な洞窟が姿を現した。 「さっきの人達はここに逃げ込んだんですね」  その洞窟を見て、シュウは断言した。その横ではクロウが呆れている。アーシィは地面に残る複数の足跡を調べ、ここで間違いないと判断する。 「突っ込むぞ!」 「待ちなよ、アル」  言うより早く、突撃しようとしたアルベルトの首根っこをアーシィが声をかけるより速くつかみ、シュウがすでにその腕をつかんでいる。二人とも、アルベルトとの付き合いは短くない。その為、こういう時の判断はすぐ出来る。 「向こうは此方が来る事を警戒しているはず。罠が在るかも知れないよ」  冷静さを取り戻したようなアーシィの台詞にシュウはホッとした。が、 「生木でも集めて、いぶり出そう」  甘かった。二人の怒りは未だに収まっていないらしい。 ―数分後―  四人が集めてきた生木が洞窟の入り口に積み上げられる。 『フリント・ファイア』  そう言いながら、アーシィは指を打ち鳴らす。別に声に出さなくとも良いのだが、気分の問題らしい。  生木に火が点き、煙がもうもうと上がり始める。そして、風を呼び洞窟の奥へと煙が行くようにする。後は待つだけだ。 ―それから数分―  洞窟の中が、慌しくなって来た。周りを見ても、煙が登っているところが無いので、出入り口はここだけらしい。外に出たいなら、ここまで来るしかない様だ。  ここにディムルが居たのなら、中の様子を実況中継してくれそうなのだが、居ないものは仕方ない。  そして、ばらばらと人間が飛び出してきた。だが、出てきた先からアルベルトに槍で殴られ、アーシィに銃で撃たれ倒れて行く。とりあえず、急所は外しているので死にはしないだろう。…運が良ければ…。 「…こいつ等ひでぇ…」  その光景を見て、クロウは人事の様に呟いた。 ●第264話 投稿者:YS  投稿日: 4月 2日(月)00時25分13秒  通信球に映るアルベルトとアーシィが片っ端から洞窟から出てきた人達を倒している。 「・・やれやれ、大人げない人達ですね・・」  通信球を覗いているのはロイだ。自爆した魔獣のデータをまとめるため、手はまったく休んでいない。ロイはまったく違う作業をも平然とこなしていた。 「・・自爆は元から計算通り、あくまで耐久力と攻撃力のテストですからね。それぞれの機能の限界も知らずに作るほど愚かじゃないんですよ・・」  誰に言うでもなく話し続けている。もしかすると寂しいのだろうか。 「・・ただ死なないように生きること・・それだけなのに・・難しいものなんですよね・・」  ロイが独り言を言いながら見ていると倒れた人が少しずつ変化していた。段々と人間の形を失い、どちらかというとポチ達に近い姿に変化する。ロイはそんな物を作った記憶はなかった。 「・・あのクズめ・・」  だが、予想はできた。おそらくあの”技師”が作ったのだろう。 「そちらがそうくるならこちらにも考えがある」  ロイの目は見る者を脅えさせるだけの光を放っていた。 「こいつら・・一体なんなんだ!?」  誰かがそういった。アルベルトとアーシィが倒した人が変化し、人外の者へと姿を変えていったのだ。 「そんなことどうでもいいよ。アリサさんの弁当の仇にかわりはないんだし……」  アーシィが言う。どうやら怒りは収まっていないようだ。 「それもそうだな」  ……アルベルトも同じらしい。 「……そういう問題か?」  クロウが言う。呆れてはいるが戦闘体制は整えている。シュウも準備はできているようだ。  敵の数は5人……いや、5体。他の人間はどさくさに紛れて逃げたか、あるいは見境なく襲いかかってきた者のいずれかにやられたようだ。 「アリサさんの弁当の恨み思い知れ!!」  アルベルトかアーシィか……どちらの言葉かわからないが、その言葉と同時に戦闘が始まった。 「・・あ〜、アーウィルさん・・」  一方、ロイは通信球を通じてアーウィルを呼び出そうとしていた。  そのそばにはもう一人、人間の形をした者がいた。 「・・なかなか繋がりませんね・・」  のんびりとそういうロイの周りには炎がたちこめていた。ロイが自分で火をつけたのだ。 「・・この子は逃がさないと意味がないんですが・・」  ロイは涼しい顔だが、汗は大量に吹きだしている。だが、その隣の者はまったく変化していない。 