●第151話 投稿者:ashukus  投稿日:12月22日(金)22時20分09秒 かくしてショート家に不法侵入する二人 「さすが、ショート財団のお屋敷ともなると豪華ですね」 ロイはそう言った瞬間、足元の何かを踏んだ事に気が付く カチッ 「おいロイ、何を踏んだ?」 「・・・スイッチ・・・ですね」 ヒュッ ヒュッ ヒュッ 風きり音と共に何かが二人に飛んでいく パシッ 何気無くその何かを片手で全て掴み取るアーウィル 「矢、か。やはり中にも罠があるようだな」 「・・・・・・アーウィルさん?」 「ん、ああ、スイッチには気を付けろよ」 「そうではなくて・・・矢を・・・」 「ああ、元傭兵稼業の性だな、戦場ではこんな事は日常茶飯事だからな」 そう言いながらアーウィルは矢をその場に捨てる 「しかしなんだな、庭も屋敷も罠だらけだとはな、マリアの趣味にしては度が過ぎるな」 「ショート氏はマリアさんを溺愛していますし、外敵の侵入を防ぐ為ではないでしょうか?」 まあ、その外敵に対しその罠は無力だったのだが・・・・・・ 「さて、ここだな」 「思いっきりそうですね」 二人は大きく『マリアの部屋』と書かれたドアの前に来た コンコン 「はぁ〜い☆」 ガチャ 「ちょっとちょっと、こんな時間になによ」 「いや、ディムルが魔法を教えてやるとかなんとか言っててな」 「ほんとに?」 「本当ですよ。陽のあたる丘公園で待ってるそうですよ」 「それじゃあ、マリア行って来よっ〜と☆」 そう言うとマリアは罠があるはずの廊下を素早く走っていった。 「さすがに魔法が絡むと素早いですね。それにしてもおかしいですね。罠が発動しませんよ?」 「おそらく、魔法か何かで相手を認識してるんだろうな」 「便利ですね・・・とにかくこれで良いですね」 陽のあたる丘公園 「ん〜ケインもなかなか頑張るね」 「どれくらい走ってんだアイツ、よく体力が持つな」 「ティセ応援しますぅケインさん、がんばれですぅ〜」 「でも、オレあんなのに追いかけられたら永遠に走れそうだね」 「同感だな、とにかくマリアが来ない事には進展が無さそうだぞ」 他人事のように言い放つ面々。実際他人事だが・・・ その時、エンフィールドの未来はケインとマリアの二人に掛かっていた・・・のだろうか? ●第152話 投稿者:YS  投稿日:12月23日(土)02時00分15秒 「・・しかし、本当にすごいですね・・」  ロイはまだマリアの屋敷にいた。  そして、片っ端からトラップを起動させていた。 「ロイ頼む。それはやめてくれないか?」  そういったアーウィルの周囲には発動後、無力化されたトラップが連なっていた。 「・・折角ですから、全部罠を見てみたいじゃないですか」 「どうも、それが理解できないんだが?」 「・・そうですか?」  心底不思議そうにロイは返す。  どんな物でも他の物に流用できるというのがロイの持論だった。  よって、すべては実験、知識欲さえ満たせれば罠だろうが平気で踏む。巻き込まれる方としては迷惑でしかないが・・。 「・・理解できないといえば、どうしてゴーレムを移動させなかったんでしょうか?結界が相互干渉しているのならどちらかを解除すればいいだけだと思うんですが?」 「だが、それを行うことは”継承の儀”の妨げになる」  ロイの問にあっさり答えるアーウィル。気がついていなかったわけではなさそうだ。 「・・守るものがなければ意味がないということですか?」 「そういうことだ」 「・・中の人達もそうなんでしょうか?」 「わからん、とはいえ時間もたったことだ。そろそろ気がついただろうな」 「・・ところで話は変わるんですが、今月の終わりのエンフィールド大武闘会にアーウィルさんは出るんですか?」  まだ、トラップを作動させながらいう。 