●第101話 投稿者:ashukus  投稿日:11月22日(水)20時42分33秒 さくら亭 客もこの時間になるとほとんどいなくなり、店内はとても静かだ 今店内にいるのは先ほどの時間外手当要求をことごとく却下されたディムル 時間外手当要求をことごとく却下したパティ そして、リサ、となんだか外が騒がしい、そして怒鳴り声が聞こえる 「シュウの奴・んな時に・・行ったんだ・・・おい・・・・・・・だ」 それはアルベルトの声だった。とりあえず外に出るディムル、パティ、リサ 外ではかなりの数の自警団員がローズレイク方面へ向かっていた 「アルベルト、これは?どうしたんだい」 と、リサ 「どうもこうも無い、またローズレイクに例の奴が出てきたんだ、俺はこれから現場に行く、お前たちも来い」 「そう言うわけで、パティ良いかい?」 「まぁいいわよ」 という訳でローズレイクへ向かうアルベルト、ディムル、リサ、そして 「また出て来たか、さて、どうしたものか・・・」 さくら亭の一室で寝ていたアーウィル、そう言うと彼もローズレイクへと向かった 薄暗い部屋、そこに二人の人影が見える。黒ずくめの壮年の男、そして鎧を着た紫っぽい髪をした青年 「今回のローズレイクの件、どうする?」 先に口を開いたのは鎧を着た青年 「しらねぇな、てめえらでなんとかしな」 黒ずくめの壮年の男は今回の事態には興味が無いようだ 「まったく、これがどれほど重大なことかわからないのか」 「俺は雇われてるだけだ、この街がどうなろうと知ったこっちゃねぇな」 「なんだと!?」 気まずい空気が辺りに流れる、と、その時扉が開き一人の男が入ってくる 「ほっほっほ、喧嘩は良くないですねぇ」 「首領!」 首領と呼ばれた少し太めの中年くらいの男 「さて、今回の件のことですが、これは私たち『組織』にとってとても重大な問題ですねぇ」 「首領、どうするつもりですか?」 「ほっほっほ、そうですねぇ、前回の件もありますから、彼に動いてもらうのは無理でしょうねぇ」 そう言って黒ずくめの壮年の男の方を見る 「フン」 「もちろんのこと自警団は動かします、が念の為ある協力者に自警団とは別に動いてもらいます」 首領と呼ばれた男がそう言うと扉が開き、そして一人の男が現れる 目に掛かる黒い髪、口を布で覆い、忍者風の黒装束を着込み、手には刀を持っている青年風の男だ 「彼には魔力が無く魔法こそ使えませんが剣の腕はなかなかです。それから自警団と別々に動く必要は無いのですが、 一人の方が動きやすいと言ってましたのでねぇ」 と、その青年が口を開く 「・・・・分かっているだろうがこれはあくまで協力だ、俺は『組織』に入ったわけじゃない」 そう言うとその青年は早々と去って行ってしまった 「奴は・・どこかで見たような気がするな」 黒ずくめの男が呟く 「首領、彼は一体何者です?」 「ほっほっほ、貴方もそして私も良く知る人物ですよ」 ●第102話 投稿者:タムタム  投稿日:11月23日(木)22時20分33秒 「ん〜。相手は常に水の中か…。こちらもそれなりの準備をしないと…」  ジョートショップへ向かいながら独り言を口にする。先程のファースト・アタックで陸からの攻撃は効果が薄い事が判明した為、必要なマジックアイテムを製作しなくてはならない。 「あ、アーシィさん。おっはよー」 「おはよう、トリーシャちゃん。今日も元気だね」  元気な挨拶と共に、前方から走って来たトリーシャへアーシィも挨拶を返す。 「えへヘ。あ、そうだ。ローズレイクに何か出たって聞いたんだけど、何が出たの?」  ちょっと照れたような笑顔を見せた後、唐突にそう聞いてきた。恐らくリカルドに伝わった情報を掴んで来たのだろうけど、それにしては早過ぎる気がしないでもない。 「ん〜。未だハッキリとした事は解かってないんだよ…」  その言葉を聞きがっかりした表情を見せるが、次の瞬間には驚きへと変わる事になる。 「マジックアイテムの製作を手伝って欲しいんだけど、今日は暇かな?」 