●第251話 投稿者:YS  投稿日: 3月21日(水)02時10分54秒  時間はやや戻ってローズレイク。 「何でポチが動いてるんだ?」  ケインの第一声はそれだった。実際にケインとディムルの目の前にいるのはポチによく似ていた。背中から角が生えているのが、違うといえば違うところだ。 「・・で、戦ってるのは誰だ?」 「さあ?相手がポチならかなりの実力者だとは思うけど・・」 「とにかく、あんな爆発起こせるのはポチの方だろ。何で動いてるのかは知らないが、取り抑えてもう一度眠らせてやる」 「それは・・取り抑えるなのか?」  ディムルが抗議したが、それは無視してケインがポチ(もどき)に向かっていく。 「恨みは十分ロイにあるような気がするがお前相手に手加減なんざできそうにないんでな。本気でいくぞ!!」  その声に答えてか、ポチ(もどき)は今相手をしているジェノアを無視してケインに向かっていく。 「くらいやがれ、炎の乱舞よ!」  ケインの手から灼熱の玉が放たれ、不規則な動きでポチ(もどき)に向かっていく。  それがポチ(もどき)に当たる瞬間、ポチ(もどき)は角をのばし、その場で丸くなった。そして、ディムルにのみ聞こえる程度の音を出して、ポチ(もどき)の周りに結界が現れたのだ。 「なんじゃそりゃあぁ!!」  結界はケインの魔法を破壊し、さらに近づいていたケインも弾き飛ばした。 「・・大丈夫か?ケイン」 「ああ、何とかな。しかし、ロイの奴なんて改造しやがったんだ」 「あれは本当にポチなのか?」 「あんな姿をしたのがそんなにうじゃうじゃいてたまるか!」 「とりあえず、おれはこいつのことを自警団に知らせてくる。ポチかどうかは別としても暴れてるのは確かだからな」  そういうとディムルは自警団事務所をめざして走っていく。 「・・にしても、この結界・・なんて威力だよ」  ケインは先ほど自分の体をある程度強化して向かったのだ。ポチの腕力が異常なのを警戒していたためだが、その状態で弾かれたとすれば通常の結界とは比べものにならないということになる。 「結界が解除されたら空間爆砕でもかましてやる」  すでに破壊することしか頭にないようだ。  そのまま待つこと数分。 「・・いつまで結界を張ってるんだ?」  ケインの前では変わらず結ぶ世界を張ったままのポチ(もどき)がいた。・・いや・・。 「・・なんだ、あいつ・・崩れてきてないか?」  誰にいったわけでもないが、事実ポチ(もどき)はだんだん崩れていた。そして、すぐに消えてしまった。恐らく、自分の結界に耐えられなかったのだろう。 「・・なんだったんだ、今のは・・」 「それはこっちが聞きたい」  ケインに話しかけてきたのは先ほどまでポチ(もどき)と戦っていた男だ。 「アンタは?」 「レイブンのジェノアだ。」 (どっかで聞いたな・・まあ、いいか)  魔属狩りと魔属のヴァンパイアなのだからよくはないはずだが、ケインはあっさりと頭から流した。 「ケインだ」 「それでさっきのはなんだ?ポチとかいってたようだが・・」 「まあ、知り合いのペットらしいな」  ケインは説明をそれだけで終えた。 ●第252話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 3月21日(水)10時55分12秒  ローズレイクからの帰り道。ケインは湖で出会った男、ジェノアと名乗ったか?そいつと一緒に町へ戻っていた。 「で、どこへ向かっているんだ?」  ジェノアが聞いてくる。 「そうだな・・・一応自警団事務所ってとこだな。まあディムルが事を伝えに行ったから途中で自警団のやつらとかち合わせるだろうが」  ケインは軽く宙を向いて答えた。 「さてと、だ。えっとジェノア?お前はあいつと戦っていたんだよな?」 「ああ。それがどうかしたか?」 「・・・どう思う?」 「ん?」 「あのポチもどきだよ。いくらロイが改造したとしても自壊するようなヘマをするとは思えない」 「もどき?」 「ああ。今にして思えばロイのポチとはかなり違う。