「いまのところ予定はない」  同じくトラップを無力化させながらいう。 「・・教会代表で出る気はありませんか?」 「考えておこう。だが、ポチがいれば十分じゃないのか?」 「・・念のためですよ、うちの孤児院経営が下手ですからね・・」  子供に心配されるようでは本当に危ないのかも知れない。 「そろそろ満足したか?」  ロイがトラップを作動させなくなったので聞く。 「・・同型のトラップしか残ってないみたいですね。では、戻りましょうか・・」  ロイは何をしに来たのだろうか・・。  時間的に見ればマリアはもうすぐ到着するころだろう。急げば十分間に合う。  アーウィルはロイを乗せ、手近な窓から闇の中に消えた。 ●第153話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:12月23日(土)14時45分19秒  陽のあたる丘公園での木とケインの鬼ごっこは、多少違った展開を見せてきた。  根で追いかけてきていた木が一箇所に根を降ろし、かわりに倍以上の数の触手を発生、攻撃に転じたのだ。  触手の強度はそこらの枝やらと変わらないが、数が多い上にいくらでも増殖する。ケインも手詰まりになってきた。 「だぁぁぁ!きりがねぇ!―ニードル・スクリーム!」  エネルギー体が触手を切り払うが、それをもろともせずに触手が殺到する。その群れを避けながら、ケインはヴァルカスを控えめに言って“殺してやる”目で睨みつける。と、 「ディムルー魔法教えてくれるってほんと〜?って・・・なにこれ?」  なぜか結界のなかにまで突入してきたのは、マリアだった。公園の大半を埋め尽くす触手の群れを気味悪そうに眺めている。一方、ディムルはアーシィに向けて手を振った。  アーシィはそれだけでなんとなく察したようだ。ヴァルカスに耳打ちする。 「ケインよ。それ以上逃げつづけるようなら、その少女を攻撃対象に加えるぞ」  ヴァルカスのあっさりとした宣告に思いっきりたじろぐケイン。 「待ったらんかい?!あいつ思いっきり無関係やんけ!」 「いや、こちらの青年が『そうすればケインも向かってくる』とアドバイスをしてくれてな」  ヴァルカスが指差したのは、いわずもがなアーシィ。 「おどれは〜〜〜ぬぁに事態を変な方向に持ってきやがる?!」 「ん〜このままじゃ埒があかないし。ところで口調が変だよ?」    一方、ディムルの方にいるマリアもこの事態はごめんだった。ディムルに食って掛かる。 「ちょっと〜!なんでマリアがあ〜んなのに襲われなきゃいけないの?ディムルが魔法教えてくれるっていうからこんな夜中に来たのに〜!」 「あ〜えっとだな〜まあ色々あってこうなったんだが・・・ちょっと待て、誰だ、俺がお前に魔法教えるなんていいやがったのは?」 「アーウィル」  マリアの答えにうなだれるディムル。心の中でアーウィルを呪いながら。   「ところでもしかして・・・出られないの?」 「出られるならこんな場所にいねえだろ?」  今度はマリアがうなだれる番だった。  ケインは足を止めて触手の動きを観察した。実際、何本かの触手がマリア方面に殺到しそうだったが、ケインの魔法で撃破される。 「早くしろケイン。私の忍耐力を過大評価しないほうがいいぞ」  ヴァルカスのぼやき。アーシィはといえば離れた位置に陣取った。 「おお、やったるわい、てってーてきに!ヴァニシング・ノヴァ!」  放たれた魔法が手近にあった触手全てをなぎ払う。そして、ケインは詠唱を始めた。 「我は汝と共に歩む者。汝は我の傍らに佇む者。汝、我が呼び声に応え、我が願いを叶えたまえ」  精霊召喚。確かにこの状態をひっくり返すにはそれしかなかろう。だが、触手は術者であるヴァルカスが魔力供給を止めなければいくらでも再生する。 (詰めが甘いな、ケイン)  ヴァルカスは胸中で嘲笑した。