「・・ただの戦闘兵器で終わらせたくはなかったんですが、このままだと・・」  そう言った瞬間、扉が開き”技師”が入ってきた。 「何をしているんだい?」  その言葉には明らかな敵意が見えた。 「・・作りたい物が違ったということですよ、あなたのは兵器でこちらはただの生命・・」 「両方兼ね備えたモノだと思うがな」 「ふざけるな、そんな物には興味はない」 「それが君の本性かな」 「・・どうするつもりですか?」 「君を殺してでもそれはいただく。折角の作品だからな」 (この子を連れて逃げるのは無理そうだな)  ロイは冷静にそう判断した。 「・・あなたは悪魔にも・・いや、すべてに劣るモノだな」 「君には負けるよ」 「・・次に会うことがあれば、必ず消してやる」 「逃げられると思っているのかい?」 「・・逃げられないのにこんなことはしない、確実に逃げる方法は残してあるんだよ」  そういうとロイは呪文を唱え始めた。いつもと違い高速でだ。  ”技師”がロイに近づくより先に呪文は完成し、ロイの姿は消えた。 「今のは禁呪か、まさかそんなモノまで知っていたとは……だが、素体までは転移できなかったようだな」  部屋を見回し、諦めの表情を浮かべる。 「だが、量産は無理か……今回は引き分けといったところか……してやられたな」 「くそ……封印さえなければ、普段から問題なく使えるものを……」  転移した先の森の中でロイは胸を抑え……そのまま気絶した。 ●第265話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 4月 2日(月)10時56分36秒  雷鳴山に向かう山道を歩くケイン、ディムル、ジェノアの一行。と、ケインが何かを感じたようにとある方角に目を向ける。  ディムルも何かを“聞いた”ようだ。 「感じたか?」 「おう」 「何のことだ?」  ケインの問いかけに答えるディムル。ジェノアには何のことやら判らない。 「手っ取り早く言ってしまうと、だ。俺たちは魔法の発動した痕跡を感じ取ることが出来るっぽいんだ」  ディムルが槍を構えながら答える。ケインも亜空間の「倉庫」から一振りの刀を取り出す。これは別になんの特徴もなにもない、それなりの強度と軟性をもつ銘刀だ。 「まずは、先制攻撃だな。・・・真白き奔流よ!」  と、ケインがいきなり光熱波をぶちかます。 「っておい!いきなりはまずいんじゃあ?」 「俺も同感だ」  ジェノアが腰の刀に手をかけながらディムルに賛同する。なんか目つきが怖い。 「いーんだよ。高さ2メートル辺りを狙ったから」 「いや、そーじゃなくて」 「まあとにかく反撃もないし、確認に行こうか」  そのままケインが光熱波をかました方角へと歩き出す。と、しばらく行ったところに人が倒れていた。 「ロイ?!」  ケインが不可解の呟きを漏らす。後から追ってきたディムルとジェノアが多少の驚愕をその顔に浮かべる。 「っておい!なんでロイがこんなところで倒れてるんだ?」 「・・・こいつが、ロイ、か」 「・・・大丈夫だ、軽い火傷以外に外傷らしいものはない」  ロイの身体を見たケインが言う。 「だが、精神的に衰弱の気配があるな。大規模魔法を発動させた、か?」 「まあなんにしろこれでなにかが判るな」 「ああ」  言いながらケインはロイの身体を担ぎ上げて、続ける。 「こいつには色々と話してもらわなとなぁ・・・とりあえず拷問の用意でもしておこうか」  ふっふっふっ・・・と笑み、というか微妙にベクトルの狂ったねじ曲がった笑顔を浮かべるケイン。  思いっきり後ずさりながら、ディムルはジェノアに言った。 「あいつって・・・やっぱり変だな。さすがはバンパイア・ロードの家系って感じだろ?」 「バンパイア・ロード?!」  ジェノアが驚愕の声を挙げる。ロードクラスのバンパイアともなれば、一人で国一つを滅ぼしうるほどの存在である。そんなものが人のすむ町でごく当たり前に存在しているなど、考えられない。 「この町は、なんか変だな・・・」  ジェノアの呟きは、生憎と誰の耳にも届かなかった。 ●第266話 投稿者:タムタム  投稿日: 4月 2日(月)19時22分22秒  煙の立ち込める洞窟の前、五体の魔物と対峙するアルベルト、シュウ、クロウ、アーシィの四人。