●第111話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:11月29日(水)19時04分23秒 「ちっ。仕方ない・・・」  槍が抜けずに難儀しているアルベルトを見てケインもまた魔獣へと飛び掛り『ファング』を突き立てる。ただし、突き立てる場所は― 「グギョウオオオォォォ!!!」  眼球に刃を突き立てられ、魔獣が絶叫する。その咆哮のなかでケインは呟いた。 「お前がなんなのかは知らない。何故現われたのかも、どれほど生きたのかも。  だが、少なくとも神ではなかろう。・・・安らかに、眠れぇぇぇ!」  『ファング』を鍔元まで差し込む。魔獣が暴れるが、振り子を突き立てて耐える。 「無に還れ!ヴァニシング―」 「おわわわわ!」  アルベルトが槍を手放して飛び退る。それを確かめずに魔法を、彼の使用可能な中で最強威力の魔法を解き放つ! 「―ノヴァ・バーストモード!!」  閃光、爆裂、衝撃、熱波、そういったものが魔獣を内側から消し飛ばした。 「結局・・・なんだったんだろうな?」  ディムルが誰とも無く呟く。すでに夕日が湖を赤く染めている。まるで、怪物を悼むように。 「さあねえ・・・ただ、自然にこの世界に現われた物じゃあないね」  アーシィが後をつなげる。地面に適当に腰を下ろして水面を見ている。 「なら・・・アイツも言ってみれば被害者の一人か・・・」  ケインはファングを後ろ越しの鞘に戻しながら言う。刃に付いた血や体液を洗い落としていた。 「あら?あなた、鞘の位置をまた変えたの?」 「ああ、やっぱりここがしっくり落ち着く」  イブの問いにどうでもよさそうに答えるケイン。 「それにしても、ここ最近大事件続きだね。アーウィルがきたあたりから」 「ああ。まるで、アーウィルの到来と同時に何かが動き出したようにね」  アーシィとリサの会話。 「まだまだ、終わりそうにないね・・・」 「ああ〜俺の槍ぃ〜!」  湖畔を駆け回りながら吹き飛んだ槍を探すアルベルト。アーシィはもう槍は消し飛んだとおもっているが。 「アルベルトー!俺は弁償せんぞー」  ケインの宣告にもめげず、アルベルトは夜まで探したらしい。  その部屋はいつも通り薄暗い。そのなかに、三人の人影。 「例の魔獣、掃討が終わったようですね」 「ふん・・・まあ、あいつらの力量が少しだけわかったってとこか?」  彼らの手元には書類がある。そこにはアーウィル、アーシィ、ケイン、ディムルらの写真と資料だった。 「ほっほっほ・・・今回の事はイレギュラー的な予想外事態でしたが、計画に支障はありませんな」  計画。彼らは何を企んでいるのだろうか? 「そろそろ、本格的に動くときが近づいてきましたね・・・」  彼らは何者なのか?そしてなにをしようとしているのか?それが明らかになる日は、ゆっくりと、だが、確実に近づいてきている。  そして、ひと気が消え、部屋は闇に包まれる。揺らぐ事の無い暗闇に。 ●第112話 投稿者:YS  投稿日:11月29日(水)23時57分28秒  その夜、ローズレイクに二つの影が現れた。 「・・確かこの辺りのはず・・」  ロイとポチである。無意味に長い呪文の後、二人は水の中に入っていった。水の中に入って1時間、出てきたポチの手にはいくつかの部品があった。 「・・これで少しはましになるでしょうね。局地破壊型の物ですが、少しは融通がきくようになるでしょう・・」  ロイがここにきたのは例の改造を受けた異世界の魔物の部品を集めるためだ。  アーウィルの知識が正しいのならばポチと同じ時代に作られた可能性もある。つまり、ポチに流用することもできると考えたためだ。今のままではポチは力を抑えることはできない、それを改善するためだ。  