次の呪文を聞くまでは。 「汝が名『風の獅子』。汝、我に宿り、我が牙、我が爪、我が身となりて、我に全てを薙ぐ力を与えよ」 「な・・・にぃぃ!『精霊・・・憑依』だとぉ?!」  ヴァルカスの叫びがケインに聞こえたかどうか。  『風の獅子』を憑依させたケインは疾風を纏い、次の瞬間にはヴァルカスをアーシィと一緒くたに蹴り飛ばしていた。  ケインの動きの途中にあった触手全ては斬られ、砕かれ、塵に変えられていた。 ●第154話 投稿者:タムタム  投稿日:12月24日(日)07時39分12秒  風が吹いた。ヴァルカスを蹴り飛ばしたケインの脚がアーシィをも弾き飛ばした。それらの事を認識したのは地面に倒れてからだった。 「これで文句は無いだろ?」  ヴァルカスをアーシィ諸共蹴り飛ばして落ち着いたのか、『精霊憑依』を解除しながら普通の言葉でケインが言う。 「ギリギリ合格と言った所だな」  何時の間に復活したのかケインの背後に佇みながら声を掛ける。流石はロード、普通じゃない。  一方普通の人間であるアーシィは仰向けに倒れたままだ。意識は有るが身体が重い。よく倒される奴である。…もう少し打たれ強くなった方が良いのかもしれない。 「・・・何故、マリアを巻き込んだ?」  ケインは一つ深呼吸をし、ヴァルカスとアーシィへ恐ろしくドスの聞いた声で訪ねる。 「お前が余りに不甲斐無いからだ」 「ん〜、別に私の計画ではないのだが」  が、二人は平然とした表情でそれに答える。しかし、その答えではケインは納得しないだろう。アーシィはさらに言葉を続ける。 「…人は大切な人の為なら強くなれる。護るべき人がいれば戦える。その為なら命だって賭けられる。最も大切なその気持ちに気付いて欲しかったから…」 「アーシィ…」  ケインは目頭が熱くなるのを感じた。なかなか良い事を言っているのかもしれないが、仰向けになったままだ。台詞が台詞なだけに笑いを誘うが、ここで笑ってはいけない。思わず目を逸らしてしまった。 (だが、それは<死ぬ覚悟>ではなく<生き延びる覚悟>でなくてはならない。護り抜きたいなら死んではいけない)  アーシィは言葉にはしなかった。この覚悟は人に言われるのではなく、自ら見つけなくては成らない物だから。 「終わったんだな」 「ああ、何故かアーシィも蹴り飛ばされていたけどな」  一部始終を見ていたルシードとディムルは少し遠い目をしている。長い、長い鬼ごっこを見て少し疲れたのかもしれない。早く帰って眠りたい気分だった。 「俺、もう帰る」  ビセットが結界から出ようとしたが出れなかった。未だ結界は解除されてない。 「あいつは無事なのか?」  ルシードはそう呟いてからティセを背負い、ディムル、ビセットと共にケインの元へと移動した。  満月の下、向かい合うケインとヴァルカス。そこに緊張感は無い。 「ケイン・ツァルクハウゼン・クライナム。我が一族の掟に従い、汝を当主として認める事をここに誓う。これにて“継承の義”を終了する」  ヴァルカスが静かに告げた。これで“継承の義”はめでたく終了し、マリア辺りが『大木との鬼ごっこ事件』として語り継ぐかもしれない。  …語り継がない可能性の方がちょっぴり高い… ●第155話 投稿者:ashukus  投稿日:12月25日(月)12時06分51秒 『最悪のエンフィールド大武闘会』 陽のあたる丘公園で暴れまわり、『大木との鬼ごっこ事件』としてマリアがおそらく語り継ぐであろう“継承の義”から数日、 本日はエンフィールド大武闘会だ。エンフィールド内外から強者達が集まる、年に一度の祭典。ちなみにここはジョートショップ。 ジョートショップからはアーシィが出場するとか、今はほとんど開店休業状態のジョートショップ。