「ええ!ボクが!?」 「それほど難しい事じゃ無いんだよ」  トリーシャはちょっと考えてみた。と言うより、興味がわいて来た。 「シェリル達も誘っていいかな?」  取り合えず聞いてみたら、予想通りあっさりOKしてくれた。そして、別れを告げると学校へ向けてまた走り出す。放課後が楽しみになって来た。  時間は跳んでいきなり放課後。 「ここって…あの有名な…」 「…幽霊屋敷、だよね…」  シェリルの呟きを引き継ぐような形でトリーシャが呟く。クリスとマリアはこくこく頷くのが精一杯の様だ。アーシィはちょっと困った顔になっている。  目の前に在るのは造りこそ立派だが、無数の蔦が壁を覆い尽くしている古びた屋敷だ。幽霊が出るとかで長年放置されていた物だが、今はアーシィが借りて住んでいる。どうやって持って来たのかは不明だが、今までに手に入れたアイテムも保管されている。  中に入ってまず目に付いたのは上の階から地下へと一続きになっている階段。大きいソファーとテーブル。奇妙な絵画などが、幽霊屋敷の雰囲気を多少なりとも残している。 「案内するよ」  そう言い地下へと移動する。数多くの武器や防具、アイテムを放り込んである物置。魔法の実験室。大量の魔道書や辞典が並べられた書斎。  それらの部屋へ続く廊下を突き進み、辿り着いたのは結構大きめの部屋だった。中央には魔方陣がひかれ、片隅に小さめの机が申し訳無さそうに置かれている。 「で、マリア達は何をすればいいの?」 「これに魔力を込めてもらいたいんだ」  その手に有るのはリングが四つ(四人分)に十数個のボールが詰められた箱だ。リングは〔フロート・リング〕と言い、身に着けると数センチ浮き上がる事が出来る。その為水上移動が可能になる。  箱に入っているのは捕獲用のマジックボール。対象を発見すると同時に、『グラビティ・チェイン』を発動。つぎに浮遊性の強いネットを絡ませ、水上へと引き上げる事が可能。  魔力さえ込める事が出来れば後の調整は簡単だ。 「手順はこの紙に書いてあるから頼んだよ。私はクリスと一緒に書斎で調べ物をしているから」 「ボク達に任せといて」 「ちょっと待った☆」  部屋から出て行こうとする二人をマリアが呼び止める。その表情はいつに無く真剣だ。 「お礼は魔法を教えてくれるだけで良いから☆」 「…簡単なもので良ければ教えて上げるよ…」  笑顔と共に繰り出される何度目かの「魔法教えて」攻撃に、アーシィはとうとう折れてしまった。 ●第103話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:11月24日(金)20時20分30秒  丁度、アーシィ達のマジックアイテムが完成した頃……  ローズレイクには再び巨大な水飛沫が出現していた。 「……警戒しているのか? 岸に近づこうとしない…」 「そのようね。やはり、接近してくるのを待つしかないかしら?」  湖畔に防衛線を展開しているのは、主に魔術師組合と自警団。その他には、リサやディムル達のように要請を受けて駆り出された エルやイヴ、そして何故かトゥーリアの姿も見える。  なにしろ、相手の機動力は相当なものだ。こちらから船で出て行こうものなら、返り討ちにされる。 結局、後手に回らざるを得ない。迎撃戦だ。 「ふむ。確かに面倒な相手ではあるな。下手にでしゃばるとマズいし……」  リサに発見されると追い出されるのは目に見えているので、近くの林に身を隠しながらアーウィルは呟いた。 「まったく……このままではどうにもならん。せっかくうまく行っていたと言うのに……」  このようなイレギュラーな事態に妨害される事は、甚だ不本意だし、不愉快だ。  この街の住人に任せてみるのも一興だが、リスクが大き過ぎる。やはり、久しぶりに運動するか…… 「第四起動」 『右腕部特殊兵装<戮皇>・第一起動→第四起動 出力加圧』  周囲の空気を乱打するように駆動音の咆哮を上げ、<戮皇>が目を醒ました。  