●第181話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 1月18日(木)11時16分40秒  ケインに向かって殺到する旋風。否、人の姿をした人あらざる者。だが、その旋風はケインに到達する事は叶わなかった。 (第一封印完全解放。対象殲滅を最優先に設定)  胸中の思考に呼応するようにケインの身体にわずかな変化が生じる。  碧眼、すなわち蒼い色の瞳が紫へと変貌する。そしてその刹那ののち、殺到した男の一体は地面を突き破って地下へと埋もれていく。―シュウの元へ落ちてきたのはこれだった。  ケインは旋風と化した男たちをはるかに上回る速さで行動、一体の背中に踵落としをかましたのだ。 「これは・・・?!」  だが、地上に降り立ったケインは再び驚愕に顔をゆがめる。今ケインと対峙しているのは明らかに人間ではない。魔物・・・いや、それも適切とはいえない。  表皮はどす黒く、筋肉が異様に盛り上がっている。その表皮もまたあちこちがとがっていて、まるで武器のようにも見える。いや、おそらくその通りか・・・ 「あんのマッドォォォ・・・ここまで狂ってやがるのか!」  そううめくケインの脳裏には以前ローズレイクで遭遇した魔獣があった。もしかしたら、 (あいつ・・・あの魔獣の死骸を使ったのか?だとしたらあいつは、あいつの組織は・・・)  だが、ケインの物思いもすぐに解かれた。眼前には三体の魔物。そのそれぞれが同じ事を繰り返す。 「コロスコロスコロスコロスコロス・・・・・・・・・・」  そしてそのまま、魔物は踊りかかる。対してケインは左足を前にした半身の構えで、左腕を横に払った。左から右へ。 「風と水の糸よ!」  刹那、5本の指先から迸った極細の水流の糸が、その身に真空を纏って魔物の一体を微塵切りにする。その動作を予備動作にして真正面から来る魔物に正拳を打ち込む。  拳は魔物の身体を打ち抜く。魔物の背中からは血塗れの腕が突き出している。だが、魔物も断末魔の力でケインの頭を砕こうとする。が。 「砕けろ!」  ケインの一喝と同時、魔物は爆炎と爆発に呑まれて粉々に消える。だが、側面からの一体にはわずかに反応が遅れた。魔物の一撃で、ケインの右腕が千切れる。 「第二封印・・・解放!」  だが、ケインは激痛の中で意識を保って、最終の封印を解いた。今度はケインの瞳が深紅に染まる。  そして、ケインは風よりも速く、視界に残像も残さぬほどの速さで魔物に蹴りを打ち込む。魔物は10メートルは吹き飛ぶ。  そして、ケインは右腕を再生させると振り上げ、ただ一言叫んだ。 「雷よ!」  瞬時、倒れ伏す魔物を極太の雷撃の柱が包み込む。魔物は体液を沸騰させ、超高熱で焼かれ、塵へと帰っていった。  それに一瞥もくれず、ケインは遺跡への入り口へと向き直る。両手を前へと突き出して。 「炎よ、集いて純白の浄化をもたらせ!」  手の先に現われた炎は一挙にその熱量を増加させ、白い超超高熱の爆炎の塊へと変貌する。 「いっけぇぇぇぇ!!!」  解き放たれた爆炎、否、閃光は一直線に遺跡へと吸い込まれ―遥か天を焼く白い光の柱へと化けた。その熱量で、障壁が展開しているケインを除いた周囲200メートル全てが焼き尽くされた。  魔物の群れはその数をかなり減らした。が、その数はまだまだ多い。まして、銃弾には限りがあり、槍、剣、ナイフなどの武器はその切れ味をかなり落としていた。中には剣が折れてしまった者もいる。 「さすがにきついね・・・」  リサがうめく。魔物はまだまだいるというのに、すでに愛用のナイフは刃こぼれがひどい。 「弾詰まりか!」  アーシィが発射機構がいかれた銃をほうり捨てる。カードも少なくなり、要は打つ手が狭まっている。そのとき、大地がゆれた。 「なんだ?!」  鳴動は続き、地割れが魔物の群れの中央で発生、魔物全てを飲み込んだ。そして、地割れが閉じ、鳴動も収まる。 「なんだったんだ・・・?」 「これは・・・多分アイツの仕業だね・・・」  アルベルトの呟きに、リサは答えた。