賞金で経営の建て直しを図りたい所だろう 「アーシィクン、無理しないでね」 「分かってますよ、アリサさん」 「頑張るっス、アーシィさん」 と、その時扉が開き、リサが入ってきた カランカラン 「あっ、リサさんっス」 「あらリサさん、おはようございます」 「おはようございますアリサさん。ところでアーシィ、あんたエンフィールド大武闘会に出場するのかい?」 「そのつもりだが?」 「それはいいが、気が付いているかい?」 「ん〜大体ね」 何か難しい顔をしている二人。そんな二人にテディ 「何に気が付いてるっスか?」 「まあ外を見てみな」 リサに言われてテディは外を見る。すると 「何か変っスか?」 相変わらず気が付かないテディ。そんなテディにアーシィとリサ 「ん〜道に自警団員や公安局員がいないだろ?」 「大武闘会もリカルドのおっさん以下自警団員、公安局員は全員、棄権しているしね」 「何かあったのでしょうか?」 その日の早朝から自警団員や公安局員の姿は無い。いるのは祈りと灯火の門に見張りが数人くらいだ よって大武闘会はリカルドなど優勝候補の欠場という事になった。 「でも、トリーシャさんなら何か知ってるんじゃないっスか?」 「確かに、おっさんから何か聞いてるかもね」 その頃、グラシオコロシアム 「ほう、大武闘会か、面白そうじゃねぇか」 「魔法を使っても良いなんて、シープクレストじゃ考えられないイベントね・・・」 「ふむ、良いではないか違う文化に触れるというのも」 「でも、こういうのは良くないと思います・・・」 「野蛮ね・・・」 「そうだよね、野蛮〜」 「いいじゃん、オレも出たいな〜」 「ビセットさん頑張れですぅ!!」 出場する勢いのビセット。それに少し頭を抑えるのメルフィ 「あ?俺達にはやることがあるだろ?」 さすがにリーダーのルシード。話をまとめる(?) 「おら、わかったらさっさと行くぞ。ゼファー、メルフィ、何かあったら頼んだぜ」 「わかったわ」 「了解した」 ゼファー、メルフィ、ティセを除くブルーフェザーの面々は町の外へと向かっていった ●第156話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:12月25日(月)17時04分31秒 「あれ? あそこに居るのはもしかしてアーウィルじゃないか?」 「もしかしても何も……あんなけったいな代物をぶら下げてるのは、この辺じゃあいつしか居ねえだろ。 ……まあ、丁度いい。ゼファーの奴、これを予想してたのか?」  ローズレイク湖畔にやって来たルシード達は、日当たりのいい草むらで昼寝をしているアーウィルを発見した。 「ぐっすり眠ってますね……」 「すーーーーー」 「そう言えば、出ないのかな? 大武闘会」 「ここで呑気に寝てるってことは、つまり出ないんだろ? まあ、いい。おい! 起きろ!」  と言いながら、ルシードはどこから取り出したのか馬鹿でかいフライパンを構えた。 「ちょ、ちょっと、ルシード! 何する気なの!?」 「知れたこと。こいつをこれでぶん殴って起こす。リサとパティによると、自発的にでない限り、 こうしないと起きないそうだ」 「いいんじゃない? リサに聞いたんだけど、軍艦の艦砲射撃をまともに喰らっても平気だったって話しだし」 「バ、バーシアさん……いくらなんでもそんな無茶苦茶な……」  などとやりあっている他のメンバーを無視し、ルシードは渾身の力を込めてフライパンを振り下ろした。  非常に良い音が鳴った。 「……痛いじゃないか。非常識だな、まったく……」 「……この一撃を喰らって平気な顔をしてるおまえもな」 「……ルシード、思いっきりシャレにならない攻撃を放っておいてその言い草はないんじゃない?」 「そ、そうですよ。だ、大丈夫ですか、アーウィルさん?」 「まあ、殺したって死なないからね、自分は。