●第211話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 2月16日(金)17時34分07秒 「……まあ、消化できるような物じゃないから、少し待ってみるかな?」  と言いつつ、アーウィルは頭を掻いた。 「しかしそれまでどうするんだ? 結界を張っても、悪魔は丸一週間増えつづけるんだろ?」  エンフィールドは無事でも、交易に来る商人たちは無事には済むまい。それでは単に死刑執行が先延ばしになっただけだ。 「さあて……。まあ、必要な人間を先に集めるかな」  再びこちらに向けて集結しつつある悪魔を一瞥し、アーウィルは言った。 「必要な人間? おまえだけじゃ駄目なのか?」 「ああ。正確に言うと、自分じゃ駄目なんだ。必要なのは、えーと……シェリルとローラ、この二人は必須だ。 それから、マリア、クリス、イヴ、リオ……とにかく、この街に長く住んでて魔力の強い人間が必要だな。 ついでに、護衛用の人員も欲しい」  そして、かなり怪訝な顔をする一同を尻目に、 「では、自分はまだやることがあるんで。また後ほど」  そしてくるりと後ろを向き、 「第四起動」  一瞬で行く手をふさぐ悪魔を消滅させ、同時にその光爆に紛れて姿を消した。 「はややや〜〜〜」  あまり状況にそぐわない間の抜けた悲鳴を上げつつ逃げているのは、 「道に迷っちゃったですぅ〜〜」  言わずと知れた、ティセだった。  たまたま騒ぎが起きたとき外に出ていたため、逃げているうちに迷ってしまったのだ。 「そろそろ飽きたな」  先程から彼女を追いまわしていた悪魔が鎌を構える。 「こいつは始末して、次の獲物を探すか」 『残念。それは出来ないわよ』 「なにっ!?」  悪魔の放った疑問詞が大気に溶けるより早く、 『潰れちゃいなさい』  一瞬で悪魔の周囲の空間が歪み、一点に向けて集束する。爆縮だ。  悲鳴すら放てず、針の先ほどの極小空間に押し込められた悪魔は消滅した。 「ほえ?」 『S級危険種族が情けないわねえ…。まあ、記憶から何から全部消えてるんだからしょうがないけど』 「あの…あなたは誰ですかぁ?」  何故か直立不動の姿勢でティセ。 『そうね……』  “彼女”は一瞬考え、 『アーウィル、とあなたたちが呼んでいる“もの”の……、何て言ったら良いかしら? まあ、関係者よ』 「ほえ〜〜」  あまり良く解っていない様子のティセだが、無理もない。 『さて、とりあえずあなたを安全な所まで運んで上げる。わたしは<コードΩ>と違って支援・防御タイプだから、 護衛とかは得意なのよ。撹乱なんかも得意だけどね』  言うなり、ティセの体が宙に浮く。 『怖がらなくていいわよ。世界で一番安全な所に連れてって上げるから』 「ご主人様のところですかぁ?」 『今は戦闘中だから、そこじゃないわ。まあ、大船に乗った気分で大きく構えてて』  このヘザーの少女は実に興味深い存在だ。断じて死なせるわけにはいかない。それが、主の命令だった。 『目を閉じてたほうが良いわよ。慣れないと目が回るから』  瞬時に、ティセの姿がその場から消え失せる。 「そう言えば、ヘザーは喰ったことがなかったな」 『食べちゃ駄目よ』 「解ってる。エルフとかライシアンは試食してみたんだがなあ……」 『もう一度言うけど、食べちゃ駄目よ。戦争の度に散々人間をつまみ食いしてるじゃない。 いやしいんだから』 「いやしいと言えば、なんであんな物食べるんだ、ポチは? あれを通じて監視してたんなら、 止めてくれても良かったろう?」 『そんなことしたら一発でバレちゃうじゃない。まあ、気づかれないように一時的に制御系を乗っ取って、 なんとか出させるから。ちょっと待ってて』 「下から、っていうのはナシにしてくれよ。