と言うか、ロイは例え改造したとしてもそれが自分の結界に耐えられないような失敗作を放置するとは思えないな」 「なあ、そのロイってやつは、何者なんだ?」 「そうだなあ・・・」  言葉を探し、とりあえず思いついた言葉を言う。 「なんというか、変なやつだな」 「変って・・・」 「いや、それ以外思いつかないっていうか。まあそれはそれで本人に会えば判る。で、あの化け物をどう思う?」 「そうだな。魔属の気配はした。だが、俺が知っているどの知識にも当てはまるのがない」 「・・・そう言えばレイブンとか言ってたな。じゃあやっぱり魔属ハンターか?」 「ああ」 「ふ〜ん」  いいながら、ケインはちと緊張した。魔属というかヴァンパイアの自分とレイブン、つまりは魔属狩り専門家とは、はっきり言って犬猿の仲だ。  まあ、戦っても勝てるだろうが。 「あの魔物、戦闘力は無茶苦茶高い。でもそれを生かしきれていない。下手すれば空間爆砕でも倒しきれないかもしれないな」  といってるうちに、向こうから自警団を連れたディムルがやってきた。 「ケイン!無事だったか!」 「ああ。向こうが自滅してくれた。詳しくは事務所で話したほうがいいな。あ。こいつはジェノア。レイブンだそうだ」  言いながら、団員たちと共に事務所へと向かう。 『・・・・ジェノア・・あのケイン・・魔属の・・気配・・・・』 「ああ。俺も感じた」  話し掛けてくるジェノアに、小声で答える。 『・・・・多分・・ヴァンパイア・・・・』 「だが、いずれは、狩る・・・つもりだ」  事務所へと入っていくケインの後ろ姿を見ながら、ジェノアは太刀に手を添えた。 ●第253話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 3月21日(水)12時20分16秒 「……で、俺は予定通りにやればいいわけだな?」 『はい。あと三体ほど出してデータを採りますから、自警団や公安局を撹乱して下さい』  その言葉を最後に沈黙した金属球を懐に仕舞い、ランディは左手に持っていた平べったい箱を床に置いた。  ここはエンフィーエルドの東地区の外れ、簡素な……と言えば聞こえは良いが、 実際は単に粗末なだけの小屋が無秩序に並ぶ地区だ。  半分崩壊しているような空家も目立つ。ランディが居るのは、そんな空家の一つだった。 「木造で、特に湿った様子もねえな……。よく燃えそうだ。もっとも……」  やたらと平べったい箱を見つつ口元を歪め、 「こいつを使えば、嵐の後だろうと派手に燃えやがるがな……」  ランディが床に置いた箱は、ポケットサイズの焼夷弾だ。特殊な薬品を混ぜて固体化させた油脂に時限発火装置を着けたそれは、 凄まじい高熱を発して燃焼し、広範囲に火種を撒き散らす。 「雑魚をぶつけても、ロクなデータは採れねえからな。せいぜい、頑張って火を消して貰おうじゃねえか」  時限発火装置のタイマーをセットし、ランディは足早にその場を離れた。  雷鳴山中腹付近。 「そろそろかな?」 「そうだね……あと十分ほどってところかな?」  背後にエルとパティの会話を聞きながら、アーウィルとリサは周囲を見回した。 「気に入らないね……」 「それは自分が居ることに対してか、それとも周囲の雰囲気に対してか、どっちだい?」 「両方」  あらら、と天を仰ぐアーウィルを完璧に無視し、リサは足を止めた。 「小休止だよ」 「はーい」  真っ先に応えたのはルーティだった。流石に少々疲れたらしく、いそいそと腰を下ろす。  各々が適当な岩を見つけて腰掛ける。全員で五人。リサ、パティ、エル、ルーティ、アーウィル、 という顔ぶれだ。  この面々が何をしているのかと言うと、エルとパティの薬草採りにつきあっているのである。  普段ならパティとエルの二人で行くのだが、最近は何かと物騒なため戦闘要員(兼荷物持ち要員)を増やしたのだ。  因みに、ルーティは暇を持て余していたので、ほとんどピクニック気分でくっついてきたおまけである。 「エル、気がついてたかい?」 