…で、何か用か、ブルーフェザー?」  傷はおろか、コブさえできていない頭をさすってアーウィル。 「ああ、少しばかり聞きたいことがあってな。……この男を知ってるか?」  そう言って、ルシードは一枚の写真を差し出した。 「こいつはある魔法犯罪組織の構成員でな。今年の四月に死亡が確認されてる。……とても人間業とは思えないやり方でな」  ルシードは、一旦気遣うようにフローネとルーティを見、続けた。 「直接の死因は頚骨の粉砕骨折、頚動脈、気管の圧搾破壊……。要するにとんでもねえ馬鹿力で、 『首を握り潰された』んだよ。それも人間の左手でな」 「何が言いたい?」  面白そうに目を細め、アーウィルはその先を促した。 「この男はここエンフィールドに向かったことが確認されてる。だが、死体が発見されたのは数百キロも離れたある都市国家だ。 恐らく魔法で転送したんだろうな。……バラバラにして」 「それで、その男の属していた組織はどんなものなんだ?」  平然と質問するアーウィル。  ルシードは一瞬、しらばっくれるな、と言いそうになったが、辛うじてこらえた。 「古代の魔法文明の遺産なんかを違法に収集して、兵器やら何やらを大量に密造してるという狂った奴らだ。 当然、俺たちの管轄になる」 「ふむ。なら、エンフィールドに来るのは自然なことだな。ここはそういった遺跡の宝庫だ」 「ああ。だが、そいつの目的は遺跡じゃなかったらしい。俺たちが手に入れた資料は、 大部分が黒く塗り潰されていて読めなかったが、ある単語だけは読み取れた」 「何だ?」 「『コッペリア』。……この言葉が意味するものは一つしかない。長年人に使用された器物に生命が宿る現象 ……コッペリア効果だ」 「あんまり知られてないけど、コッペリア効果で生命を持った人形なんかは、物凄く強力な魔力をその身に内包してる。 もし、コッペリア効果の理論が解明されて、人工的に発生させることができるようになったら……」 「極めて汎用性の高い魔法兵器の生産が可能になる」  バーシアのセリフを途中で横取りし、アーウィルは説明した。 「……やっぱり、てめえか……。あいつらに雇われてこの街に潜入した傭兵ってのは……」  さっ、とブルーフェザーの面々に緊張が走る。 「安心しろ。あいつらは利用させてもらっただけだ。それ以外に何の繋がりもない」 「どうだかな……。それに、もしその言葉が本当だとしても、おまえは人を一人殺してる」 「正当防衛さ、あれは。ゼファーから聞いてないか? 自分はいくらでも自分の行動を正当化できるんだ。 全て、合法だよ」 ●第157話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:12月26日(火)17時11分07秒  所変わってここはセントウィンザー教会。  ケインはいつも使っている教会の一室で目を覚ました。時刻にして九時ぐらいか。彼はどちらかというと朝が苦手だった。  別に、ヴァンパイアやハーフだから、というわけではない。現に彼の祖母(当然純血のヴァンパイア)はいつも朝日が昇る前から起きていた。ま、それぞれということだ。 「ケインさ〜ん、そろそろ起きてくださ〜い」  教会の孤児院で働いているセリーヌが、扉の向こうから声を掛けてくる。 「ああ、かなり遅れるから朝飯先に食ってていいぞ」  扉の方を、冷や汗を流しながらケインは応える。 「はぁ〜?開けますよ〜?」 「あ、ちょっと待て!今開けるのはマズイ!」  ケインの制止にも関わらず、扉は開かれる。当然、部屋一杯に詰め込まれたソレも、バランスを崩してなだれ落ちた。  ズドガドガドガ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  「なんなのよ・・・これ・・・」  すぐに階下からやって来たローラとロイは呆気に取られていた。