敵の力量がよく判らない上に、五対四と数の上でも不利である。  だが、四人に退く気配は無い。と言うより、アルベルトとアーシィが退こうとしないため、シュウとクロウがそれにつき合わされていると言った状態だ。 「俺、出来れば一対だけを相手に戦いてぇ」  複数を相手に戦いたくない、と言った意味でクロウが言う。上手く相手を分散できないか?。と言いたいのだろうか。 「何言ってやがる。まとめて倒せばいいんだよ!」  アルベルトらしいと言えばアルベルトらしい台詞だ。だが、頭にきてはいても、一人で突っ込んで行こうとしないだけの分別は残っているのか。槍を構えて、慎重に間合いを取っている。  魔物は警戒しているのか、なかなか動こうとしない。そして、誰も気が付かないうちに、アーシィの呪文が完成した。 『バインディング・チェイン!。グラビティ・チェイン!』  左手の人指し指と中指の間に持った緑色のカードを前に突き出し、魔法を放つ。左手に一瞬魔法陣が浮かび、次の瞬間には地面から生えた無数の鎖が二体の魔物を絡めとり、残りを重力の鎖で押さえつける。  そして、右手にはいつのまにか赤いカードがあり、続けて魔法を放つ。 『メテオライト・スマッシュ!。フレイム・ジェイル!』  今度は空中に魔法陣が出現し、そこから多数の隕石が魔物めがけて降り注ぐ。鎖に絡め取られた二体以外は防御態勢をとるが、隕石は魔物の体を容赦なく叩き続ける。さらに、鎖に絡め取られた二体を炎の牢獄へと閉じ込めた。  不意打ちをかますのはいつも通りだが、普段とは気合の入り方が違う。そもそも、カードの力を使えば連続で魔法を放てるとは言え、いつもなら『卑怯だから』と言う理由でここまではしない。よほど頭にきていると言う事か。 「ぶっ殺す!」  魔法をくらい、態勢の崩れた魔物へアルベルトが突っ込んでいった。その動きは速く、一瞬で五体の魔物へ攻撃を叩き込んだ。そして、攻撃を喰らわない様に距離をとる。いつもより動きが良いのは気のせいだろうか? 「…ちょっと卑怯ですね…」 「…えげつねぇし」  シュウとクロウが誰へとも無く呟きながら、アルベルトを援護するために魔物へ攻撃を仕掛けた。  …アルベルトとアーシィをここまで本気にさせるとは流石アリサさんのお弁当と言って良いのだろうか?…。 ●第267話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 4月 3日(火)20時24分03秒  ロイを抱え、さらに木々の向こうに進もうとしたケイン、ディムル、ジェノアの前方が、突然騒々しくなった。 「なんだ?」  その声が大気に溶けるより早く……  ……前方十メートルほどのところに繁っていた木が爆砕した。 「あれは…!」  ほぼ完全な人型。全身を覆う曲面装甲。そして、人間の反射速度をはるかに凌駕するスピード。  その怪物は彼らを認めると、すぐさま長大な腕を振りかざして突進してきた。  が、身構えた三人の目前で、突然硬い打撃音が連続し、怪物が大きくよろめいた。同時に、 その背中の数箇所で爆発が起きる。 「?」  さらに、よろめいた怪物の背後から何かが高速で飛来する。このままでは三人の頭を直撃する軌道だ。 「っ…!」  それは咄嗟に避けた三人の髪を散らし、背後の木に激突してそれを粉砕し、そして…… 「おいおい」  ……爆発した。 「こういう阿呆な真似をする奴は、この街でも一人……いや、一体だけだな」  何となく据わった目つきで木々の向こうを透かし見るケインには、さきほどの物体の正体が見えていた。  棍棒型手榴弾。通称、『ポテトスマッシャー』とよばれる手投げ爆弾だ。  それを、木を粉砕するほどの力で投擲した者がいる。 「なるほど……あいつか……」  妙に力のこもった声でジェノアが呟き、身構えた。  立ち上がった怪物の背後。そこに異形の右腕を持った男が、ノホホンと緊張感の無い表情で立っていた。 彼が左手を振ると、手品のように四本の棍棒型手榴弾がそこに握られている。 「さて、そろそろお開きだ。還るべき所に還れ」  鋭い風切り音を奏でつつ爆弾が宙を飛び、轟音を立てて怪物の背中に着弾する。 「相変わらず、無茶苦茶なやつだな…!」  ディムルが叫び、安全な位置まで逃れる。他の二人もそれにならった。  