●第231話 投稿者:紅の狸  投稿日: 3月 4日(日)02時37分38秒 突然の介入者のおかげで周りの下級悪魔が、一掃され一息ついて話しているジェノアとイリスそしてその介入者。 「テメ−に言われなくても”魔属”を倒すのが『レイブン』の役目だ」 『フフ、そうねそれが『レイブン』ですものね』 幼い少女の声をしているが、どこか危険を感じるその声にジェノアは警戒していた。 『一つ、聞いても良いかしら?』 「・・・なんだ?」 『先代のレイブン、ライゼス・ヴァ−ンはどうしたの?』 「・・・あの化物なら、レイブンの名を俺に渡して何処かへ消えやがった」 『そうなの、まあ引退するとは思えないし、死ぬとも思っていないけど』 どうやら、先代とはかなり付き合いがあったようでライゼスという人物をよく知っているようである。 「テメ−随分と先代のことに詳しいようだな・・・」 『言ったでしょう、先代とは何度かお付き合いがあるって。それに鬼族最強と謳われた鬼神ライゼス・ヴァ−ンといえば結構有名よ』 「・・・なるほどな」 『そういえばあなた先代の子なの?』 「・・・・さァな、そこまでテメ−に教える義理はねェよ」 『あら、そう』 できる限り情報を聞き出そうとしたが、どうやら聞かれたくない話だったらしくこれ以上はムダのようだ。 『・・・・この町・・なにがあったの・・・・』 唐突に話に入ってくるイリス、しかもまったく違う話題で。 「・・・たしかにな、さっきテメ−らの仕業じゃねと言っていたが、だとしたら一体なにがあった?」 ジェノアも、話題を変えたかったようだ。 『・・・いいわ、一から教えてあげる』 そして<コードα>は、事の顛末を話し始めた。 「・・・なるほど、つまりその天使のせいって訳か」 『そう言うこと。それで後はさっき言ったように後片付けだけって訳』 「・・・・で?テメ−らはどうするつもりなんだ?」 『<コードΩ>が殲滅にあたるわ。町の自警団と住民も動き出したみたいね』 「フン、まァいいこっちはこっちで勝手にやるだけだ・・・」 そう言うと、ジェノアは王太刀を構えた向こうからは、悪魔が群がってきていた。 ●第232話 投稿者:タムタム  投稿日: 3月 5日(月)06時00分04秒 「それじゃあ、アル達は街の外に?」 「うん」 「ここが正念場って事か」  ディムルとアーシィはルーティの魔法でようやく戦闘可能なまでに回復していた。ブルーフェザーの使う魔法は全て四元素を中心としたもので、回復魔法すらもその例外では無い。だからこそ、神聖魔法の効かないアーシィを回復させる事が出来るのだ。  ルーティの話では既に街の外で殲滅戦が行われているし、シュウもろくに回復していない身体で街の外へ向かってしまった様だ。結界も長くは持たないし、出来るだけ早く決着を付けなくてはならない。  話を聞きながら、ディムルとアーシィは武器の点検をしていた。ディムルの槍はいつものだが、アーシィは残りの魔力が少ない為、魔法銃ではなく古びた拳銃を手にしている。 「魔物に銃は効きませんよ?」 「大丈夫だよ。こいつの弾丸は特別製でね」  いぶかしげに聞いてきたフローネへアーシィは簡単な説明をした。  拳銃には魔法文字の刻まれた銀の銃弾が転送されている。相手の魔力が強ければ強いほど威力が上がるが、製造方法が面倒くさくコストも高い上に自作である。その為、今手持ちにある弾丸の数は十分とは言えない。  話と武器の点検が終わり、立ち上がる。 「うし、それじゃ行くとするか」 「そうだね」 「待って、ボクも行くよ」 「マリアも行く☆」  教会から出て行こうとした四人に声をかけたのはトリーシャとマリアだ。二人とも真剣な顔をしているので、ただ単に興味本意で付いて来ると言っている訳では無い様だが、 「駄目だ、君達に無茶をさせる訳にはいかない」 「無茶をしているのはアーシィさんの方じゃないか!」  