当然だろう。ケインの部屋はおろか、廊下にまで一見して解らないものがあふれていたのだから。 「今朝起きたら部屋一杯に詰め込まれてた。多分親父が空間転移で送りつけてきたガラクタだろうけどな・・・」 「・・・これ、金の蝋燭立てですね。こっちは銀細工のネックレス・・・飾り剣までありますね。なんでこれがガラクタなんですか?」  他にも宝玉、絨毯、髪飾りその他諸々、宝物といえるものが大半を占めていた。 「親父は魔法で石から金銀宝石を作ってたし、ヴァンパイアは手先が器用な上に時間が嫌というほどあるからな。こういった方面に手を出すヤツが多いんだ。  それに、ヴァンパイアハンターとかいうヤツ等が持ち込んだりしたものもあるからな」 「でもでも、これだけの物どこにしまうの?」  ローラが質問する。確かに、これだけの物をしまうスペースは見つけるのも難しい。 「こうする」  ケインが軽く手を振ると、空間が歪む。 「異空間にルートを開いて倉庫にする。もう俺もかなり強大な魔力が行使できるようになったからこれ位は出来る。これを整理してから下に行くさ」 「収納スペースが無限に近いほどあるってのも困りものだな。『捨てる』ってことが出来なくなる。あ、この剣魔法剣だ。使わせてもらお」  両刃の長剣を傍らに置きながら、ケインは必要っぽい物、魔力がある物、魔法金属で出来ている物、高価そうな物を異空間に放り込む。これで大半しまい終わった。    ガラクタを抱えて階下に降りるとローラ達がそれぞれに遊んでいた。 「あ、ケインさん。ケインさんは大武闘会には出るんですか?」  ロイが多少は興味があるのか聞いてくる。そばには最近見かけなかったポチがいる。 「いや、出ないよ」 「なんでです?」 「たまには骨休めしたくってな・・・」  ケインのセリフにロイや、傍で話し込んでいたセリーヌやローラもこちらを向く。 「いや、俺がこの町にきてそろそろ3ヶ月になるかな?その間いろいろな事があった。  来た早々アーウィルに雇われて一騒動巻き込まれた。それが終わったら雷鳴山で魔法兵器や悪霊が取り付いた人形とド突き合う羽目になった。  それが終わったら終わったでランディとアーシィの喧嘩に首突っ込んじまったし、その次はローズレイクで化け物と大勝負しでかしたし、挙句にゃ親父と公園で親子喧嘩ときた。  それだけの事があって俺には大した儲けもないし、ロイへの借金もまだ未返済だ・・・このガラクタ売ればそれなりの収入になるけどな。  だから、今回は傍観者させてもらう」 「そうですか。武闘会で優勝すれば賞金が出ますけど?」 「誰がなんと言おうと参加はしない。観戦させてもらうさ。じゃあ俺は朝飯食ったらこれ売りに行くからな」  それだけ言うと、ケインは冷めた朝食に手を伸ばした。 ●第158話 投稿者:美住 湖南  投稿日:12月26日(火)21時33分45秒  風見鶏館。 「ディームールー!いないのぉー」 部屋のドアを容赦なく叩き続けている。その人物はマリア。 「いったいなんだ?うるせぇぞ」  服が乱れ、髪の毛ぐしゃぐしゃのディムルが出てきた。案外寝相が悪いのかもしれない。などとマリアが思っている。いやいや、そんなことを思っている暇など無い。 「魔法教えてくれるんじゃないの?」 「・・・は?」 「だからぁ、マ・ホ・ウ」 「・・・さよなら!」 「ぶ〜〜☆出てこないと。炎よ、ここにあるドアを焼き、部屋を開放せよ」  ドアが焼けるか!爆発するか!・・いや、起こらなかった。 「水よ、炎と交わりて消えん」  ディムルがドアを開け、無力化したのだ。 「す、すごーい!」  そして、ディムルはマリアと共に。  雷鳴山。 「ディムル〜。これどうやってやるの?」 