自分はいいが、儀式を行うのは人間でないと駄目なんだからな」 ●第212話 投稿者:タムタム  投稿日: 2月17日(土)17時53分18秒 「アーシィ!助けによこすなら、もっと早くにしてよね!」  そう、ぶーたれながら教会に入って来たのはマリアだ。トリーシャ、シェリル、クリスも一緒にいる。実はこの時間なら学園に皆居ると思い、クラウド医院を出た辺りでガーディアンを一体送り込んでおいたのだ。が、そのガーディアンの姿は見当たらない。 「アーシィさん…これ…」  トリーシャが申し訳なさそうに何かを差し出してきた。それは宝石の砕けた指輪だった。 「良いんだよ。それは使い捨てだからね」  そう言いながら、指輪を受け取りしまい込む。送り込んだのはジュエルズ・ガーディアン。宝石を媒体に形成される使い魔で、けっこう強かったりするのだが…悪魔相手では長持ちしなかった様だ。(オイオイ) 「イヴや由羅姉さん達は無事なんだろうか…」  同様に送り込んではおいたのだが、不安が胸をよぎる。しかし、結界が間に合っているならばきっと無事なはずだ。本当は自分の目で見に行きたいのだが、この場を離れる事が出来ないのが…辛い。  と、その時。アーシィは何かが空間を破壊しながら近付いて来るのを感じた。すぐさま球体に手をかざし、魔力を練り上げ結界を強化する。そして、  ガゴォォォォォン!。という、何と言えばいいのか良く判らない音と共に、結界が揺れた。間を置かず、空間が揺らぎ三人ほどの人影が出現する。その人影はイヴとリオ、そしてトゥーリアの姿をしていた。 「あれ?アーウィルは?」  辺りを見ながら、トゥーリアは心底不思議そうな声を出す。と、言う事は…。 「…アーウィル…」  教会の外に出たアーシィが見たのは地面に座り込んで何やらブツブツ言っているアーウィルの姿だった。 「…計算を間違えたか?だが、しかし…それにしても弾かれるとは…」 「アーウィル。何をしているんだい?」  原因の一端を自分で作っておきながら、何をしているも無いと思うのだが、それは置いておこう。 「アーシィか。なに、ちょっとな…」  とりあえず立ち上がりながら、アーウィルは適当に掻い摘んで話し始めた。 「ん〜。なるほど…ね」  そう言いながら、アーウィルが必要だと言った人間を見る。儀式をすると言ったが、“バランスを取る、この街に長く住んでいて魔力の強い人間が必要、ついでに護衛も、”この条件から察するに、中々危険な事をするつもりらしい。  護衛が必要と言う事は街の外でするのだろう。考えられるのは三つ。一つは今ある天使の属性を中和する。二つ目は大量の悪魔を一点に集め、一気に殲滅する。三つ目は一気にバランスを保つ事が出来るほどの上級の悪魔を召喚し、倒すと言った所だろうか?  一つ目は街の外という条件さえ外せば大して危険ではないが、二つ目、三つ目は非常に厄介だ。はっきり言って賛成できない。アーウィルはともかく、周りが危険だ。 「だめだ、と言っても君はどうせ聞かないんだろ?」 「無論。それに、状況を変える手段が他に無い」 「危険性は?」 「それ程でもない」  誰を基準にしてそれ程でもないのかは不明だが、ここで議論をしていても状況は好転しないだろう。今はアーウィルを信用するしかない。…信頼は出来ないが…。 「わかった。その代わり、君が死んでも皆は無事に帰す。と、約束してくれよ」 「何気に酷い台詞だな。…その言い方だとアーシィは来ないのか?」  少々ふに落ちない、と言った表情でアーシィを見る。てっきり、護衛に参加すると思い込んでいたのだ。 「行きたいのは山々なんだけどね…。結界の維持で手が離せないんだ」  平静を装っているが、その顔には“心配だ”と大きく書かれていたりもする。 (信頼どころか、信用もされていないのか?)  そんな言葉が脳裏をよぎるが、アーウィルにとってそれは大した問題では無かった。 ●第213話 投稿者:ashukus  投稿日: 2月17日(土)21時48分45秒 教会を出て来たアーウィル、マリア、トリーシャ、シェリル、クリス、イヴ、リオ、ローラそしてトゥーリア 「団体さんのお出ましか」 そんな彼彼女らの前に鎌を持った一体の悪魔が姿を現した。しかしその悪魔は今までのそれとは雰囲気が違った。 「結界が張られたと思ったがここがそうか」 悪魔は薄ら笑いを浮かべて教会を見る。その魔力は威圧感を覚えるほどだ 「なかなかの力だ。今までの雑魚とはレベルが違うな(自分の敵ではないが)」 アーウィルがその悪魔の前に出る。と、そんな時だった。悪魔とアーウィルの間に何かが現われた 「・・・・・・」 それは街の外にいるはずのシュウだった 「こいつと遊んでいる時間は無いと思うけどな」 ぎこちない口調で声を放つシュウ。 「ここは俺に任せて行ってくれ(あいつの口調は本当に腹が立つ・・・)」 「って、何所から出て来たのよ」 そんなマリアの言葉には耳を傾けずにシュウは腰を落として刀を構える 「早く行ってくれ(五月蝿い・・・)」 「駄目だよ!!シュウくん一人だけなんて・・・」 「気にしないように(早く行けといっているだろう・・・)」 と、アーウィルがシュウに耳打ちする 「(何の真似かは知らんが力を過信しない方が良い。お前の力ではこいつは荷が重いぞ?)」 アーウィルの言葉にシュウは小声で応える 「(・・・そんなことはわかっている。勝ち目が無いくらいはな)」 「(確実に死ぬぞ?)」 「(・・・考えてみろ。この中で戦闘力が最も高いのはアーウィル。お前だ。儀式とやらでこいつ以上の悪魔を倒すのにお前がいなくてどうする?)」 「(自ら捨石になる気か?)」 「(只では死ねない・・・死ぬ気もない。が、俺もこの街に感化されてきたようだ)」 「(らしくない台詞だな)」 「(・・・そうだな)」 軽く微笑んでいたのは気のせいだろうか。シュウは刀を構えて悪魔に飛び掛かっていった。それを確認しアーウィル 「第三起動」 アーウィルの義腕が空間をガラスのように破壊する 「さぁ、行くぞ」 そしてマリア、トリーシャ、シェリル、クリスは破壊された空間の穴に入っていく イヴ、リオ、ローラはトゥーリアの空間移動についていった 「・・・らしくない、か」 『亜楠流剣術奥義ノ壱 速水』 超高速の居合抜き、一瞬にして刀が悪魔を捉える。が ガキィィッ 片手で繰り出された鎌がシュウの瞬速の刀を止めた。悪魔は余裕の笑みを浮かべている。 「所詮は人間か」 瞬間、衝撃波がシュウの体を吹き飛ばす 「ぐぅっ・・・・・」 そのまま彼の身体は教会の壁に思い切り叩きつけられた。 「どうした?人間、もうお終いか」 「・・・まだだ・・・もう少し・・・・・付き合ってもらう・・・・・」 ●第214話 投稿者:美住 湖南  投稿日: 2月18日(日)10時50分04秒 「うー。特別、異常はなさそうだな」 「そうですね」  フローネの表情がかたい。悪魔と言うことで緊張しているのか、見たさでうずうずしているのか。  すでにエンフィールドを一周して教会に。ケイン達に会わないのは偶然か、必然か。それとも神の思し召し?悪魔がそうさせたのか? 「さて、ここはフローネに決めてもらおう。もうすぐ教会だ。教会に戻るか、また町中を歩くか。どっちにする?」 「え・・・ディムルさんが」 「ここまでずーっとおれが決めてたからな。最後くらいおまえが決めてもいいだろ?」 「はい。じゃあ、教会に戻ってアーシィさんの指示を仰ぎましょう」 「・・・OK。わかった。そうしよう」  教会の入り口。ボロボロになったシュウと、悪魔。シュウは地面に伏している。シュウほどの戦闘力を持った者が負けたということは上級の悪魔であることは確実。