アーシィは二人の申し出を少々きつい口調で断ったのだが、それに対するトリーシャの言葉の方がきつかった。アーシィとしては無理はしても無茶はしていないつもりだったのだが、傍から見ている分には大して変わらないのだろう。 「確かに、多少の無理はしているさ。だけどね、トリーシャちゃん。 可愛い妹達の安全を護るのが私の役目なんだよ。お兄さんを信じて待っていなさい」 「アーシィ、早くしないと置いて行くぞ」  見ると、ディムル、フローネ、ルーティは教会の外に出る所だった。アーシィもすぐに後を追い、四人は街の外へ向かい駆け出した。 ●第233話 投稿者:美住 湖南  投稿日: 3月 5日(月)21時47分32秒  そんなことで引き下がるトリーシャ達ではない。トリーシャとマリアは目を見合わせるとしっかりと頷き頃合いを見計らって外に出ようと、する。  しかし、 「こそこそしてどうしたんですか〜?」 「げっ・・・セリーヌさん・・・」 「こそこそしているということは悪いことをしようとでも?」 「ネーナさん!」  ずっと部屋にいたのだが誰も気がつかなかったようだ。そんな余裕もなかったわけだが。 「悪いことだなんて、そんなぁ」 「じゃあ、こそこそする理由はないですよね〜」  おっとりとした口調でもセリーヌが言うとそれなりの迫力がある。表情が「理由を言え」と言っている。 「えっと・・・アーシィ達を助けようと思って」 「だめですよ〜。「待っていなさい」って言われたんですから〜」 「だって・・・!!」 「ダメです。あなた達がけがしたらアーシィさん、悲しみます。だから、「待っていなさい」って言ったんですよ」  いつもの間延びした声が姿を潜め、幼い子供を叱るような口調となった。それでも普通の人よりはのろのろしてはいるが。 「アーシィさんの信用を裏切るんですか?」  当然のことながらネーナもとどまらせようとする。 「・・・信頼じゃ、ないんだ・・・」  誰かが呟いた。 「え?」  街の外への道。時間はないからもちろん走っている。 「いいのか?置いていって」  アーシィの心の中を読んだのか、唐突にディムルが言った。 「ん?」 「だから」 「そうだね・・・」 「答えになってないぞ」 「あぁ・・・」 「あのなぁ、本当は連れて行きたかったんじゃないか?」 「・・・」 「いくら教会でも結界は長く持たない。消えたらもう終わりだろう?主戦力は自警団、ブルーフェザー、アーウィル、シュウ、お前、ケイン、おれ。公安は・・・どうだろうな?出てくればそれなりに、だな。そして・・・」 「何が言いたいんだい?単刀直入に言った方がいいときもあるよ」  半分、心の中を見透かされたような気がして不機嫌な様子だ。 「・・・一つが置いていった方が安全。もう一つが自分の目が届くところに置いておきたい。じゃないか?」 「・・・・・・・・・」 「なぜわかったか?って顔だな。目、見りゃだいたいわかる。目が一番正直だからな。顔の表情よりも」  話はそこで中断された。悪魔が集団で密集しているのが見えたからだ。 「うえぇぇ・・・なんか気味悪いよぉ」 「・・・」  ルーティはほとんど白くなった顔。フローネはわずかに紅潮した顔。 「どんな理由にしてもあそこから崩していったほうがいい気がするんだけど、どうだい?」 「合意しとく」 「あの中に人がいたら大変ですからね」 「ちっとやだけど、イエスで」  悪魔の影から見える金属的な光はおそらく大剣か。そうでなくともかなり大ぶりの剣類だ。 『炎よ、我が手に集まれ!新・カーマイン・スプレッド、プロトタイプ!!』  ディムルはかなりやばくなった魔力石を無理矢理使って前々より練っていた魔法を使用してみた。 ●第234話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 3月 6日(火)13時20分19秒 『現在の反射速度 通常の約九十五倍を計測』  この反射速度では、宙を走る弾丸さえ視認が可能。こちらを狙って放たれる魔法も、 見ていて嫌になるほどの遅さだ。避けることなど造作も無い。 (このあたりはかなり減ったな)  倒した分もあるだろうが、大部分はもっとやり易い獲物を探して場所を移したのだろう。 (ふむ…)  どうやら、まだ余力のある者たちが街から討って出たようだ。この調子なら、結界が健在なうちに殆どの悪魔を片付けられる。  しかし、やりにくい。エンフィールドを破壊するわけにはいかないので、第四起動までしか使えない。 (そもそも、自分はこういう事をするようには出来ていない……)  嘆息しながら、アーウィルは空間概念を破壊。一瞬にして光爆と化した眼前の空間が悪魔を消し去る。 「うーん…」 『起きたか』  アグレッサーの声を聞き、クロウはぼんやりと目をこすった。寝惚け眼で周囲を見回す。 「……何だここは?」 『この大陸でも指折りのバケモノの腹の中だ』 「は?」  首を傾げ、クロウは体に痺れが全く無いことに気がついた。 「? おかしいな…。なあ、俺どのくらい眠ってた?」 『せいぜい数時間だな。痺れが無いのは、あのバケモノが治していったからだろう』 「ふむ……」  少し頭はぼんやりしているが、体に不調は皆無だ。むしろ気絶する前よりも調子がいい。 「……で、そのバケモノって何?」 『詳しくは知らんが、人間だった時に調べた事がある。自分たちの主人のためなら、 国の一つや二つ、平然と消し飛ばす素敵なやつらだ。理屈の通用する存在ではない』 「……全然解らんぞ、その説明。そもそも、なんでそいつらが俺を助けたんだ?」  クロウが居るのは、上下左右の概念が希薄な奇妙な空間だ。自分が立っているのか横になっているのかも判然としない。  とりあえず、あぐらをかいて座ってみる。 『さあな。ただ、あいつらは利用できるなら天使だろうと悪魔だろうと利用する。たぶん、 おまえも何かに利用するつもりだろう』 「天使だろうと悪魔だろうと、ねえ……」  沈黙。 「ああっ!! 悪魔と言えば、街はどうなった!? まだ雷鳴山事件のラの字も聞いてない気がするぞ、おい!」 『いや、ラの字ぐらいは聞いただろ』 「それじゃ意味無いだろ! それに、この辺りに他の街はなかったはずだし……」 『ずいぶんと元気が良いわね』  不意に、幼い少女の声が何もない空間に響く。 『……戻ったか』 『ちょっと違うわね。わたしは自分の支配領域内なら、どこにでも同時に遍在できるのよ。今は、 『レイブン』とお話中でもあるの』  何となく、クロウは身構えた。足場がはっきりしないので、どうにも心許なかったが。 『そんなに元気なら、掃除を手伝ってくれないかしら? もう下級の悪魔しか残ってないし、 寝てばかりだと体が鈍るわよ』  どこか……お祭り騒ぎを高みから見物してはしゃいでいるような口調で、“それ”が言う。 ●第235話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 3月 6日(火)19時36分52秒 「・・・分かった。利用されるのは気分が悪いが・・・」 身構えを解いた。 「ふふっ、じゃあ、さっそく行って貰うわ。」 その声を最後に気づいたら街の中に居た。 「何だ?悪魔がいるとこに行くんじゃないのか?」 『そのつもりだったが、お前の魔獣の血が逆らった。ともとれるな。』 アグレッサーが突っ込む。 一瞬、クロウの荷袋が光りだす。 「何だぁ!?これは・・・」 クロウは三つの薄い鉄板のような物を取り出す。 「これが光ってたのか?やっぱちょんとした設備があるところに調べてもらったほうがいいのか?」 