疲れきった表情で。  『目立たないように、って言われなかった?』 「でも姿を見せるわけにも行かないし・・・これが一番だと思うけどね」 『十分目立ってるわよ・・・リサは気づいてるわよね。どう言い訳するつもり?』 「・・・どうしようか?」  閃光が天に伸びていったのはそのときだった。 ●第182話 投稿者:YS  投稿日: 1月23日(火)01時12分37秒 「・・ここはどこなんでしょうか・・」  ロイは道に迷っていた。トリーシャとはわかれている。・・正確には町中ではぐれたのだが・・。  今ロイは森の中にいる。ブルーフェザーの居場所を聞いて回っていたら森の方に設置してあった通信球から情報が入ってきたためだ。 「・・また、二日ほど森で生活ですかね・・」 『あ〜、ロイ聞こえるか?』  道に迷い途方にくれていた時、通信球から声が聞こえた。 「・・え〜と、アーウィルさんですか?」 『そうだ、すまないがポチを借してくれないか?』 「・・その前に道に迷ってるんですが・・」 『わかっている』 「・・だったら助けてください・・」  心底ロイはそう思った。とはいえ、放っておかれても死なない自信だけはあったが。 『わかった』  ぼこっ  唐突に地面が盛り上がり、アーウィルが姿を現す。 「・・それやめてくださいっていいませんでしたか?」 「ああ、すまなかったな」  あまりそう思ってはいないような口調でいう。 「・・で、ポチを何に使うんですか?」  聞かれアーウィルは適当に状況を説明した。 「・・つまり、リサさんにばれたらまた言及されるから、同じ位のことができる、ポチのせいにしようということですね・・」 「頼めるか?」 「・・仕方ないですね、では離れてください・・」  そういうとロイは通信球に何かを念じる。  その一瞬の後、ポチが空間を渡って現れた。 「これは・・」 「・・アーウィルさんお得意”孤児潰し”です・・」 「まだ根に持ってたのか?」 「・・とにかく、これからまた転移させて少し暴れてもらいますから、アーウィルさんはケインさんが何しているか調べてもらえませんか?」 「ああ、それならわかる。さっきまで今は使われていない自警団の詰め所を壊していた」 「・・確か権利は自警団にまだあるはずですよね・・」 (・・ということは、またケインさん建築物破壊とかで罰金取られるんでしょうか・・)  心配をしてみる。まだ借金は帰してもらっていなかったはずだから、ロイにも影響はあるはずだからだ。  そうこうしていると修正が終わった。これで転移後ある程度魔物を倒したら帰還してくれるはずだ。 「・・できましたよ・・」 「では、急いでくれ。早くしないと誤魔化しも効かなくなる」 「・・はい、これで大丈夫です・・」  そういってロイが離れると同時にポチは空間を破壊し消えた。  後日、多少怪しまれたもののアーウィルへの疑い(?)は得になく、ポチが犯人(?)とされた。  アーウィル自身は念のため、リサが疑うのに疲れるまで隠れておくといっていた。相変わらずどこに隠れたかはわからないが・・。  ケインはロイの予想通り、罰金をとられた。まだ資金源はあるので飢え死にすることはないだろう。  シュウはなんとか病気を治したらしい。  アーシィは銃を自分で修理したらしい。発射装置程度の故障なので、それほどたいしたことはなかったようだ。  ディムルは報酬を受け取りにきたが、収穫ゼロだったので500Gほどしか、ロイからは受け取れなかった。それでもないよりはましと判断したのか以外とあっさり引き下がった。  ロイはあのお金とポチの得た優勝賞金を教会の維持費として使うため毎月少しずつ寄付することにした。放っておくと考えもなく使われそうだったからだ。  で、探していたブルーフェザーは・・ 「なあ、ルシード。ほんとにこっちでいいのか?」 「俺が知るか!」 慣れない所だったためか、見事に道に迷って任務どころではなかったという。 ●第183話 投稿者:タムタム  投稿日: 1月23日(火)23時40分15秒                 『予期せぬ天からの訪問者』  大武闘会から、まだ半月と経ってない日の夜だった。  空には満天の星が瞬き、天には綺麗な月が陣取っている。時刻は真夜中、空に一つの星が生まれ微かな光と共に流れた。  それは次第に地上へと近付いて行き、輪郭を整えてゆく。  もし、それを見ていた人がいたなら驚いただろう。人形のものが光に包まれながらゆっくりと下りてきたのだから。それは地面から一メートルほどの所で光を失い重力に従った。 「いたいのです〜」  一メートル程の高さとはいえ、その前の落下スピードを考えるとそれなりに衝撃はありそうだ。しかも、何の前触れもなく空中から地面にまっ逆さまに落ちてしまっては如何する事もできない。  早い話“彼女”はそのまま気を失ってしまった。その背に生えてた純白の“翼”と、宙を漂っていた同じく純白の“羽”が消えていくのに気が付かないまま…。  一方その頃、教会の中で異変に気付いた人がいた。その人物は台所からひょっこり顔を出すと、廊下をパタパタと足音を立ててかけて行く。 「なんの音かな〜」  首を捻りながら、その人物―ローラ―は寝巻き姿のまま玄関の方へと走っている。それ程、どころかやっと聞き取れる位に小さな音しかしなかった為か、さしたる警戒心を抱いてはいない様だ。  そのまま玄関を抜け、庭のほうへと足を向ける。そこで彼女の見たものは…。つづく…  ってのは冗談で、地面に誰かが倒れている。真白なローブの様な物を着ているが、一目見ただけで女の人だと言うのは判った。その姿は女性と言うには少し幼く、かといって少女と言うにははばかれる、中々に微妙な年頃だ。  長く伸ばされた、柔らかそうな金の髪が顔に覆い被さり、地面に流れている。その目が閉じられている為か、整った顔立ちと相まって何だか作り物のような印象を受けてしまう。 「どうしよ〜」  なんて言いながらも、取りあえず仰向けにしてみる。微かな息遣いと、それに合わせて膨らんだ胸が上下するのを見て、生きているのは間違いないだろう。  教会の中に運んだほうがいい、と思ったが、ローラ一人では到底運べない。  セリーヌを呼ぼうかと思ったが、買い物に行ったまま帰っていない。ロイはセリーヌを探しに行ったまま帰っていない。(こう言うのを二重遭難と言う)  ケインに至っては今朝方ジョートショップへ行ったままだ。何でも、かなり報酬の良い遺跡発掘の依頼が舞い込んだらしく、アーシィの護衛として一緒に出かけてしまっている。二、三日はかかる為、手が空いていればディムルも誘うと言っていたのが記憶に新しい。  と、その時、困っていたローラの耳に聞き慣れた声が聞こえて来た。パトロールをしているアルベルトが近くを通りかかる様だ。手伝って貰うのに丁度良い。 「アルベルトさ〜ん。こっち来て〜」  その日、セント・ウィンザー教会の庭に一人の天使が舞い…落ちた。 ●第184話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 1月24日(水)18時02分52秒 「行き倒れ…?」  とりあえず少女を中に運び込んでベットに寝かせ、毛布をかけてやる。 「……にしてはなんか違うような気が……」 「変な音がしたんだけど、なんだったのかな?」  アルベルトとパトロールの相棒を務めていたシュウ、そしてローラは首を傾げた。 「とにかく、特に大した怪我もないようだし……朝になったらクラウド医院に連れて行ったら?」 「うん。そうする」  行き倒れだったりすると、自警団の仕事だ。事情を聞いて、書類も作らなくてはならない。 「まあ、念のためだ。俺達が朝までつき合ってやるよ」  そう言ってアルベルトが胸を叩き、シュウが頷いた時……  派手な破壊音が聞こえてきた。しかも接近してくる。 「な、何?」  だんだんとその音源が近づき、同時に怒鳴り声も聞こえてくる。 「こんのバカ!!! なにが『地殻破壊攻撃・かなりおとなしめバージョン』だ!!」 