「あぁ、それはここをこうして・・・こうやれば、ほれ」  ぽんぽこどんどこ花が出る。すみれ、アイリス、アザミ、蓮華、エトセトラエトセトラ。  マリアがどうしても離れないのでこうして魔法を教えている。教えているのは魔法大辞典P5〜P153まで。膨大な量とお思いかもしれないが、その殆どが解説であったり、魔法陣の絵だったりするのでマリアにしてみれば少ないのだ。 「え〜、ここをこうして、えい☆」  っどっごおぉん!!! 「どうやればこんな大爆発が起こんだ?花を出す魔法だろーが」 「へへへ☆」  照れるなマリア。褒めてないぞ。 「そう言えばディムルは大武闘会出るの?」 「いんや。出ようにも出れねえ」  ディムルは出たい。出たくてうずうずしている。なぜなら!事件続きでさくら亭からの給料が少なすぎるのだ。このままでは金欠で飢え死にしてしまう。クラウンズサーカスも、洋品店ローレライも雇ってくれない。人手が足りているそうだ。飢え死んでいないのはジョートショップで食べさせてもらっているのとさくら亭で働いているからだろう。これもアリサとパティのお陰だ。パティに言ったら「なーにバカなこと言ってんのよ」と一蹴されるだろうが。  しかし、マリアは全然気がつかない。 「へ?なんで」 「お前が解放してくれねーんだろうが!!!!この魔法バカ爆裂お嬢が!」  マリアの耳元で言っていれば鼓膜が破れていたかもしれない。 「あー!バカって言ったぁ!!バカっていったほうがバカなんだよ!」  ケインがいたらディムルはマリアのいないところでボコボコにされるのだろうか? 「あぁ、おれはバカさ。それ以上にお前のほうがバカだ」  ・・・。肯定されるとどうにも言えないものだ。こういうときは否定したほうが行がうまるというのに。 「・・・」 「とっとと終わらせるぞ。賭けで儲けたいんだから」 「次は・・122ページ。水芸の魔法」 「・・・水芸って、扇子からぴゅーっていう、あの?」 「うん☆」 「(おいおい、んなバカげたモンまで教えなきゃいけねぇのかよ)」 「どうしたの?」 「いや・・なんでもねぇ」  ディムルが開放されるのはもう少し後のようだ。 ●第159話 投稿者:タムタム  投稿日: 1月 5日(金)00時07分52秒  グラシオコロシアムは喧騒に包まれていた。いよいよ始まったエンフィールド大武闘会。  当初はリカルド以下、自警団員の出場者がいなくどうなる事かと思われていた様だが、逆に誰が勝ち上がるか全く予想がつかず、大いに盛り上がっている様だ。  選手控え室。そこにはアーシィの他に応援に来たトリーシャとリサ。そして、トーヤにくっついて来たディアーナの姿があった。 「ん〜、凄い熱気だね」 「うん。みんなこの日を楽しみにして来たんだもん。当然だよ」 「所でトリーシャ。おっさん達が全員棄権するなんて何があったんだい?」  突然話を変え、リサが尋ねた。ふと今朝のことを思い出したのだろう。あまりに突然過ぎて一瞬何を言っているのか解からなかったほどだ。 「ボクにもわからないんだ。聞く暇も無かったからね」  トリーシャにも解からなかったのではお手上げだ。情報が入るまでこの事は忘れていてもいいかもしれない。  その時、会場の方から歓声が聞こえてきた。第一試合が終わった様だ。因みにアーシィは第三試合。もう少し時間がある。 「あ、ボクもうそろそろ向こうに行くね。応援してるから頑張ってよ」 「しっかりやりなよ。あんたに賭けているんだからね」  そう言ってトリーシャとリサは観客席の方へ行ってしまった。なんだか静かになり、少し寂しい気がしないでもない。そして、今まで一言もしゃべらなかったディアーナの方を向くと救急箱の整理をしていた。  その視線に気がついたのか、顔を上げ…、ワァァ!また歓声が聞こえてきた。第二試合も終わってしまった様だ。出番は次だ。 