「……まあ、ね。どうも様子がおかしい。この雰囲気は異常だ」  やはりエルも、周囲の妙に張り詰めた空気を感じとっていたようだ。  ルーティやパティも何となく居心地が悪そうにしているが、確信には至っていない。 「……そろそろ、仕掛けてくる頃だね……」  ぼそりと呟いたリサの言葉が合図だったかのように、周囲の木々の枝が一斉に鳴った。 「ふっ……!」  微かな呼気とともに眼前に降ってきた人影に当て身を喰らわせ、エルは弾かれたように立ち上がった。  「礼儀を知らないやつらだね…!」  リサも、ルーティに襲いかかろうとした人影を殴り飛ばし、彼女を背後に庇う。 「おっと」  アーウィルは、切りつけられた刃物を避けざまに相手の両脚を刈った。  一瞬の後、ルーティとパティを中心に守る円陣が完成する。さらに一瞬遅れて、それを包囲する陣形が形成された。 「リサ……誰かの恨みでも買ったか?」 「あんたに言われたくないね……」 「まあ、この仕事やってれば、恨みの四百や五百は買うだろうけど……」 「殴るよ」  その一言でアーウィルとの不毛な言い合いを打ち切り、リサは相手を観察した。  数はだいたい四十人ほど、全員黒づくめ、一応人間に見える、間合いの大きな武器を持っている者は皆無。 「どうする? リサ」  エルの問いに、 「いきなり襲ってきたんだ。話が通じる相手とは思えないね」  と応え、リサは腰に差していた二本のトンファーを抜き、構えた。一応、相手は外見上人間だ。 ナイフでは殺傷力がありすぎる。それにこれほどの多人数が相手では、全員を片付け終わる前にナイフの刃がイカレてしまう。  アーウィルは義腕を構えた。青い光はなく、純粋に義腕を用いた白兵戦で挑むつもりらしい。  エルも重心を低めに落とし、打撃主体の構えをとる。賢明だ。一度に多人数を相手にするには、 打撃主体の格闘技が一番向いている。 「さて……どこの誰だか知らないが、このメンツに喧嘩売るなら……」  リサは不敵に笑い、 「相当高くつくよ」  同時に、驚くほど統制の取れた動きで黒づくめの集団が五人に殺到する。 ●第254話 投稿者:美住 湖南  投稿日: 3月21日(水)14時42分07秒  自警団事務所に着くと中は荒れていた。その中の一人にディムルが聞く。 「いったいなんだ?おれがさっき来たときはもう少しは静かだったけど」 「また新しくあの怪物が出たんだ。雷鳴山でもな。あと東地区のほうで火事まで起きた。どいてくれ。僕も行かなくちゃいけないからな」  言い捨てると装備をまとめ走り出ていった。  ディムルは振り向きケイン達に問う。 「・・・だそうだ。どーする?」 「怪物と火事か。とにかくリカルドに会おう。あの事も話したほうがいい」  疲れた様子で2人を促す。休む暇がないとはこのことだ。 「・・・リカルドとは誰だ?」 「あの事ってなんだ?」  2人同時に訊く。 「リカルドってのは最強の名を欲しいままにしてるやつ。あの事ってぇのは怪物・・・ポチに似てたやつだ。それが崩れて消えちまったんだよ。結界に耐えられなかったんだろーがな」  ジェノアに説明してから、次はディムルだ。 「ふーん。ロイくんが造ったとする仮定すると、変だな。すぐに気がついて直しそうなんだが・・・」  そこに女の声が聞こえてくる。男の怒号やら叫びが轟いているここでは新鮮だ。 「ケインさーん、ディムルさん」  トリーシャだ。右手に抱えている物を見るとリカルドに弁当でも持ってきたのか。 「あぁ。リカルドさんに弁当か?」 「そーだよ。でもどうしたの?みんないつもより忙しそうだけど」 「怪物が出たんだ。東地区でも火事」 「あの煙はやっぱり火事だったんだ。凄かったもん」  まわりの緊張もこの4人には伝わっていない。大物だ。 「・・・ま、とりあえずリカルドに会おう。話はそれからだ」 「ボクもお弁当」 ●第255話 投稿者:タムタム  投稿日: 3月23日(金)19時14分03秒 「おい!見ろ!」  雷鳴山山中を探索中、アルベルトが突然大声を上げた。