中級三隊(おおざっぱにわけられた悪魔の階級をまとめるものです。権天使は第7階級の下級三隊です)に属するものか。 「おや?新手が来たようだ。この人間のお仲間かな?」 「さぁ。どうだろうな」 「私を楽しませてくれるか?人間」 「おれに聞かないでくれよ。悪魔(前までのは雑魚悪魔みたいだな)」  ディムルは小声でフローネに言った。 「シュウを助けてやれ。その後にアーシィのとこに。それまでぐらいなら惹きつけられる(とおもうんだがなぁ)」  最後は口に出さずに、顔にも出さずに。フローネは少し頷くと愛用の杖を握りしめた。  悪魔は唇を三日月型に引き伸ばす。 「魔法を使えるようだな。面白そうだ」 「あれあれ?おれが魔法石に頼ってるとも判りませんで?(はったりだけどわかっちゃうかな〜)」 「無駄話などしたくない。私を楽しませてくれ」  シュウの血に濡れた鎌を構える。ディムルも槍を構えた。 『エーテル・バースト』  いつまで持つかは判らないが、気休め程度にはなるはずだ。 「そんなものに頼るか、人間」 「何でも頼りたがるのが人間なんだよ。一匹狼の悪魔殿」  何度うちかわされたか。悪魔は自前の素早さで、ディムルはエーテル・バーストから得られた素早さでお互いの攻撃から逃れた。 ●第215話 投稿者:ブレードキング  投稿日: 2月18日(日)16時08分06秒 「いてて・・・」 クロウはケインに投げ飛ばされて、そのままほっておかれたらしい。 『・・・で、任務は覚えているか?』 人がいる時は、喋ろうともしなかった、アグレッサーが問う。 ちなみに、今だクロウはローブを被っている。 「・・・お前が100年前、人間の頃受けた依頼で、ローラ・ニューフィールドの護衛、だろ?」 『今は、ローラ・ニューフィールドの行方すら不明だ。』 クロウはお手上げな、ポーズをとる 「・・・ってか、悪魔もまだまだいるんだし、見・・・」 『ローラ・ニューフィールドに危害を加える可能性、有り。』 クロウが言い終える前にも、アグレッサーが答える 『それと・・・お前、いつまでローブを被ってる気だ?』 「帽子を買うまで」 今度は、クロウの即答・・・ 「・・・なぁ、前から来てるの、何?」 鎌を持った、いかにもな、悪魔が目前まで、迫っている 「・・・なんだか、知んねぇが、今、俺は苛立ってるんだ。死ね、ボケ!!」 クロウは何時の間にか、でかいハンマーを片手に持ち、思い切り振りかざす 「なっ!!」 予期せぬ行動に悪魔が後ろに下がる ドゴオオォォォ!! 悪魔が居た場所に大きな穴が開く 「ちっ、外したか。」 さっきとはうって冷たい言葉を発している 「変な結界のせいで、力が思う存分出せねぇが・・・悪魔共を殺す力はあるみてぇだな・・・」 この後、原型を止めていない、潰された悪魔の死体が見つかったらしい・・・ ●第216話 投稿者:YS  投稿日: 2月19日(月)01時08分12秒 「さて、ここまでくればいいでしょうかね」  ロイはポチと天使の少女と共に森の中にいた。 「こんなところに連れてきてどうするつもりなの?」  天使の少女が問いかける。当然だ、この辺りには悪魔の陰すら見あたらない。主戦力になりそうなポチと天使の少女が悪魔のいないところにいては、勝てる闘いも勝てなくなる可能性がある。 「簡単なことですよ、あなたに消えてもらうだけですから」  いつもののんびりした雰囲気はなく、はっきりとロイが言い放つ。 「消えるって・・」 「邪魔なんだよ、あんたが力を使って悪魔を倒しても使った力の分だけ悪魔が召還され、街も壊れる」  ロイの口調は冷酷と言えるほど冷たかった。 「おとなしく帰れば危害は加えない。この街の人間が尋常じゃないこと位はわかるだろう。放っておいても片付くはずだ。