見つけた物の中にはアルベルトの物と思われる槍の先もあった。柄の部分は砕けたようだが、修理すれば使えなくもないだろう。  ほかにも襲われた積み荷の一部もあったが、適当に投げておけば明日の朝にでも自警団の隊員に見つけてもらえるだろう。少しとはいえ物資がないよりはこの街も豊かになる。  アーウィルは事件の後に探したが、街の中にはいなかった。色々と聞きたかったのだが、いないのでは仕方がない。いつものようにまたひょっこりと現れるだろう。  ケインはアルベルトに槍の弁償を迫られて大変そうだったが、一応は見つかったのでたいした額にはならないだろう。それでも彼にとってはきついだろうが・・  ディムルはいつものようにアルベルトのヤケ酒につき合わされたらしい。やはりいつものように大変そうだった。  アーシィは魔法の使いすぎで疲れて休んだらしく、特に何も聞いていない。  シュウは事件後にのんびりとした感じで現れた。何をしていたかはあまり覚えていない様子だったが、アルベルトのヤケ酒にはつき合わされた。 「・・さて、明日は夕方まで寝ることにしましょうかね・・」  そういいながらロイは今夜徹夜することに決めたのだった。 「・・平和も嫌いですけど、こう事件が続くのも嫌なものですね・・」  見上げたエンフィールドの空は暗闇に染まっていた。 ●第113話 投稿者:タムタム  投稿日:11月30日(木)20時02分00秒                    『不思議な休日』  ローズレイクに現れた魔獣の一件はついこの前。今日は週に一度の休日だ。  そして、皆が何をしているかと言うと…。 「アルベルトさん。具合はどうっスか?」 「早く良くなって下さいね」 「ううっ、ありがとうございます」  アリサの優しい言葉が胸に染みる。風邪を引いて寝込んでいる彼の所へわざわざ見舞いに来て、優しい言葉まで掛けてくれたのだ。これでじ〜んと来なければ、其処にいるアルベルトは偽者だろう。  其処でようやく一人足りない事に気が付いた。クレア…ではない。彼女は今アルベルトの食事を作っているところだ。 「アーシィさんはイブさんの所に行ってるっス」  表情でも読み取ったのか、テディが突然そう言って来た。何でも、『異世界の魔獣』の事を調べるのに手持ちの資料では足りず、旧王立図書館に仕舞い込まれている文献を引っ張り出しているらしい。 「でも、どうして風邪なんて引いたんですか?」  何気無い質問だが、彼にとっては死活問題だ。まさか、『足を滑らせて、ローズレイクに落ちました』などと正直に言うのは彼のプライドが許さない、以前に、間抜けな事甚だしい。  彼はこのピンチを切り抜ける事が出きるのか!?と、そんな事は置いといて、  主の不在な屋敷の地下、そこにケインは居た。金に困りとうとう空き巣に走った訳ではない、そこにはクリスやシェリル、マリアにトリーシャの姿まで有るのだから。 「…が…で、…と言う事です」 「なるほど…」  クリスの話しを聞き、頷くケイン。クリスの手に有るのは『錬金魔法基礎理論』と書かれた一冊の本だ。この前の約束通り、ケインは錬金魔法の授業を受けている。残りの三人は閲覧の許可された魔道書をそれぞれ読んでいる。最も、基本的な物ばかりなので特に問題は起こらない…と思う。  アーシィが許可を出したので、授業が終われば魔法の実験室で実地訓練が待っている。しかも、個人データを入力する事により、魔方陣の中で実戦さながらの訓練が出来るので魔法の使うタイミングなどを掴む事が可能だ。もちろん、モンスターも有りである。  目の前に広がるいつも通りの街並み、彼はそこをぶらぶらと歩いていた。せっかくの休日だと言うのに、相手が居なくてはいくらアレフでもナンパだって出来やしない。 