目線と指先は街の方角を向いている。三人は反射的にそちらを見て、息を呑む。  …街から黒煙が登っている。どの程度の規模で燃えているのかは分からないが、あの様子だと楽観視できる様な規模ではないだろう。 「火事か?」 「でも、なんであんな所から?」  その様子を見たクロウが呟き、シュウが怪訝そうに首を傾げた。それはそうだろう。彼の記憶が確かなら、あそこには人が余り住んでおらず、火の気もほとんど無いと言ってもいい。  いや、人が余り居ないからこそ、あそこまで火の手が大きくなった可能性もある。そして、火の気の無いところでの火災と言えば…放火。 「いや、考えすぎか」 「何がだい?」  呟いたシュウにアーシィが訊ねた。そしてシュウはその考えを口にする。 「そうでもないよ。可能性としては十分ありえるね」  少し考え、アーシィはシュウの考えを肯定した。だとしたら、何が目的なのだろうか?撹乱なら、事件を起こし現状を把握できないほど指令系統を乱してやればそれでいい。複数の場所で行えばより効果的だ。だが、その後は? 「(…考えていても仕方ないか…)街の事は街の人達に任せて、私達は捜索を続けよう」  深みに入り込んでしまいそうになった思考を振り払い、アーシィはそう言った。今、自分達がしなくてはならない事は街の心配ではなく、原因の究明である。  だが、雷鳴山は広い。今の所、手がかりらしい手がかりは一つもつかめていない。時間ばかりが過ぎていく。それでも、目的地には着実に近付いて行っているはずである。  ただ漠然と歩いているわけではない。あの魔物の残した僅かな魔力反応を頼りに、どこから来たのかを調べようとしているのだ。が、かなり適当に歩いていたらしく、同じ様な所をぐるぐると回ったり、来た道をもどったりしながらも根気よく追跡を続ける。  だが、その反応も次第に薄れ始め、途切れ途切れになっていく。そして、その反応は完全に消えてしまった。 「…ふう。ここまでしか反応は残っていないよ…」  アーシィは疲れたように、いや、実際かなり疲れていた。そう呟いた途端、その場に腰を下ろしてしまっている。 「これからどうするんだ?」 「どうします?もう、手がかりがありませんよ」 「そうだな…。どうする?」 「…あのねぇ…」  クロウ、シュウ、アルベルトの三人がアーシィを見ながら言う。その為か、アーシィは疲れたように呟いた。まあ、クロウはこの街に来たばかりだから仕方ないとして、  シュウとアルベルトは自警団の隊員である。だが、立場及び態度はアルベルトの方がでかい。シュウが意見を求めるのはいいとして、アルベルトには何か意見を出して欲しかった。 「まあいいか。とりあえず昼飯にしよう」  そう言って、アーシィはアリサさんの作ってくれたお弁当を取り出した。 …一体どこから…。 ●第256話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 3月26日(月)19時20分18秒 「きりがないね……」 「同感」 「どうする? このままじゃジリ貧だよ」  並みの技量ではとうに戦闘不能にされるほどの猛攻をしのぎながら、リサ、エル、 アーウィルの三人はいまいち緊張感の無い会話を交わした。  とにかく、相手の攻撃は途切れる事が無いようだった。一人を打ち倒すと数人がそいつを後方に引きずって行き、 回復すると再び攻撃に加わる。 「妙に打たれ強いね……。普通なら半日は足腰が立たないはずだけど…」 「ねえ! どうするの!?」  リサがそのルーティの言葉に何か言い返そうとした瞬間……  唐突に攻撃が途切れた。 「?」  そして、潮が退くようにあれほど周囲を埋め尽くしていた黒装束が撤退していく。一瞬、 エルは人間大の黒い蟻を連想して気分が悪くなった。 「助かった……」 「ふう……」  ルーティの安堵の声とパティの溜息を聞きながら、リサは険しい眼差しで木々の向こうを透かし見た。 「どうも、厄介な事に巻き込まれたみたいだね」  同じく薄暗がりになっている森の中に視線を投げ掛けながらエルも言う。 