『いずれにしろ・・・今の最優先事項は下級悪魔共の退治だ。』 「ローラ・ニューフィールドの事、知ってる奴がいるといいんだが・・・」 クロウが頭を掻き毟る。 ローブが無いから、頭の耳が丸見えである。 『・・・帽子はどうする気だ?』 「これで間に合うだろ。」 クロウが荷袋から黒い布生地を取り出す。 頭に巻くにしては少々長すぎる。 顔がすっぽり埋まるくらいだ。 「これでよしっ。」 頭に巻ききれなかったのは、口の辺りに巻いている。 じゃらじゃらとアクセサリーをしていてこれは物凄く怪しい。 しかし、そんな事を気にする様子もなく、魔力を辿って走り出す。 少しの期待と不安を抱えながら。 『物凄く不安だ。』 ●第236話 投稿者:タムタム  投稿日: 3月 8日(木)00時07分58秒 「…ねえ…。アーシィさんはボク達の事を“頼りにならない”って思っているのかな?  足手まといだから来るなって言う事だったのかな。信頼出来ないってそう言う事だよね…」 「そんな事、ありませんよ〜。アーシィさんは…」  今にも泣き出しそうなほど沈んだ声を出すトリーシャを、セリーヌが何とかなだめようとするが、のろのろした喋り方のためあっさりと遮られた。 「マリア、やっぱりアーシィ達を助けに行く!」 「駄目です!」  飛び出して行こうとしたマリアの腕を間一髪、ネーナがつかみ取る事に成功した。 「放して!みんな、魔力が残っていないんだよ!…アーシィなんて銃を撃つ魔力も残っていないんだよ…。…このままじゃ、死んじゃうよ…」  腕をつかまれて、始めは抵抗して暴れたマリアだが、言葉を発するに従って元気が無くなり、嗚咽を漏らし始める。 「…アーシィさんはいつもボク達を助けてくれたんだ。駄目かも知れないって言う時に、助けに来てくれた…。  だから!今度はボク達がアーシィさんを助けたいんだ!おねがいだよ!」  セリーヌとネ−ナはお互い困った顔を見合わせた。二人の言葉は正論であり、真剣そのものだ。必死に訴えるトリーシャを押し留める言葉など、二人には見つける事が出来ない。  辺りに重苦しい沈黙が流れた。“危険だから”という理由だけでは止められないほど、二人の決意は固い。  ローラも出来る事なら付いて行きたいが、足手まといになると判り切っている為、言い出す事が出来なかった。だが、天使の少女ならどうだろうか?チラッと少女の方を見るが、関心が無いかのように天井を見上げているだけだ。  誰も、何も言えなかった。出て行こうとする二人をセリーヌとネーナは止める事が出来なかった。だが、扉の前にはアリサが立っていた。 「ねぇ、二人とも。落ち着いて聞いて頂戴」  二人に向けられたアリサの言葉、それは…。 『炎よ、我が手に集まれ!新・カーマイン・スプレッド、プロトタイプ!!』  生まれ出た紅球は途中で拡散し、悪魔達に降り注ぎながら小爆発を繰り返す。それを見たディムルは軽く舌打ちをした。どうやら、望んでいた効果とは若干違うようだ。 「このまま一気に切り崩すよ。長引くとこちらが不利だからね」 「それじゃ、いっちょ暴れるとするか」 「オッケー!」 「はい!」  四人はそのままスピードを緩めず敵に向かい、射程距離に入った所でアーシィのリボルバーが火を噴いた。ピンポイントで三連発。その弾丸は一つは頭、一つは胸、一つは首へと、違う悪魔へ撃ち込まれる。  常識で考えたら弾かれるだけなのだが、撃ち出された弾丸は悪魔に当たる瞬間、その魔力を吸収しそのまま身体を貫いた。 「うりゃぁぁぁぁぁ!!!」  ディムルが頭上で旋回させていた槍を叫び声と共に一気に振り下ろし、なぎ払い、軽く旋回させて、敵の胸板を貫く。体勢の整っていない悪魔数体があっさりと崩れ落ちた。 『エアバースト!×2』  フローネとルーティが二人同時に同じ魔法を放った。