「それじゃ、『地殻破壊攻撃・対都市攻撃用/手加減無しバージョン』の方が良かったと?」 「もっと悪い!! このバカタレ!!」 「じゃ、じゃあ『真空爆撃・範囲攻撃バージョン』とかは?」 「この辺り一帯を砂漠にするつもりかい!?」  何かが木の幹に激突し、メキメキとそれをへし折る音が聞こえくる。 「………」  窓から外を覗いたローラ達がそこで見たものは、怒り狂い、ハンマー投げのハンマーのようにアーウィルを ぶん回しながら周囲の潅木や道路に対して破壊活動を強行するリサの姿だった。 「なんか、少し酒が入っているように見えるのは気のせいでしょーか…?」  背筋に慄然とするものを感じつつシュウ。 「それにしても、丈夫だな、アーウィルは」  呆気にとられ、少々ズレた感想を漏らすアルベルト。  彼らは知る由もないが、要するに、先の事件の際に地割れを引き起こして魔物の群れを壊滅させた張本人が、 せっかくロイが隠蔽工作をしたにもかかわらず、アーウィルだとバレてしまったのだ。  止めようという気さえ起きない一同の前から、やがて二人は去っていった。路面や壁に大穴を開け、 並木をことごとく伐採しながら。 「うーん……」  今の非常識な大騒ぎで目が醒めたのか、ベットの上の少女が身じろぎする。 「あ、起きた?」  パタパタと窓際からローラが駆け寄り、顔を覗き込む。 ●第185話 投稿者:HAMSTAR  投稿日: 1月25日(木)16時30分34秒  その少女は目を覚ますとまずじっと前方を凝視した。その後、ゆっくりと、ことさらゆっくりと首を動かした。  右から左へ。左から右へ。上から下へ。下から上へ。そして、ローラと目を合わせた。 「はて?」 「・・・?」 「ここは・・・どこでしょうか?〜」 「えっとね。ここはセントウィンザー教会。あなたはこの教会の前に倒れてたの。あ。私はローラ。よろしくね」 「ああ、そうですか。ありがとうございます。ご迷惑をおかけしてしまって」 「こんばんは。僕はシュウといいます。このエンフィールドの自警団に所属しています。こっちは先輩のアルベルトさん。どうでもいいけど、君は誰なんですか?」  というと、彼女は首をかしげた。目を瞑り、何かを考え込んでいるようだが。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」  しばらくたっても彼女は動きを見せない。じっと硬直したままだ。 「?」  全員が顔を見合わせる。彼女が考え込んだまま眠りについていたことを察するのは、これから十数分後のことになる。 「・・・・・・天使?」 「そう、天使」  遺跡発掘現場で、とある石碑を見上げながらケインは間の抜けた声をあげた。 「天使っつーとあの、背中の羽で空を飛ぶってゆう、あれだよな?」 「それ以外になにがあるっていうんだい?」  ケインに解説をしているのはアーシィだ。各地の遺跡を回っていたせいか、古代文字の解読に関してはケインよりも遥かに上手だ。 「この石碑によると、だ。かつてこの付近の地域一帯に天使が舞い降りてきて、なにがしかの奇跡を行ったようだね」 「ふ〜ん」  まるっきりうろんな感じで答えるケインを半眼で見ながら 「君も古代種族、ヴァンパイアの一族なんだろう?こういった類の話は聞かなかったのかい?」 「ああ。俺は本とにらめっこするよりは外で身体を動かす方が好きだったからな」  はあ、とため息ひとつ。ちょっとした頭痛を覚えるのは気のせいだろうか? 「ところで、アーシィ。シュウのことなんだが」  突然に話題を変えられてアーシィはわずかに身を固める。 「あいつ・・・多重人格のようだな」 「何でそのことを?」 「お前の心を読んだ。もっとも、俺が使える読心能力なんてたかが知れてる。本人が強く意識した事が読めるくらいだ」 「あまり、人に使う物ではないね」 「まあな」 「・・・確かに彼は多重人格のようだね。しかも、普段のシュウはそのことを知らない」 「変に探りを入れても無駄っぽいな。