「……何だと思う?」  楽しそうな笑みを無理矢理ノホホンな表情の下に押し込み、アーウィルは頭を掻いた。 「好奇心は猫を殺す、ってね。知りたいなら止めないが、生命の保証はできないな」  そう言うアーウィルを、一瞬忌々しそうに睨み、リサは言った。 「逃げるよ!」 「了解」 「解った」 「は?」 「え? なに?」  瞬きするほどの間に、リサがルーティを、エルがパティを抱きかかえて走り出した。 しんがりを努めるのはアーウィルだ。  百メートルも行かないうちに、背後、ついさきほどまで居た場所で咆哮が響いた。 「聞いたことのない声だね。新種の魔物かな?」  凄まじい勢いで木をへし折りながら、何かが迫ってくる。間違いなく、彼女らを追ってきているのだ。 「な、なんだか追いつかれてない!?」  舌を噛みそうになりながら言うルーティに、 「よく解ったね。聴力テストで満点を上げよう」とアーウィルが返した。 「いらな…」  い、とルーティが言い終えるより早く、巨大な質量が一同の頭上を飛び越し、先頭を走っていたエルの前に立ち塞がった。 「なんだ……こいつは…」  およそ『魔物』と名のつく存在のどれにも似ていない怪物だった。  体形はほぼ完全な人型だが、全身がくまなく灰色の曲面装甲で覆われ、身長は軽く三メートルを超えている。  その長大な腕が、何の予備動作も無く視認不可能な速度を得た。 「…!」  ほとんど反射的に跳んだエルの足元にその拳が叩き込まれ、小規模なクレーターを作る。 「くっ…」  さらに強烈な風圧が真下から襲いかかり、軽くバックステップしたはずだったエルとパティの体が高く宙に吹き飛ばされてしまった。 (まずい…!)  敵の目の前で完全に無防備な体勢になってしまった。この状態では次の攻撃を避けられない……!  が、次の瞬間。パティだけでも放り出そうとしたエルの眼前で、突然怪物が横っ飛びに跳躍した。 「外したか……。けっこうなスピードだな」といきなり現れたアーウィル。  さらに次の瞬間。入れ替わりに現れたアーウィルの胸部に巨大な拳がまともにめり込む。 「ぐ…」  圧倒的な体重差でひとたまりもなくアーウィルは吹っ飛び、木を数本粉砕してようやく止まった。だが、すぐさま涼しい顔で頭を持ち上げる。 「軍艦の艦砲射撃より効いたぞ」  何事も無かったかのように立ち上がり、胸を一つ叩いて何かを嵌めこむようなしぐさをするアーウィルを、 ルーティとパティは唖然として見つめた。 ●第257話 投稿者:紅の狸  投稿日: 3月27日(火)00時07分34秒 「ところでディムルさん」 「ん?」 「この人、誰なの?」 トリーシャがディムルにジェノアのことを聞いてきた。ジェノアは悪魔大量発生事件の後ローズレイクに居ついてからほとんど街へは行ってない。その為大抵の人とは初対面だ。ちなみにジェノアが悪魔大量発生事件(長げェ)に関わったことを知っているのはごく一部の者だけだ。 「ああ、レイブンのジェノアだそうだ。俺もさっき会ったばかりだ」 「レイブン?」 トリーシャはレイブンの意味が解らなかった様だ。まあ当然だ、レイブンの意味を知っているのは傭兵か、裏の世界の者か、魔属ぐらいだろう。 「魔属ハンターだそうだ」 「ハンター・・・」 トリーシャはジェノアを見ながらそう呟いた。あまり人見知りしないトリーシャだがハンターというのはあまり良い評判は聞かないし、実際目の前のジェノアは目つきは悪いしなんとなく近寄り難かった。 「えっと・・ボク、トリーシャて言うんだ。よろしく」 取りあえず、自己紹介するトリーシャ。 「・・・ジェノアだ」 素っ気無く言うジェノア。 「・・・・・・・」 黙ってしまったトリーシャ。どうやらほとんど思った通りだったようだ。 そうこうしている内に自警団事務所のリカルドの部屋に着いた。 「・・・そうか、ロイ君のポチと似ていたのか」 リカルドに大体のことを話した。ちなみにリカルドは次々と事件が起こるので現場には行かずここで指示を出していたようだ。 