二倍では効かないほど強烈な爆風が悪魔を襲い、それに耐え切れなかった者達がその姿を消して行く。 「ディムル!伏せろ!」  その言葉を聞き、僅かに視線を向け、理解すると同時に動く。重心を落とし、敵の攻撃を交わしつつ手にした槍で足払いをかける。僅かにバランスを崩した悪魔の顔面へアーシィの跳び蹴りが炸裂した。  アーシィの脚力なら、スピードをつけ、タイミングさえ合えばかなりの威力を発揮する。加えて、アーシィが履いているブーツは表面が軽くて頑丈な魔法金属で覆われている。それだけで既に凶器といえよう。(魔法効果は無し)  着地をした所へその悪魔が襲い掛かって来たが、相手が何かするより早く、 「チェックメイト!」  相手の口に銃身を押し込み、言葉と共に引き金を引く。放たれた弾丸は敵の頭を吹き飛ばし、絶命させた。  残る敵と時間はいか程か…。 ●第237話 投稿者:ashukus  投稿日: 3月 8日(木)00時56分25秒 「・・・時間の問題か」 崖の上から戦いを見下ろすシュウは呟いた。既に悪魔の数は目に見えて減っている。このまま行けば10分と待たずに撲滅されるだろう。 状況を見るとアーウィルは一人で充分、むしろ一人のが戦いやすいだろう。アーシィは魔力が尽きてしまったが何とかなっている。 ディムルもそれに近い状態のようだ槍術を駆使しているので大丈夫だろう。フローネ、ルーティはまだ余力がある。ケインは姿が見えないが大丈夫だろう。 自警団とブルーフェザーは負傷者がいるようだが基本的に強者ぞろい、何とかなっている。 「・・・悪魔は士気も低下の一途、そろそろ終わりだな。後は・・・」 一通りの状況判断を終えた彼が後ろを振り向くとそこには数体の悪魔がいた。憎たらしい笑みを浮かべている。 「・・・自分の心配でもするか」 シュウは怪我で刀が振れないため、懐から十数本のナイフを取り出し、投げる 『物体移動』 刹那、ナイフが不規則な動きを見せ、悪魔に突き刺さる。 「ぐおっ・・・・・」 「がぐっ・・・」 「あぐぁっ・・・・」 身体中にナイフを受けた悪魔は血を流しながら倒れ、絶命した。 「・・・フン」 と、その時、シュウは唐突に現れたある存在を感知した。 《ふふっ、じゃあ、さっそく行って貰うわ》 《何だ?悪魔がいるとこに行くんじゃないのか?》 どうやら少女のような『それ』とクロウのようだ。が 「ぐぅっ・・・何だ?!」 一瞬だけ現れた『それ』に干渉したシュウが頭を抑えて苦しみ出す。 「(何だ・・・この情報量は?!・・・くっ)」 以前ロイが妙な情報量を持っていたことがあったが『それ』は人間の認識できる物を遥かに超えていた。そして・・・ 「ぐっ、ば、馬鹿な!!強制的に干渉される?!《あらあらさっきの人間ね。私に干渉するなんて、人間じゃ無理よ》」 彼の頭の中に『それ』の声が響いた。 「お前はあいつを眠らせた奴か!!お前は何だ?!人間ではないな!!《世の中知らないほうが良い事もあるのよ。覚えておきなさい》」 その少女のような声の中にも相手を威圧する何かが込められていた。 「なん・・・だと?!《それじゃあ私は行くわ『レイブン』とお話中だから。忙しいのよ》」 それだけ言うとその声は消え、彼は解放された。 「・・・くっ、あいつはアーウィルの知りあいだろうが・・・・・・何者だ。人間ではない・・・な」 彼はそう呟きながら戦いを見下ろしていた。そんな彼の額に一筋の冷や汗が流れた。 ●第238話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 3月 8日(木)11時29分57秒  ケインはいま町の外にいる。さっきの悪魔との勝負をつけた時にはケインは結界の外側にいた。  つまりは町の外であり、結界の外に放り出された悪魔が嫌と言うほどいるのだ。  