で、石碑の続きは読めるか?」 「君も急に話題を変えるね・・・それもやめた方がいいよ。で、続きは―」  それっきり黙りこむアーシィを横目に見ながらケインは石碑を見上げた。石碑には古代の文字と複雑な紋様が刻み込まれ、てっぺんには翼を広げた少女―天使だろうか?―が刻まれている。 「―“彼らは再び、この地に来る事を言うと、はるか無辺の天空へと帰っていった”だそうだ」 「天使の降臨、かぁ・・・」  それはそれだけの、なんの裏も無い会話。この時点では、誰も天使が降りてきたことを知らない。 ●第186話 投稿者:ashukus  投稿日: 1月26日(金)18時18分56秒 さて、数時間が経ち、夜が明けた。少女は相変わらず眠ったままだ。ついでに言うとローラも寝ている 「アルベルトさん、この人エンフィールドの人なんですかね?」 「さぁな、わからねぇな」 「でも、書類作らなくて良いんですか?リカルド隊長に怒られますよ?」 「そうだな。おい、シュウ」 「何か?」 「第一部隊の主な任務はなんだ?」 「は?」 訳の分からないことを言い出すアルベルト 「自警団第一部隊の主な任務だよ。知ってるだろうが」 「はぁ、戦闘全般ですか」 「第二部隊・・・」 「情報収集でしたっけ?」 「お前の第三部隊」 「住民の・・・苦情処理」 「よし、ここはオレが何とかする。行けっ」 アルベルトはなかなか格好良い台詞を言いながら外を指差した。 「いや、行けってどこに?」 そんなアルベルトの意図が理解できないシュウ。しかしアルベルトはそんな彼に一言 「役所だ」 「役所。要するに・・・とりあえず俺に彼女の身元でも調べて来い、と」 「察しが良いな。そうだ、分かったら行け」 「・・・俺はアルベルトさんの使いっ走りですか?」 「本当に察しが良いぜ。オラ、行け」 さらっ、とアルベルトは言い放った 「そ、そんな横暴」 と、そこまで言ってシュウはなにかの視線に気が付いた 「・・・・・・」 視線の主、いつのまにか目を覚ましたローラ・・・『文句を言わずに行って来て!!』と言わんばかりの眼で見ている 「・・・行けば良いんでしょ行けば・・・はぁ(この頃、全然良い事無いな・・・)」 彼は最近本当に良い事が無い・・・風邪はひく、治ったと思ったら自分の刀が無い。 おかげで支給品の剣を腰に提げている。彼曰く剣は刀より扱いにくいようだ 「(『あれ』は使いたくないし・・・・・・)」 そんなことを考えながら彼はクラウド医院を後にした カチャ バタン ●第187話 投稿者:タムタム  投稿日: 1月26日(金)21時51分20秒 「やれやれ、やっと行きやがったか」  そう言いながら、アルベルトは眠り続ける少女を見る。朝一でクラウド医院に運んだのだが、その間も起きる素振りすら見せていない。少々心配になってしまう。 「何をそんなに見つめている。ただ眠っているだけだと言っただろうが」  いきなり声を掛けられて一瞬ビクッとしてしまったが、何事も無かったかのように振り返る。するとそこにはトーヤがいた。 「でもよ、もうそろそろ目覚めても良いんじゃねえか?」 「心配する気持ちは判る。だが、身体を健康に保つ為には十分な休息も必要だ。お前も少し寝たらどうだ?」  言われて初めて身体がだるい事に気が付いた。考えてみれば完全に徹夜をしている。いくら慣れているとは言え、辛いものは辛い。 「シュウには悪いが少し寝るか。ベッド借りるぜ」  トーヤの了解を得る前に、空いてたベッドに潜り込むとすぐに寝息を立て始めた。そう簡単には起きそうも無い。 「いつになったら目がさめるのかな〜」  気持ち良さそうに眠る少女を眠そうな目で見ながらローラは呟いた。と思いきや彼女もそのままうとうとし始めてしまった。 「全く、世話の焼ける連中だ」  口ではそう言いながらも、ローラをベッドに運ぶ優しいトーヤであった。  一方、役所に行ったシュウはと言うと、役所にて悪戦苦闘をしていた。 「…この人は…違う。この人…も違う。ああ!