「おっ。前方に美女発見。あなたのアレフが今行きま〜す」  かなり浮かれた声を出し走り始める。エンフィールドでは見掛けた事が無い女性だと、ナンパ師としての本能が訴えていた。  後ろでまとめた長く青い髪、白を基準としたあまり見た事の無い服装。全てにおいて新鮮だ。 「ちょっとそこのお姉さ〜ん」  アレフの声に、その女性は振り向いた。 ●第114話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:11月30日(木)23時01分23秒 「暇ね」 「暇だね」 「自分はいつでも暇だが……」 「あんたはロクに仕事にも就かずにぶらぶらしてるからだろ」  例に漏れず、休日のさくら亭は暇だった。  普段と少し違うところを挙げるなら、シーラが来ていることぐらいだろうか。人見知りの激しい彼女は、 平日の人の多いときにはまずやって来ない。パティと仲が良くなければ、休日にも来ないかもしれない。  現在、父と母がコンサートを開くために遠出しているので、少し知り合いと話をしたくなったらしい。 「それにしても、この前の騒ぎは凄かったわねー。異世界の魔獣だったっけ、リサ?」 「私はあんまり詳しくは知らないけど、そうみたいだね」 「でも、そんなに簡単に出てくるものなの? 異世界の魔獣なんて……」 「うーむ。ここで飛車をこうして、金将をああして……」  三人の横で詰め将棋に没頭してうるさいアーウィルを、リサの靴底が黙らせた。  顔面にリサのブーツをめり込ませてひっくり返り、巨大な義腕で椅子をなぎ倒してしばし沈黙。  数秒後に、全くの無傷で復活した。 「……相変わらず、無闇に頑丈だね」 「……普通の人間だったら鼻の骨が折れてるぞ、今のは」 「………」 「………」  かなり非常識なやりとりを展開する二人に、今度はシーラとパティが沈黙した。 「ああ。こいつは軍艦の艦砲射撃をまともに喰らっても平気な顔してた奴だから、大丈夫だよ」  ひらひらと二人に手を振り、リサは言った。 「あのね。そういう問題じゃ……」  とパティが呆れた顔で口を開くのとほぼ同時。  ドアのカウベルが鳴り、来客を告げた。 「はーい。いらっしゃーい」  入ってきたのは、上機嫌のアレフと見かけない顔の女性だった。  ……因みに、シーラが即座に逃走態勢に入ったことは言うまでも無い。彼女も最近慣れてきたらしい。 ●第115話 投稿者:ashukus  投稿日:12月 1日(金)23時43分26秒 よく見たら前回投稿分は根本的に間違えでした。こっちが正規板です。 すいません、前回のは削除お願いします・・・・ 見なれない女性、アレフの話によればこうだ 「お姉さ〜ん」 振りかえる女性、歳は16、7くらい、見た目は大人しそうな純文学が似合う感じだ バサッ 持っていた本が落ちた、アレフはこれ以上のシチュエーションは無いと言わんばかりに走り寄る 「本、落としましたよ」 「えっ、あっすみません、ありがとうございます」 「(おおっ、結構いけてるな、腕が鳴るぜ)いやいや、ところで一緒に・・・・」 落ちた本を拾い『一緒にお茶でも』と言いかけてアレフは言葉を失う。 「・・・・(恐怖の闇鍋パーティー?・・・・)」 文学書辺りだと思っていたアレフ、声が出ない 「どうしました?それじゃ、失礼します」 「あ、ああ・・・・・・・じゃなくて、ちょっと待った」 「まだなにか?」 という訳でさくら亭へとやって来たアレフ グラシオコロシアムはエンフィールドでは見慣れない挑戦者に会場は沸いていた 武器は剣、薄い紫の髪を束ね、目付きの悪い青年、ちなみに相手は今月の生活費を稼ぎに来たシュウだ 『あっ!!』 二人は同時に声を上げる。 