で、結界の中にはそれなりに強力な悪魔が残っているらしいが、アーウィルがいるのだから特に問題はないはずだ。アーシィやディムル、自警団一同の疲弊具合も気にはなる。が、なんとかやっていけるだろう。  しかし、強力な悪魔を退治したあとに結界が途切れればどうなるか―  アーウィルはやっぱり問題なしだが、ほかのまともな人間たちがどうなるかわからない。弱い分数が多い低級悪魔たち。疲れたところで数で押し切られれば、ゲームセットだ。  と、言うわけで。ケインは町の外で暴れまわっていた。 「おどりゃあぁぁぁ!炎の乱舞よ!切り刻む疾風よ!!砕かれし秩序よ!!!」  焦熱の乱弾が。乱れ飛ぶ鎌いたちが。空間爆砕が。  悪魔の群れをかたっぱしから殺していくが、数が目に見えて減ってくれない。 「はあはあはあ・・・だあぁ!弱いくせに数だけいるんじゃねえぇぇぇ!」  叫びと同時に無数の光弾を撃ち出す。着弾地点で爆発を起こし、命中した悪魔とその周囲の悪魔を砕いていく。 「くそっ!こっちが追い込まれてるな」  さっきの激戦からこっち回復すらしていない。傷口を防いで出血は抑えているが回復に伴う体力の消耗はさすがに誤魔化しきれない。 「死ぬかな、こりゃあ・・・。そういや諦めが人を殺すって言葉を誰かが言ってたな。いや、書物にかいてあったのかな?  そういや俺ってマリアたちのこと守ってないな」  ぼやきながら自分の使える最大規模の魔法、いや、精霊召喚を発動させる。 「俺が死んだら悲しんでくれるかな?・・・我は汝とともに歩む者。汝は我の傍らに佇む者。汝、我が呼び声に応え、我が願いを叶えたまえ―」  ケインに集約する精霊力を感じたのか悪魔がこちらへとやってくる。がこちらの方が早い。 「―漆黒の翼を持つ魔神。闇の統治者、虚無をもたらす死神の鎌。来たれ、闇の死神よ!」  と、ケインの背後に黒い影が現われる。漆黒の翼を六枚持った黒い巨人。その右腕には、これまた漆黒の大鎌。  上空へ飛ぶと、精霊が鎌を振るう。その軌道上にいた全ての存在が消去される。更に、精霊は鎌を突き出した。鎌の先端から闇の球体が生み出され、爆発するように広がる。その範囲内にいた物はやはり消し飛ばされ、範囲外にいた物も猛烈な重力の風に引かれて球体の中に落ちていく。  相手を問答無用で消滅させる究極たる破壊行動。それこそが闇の精霊だった。  球体が消失すると、目に映る範囲にもう悪魔は一体もいなかった。飲み込まれたか、逃げ出したか。 「ふう・・・もう、だめ・・・」  精霊召喚の中でも大量の精神力を消費する闇の精霊を呼び出したせいで、ケインの魔力も完全に無くなっていた。そのまま地面に仰向けに突っ伏す。青い空が、目に染みた。 ●第239話 投稿者:タムタム  投稿日: 3月11日(日)09時26分38秒 ―教会― 「アーシィくんが言った言葉、覚えているかしら?」  アリサが二人に優しく問い掛ける。だが、トリーシャとマリアは質問の意図がつかめず、困惑した表情を浮かべていた。だが、なんて言ったのかを忘れてしまった訳ではないので、言葉自体はすぐに出てきた。 「たしか、“可愛い妹達の安全を護るのが私の役目なんだよ。お兄さんを信じて待っていなさい”って…」  少々恥ずかしそうにトリーシャはその台詞を口にした。その言葉を聞き、アリサは二人に話しはじめる。アーシィが彼女達に話していないことを。 「アーシィくんはね、家族を欲しがっていたのよ。この町に住み始めた頃、“新しい家族が出来たみたいだ”って嬉しそうに話してくれたわ。  そしてね、無茶はしないでって言っても“大丈夫です”って言うのよ。“可愛い妹達を残して死ねませんから”って」 「…どういう事?…」  言葉の意味を図りかね、マリアが口をはさんだ。そして、アリサは優しく言葉を続ける。 