以前きた時はおそらくファランクスの影響ですでに悪魔側に片寄っていただろうから、あんたたちがきても影響はないように見えたかも知れないがな」 「・・わかったわ」  相手が子供とは言え言っていることは正論だ。このままこの街にいたら、さらに被害が増える可能性があるのも事実だ。 「・・けど、私もこんな形で終わらせたくはないわ」 「それが誰のためにもならないとしてもか?」  まるで子供に諭すかのようにロイが言う。 「それでもすべてを任せていくことなんて・・」 「本気なんだな」  ロイの言葉に頷く。このまま去っていったのではいくらなんでも無責任すぎる。 「・・わかりました。ただし、あなたはこれ以上は戦わないようにお願いしますよ。いま予定外の魔族にこられたらアーウィルさんの邪魔になりますから・・」  天使の少女は無言で頷く。 「・・それと、ポチ・・」  ロイはポチを呼ぶと、徐にその胸板を開く。元々魔法兵器であるポチは普通の生物とは違う。開いた所には水晶球とアクセサリーがあった。 「・・これをアーウィルさん達に届けてください・・」  ロイは水晶球を天使の少女に手渡す。 「あなたは?」 「・・いまから街に戻って、ポチで結界を張りなおします。ポチなら長時間結界を張ることも容易ですし、魔力の高い”人間”は多い方がいいみたいですからね・・」  そういうとロイは再びポチの方を向く。もう話は終わったということだろう。  天使の少女はそのまま飛び立ち、すぐに見えなくなった。 「・・さて、こちらも急ぎましょうか・・」  横目で飛び去ったのを確認し、呟く。 「・・ポチ、空間転移装置”孤児潰し”起動、座標”教会”・・」  皮肉たっぷりの名をいうとポチが腕を振るい、ロイとポチの姿は森の中から消えた。 ●第217話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 2月19日(月)18時05分04秒 「しかし、ずいぶんと華やかな面々だな」  雷鳴山の中腹。エンフィールド全体が見渡せる位置に陣取ったアーウィル率いる一同を見て、 彼はコメントした。  まだ悪魔はこちらに気づいてはいない。 「あの……これからどうするんですか?」  緊張した面持ちでシェリルが尋ねる。自分とローラが必須、と言われたのだ。無理もない。 「まだ肝心の水晶球、本当は別のものだが、が来てないから、今は待つしかない。とりあえず、 君とローラが要だから頑張ってくれよ」 「それで、具体的になにをすれば?」  問うシェリルに、アーウィルは懐をゴソゴソとかき回し、一冊の古びた本を取り出して渡した。 「何をどうしろ、と細かく指導はできない。これを読んで、自分で編み出してくれ」  無茶な事を言うアーウィルに呆れつつ、それでもシェリルは素直に本を開いた。  そして絶句する。 「こ、これって…! も、もしかして……」 「もしかしても何もない。早くしてくれ。あまり騒ぎが長引くと、座天使……"天界の戦車" あたりが出てくる恐れがある。そうなれば智天使もくっついてくる筈だ。そうなると、 筆舌に尽くし難い惨事になるぞ」  悪魔がこれだけ派手に地上で暴れまくっているのだ。<神>が黙って見ているはずはない。  苦々しくそう思いながら空を見上げていると、例の権天使の少女が高速でこちらに向かって飛んで来るのが視界に入った。 手に、奇妙な水晶球を握り締めて。 「シェリル、始めて良いか?」  アーウィルが展開した結界の中で、シェリルは頷いた。 「でも……何故、こんなことを知っているんですか? 文献もほとんど残っていないような、 古代の魔法を……」 「言わぬが花。ま、正直言ってアーシィが来られなかったのは好都合だったな。なにしろ、 この道の専門家だ。魔術師組合に協力を依頼しなかったのも、これが世に出るのを防ぐためさ」  そう言って、アーウィルは水晶球差し出した。  