「ああ、もしかしたら雷鳴山に出たやつも同じかもな」 ケインが自分の考えを言った。ほぼ当たりだ。 「そう考えるのが妥当だろう、しかしそうなるとこの事件にロイくんが関わっていることになる」 「しかしロイくんがあんな欠陥品と作るとは考えにくいですが」 ディムルも自分の意見を言った、確かに的を得ている。ロイが欠陥品をそのままにして置くはずはないし大体アレを何体も作れるような資金も持っていたように思えない。 「たしかに・・・だとすれば誰が何のために」 いくら考えてもなかなか答えが見えてこなかった。 ●第258話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 3月27日(火)10時17分20秒 「ま、なにはともあれ、だ」  沈黙に包まれた事務所の空気を破るようにディムルが言う。 「ここでこうしても始まらねぇな」 「同感だな」  ケインも賛同する。 「火事のほうはまあ自警団でどうにかなるだろう。だが雷鳴山のほうはどうかな?」 「どういうことだ?」  ジェノアが不可解な顔で問い返す。 「火災現場に例の怪物がいるかどうかはわからない。多分いないだろうけどな。だが、雷鳴山の方はどうだ?化け物がいる算段の方が大きい」 「確かに、今のところ火災現場ではその怪物は確認されてはいない。だが、雷鳴山のほうもアーウィルくんがいるのだろう?」  リカルドの問いにケインは肩をすくめ、 「確かにアーウィルはいる。だが、あの怪物、自滅してくれるかわりにやたらと強い。アーウィルが死ぬことなんぞまあないとして苦戦するだろうな。同行者の身の安全も心配だ」  実を言えば、ケインとしては同行者を保護したら無茶でも空間転移をして町に戻るつもりだ。アーウィルの戦闘能力が一対多数において最大限発動可能なことを彼は悟っていた。 「そうだな。あの化け物が大勢で来たらアーウィルでもただじゃすまないな」  槍を構えなおしてディムルが同意してくる。 「と、いうわけだ。リカルドはここで指揮をとってくれ。あとこれ」  と、ケインは水晶球を取り出した。 「アーシィから前にもらったものなんだが、一種の通信機らしい。町中に例の化け物が現れたらこれで連絡を」 「わかった」 「じゃあディムル、行くぞ」 「おう。と、このレイブンはどうする?」  と、ジェノアを指差す。 「そうだな・・・まあ来たかったら付いてきてくれ」  言い切るとケインはディムルと一緒に事務所を出て行く。ジェノアも少し遅れてその後に続いた。 ●第259話 投稿者:タムタム  投稿日: 3月27日(火)20時51分49秒 ―雷鳴山―  アルベルト達は今、目の前に広げられた弁当を食べていた。その中身はサンドイッチやおにぎり、から揚げ、ゆで卵、その他多数。全てが食べやすいように調理され、また、その味は絶品だった。  味の説明は省くが、あえて言うならば“どこぞの料理漫画の様な、奇妙な演出”をしてしまいそうになるほどである。さすが、アリサさんの手料理と言った所か。 「はひへなははひ、ほへはらほうふう?(真面目な話、これからどうする?)」  おにぎりを頬張りながら、アルベルトが訊ねてきた。 「アル、発音が悪いよ」  そう言うアーシィはサンドイッチを食べながらである。二人とも行儀が悪い。いや、その前に、何故食べながら普通に発声が出来るのだろうか?。 「そうですね、探索は続けた方が良いと思うんですが…。アーシィさん。何か良いマジックアイテムとか無いんですか?」 「ん〜、一応ある事にはあるけど…」 「あふのは(あるのか)」  紅茶を片手に訊ねてきたシュウに、ゆで卵を食べながらアーシィが答えた。そして、その答えにアルベルトが突っ込む。 「…なんでそれで会話が成立するんだ?…」  食べる手を休め、クロウが心底不思議そうに呟いた。何故、二人はアルベルトの言葉を理解出来たのだろうか?。 「君もその内、慣れて来るよ」 「なんか嫌だな」  紅茶を飲みながらのアーシィの言葉に、クロウは即答した。