「つまりね、アーシィくんはあなた達を、いえ、ここにいるみんなを家族のように思っているのよ。  帰る場所があると安心出来るでしょ?迎え入れてくれる家族がいると嬉しいでしょ?  “待っていなさい”って言うのは『必ず帰って来るから受け入れて欲しい』って言う事だとも思うわ」 「…ボク、ここでアーシィさん達が帰って来るのを待つよ。でも、手助けしたいって言う気持ちも本当なんだよ…」 「マリアもここで待ってる…」  アリサの話を聞き、二人は出て行こうとするのをやめた。だが、少々納得が行かない気持ちも心の中には残っている。そして、それは表情に出てしまっていたようだ。 「二人とも、アーシィくんに言いたいことがあるんでしょ?帰ってきたら、その気持ちを伝えてあげて…」  街の外ではほとんどの戦闘が終わっていた。あとは何処に敵が残っているのか解らないので、街の外を見回って終わりだ。 「ようやく、片付いたのか…」 「そうだね、生きて帰れると思うとホッとするよ。まだ油断は出来ないけれどね」  周囲の敵を殲滅し、ディムルとアーシィが休息を始める。周りを見回しても、悪魔の姿は見る事が出来ない。 「それで、これからどうするの?」 「ん〜、そうだね…、街の外でも見て回ろうか」  ルーティの質問に、アーシィはちょっと考えてからそう言った。敵が潜んでいたら厄介だし、負傷者がいれば救助しなくてはならない。 「それじゃ、後始末でもしに行くか」 「はい」  ディムルが声を掛けた。こういう行動は早い方が良い。そして、移動を始めたとき、ディムルがこっそり聞いてきた。 「ようやく落ち着いたみたいだな」 「まあね。心配事が一つ減ったからね」 「連れて来なくて正解だったって事か」 「結果論だよ。それは」  そう言って、アーシィは肩をすくめた。 ●第240話 投稿者:紅の狸  投稿日: 3月12日(月)02時15分12秒 「あらかた、片付いたな・・・」 ジェノアは王太刀を一振りして刀身についた悪魔の血を落とした。そして周りには、悪魔の屍が山となっている。 『相変わらず、鬼族はすごい体力してるわね』 「テメェーらみたいに疲れねえ訳じゃねえがな・・・」 王太刀を収め鬼から人へ変わった。周りにはもう悪魔は見えない。 「もう殆ど悪魔の気配はねえな・・・」 『・・・・街の外・・・少しだけ・・・・』 ジェノアも、イリスも大体の”魔属”の気配はわかるすでに街の外の少数以外片付いたようだ。 『これからどうする気なの?』 「そうだな・・・その原因になった天使でも拝みにでも行くか・・・」 『レイブン』にとって天使も悪魔もたいした違いは無い。時には倒すこともある。実際先代も何度か天使を倒していたことがあった。ジェノアも場合によってはこれ以上、面倒になる前にその天使を斬ることも考えていた。(おそらくと言うより絶対無理だろうが) 「そう言うテメ−はどうするんだ・・・」 『そうね、そろそろ戻ろうかしら。<コードΩ>も、もう終わっている頃だろうし』 とりあえず、手伝いはしたし取れるだけの情報も取った。もうここに居る必要は無かった。 「右腕のバケモノにも言っとけ、その内テメ−の顔も拝みに行くってな」 『ええ言っておくわ。でも倒すなんて考えないほうが良いわよ一瞬で消されるから』 「・・・・だろうな」 『それと、彼今ウイップアーウィルて名乗っているからそっちで呼んでね』 「フン、ウイップアーウィルか・・・」 『そう言うこと。じゃあね。機会があったらまた』 そう言い残すと、頭に響いていた声が消えた。 『・・・・行ったみたい・・・・』 「その様だな・・・」 そう言いながらジェノアは、バンダナを頭に巻き直した。 「さて・・・と・・・そろそろ行くか」 『・・・・判った・・・・』 そしてジェノアは街に足を向けた。今度こそ町の中に行くために・・・・。