その三人に気づいているのかいないのか、とにかく一声もかけずにアーウィルは怪物の背中を蹴飛ばし、 再び森の奥に消えた。 「久しいな」 「ああ。二十年ぶりか」  腐り果てた怪物の死体を踏み、アーウィルは眼前に現れた男に声を返した。 「どうかな? 私の作品は。これはまだ試作品だが、いずれもっと高い性能の作品を見せることを約束するよ」 「そいつは楽しみだ」アーウィルは笑い、「しかし、ロイと喧嘩別れしたのはマズかったんじゃないか?」  男は肩をすくめ、 「よくある、意見の相違、というやつさ。まあ、彼は私とは違う道を歩むだろう」 「だろうな。……で、調子はどんな具合だ?」 「私の組織は、相も変わらず君を敵視しているよ。一応、表面上は私もそれに同調しているがね。 ずいぶん派手にやってくれたな」  今度はアーウィルが肩をすくめ、 「ま、しょうがないさ。では、頑張ってくれよ。君は、君の好きなようにやれば良い。 二十年前にも、同じ事を君に言ったな」 「覚えているとも、勿論。……おっと、どうやら向こうは忙しいようだ。では、失礼するよ」  そう言い、男は砕けた挨拶の仕草をすると、大気に溶けるように消えた。 「さて、ではこっちも帰るか。……転送してくれ」 『了解』  一瞬後。そこには腐り果てた怪物の死体以外には、人間の形をしたものは存在しなくなっていた。 ●第268話 投稿者:YS  投稿日: 4月 6日(金)05時58分26秒  ・・それは悪夢だった。  科学者である父と神を信じる母と・・そして、自分。  父はすべてを犠牲にして生命を生み出そうとし、母はすべてを神に捧げ、いつしか自分は忘れられていた。 (・・いつか・・自分が生命を生み出し、父に認めてもらい、母に神ではなくても・・何でもできるということを証明してやる・・)  そう心に誓った。それがライ”lie”。偽りという名を授けられた子供の決断だった。 「さて、どういったのがいいかな」 「ケイン、本当にやるつもりなのか?」  遠くで声がする。 「当たり前だ、こいつにはいろいろ・・その、なんだ・・」 「だが、ロイは子供だぞ」 「だからこそけじめってのを教えてやらねえとな」 (ロイ・・?誰だ、それは?)  微かな意識を振り絞り、それだけを考える。  答えはすぐに出た。自らがつけた偽りの名。それがロイ。 「うるさい」  それだけ言うと、ゆっくりと体を動かす。どうやら森の中らしい。 「ちっ、起きたか」  ケインが言う。どうやら起こすのにも手荒な方法を使おうとしていたようだ。それで人気のない森なのか・・。 「よかった、大丈夫かい?」 「ああ」  返事をするとディムルは首を傾げた。 「・・本当に大丈夫かい?」 「そんなことより、さっさと吐かせるぞ」  ケインの手には普段の生活では使わないような物が握られていた。 「・・・・」 「ちょっと待ってくれ、ケイン。なんだか様子がおかしい」 「変なのはいつものことだろ」 「もしかすると記憶が混乱してるのかもしれない・・」 「混乱?」 「火傷の痕があるだろう?それかほかの何かが原因で混乱してるのかも・・」  ディムルはケインを止めようとしている。 (・・こいつは味方か・・いや、どうだかな・・) 「それに事件のことは聞けば答えてくれるさ」 「・・すいません、あんな物を・・」 「やっぱりこいつが犯人だな」  ケインは最後まで聞こうともしないで言った。 「まだ、そうと決まったわけじゃないだろう」 「・・あれはポチのデータをある人に渡した結果、作られた物だと思います・・」  嘘ではない。事実、自分が手伝ったのは”技師”の設計後だ。意図的な細工は別だが・・。 「誰に渡したんだい?」 「・・ランディさんです・・」 「けど、怪しくねえか?」  ケインが言う。魔力が高いからか、勘はいいようだ。 「・・ケインさんを助けようと思ってから道に迷ったんですけど・・」  言ってみる。これも事実だ。 「・・いつの話だ・・」 「・・魔族がきた時です・・」  基本的にケインも人が悪いわけではない。・・まあ、魔族だが・・。自分の心に素直に行動しているだけだ。とりあえずはこれで大丈夫だろう。事実、ケインは黙り込んだ。 「・・それより、アーシィさん達が・・」  あとはこれをもみ消すためにほかのことをさせればいい。  ロイは通信球の情報を3人に伝えた。