「ルシードさん、ブルーフェザーがどうしてここに!?」 「てめぇこそ、どこに行ったかと思ったらこんなとこにいやがったか」 「あんだけ犯罪者扱いされリゃあ当然でしょう〜」 「まだしらばっくれる気かコイツ」 「だから〜・・・・・・」 一向に試合を始めない二人にやじを飛ばす観客 『さっさとはじめろよ!!』 『何、話しこんでんだよ!!』 「あ?うるせぇなぁ・・・おい、話は闘ってからだ」 そう言うとルシードは剣を抜く 「そうですね・・・・」 シュウも刀を抜く、そしてルシードに切りかかる ガキィィ 鍔迫り合い、そしてルシードが口を開く 「わりぃが、手加減は出来ねぇからな」 「俺と闘ったことがあるような台詞ですね」 「あ?忘れてんのかコイツ」 一歩後へ下がり距離を取るルシード 『ブラスト』 風がシュウを取り巻き動きを止める。シュウに斬りかかるルシード 『剣技 燕刃』 シュウの周りに円を描く剣閃が現われる。しかし、ルシードはそれを読んでいたかの様に上に飛びそれをかわす 『コロナ』 「うわ、最初からそんな・・・・」 ドォォォン シュウは最後まで言葉を放つ間もなく吹き飛ばされた 『ルシード選手の勝利です!!』 ●第116話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:12月 3日(日)07時47分37秒  主のいない屋敷というのはとにかく無意味だと、ケインは思う。  その空間は誰に扱われる事も無く朽ちていく。存在の意義を果たす事も無く。だから、主のいない屋敷というのは早めに取り壊すべきだ。これが彼の持論だ。  もっとも今、彼とクリス達がいるアーシィの研究室(?)も幽霊屋敷だったらしいから、世の中一概には言い切れない。  今、彼の前にはレンガのブロックがある。つい先ほど学んだ錬金魔法を試すためだ。周囲にはクリスやマリアたちもいる。アーシィもつい先ほど図書館から帰ってきた。 「グラヴィティ―チェイン!」  重力がブロックを地面に押し付ける。重力の檻の中で、ブロックは地面にわずかにめり込んですらいる。 「うわあ〜」 「凄いですね、ケインさん!初めて使ってうまく行くなんて!」  トリーシャとクリスが歓声をあげる。だがケインは― 「くっ・・・あ!・・・」 「?どうか・・・したんですか?」  シェリルが気遣うと同時、  メギッ!グシャベリ!ボギゴギグチャベキ!!  ブロックが一点に無理やり収束され、当然粉砕され、欠片もろとも跡形無く押しつぶされる。 「・・・かはっ!」  魔法が途切れると同時、ケインがうずくまる。 「どしたの?!」  やはりここにきているマリアが近寄ってくる。それには目も向けずにケインはただうめいた。 「途中から、魔力の制御が甘くなっちまった・・・それで、あのザマだ・・・」 「ん〜これは凄いな。でもこれじゃ相手を殺してしまうよ」  いつからいたのかアーシィが評価を述べる。実際、その通りだ。 「けど、いきなり使えたのは大きいですよ。あとは訓練で上達させていくだけですね」 「それが大変なんだけどね・・・」  と、マリア。一方アーシィは準備をすすめていた。 「それじゃケイン。少し休んだら実地訓練を始めようか?」 「ああ。―アーシィ、ちと話があるんだが」 「・・・人払い、したほうがいいかな?」  頷くケイン。アーシィはマリアたちに魔法陣の確認を頼んだ。 「で、話ってなんなんだい?」 「この前のランディの一件で、自警団が動かなかったよな。あの後、その決議をしたやつらが気に入らなくて役所に探りをいれてみたんだ」 「・・・また随分と大胆な・・・」 「まあ聞け。で、調べてみたんだが、評議員のやつらは何も知らなかったようなんだ」 「なんだって!」 