シェリルはそれを右手で握り締め、空いた左手をローラが両手で包む。 「では、最後にもう一度確認。他の皆は、自分が合図をしたら一斉に魔力をその水晶球に注いでくれ。 シェリルは、それと同時に開始。ローラは、特に何もしなくて良い。余計な事を考えず、 ただ意識を空白にしろ」  実は、ローラの役目が一番重要なのだ。  この世に存在するあらゆる事物事象は、すべて地水火風の四大元素で構成されている。つまり、 その構造に干渉できれば、あらゆるものを造りだし、同時にあらゆるものの存在を変異させることが出来る。 (それを行うために、この水晶球を介して対象空間に存在する乱れを生み出している元素構造に呼びかけ、 一気に崩れたバランスを正す)  それをアーウィルは『整調化』と言った。つまりは"世界を治療する"技術だ、と。  シェリルが選ばれたのは、以前ファランクスを御した資質と才能のため。そして、ローラが選ばれたのは、 「最も長くこの地に存在し、同時に精神的にも身体的にも若いから」だと言う。  シェリルには良く解らなかったのだが、とにかくローラが彼女のかたわらに居ることが必要なのだと言う。 「良いか? シェリルがこの地域一帯の乱れを"治療"している間は、結界は張れない。 無防備になるわけだ」  言うなり、結界が解除される。 「第四起動!」  間髪容れず、青い光がこちらに感づいた悪魔をまとめて消し去る。  同時に、大量の魔力を吸い取って強烈な光を放つ水晶球を握り締め、シェリルが眼前のエンフィールド全体に呼びかけた。 「私の眼前、天地に満ちる数多の元素達! 闇のざわめき、光の舞踏、そして破壊の咆哮達よ!  聞こえますか!? 私の声が!」  膨大な光がその呼びかけに応えて放たれ、周囲の者の視界を純白に塗り潰しながら広がっていく。 (まだ、終わりではない。悪魔は増えなくなったが、こちら側に出てきた悪魔は消えないからな) ●第218話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 2月20日(火)13時33分02秒  アーウィルたちが雷鳴山に向かい、シュウが中級の悪魔と交戦を始めた頃だろうか?ケインは町中で大暴れをしていた。 「どぅおりやぁぁぁ!」  もう意味をなしていない叫びをあげると、ケインの周囲全てを爆炎が薙ぎ払う。今だけで悪魔が五十体ほど消滅したはずだ。 「ったく・・・どうでもいいがさっきから誰にも会わないってのはどういう事だ?」  ケインは、この事態を収拾するための儀式が町をはさんで反対側の雷鳴山で、また、シュウの死闘がこれまた町の反対側のセントウィンザー教会で始まっていることを全く知らない。  既に御神刀はへし折れている。所詮金属の塊である以上、耐久力を超えて使いつづければ壊れるのは当然だ。  と、さきほどの爆発の中から一体の悪魔が現われた。全身を甲冑のようなもので覆われているため詳しい背格好はわからないが、かなり大柄な体型だ。 「ケケケケケケケケ・・・・・・貴様の魔法がどれだけ強かろうと、わしのこの身を穿つことなどできぬわ」 「うるさいやかましいとにかく消えろ!虚ろなる、闇よ!」  解き放たれた黒い球体がその悪魔に触れると球体は膨れ上がって消えた。球体の範囲内にあった悪魔の一部も(といっても半身全てだが)消える。更に周囲が帯電し― ズズゥゥゥンンン・・・・・・  町を特大に鳴動させて、その鎧悪魔は粉々に砕かれながら消えた。  ケインの使える中でも対単体用としては最強の魔法、『物質崩壊』。現時点でアーウィルに通用しうる力でもある。もっとも、アーウィルが使わせてくれる余裕を与えてくれるとは思えないが。 「ほほう・・・なかなかやりおるな」  そのやけに時代がかったセリフに振り向くと、一人の悪魔が立っていた。