手がかりが少なすぎ!」  身元を確認するといっても名前も判らないのである。仕方が無いので、金髪の女性で歳は18歳前後、身長150センチ位の人の書類を見せてもらったら、あるわあるわ、ハッキリ言うと、今ある情報が極端に少な過ぎて如何にもならない状況だ。 「はぁ。俺一人じゃ絶対無理だ。…この中に居ないんじゃないか…」  目の前に山と積まれた書類に目をやり、…疲れてきた。 「…眠い…役所じゃわからなかったってことにして…アルベルトさんには悪いけど、寝よ」  その言葉を最後に、シュウは机の上に突っ伏した。  時は巡ってお昼頃。唐突に目が覚めた。辺りを見回すが全く見覚えがない。どこで寝てたのかも判らない。首を傾げると、眼鏡を掛けた男の人と目が合った。 「目が覚めたか。気分はどうだ?どこか痛む所はないか?」  いろいろ質問して来るが、気分も悪く無ければ何処も痛くない。 「大丈夫なのです〜」 「そうか」  そう言うと、紙に何か書き込んでいく。何をしているか気になったが、それ以上に気になる事を訊ねて見ようと思う。 「ここは何処なのですか?貴方は誰なのですか?わたしは一体誰なのですか〜?」 「…記憶喪失なのか?」  目覚めた少女の質問に答える事も忘れ、トーヤは少々間の抜けた声を出してしまった。  たいする少女は意味が解ってないのか首を傾げただけだった。柔らかそうな髪が流れる様にサラサラ揺れた。 ●第188話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 1月27日(土)11時10分11秒 「………」  朝。さくら亭から一歩足を踏み出したルシードは、無言で眼前の“それ”を見つめた。  二本の脚。それだけなら、別に珍しい物ではない。脚ぐらいルシードにだってついている。 問題なのは、その状況だった。 「……新種の植物か? これは」  脚は石畳に覆われた硬い路面から、問答無用に、生えていた。膝から先は完全に埋没しているため、 その持ち主の顔は解らないが、巨大な義腕の三本爪が隣に突き出しているので予想はつく。 「そう言えば、なんか昨日の夜はうるさかったな……」  メロディを伴って由羅がさくら亭を襲撃し、リサが餌食になったらしかったが……  因みに、当のリサは二日酔いで寝込んでいる。飲んだすぐあとに派手に運動したので、 アルコールの回りも早かったようだ。 「また派手にやったわね……」  呆れ果てた表情のパティが顔を出す。 「ま、こんなこともあろうかと、マリアに来てくれるように昨日頼んどいて良かったわ」 「…? マリア?」 「おっはよ〜☆」  噂をすればなんとやら。朝も早いというのに、やたら嬉しそうにマリアが走ってきた。 「うわ……今回はまた凄い…」  固い路面に、見事なまでにめり込んで埋没しているアーウィルを見、マリアは目をまるくした。 「そうそう。そんなわけだから、今回はいつもより強めにお願い」とごく当然のようにパティ。  ルシードは猛烈な悪寒を感じた。 「……おい。まさか……」  彼の言葉は無視された。 「うん☆ それじゃ……」 「おい。ちょっと待…」  遅い。 「え〜〜〜〜い☆」  強烈な閃光と衝撃が地面から生えている脚に叩き込まれた。無数の破片とともに、空中高くアーウィルが吹っ飛ばされる。  そして放物線の頂点で体勢を整え、見事な着地を決めた。 「うむ。毎度のことだが、我ながら見事な着地」 「毎度やってんのか、こんなこと」 「アーウィル。道路、ちゃんと元に戻しときなさいよ」 「解った」  呆れるべきか感心すべきか迷っているルシードをよそに、アーウィルは道路を修理し始め、 パティは厨房で料理の準備を始め、マリアは家に帰って行った。  平和とは言い難いが、エンフィールドではいつも通りの日常が始まった。 『天使ね……』 「あのお節介な羽つきか……」 『まあ、特にちょっかいは出すな、だって』 「天使など、あの時に全部喰ってしまえばよかったものを……」 『いくらあなたでも、全部は無理でしょう。