「話を聞いた後、窓に鋼線を張って糸電話代わりにしたりしてみたんだが、ボロは出なかった」 「それじゃあ・・・自警団が独自に、あの命令を出したと?」 「ああ。アーシィ、自警団の団長クラスの人間を知っているか?」 「え〜と・・・ベケットという人しか知らないなぁ・・・」 「そいつが・・・なにか知っているかも知れんな・・・」  と、壁にかかった時計が一時を告げる。 「ま、その話はおいといて、昼食にでもいこうか?」 「おごりか?!」  アーシィは半眼で眺めた。ケインもすぐに理解した。 ●第117話 投稿者:美住 湖南  投稿日:12月 3日(日)11時04分14秒 午後12時半、さくら亭。 「おい・・おまえ、やっぱりホラー好きなのか?」  青い顔をしてケーキをつつくディムル。その前には青い髪の女性フローネ 「えぇ!面白いのがあるんですよ!読んでみます?」  差しだしたのは、『恐怖の闇鍋パーティー』。フローネが読むのだから、それなりのモノであることは間違いない。 「・・・いや、別にいい・・・」  シーラ、アレフはすでに帰り、リサは外だ。カウンターにはディムルとフローネがいる。なぜ、二人がいるのか、すこし、時をさかのぼろう。  午前11時、それくらいの時間にいつもディムルはさくら亭に行く。今日は休みをもらっているので裏口からではなく表から入る。  いつもならば、パティは明るい笑顔で客達を迎えるが、今日は違った。 「いらっしゃ〜い・・・」  客を恐怖に陥れる、という表現は過剰ではあるが、看板娘パティは顔を青くして接客をしている。 「・・・何かあったのか?」 「うん。そこの話を聴けばわかるわよ」  パティが指さした先は、少し薄暗く、ちょっと奥まったところにある大人数が集まれるテーブルだった。 「・・・」  そこにいるのはアレフ、リサ、そして見慣れない青い髪の女だ。ディムルの見る限り、アレフは青い顔をしている。 「おい、一体どうしたんだ?」  アレフはびっくと身体を大きくのけぞらせたリアクションをとる。 「あ・・ディムルか。よかった・・・」 「なんでおれでよかったんだ?」 「ちょっとね」 「??─フローネ、どうしてここにいるんだ?」  意味が分からず、青い髪の女を見たディムル、それはシープクレストのブルーフェザーに籍を置いているフローネ・トリーティアだった。 「え?あぁ、ディムルさん。こんなところで会えるなんて」 「・・・」  顔が青い理由がなぜかわかってしまったディムルは逃げ腰である。なぜ、ディムルとフローネが知り合いなのか、ここでは割愛する。 「わりぃ。おれちょっとよ」 「ここで逃げるなんていわないよな」  アレフにしっかりと二の腕を掴まれてしまい、逃げることは許されない状況だ。 「いや、おれ、ロイに本渡さないと(べつに後でもいいんだけどな)」 「少しぐらいならいいだろ?」  青い顔で笑顔をつくられるとかなり不気味なモノがあり・・・。 「わかった・・・すこしなら・・・」  そのあと約2時間、しっかり、フローネからホラーを聴かせてもらうこととなる・・・。 ●第118話 投稿者:タムタム  投稿日:12月 3日(日)11時26分10秒  昼過ぎの通りを他愛も無い世間話をしながら、さくら亭を目指して歩いているトリーシャ、マリア、シェリル、クリス、アーシィ、ケインの六人。 「チョコバナナだ」  前方を指差しながら、ケインが突然奇妙な発言をする。見ると、前髪が金色で残りが濃い茶色と言う、確かにチョコバナナを連想させるような髪をした女性が歩いてくる。 「ケインさん、失礼ですよ」  クリスがたしなめるがまるで気にしていない。そして、その女性が近付いてくる。 「ねぇ、この辺でお酒の飲める場所知らない?」  