その手には鎌ではなく、刀を構えている。 「何のようだ?こっちとしてはもうお引取り願いたいんだが?」  言いながら、こちらも剣を異空間から取り出し、正面に構える。こちらは長剣。 「そうもいかぬ。我らもしがらみの中で生きる故に」  悪魔も正眼に構える。ケインは即座に第二封印を解放した。悪魔から放たれる剣気とでもいうべき気配は、父親のヴァルカスと同等のものだった。 「それがしの名はグラシャム。上級悪魔に名を連ねる者」 「俺の名はケイン・ツァルクハウゼン・クライナム。ハーフヴァンパイアだ」  それだけで会話は終わった。二人の周囲にはいくらかの悪魔がいるが、グラシャムの指揮下にいるせいか、単に巻き添えを恐れているのか、近くによって来ようとはしない。  お互いの気配がどこまでも張り詰め、空間が凍ったように鋭くなる。そして、木の葉が一枚舞い落ちると同時― 「はぁ!」 「ふっ!」  刹那の閃光と化した二人の刃が打ち合った。 ●第219話 投稿者:タムタム  投稿日: 2月20日(火)19時27分23秒 「アーシィさん!まだですか!?」 「そう焦らせないで…」  シュウの怪我の手当てをし回復魔法をかけながら、フローネが焦りをあらわにした叫び声を上げる。答えたアーシィにも同様の焦りが見受けられた。  アーウィルの言う儀式(いくら水晶球や、一部の情報を伏せられていたとしても、“この街に…”と言う条件があるのだ。冷静に考えれば悪魔を召喚と言う考えには至らない筈)と教会の外に居る悪魔が原因である。その為、結界を自動で維持するための作業が中々終わらない。 「よし!終わった!」  その言葉と同時、空間が揺らぎロイとポチが姿を現す。 「アーシィさん、ポチで結界を張り直そうと思うのですが…」 「駄目だ」  その間0.2秒。まさに即答だ。当たり前である。ここまで複雑な結界になると、魔力だけでなく、それをコントロールする技術と属性のバランスが深く関わって来る。第一、熟練を要するタイプの結界魔法は戦闘タイプのポチでは扱えない。(基本系統が違うため) 「…そうなんですか…?」 「ああ、ロイはシュウに回復魔法を頼む。フローネは一緒に来てディムルの回復を頼む。ポチはロイの言う事しか聞かないから待機」  これはロイの呪文詠唱の遅さを考えての指示だ。自動で維持できるのはもって二時間。それまでに何としても終わらせなくてはならない。 「人間よ、ここまでか?」 「(ってぇ〜。ほんとに洒落になんねえよ)」  ディムルもかなり追い詰められていた。エーテル・バーストのおかげでシュウほどの怪我は無いが、一対一では勝ち目が無い。 「そろそろ終わりにしてやる…」  大鎌を振り上げながら歩み寄り、ディムルの首に狙いを定める。が、魔法弾が直撃しそれは振り下ろされなかった。 「ちょっと待ってくれないか?」 「アーシィ。遅えぞ」 「ほう、この結界の術者か。だが、もう飽きてきたな。貴様を殺し、次に向かうとしよう」 「待ってくれって言っただろう?嫌でも私に付き合ってもらうよ」  ここで消えられたら意味が無い。ケインの所に行くなら問題は無いが、アーウィルの所に行かれ様ものならローラ達が非常に危険だ。ここで釘付けにし、倒す必要がある。  この間にも、ディムルの回復は行われている。アーシィがやるのは時間稼ぎだ。その為には手段は選んでいられない。 『魔力封印開除』  コートに左手を突っ込んだまま、右手の親指と中指を打ち合わせる。パチっと言う音がしたと思うと、強力な魔力がアーシィを包み込んだ。 「えっ!?」  フローネは驚くが、ディムルには種が解った。恐らくカードの魔力を開放でもしたのだろう。 「ほう。人間にしておくのが勿体無いな」  素直に感心しながら悪魔は言う。だが、それに構わずアーシィは続ける。 