「アーシィさん。安心して怪我して来て下さい。ちゃんと治してあげます」  試合会場へ向かおうとするアーシィへ気が滅入るような声援?を送ってくる。どうやら安心して怪我は出来ない様だ。 「アーシィさんの相手って、あれ?」 「そうじゃないかな」  観客席にいるトリーシャとリサが会話している。アーシィとは反対の方から出て来たのは岩で出来たゴーレムだ。胸のあたりに大きく(ハ)と一文字だけ書かれている事から、もしかしたらハメットの物かもしれない。 『第三試合はアーシィ選手対ゴーレム選手(ハ)。見た目からして頼りないジョートショップの青年はどのような試合を見せてくれるのでしょうか!?』  なんだかかなり失礼な事を言いつつも、審判が試合の開始を告げる。  そして試合が始まった。  銃に手を掛けようともせず、様子を見ているアーシィへゴーレムが殴り掛かってくる。が、その速度は遅く、余裕でかわす事ができる。  アーシィは意識を集中して、魔力と共に感覚を広げてゆく。魔力がゴーレムの体を探り始め、すぐに何かが引っかかった。  それと同時に、大きく振りかぶられたゴーレムの左腕がアーシィへ打ち据えられようとした。が、そこに標的はいなく、むなしく地面のみを叩くに止まった。 「弱点を晒してはいけないな」  かわすと言うよりはその場からいなくなると言った感じで、いつの間にかゴーレムの右手側に出現していたアーシィは、先ほど見つけた魔法動力のある場所へ目にも止まらぬ早撃ちを叩き込む。  魔法弾は狙い違わずゴーレムの左胸に直撃し、その巨体が前のめりに倒れ込む。手加減されていたとは言え強力な衝撃を受け、一時的にシステムが停止したようだ。  ワァァァ!!観客席から歓声が上がる。その歓声に負けじと、審判もマイク片手に声を張り上げた。 『ゴーレム選手立てません。アーシィ選手の勝利です!』 ●第160話 投稿者:ashukus  投稿日: 1月 5日(金)16時47分40秒 ワアァァァァァァァ!! 観客の歓声と共にアーシィは控え室へと戻っていった。そこにはすでにディアーナ、トーヤ、トリーシャ、リサの姿が 「へぇ、やるじゃないか」 「アーシィさん、圧勝だったね」 「ん〜楽な相手だったからね」 という訳でアーシィは無傷である。そんな彼にディアーナは・・・ 「怪我、してないんですか?・・・」 本当に残念そうな顔をしている。思わず黙り込むアーシィ 「・・・・・・・・」 「よし、どこにも異常は見当たらない」 「次は怪我をしてきてくださいね。あたしが治してあげますよ」 ここで捕捉、彼女は『医者の卵』である。 「ん〜相手が・・・強かったらね」 そしてアーシィは思った。次に10のダメージを受け、それをディアーナが治療すればそれは100に化けるだろう・・・と と、そんな時に審判が控え室に駆け込んで来る。 「アーシィ選手、いらっしゃいますか?」 「私だ」 「それでは、次の試合なので準備をお願いします」 どうやら、進行が思いの他速いらしい。すぐにアーシィの試合らしい 「じゃあ、私たちは観客席に行くよ。しっかりやりなよ」 「頑張ってね〜」 トリーシャとリサは観客席へと向かった。とそんな訳でアーシィは試合場へと向う 「がんばってくださ〜い」 ディアーナの声援、何か別の意図があるような・・・ ワアァァァァァァァ!! ここは観客席。トリーシャとリサは何か会話をしているようだが他の声援に掻き消されている。その二人の後ろに 「チッ、くだらねぇ」 黒ずくめの男、ランディだ。観客に混じって(明かに浮いているが)試合を観戦していたのか? と、アーシィが試合場に姿を現す 「アイツは、フォーヴィルか・・・精々頑張るんだな」 そう言うとランディは振り返り・・・ 「給料分は働かねぇとな・・・チッ、面倒くせぇぜ」 ランディは人込みの中に消えていった