先程のやり取りは聞えていなかった様で、なんだか眠たそうな目をしながら尋ねてきた。 「この辺だと、さくら亭が一番かな☆」 「ボク達もこれから行く所なんだけど、一緒に行く?」 「そうねぇ、お願いするわ」  そう言いながら、何となくメンバーを見まわして、視線が止まる。ライト・ブルーの髪をした青年がこちらを見つめている。 「(何処かで見たような…?)」  同じ事を考えながら二人はしばし見詰め合い、アーシィは彼女に可愛い少女の姿が、彼女はアーシィに三つ編みにした少年の姿がそれぞれダブる。 「アーシィ?」 「バーシア?」  二人は同時に呟き、一瞬の沈黙。 「随分久しぶりじゃない?十…何年振りかしら?」 「本当に…」 「そろそろさくら亭に行かないか?」  何か言いかけたアーシィを遮り、ケインが口を挟む。周りではトリーシャ達がジーっとこちらを見ていた。早くさくら亭に移動した方が良さそうだ。  ―さくら亭― 「あの二人ってどう言う関係なの?」 「小さい頃の知り合いらしい。何でも、大怪我をしていたアーシィを助けたんだと」  パティの質問にえらく簡単に答えるケイン。ここに来るまでに聞いていた話しはもっと詳しかったのだが、説明するのが面倒なのか唯単に腹が減っているのか食事に夢中のようだ。  アーシィ、バーシア、トリーシャ、マリアは一緒の席で食事をしているが、残りのメンバーはカウンターだ。気を利かしたのか、興味が無かったのかは定かではない。 「ディムルと一緒に居る女、この辺では見かけないな」 「あら、そんなに気になる?」  何気無いケインの呟きにパティが含みの有る突込みを居れる。だが、その表情は変わらない。表に出てないだけかもしれないが。 「フローネって言うんだけど、物凄いホラー好きよ」 「ふ〜ん」  気の無い返事をしながら、紅茶をすするケインだった。 ●第119話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:12月 3日(日)14時57分01秒 「あら、フローネ。ここに居たの」 「あ、バーシアさん。お知り合いですか?」 「ふう……」  青い顔をしていたディムルが、溜息をついた。どうやら、ホラー地獄は終わりそうだ。 「なんだディムル。青い顔をして。まるで拷問を喰らったみたいだぞ」  ケインが気のない声をかける。 「実はそうなんだ……」  蚊の鳴くようなディムルの呟きは誰の耳にも捉えられなかった。 「そう言えば、アーウィル見なかった? さっきまで居たんだけど、気がついたら消えちゃってて」  完全にホラーから話題を逸らしたいらしく、パティが口を開く。 「そう言えば居ませんね。普通、休日はいつも居るのに……」  シェリルが店内を見回した。図書館の常連の一人であるアーウィルとはそれなりに面識があるし、 以前の雷鳴山の件もある。 「アーウィル? もしかしてその人、ウィップアーウィルっていう名前なんですか?」  急に目を輝かせてフローネが身を乗り出した。 「あ、ああ。そうだが……。知り合いなのか?」 「いいえ」  あっさり否定するフローネ。  全員がコケた。 「でも、ウィップアーウィルというのは、死の間際にある人の周りに大群で現れ、その瀕死の呼吸に合わせて鳴き、 死者の魂を奪い去ろうとする不吉な鳥で……」  どうやら、ホラー地獄の第二ラウンドの開始のようだ。 (偽名だとは思っていたが、なんて不吉で悪趣味な名前を選んでるんだ、あいつは……)  アーウィルのネーミングセンスを、ディムルは呪った。 「ふむ。ブルーフェザーか。また面白い連中が来たものだな」 「俺の個人的な意見としては、おまえがこの街に居ることの方が興味深い」 「そいつは光栄。…で、どうする? 自分を殺して賞金でも狙うか?」  