「知っているかい?全ての魔法を究め様とした男を。そいつは禁術の一つを使い、神に呪いの言葉を吐きかけたんだ。その結果、彼は神の加護を失い、魔力を封印された」  そこでわざとらしく言葉を区切る。相手の反応を楽しむかのように。相手も言葉の意味に気付いたようだ。確かに、目の前の男からはあらゆる生物から発せられる神の気配が感じられない。  加護が得られないのは魔界の者か、神に反逆した者だけだ。変わりに感じられるのは封印と呪いの魔力。 「だが、そいつは堕天使と契約し、自らに呪いを掛ける事でそれを克服した。…神も酷いよな、どうせなら『伝説の賢者アープ』と同じ様に決して死ねない呪いを掛けて欲しかったよ」  そこまで言って、もう一度指を鳴らす。今度は魔力が凝縮し始め、色取り取りの球体が身体の周りに浮び、その背に紅く輝く12枚の翼が現れる。そして額には十字架をかたどった紋章と、その周りに11個の数字が浮かび上がる。手にしているのは紅い刃の大鎌。  この話の中で本当なのは、“神に呪いの言葉を吐き掛け加護を失った”事だけだ。封印は記憶の、呪いは銃の物である。そう、全ては悪魔の注意をこちらに向けるためのはったりだ。  だが、ディムルとフローネはポカンとした顔でアーシィを見ている。信じてしまったかもしれない。 「付き合ってくれるね?」 「面白いぞ!全力で戦いを楽しもうじゃないか!!」  悪魔が声高らかに言い放った。―開放した魔力は全部使える。皆が回復するまでの間は何としても戦い抜かなくてはならない― ●第220話 投稿者:紅の狸  投稿日: 2月21日(水)02時03分20秒 「魔属の気配を感じて来てみれば、なんなんだこの町・・・それにこの結界は・・ ・」 町中で戦いが始まった頃、町の外に大きな刀を背負ってマントをまとった男が立って いた。 『・・・中にすごい魔力・・・たくさん感じる・・・』 「ああ、ほとんどが中級、上級クラスだ・・・さてどうするかな」 男は、そう言いながら頭をボリボリとかいている。しかし、目はそうゆう感じではな いむしろやる気だ。 『・・・ジェノア・・どうせやるんでしょう・・・』 頭の中に直接響く声は、わかっていたようだ。 彼女は、ジェノアと呼んだ男の左腕に宿っている精霊主と呼ばれる者、名は「イリ ス」。 「フン、まあ・・・!」 言葉を終える前に何かの気配に気づいた。 『・・・ジェノア・・・』 「ああ、解ってる」 イリスも気配に気づいたようだ。 ジェノアは、返事をしながら背中の大刀「王太刀」を抜く。 「クックック、結界の外に人間がいるとわな」 「ああ、ケケケケケ・・・」 周りには、十数体の悪魔が集まってきていた。 「・・・下級か、どうやらこの結界は下級をはじき出すようだな」 冷静なジェノア、どうやらこの程度は慣れているようだ。 「さあ、じっくりと苦しめて殺してやるケケケケ・・・・」 「フン、下級程度が」 「なに−−−!」 どうやら聞こえたようだ。 「イリス、手を出すなよ」 『・・・うん、わかった・・・』 そう言うとジェノアは、人間離れした動きで悪魔達との間合いを詰めて一振りで5, 6体の悪魔を斬り倒した。 「ギャア−−−!!」 「グワァ−−!!」 「な、なんなんだこいつ!」 「テメーらも魔属なら聞いたことがあるだろう『レイブン』という名を・・・」 悪魔達が、驚き騒ぎ出した、どうやら知っていたようだ。 「ま、まさかあの『魔属殺し』のレイブンか!」 「そういう事だ・・・わかったら死ね!!」 数秒後には、下級魔族はすべて死体になっていた・・・ 「手間取らせやがって、たく・・・」 『・・・ジェノア・・・』 「ああ、さてどこから入るかな・・・」 そして、ジェノア達は、町に入れる場所を探しに行った。町の中では、上級クラスの 者達が闘っていることは、気づかなかったようだ