場所は・・近い。 ●第269話 投稿者:ashukus  投稿日: 4月 6日(金)11時29分55秒 「出てこねぇな・・・」 煙の立ち込める洞窟の前でアルベルトはぼやいた。側にはたくさんの魔物の死体が転がっている。 「出て来い!アリサさんの弁当の恨みは深いぞ!!」 「しかし、この様子では蒸し焼きにでもなってしまったのではないかな?」 笑みを浮かべつつさらりとそんな事を言うアーシィ。 「アーシィさんも自分で蒸し焼きにしてよく言いますね〜・・・・」 「まったくだ」 シュウとクロウはもう二人の様子を黙認していた。そんな二人の側にも魔物の死体があるのだが 「ん〜さて、どうしたものか」 「まだ中に残ってるかもしれないぜ」 「それじゃあ、誰かが中に入って見るかい?」 「よしそれだ。シュウ行け」 アルベルトが嬉々としてシュウを指差した。 「は?」 「は?・・・じゃねぇだろ。行けっつったら行け!!」 「いや、ちょっと」 「文句があるのか?」 何故か槍を構え、鬼の形相のアルベルト。2メートル近くの巨体から殺気が立ち昇っていた。 「行くのか?行かないのか?よく選べよ。命を落とす事になるぜ?」 「本気で言ってるんですかアルベルトさん・・・・アーシィさんも何とか言ってくださいよ」 「行った方が身の為だよ」 優しい笑みを浮かべているアーシィだが何処か恐ろしくシュウを威圧する。 「前にもこんな事があったような・・・・・・・分かりました。行けば良いんでしょう」 「オラ、さっさとしろ」 「痛たたた、突っ突かないでくださいよ・・・・・」 アルベルトの槍に突っ突かれ、渋々シュウが洞窟へと入っていく。中は煙が立ち込めているが大丈夫だろうか? とそこへ誰かの足音が近づいてきた。それは・・・・・ ●第270話 投稿者:タムタム  投稿日: 4月 6日(金)21時03分51秒  煙の立ち込める洞窟に入ったシュウを見届けたアルベルト、クロウ、アーシィの三人は近付いてきた何者かの足音を聞き、振り返る。  そこにいたのはディムル、ケイン、ジェノア、そしてケインに担がれているロイ。 「…何なんだよ。この殺気は」  ケインがぼやく。空気が張り詰め、一種異様な緊張感と、殺伐とした雰囲気が漂っている。しかも、この殺気を放っているのがアルベルトとアーシィなのだから、理解に苦しむ。 「?。戦った後だからじゃないのか」  何を言っているんだ?。と言った感じでジェノアが言う。彼らの周りには魔物の死体が転がっているのだ。戦闘があったのは確実。  そして、戦闘が終わった後と言うのは大抵気がたっているものだ。相手が強ければなおの事。殺気立っていてもおかしくはない。ジェノアはそう判断していた。 「言いたい事は解る。でもな、アルベルトは短気だがここまで殺気立つ事はないし、アーシィは周りに解る様な殺気を放つ事があまり無い。  つまり、今の状態はおれ達にとっては異常なんだ」 「そんなもんなのか」  そう、補足したディムルへ、あまり関心なさそうにジェノアは言うが、心の中で『やはりこの街は何かが変だ』と付け加えた。 「何をこそこそ話しているんだい?」  一定の距離を開けて何かを言っている四人へアーシィが声をかけた。本人はいつもの様に喋ったつもりなのだろうが、その声には無理やり押さえ込んだ様な冷たい殺気が潜んでいた。 「…機嫌が悪いみたいですね…」  ケインに担がれたままロイがそんな呟きをもらす。それにしても、ケインは何時になったらロイを解放するのだろうか?。人を担いだままだと能力値が半分になると言うのに(違)。 「お前、本当にアーシィか?」  ケインが訝しげに訊ねた。いつもと比べ、明らかに様子が違いすぎる。そう思っても不思議ではない。 「ん〜。確かめて見るかい?」  にこやかにアーシィがそう返す。何だか、誤解を招くような台詞である。 「おい、あんた。こいつ等は一体なんだ?」  そう言いながら、ジェノアが辺りに転がる魔物を指差しながらアーシィに詰め寄って来た。が、アーシィは 「知らないよ。私が創った訳ではないからね」  と、言葉の端に“創られた魔物”であるという意味合いを込めてそう言った。 「ところでシュウは?」 「あそこだよ」  ディムルの問いに、アーシィは煙の立ち上る洞窟を指差し、そう言った。ちなみに火はすでに消えている。