それが、物を食べながらのアルベルトの言葉を理解する事に対してなのか、アーシィの様に物を食べながら普通に発声する事に対してなのかは不明だが。 「それで、何を使うんです?」 「君もよく知っている物だよ」  シュウの質問にアーシィが答えながら、何かを取り出そうとした瞬間。殺気が生まれた。四人はほぼ同時にその場を飛び退く。そして、一瞬の間を置き、炎が吹き上がる。 「敵!?」 「アリサさんの弁当が!?」  前半がシュウとクロウ、後半がアルベルトとアーシィ。四人は同時に叫ぶ。炎の飛んできた方向から、人間?と奇妙な魔物が姿を現した。そして、炎の中心では弁当が燃えている。  シュウとクロウが戦闘態勢をとるなか、魔物が近寄ってきた。その姿はより洗礼され、無駄な部分がほぼ無くなっている。人間?は魔物に指示を与えて、後方に待機している。そして、二人の後方で二つの殺気が生まれた。 「!?」  囲まれたかと思い振り向くが、その殺気の主はアルベルトとアーシィだった。 「…よくも、アリサさんの弁当を…」 「…この罪は命で償ってもらうよ…」  淡々とした口調で二人は言う。はっきり言って、いろんな意味で恐い。その瞳には静かな殺気が宿っていた。 「…行くよ、みんな。<エーテル・バースト>」  アーシィが四枚のカード(赤、青、紫、緑)を手に持ち、自分を含めた四人に精霊の加護を与える。それと同時に三人が飛び出した。 「ハァッ!」 「オラオラオラ!!!」 「うりゃぁ!」  シュウとアルベルトの同時攻撃。シュウの居合切りが魔物の腕を切り裂き、アルベルトの槍が肩を貫く。そして、隙をついたクロウのハンマーが魔物の胸に叩き込まれた。  先程の魔物と違い、この魔物は形が整っている分、性能が落ちているようだ。 「まずいな、この事を報告に…」 「行かせはしないよ。『荒ぶる千の咆哮。吹き荒ぶ破滅の嘆き。いでよ、死をもたらす雷よ』」  状況を不利と見たリーダー格の人間が指示を出し終えるより速く、彼らの退路に現れたアーシィが魔法を放つ。 「…馬鹿な…、この魔力は…タナトスの魔法…」  ―激しい雷が、彼らに襲い掛かった―。 ●第260話 投稿者:ashukus  投稿日: 3月28日(水)01時10分03秒 恐らく人間だった者達が去った後、四人は再び集まっていた。しかしアルベルトとアーシィの怒りは納まっていないらしい。 「アリサさんの弁当アリサさんの弁当アリサさんの弁当アリサさんの弁当アリサさんの弁当アリサさんの弁当・・・ブツブツブツ」 「・・・・・・・・」 何やらぶつぶつと呟くアルベルトと無言で怒りを立ち昇らせるアーシィ。 「・・・・・アーシィさん。アルベルトさん」 「何だよ!!」 「何か用かい?」 シュウに向かって怒鳴り声を上げるアルベルトと表情は笑っているが声が笑っていないアーシィ 「い、いや、そんな怖い顔されても・・・・・」 「用が無いなら呼ぶんじゃねぇ!!」 「え〜だから捜索をですね」 「そうだな。さっき何かを使うとか言ってただろう」 「おっと、そうだったね」 クロウの言葉に思い出したようにアーシィが懐からある物を取り出した。 「そ、それは!!」 シュウは思わず声を上げた。それは何といつかの紅い宝石のついたステッキ。本当は捜索に使う代物ではない武器だったのだが。 「何だそれは?」 訳の分からないクロウ。と、アーシィはステッキを地面に突き立てる。そして・・・・・そっと手を放した コトン ステッキは支えを失い、倒れた。 「おい、まさか・・・・・」 「こっちか、よくもアリサさんの弁当を」 「アルベルトさん少し間違ってるような・・・・・とにかく行きましょう」 「そうだね」 アーシィはステッキをしまい歩き出した。それに何の疑問も持たずに付いていくアルベルトとシュウ。 「お前ら正気か!!おい!!冗談だろ?!」 「君も早く来るんだ」 「さっさと行くぜ」 「ですね」 「・・・・・何なんだあいつ等、どうなっても知らんからな」 クロウは渋々アーシィ達に付いて行った。そうして彼等は更に進んでいった