とにかく、無関係を決め込む事ね』 「了解だ」 ●第189話 投稿者:美住 湖南  投稿日: 1月29日(月)22時02分09秒 「くそぉ・・・眠ぃ・・・・」  遺跡発掘現場までの道のり。「ついてこい」と言う言葉に拒否したが、結局行かされることとなり、「明日まで待ってくれ」と何とか承諾させた。  眠いのはアーウィルVS.リサの戦い(?)とヴァネッサの早朝健康体操の所為だ。夜遅くまでさくら亭にいて、朝から健康体操の音に悩まされ・・・耳がいいのはこういうとき困りものである。 「えー、ここから・・右か」  渡された地図通りいくと開けた場所に出る。遺跡はあった。その入り口に焚き火があり、アーシィ、ケインが倒れ・・・眠っている。 「おーい、起きろ」  反応なし。 「おーーーい」  同じく。 「おい。起きなかったらマリアけしかけるぞ」  がばっ 「やっと起きたか」  「マリアはよほど恐れられてるらしいな」と思ったがそれは口に出されずのどの奥で消え去った。 「あぁ・・来たかい」  寝ぼけなまこでディムルを見たアーシィ。 「う゛う゛う゛・・・」  ケインというと半分瞼が落ちかけている。 「どーだぁ?遺跡のほうは」 「うん?面白いものがあったよ」  「はい」紙を2枚渡される。片方は古代の文字と紋様。もう一つはそれを半分ほど解読したものだ。 「?“遥か昔、翼を持った神よりの御使いらが天より降臨した。彼らは神の御名を告げ、怖ろしきも美しき奇跡を行った。それは大地を揺るがし、水を動かし、炎を創り出した。”・・・ここまで読むと、「天使殿が神様の命令で空から降りてきてすっげーことやらかした」と解釈することもできるよな」 「無茶苦茶ではあるけど、出来ないこともないね」 「あと、“大地を揺るがし”が地震だろ?“水を動かし”が洪水だろ?炎を創り出したがわかんねぇんだよな。魔法か?」  焚き火を新たに熾して乾し肉を焙っていたケインは、「今んとこ俺達、それしか考えられねぇけどな。最後のほう、読んでみな」そう言った。習ってディムルは、 「“彼らは再び、この地に来る事を言うと、はるか無辺の天空へと帰っていった”「また来るね」ッてことか・・・。今来てるわけは・・・ないよな」  当然のことながらその言葉がほぼ的をえていようとは知る由もなかった。 ●第190話 投稿者:ashukus  投稿日: 1月29日(月)23時27分08秒 トーヤと向き合う記憶喪失の少女 「何か覚えている事はあるか?」 「わかりません〜」 「どんな事でも良いが」 「わからないのです〜」 「ふぅ・・・」 トーヤはため息を一つ。御手上げらしい 「これじゃあ書類も作りようがねぇな」 後ろからアルベルトが一言 「シュウの奴は何やってんだ。もう昼か」 シュウは書類に埋もれて夢の世界に旅立っていたのだが、そんな事を知る由も無い 「ったくよ、どこで油売ってやがる」 と、そんなアルベルトを見た少女は一言 「すごいです〜」 突然訳の分からないことを言い出す少女 「何がすごいんだ?」 トーヤが聞くと少女は・・・ 「すごい頭なのです〜」 アルベルトの頭だったらしい。確かにある意味すごい 「な、なんだと?」 握り拳でアルベルトが一歩前に出る。とそんな時、扉が開く 「駄目ですね〜身元はわかりませんね〜」 寝癖のひどいシュウだ。寝ていたらわからないのは当たり前だ 「ほぅ、そうか・・・わからねぇか」 アルベルトは不適な笑みを浮かべてシュウに歩み寄る 「全然ですね〜」 「ご苦労だったな」 突然、アルベルトは言葉とは裏腹に拳を振り上げる ゴンッ 「いたた〜・・・何するんですか?」 「バカヤロウ、てめぇ寝てただろう」 「(な、なんでばれたんだろう・・・)す、少しですよ」 「少しでそんな寝癖が付くかよ」 ここで初めてシュウは自分の寝癖に気が付いた。 「で、でも、ほら労働基準法無視もいい所ですよ」 ゴンッ 再びアルベルトの拳がシュウに振り下ろされた。鈍い音が響く 「いたた〜!!」 「乱暴なのです〜怖いのです〜」