裏路地の奥にある薄暗い居酒屋で、二人の長身の男が向かい合っていた。  一方は髪を長く伸ばし、もう一方は巨大な義腕の拳を隣の椅子にのせている。 「賞金などに興味は無い。そもそも、おまえを滅ぼすことが可能な戦力がこの大陸に存在すると思うか?」 「ずいぶんと過大評価してくれるな。強力な戦力は魔道砲ファランクスとかタナトス魔法とか、制御可能なものだけでも結構あるぞ?  制御が殆ど不能なものも入れれば、精霊魔法もある」 「ずいぶんと過小評価だな。ここ数百年間の大陸の歴史上、最悪の大量破壊/大量殺戮者が」 「人聞きの悪い。法律に触れるようなことは何もしてないぞ。傭兵は立派な職業だ」 「正確には、合法になるように裏で全て糸を引いていただろう。その結果、『合法的』に少なくとも 二十の都市国家が文字通り消滅した。その他の小規模な村や砦、要塞などは多過ぎて計数不可。 連邦のブラックリストに特SSS級危険物として載るには充分すぎる理由だ」 「"危険物"か」 「そうだ。おまえは、もはや人間とは見なされていない。危険な爆弾や魔法兵器と同じ扱いになっている。 あくまで、連邦の上層部内でのことだがな」 「えらく詳しいな。大した情報収集能力だ。素晴らしい。……それで、用件は何だ? 公式には、 自分はただの元傭兵だ。そんなことでわざわざブルーフェザーが出張るはずはないだろう?」 「その通り。それに、おまえの相手をするなら、軍隊を一個師団連れて来る。……無駄だろうがな」 ●第120話 投稿者:ashukus  投稿日:12月 4日(月)16時33分27秒 さくら亭 アーウィルの名前から始まったフローネのホラー地獄第二ラウンドは一向に終わる気配がない 「それが今までのホラーの概念であって、その点ピースクラフト先生は、意表を突く表現で・・・・」 「あ、ああ・・・」 心なしかディムルの顔からは生気が抜けているように見える。ちなみケインも一度ホラー地獄に引きずり込まれそうになったそうだが 間一髪で回避し、平和に昼食を取っている。 そして一緒の席で食事をしている、アーシィ、バーシア、トリーシャ、マリア、 だがアーシィとバーシアは何やら大人の話といった様子なので話に入れないトリーシャとマリア。と、その時 カランカラン カウベルを鳴らし二人の子供(?)が入ってきた。一人はパイナップルのような頭をし、ピンクの服を着た少年(?) そしてもう一人は赤い帽子を被り一つ間違えれば少年に見える少女(?)だ 「ああ〜はらへったな〜」 「やめてよね、ビセット大声で、恥ずかしい」 「いらっしゃ〜い」 いつも通りの受け答えのパティ、とフローネがそれに続く 「あら、ビセット君、ルーティちゃん」 席を立つフローネ、そしてやっとホラー地獄第二ラウンドは終了した。ディムルはぐったりとしているが大丈夫だろうか? 医務室 ルシードにボロボロされたシュウは医務室に運ばれていた 「うう・・・・う」 「ったく、やっと起きやがったか」 「ああ、ルシードさんのおかげで今月の生活費が・・・・・・あれ?」 と、気が付くとシュウの手首に縄が巻かれている。 「ちょっ・・・これ、なんですか?」 シュウの言葉を完全に無視しルシードは通信機で何やら話をしている 「おい、メルフィいまどこだ?」 《あっ、ルシードさん、自警団の事務所よ、非番の人が多かったけど手続きは大体終わったわ》 「よし、俺もいまから行くから他の奴ら集めとけ」 《わかったわ》 そう言うとルシードはシュウを引きずり、歩き出す 「おら行くぞ!!」 「だから、なんで俺が・・・・ちょっと、話を・・・話を聞いてくださいよ」 「あ?魔法犯罪者が偉そうな口聞くんじゃねぇよ」 「いや、だから」 という訳でシュウはルシードに拉致されてしまった