更に、義腕全体の装甲が微かに組み替わり、微妙にその外観を変化させる。 『装甲組替・通常起動→高速機動用』 『現在の反射速度 通常の約六十五倍を計測』  全ては一瞬で完了する。瞬きの半分も必要としない。 「いきなりぶっ放すとは、景気の良い事だな…!」  沖合いの水飛沫から、アーウィルを狙って高密度の魔力塊が射出された。殆ど物質化している。  放たれた魔法の砲弾は計十二発。人からは離れていたので、周囲に誰もいないのは幸いだ。  現在の反射速度では、宙を走る銃弾でさえ明確に視認が可能。  義腕に構えた刃渡り三メートルの大剣を、下段から一気に振り上げる。逆袈裟。  立っている地面が、大量の爆薬を叩き込んだかのように爆裂する。  剣の切っ先が、白い水蒸気の尾を曳いた。超高速で物体が移動した為、大気中の水分が瞬間的に凝固したのだ。 そして、その剣の先が音速を超える。圧縮された空気圧が衝撃波と化し、指向性を与えられて魔法の砲弾を迎え撃つ。  四発が衝撃波に撃たれて自爆。その周囲の三発が誘爆した。残るは五発。 『現在の反射速度 通常の約八十二倍を計測』  一旦振り上げた剣を、その姿勢から強引に振り下ろす。今度は袈裟懸けの一撃。  再び衝撃波が発生し、周囲の地面を更に徹底的に抉り飛ばす。誰も近くにいないのは本当に幸いだ。  二度目の衝撃波が、一度目の音の爆発に重なった。  激突した二つの衝撃波は、激しい雷光のように四散し、前方に向けて盛大にその破壊の力をぶちまけた。  残りの五発と、広がりかけていた七つの爆発が相殺されて霧散する。敵の攻撃の全てを無力化。  以前、雷鳴山で魔法兵器を粉砕したのもこの攻撃だ。周囲を巻き込んでしまうのが、欠点と言えば欠点か。 『現在の反射速度 通常の約九十二倍を計測』 (この自分に気付いたか? それに、いきなり魔法を使い出すとは……)  加速された思考で考える。どうやら、ただのドラゴンや魔物ではないらしい。  と、九十二倍に引き延ばされた聴覚に、今の大騒ぎに気付いたらしい声が聞こえてきた。間延びして聞こえるが、 何を言っているのかは解る。 (やれやれ。この有様を見たら、自分の仕業だとリサに解ってしまうな……とりあえず、移動するか)  結論を出すなり、アーウィルは高速で移動を開始。リサ達から逃げる。  後には、徹底的に破壊し尽くされ、地形の変わってしまった湖畔の林だけが残された。 ●第104話 投稿者:YS  投稿日:11月24日(金)23時47分30秒  ローズレイクに魔物が出た。その話をロイが聞いたのは夕方になってからだった。寝ていたためである。 「・・魔物ですか・・」  夜は他の子供達と同じ位の時間ーー9時頃ーーに寝ていながらも、ロイはまだ眠そうだった。 「そう、今のところ有効な手段もないらしいんだ」  話の相手は若い青年、自警団にいたような気もするが、結局名前は思い出せなかった。あるいは聞いたこともないかも知れないが。 「・・それでポチを借りにきたんですか・・」  ポチは古代魔法兵器、動いている原理は現代魔法とはまったく異質のものだ。つまり、ポチの魔法ならばローズレイクでも通用するはずだ。 「・・それはわかるんですが、ポチの魔法では威力が強すぎて、逆に被害が増えるかも知れませんよ・・」  例えば、火球を出させてもその威力で津波が起きたりするだろう。それで被害が出ては本末転倒、意味がない。  だが、どうにかしなければ被害は増えてしまう。 「・・わかりました、努力しましょう・・」  とりあえずは、その言葉を聞いて、青年は教会を出た。  教会の外、そこにはランディがいた。 「あのガキを騙して、あの化け物を利用する気か?」 「そのつもりだったんだが、一筋縄ではいきそうにないな。それより、あまり親しく話しかけるな。まだ組織のことが公になるのは避けたい」 「親しくする気なんかねえ、ただ忠告してやろうと思ってな」 「忠告?」 「あまり余計な人間を入れるのはやめておけ、目が届かなくなれば味方に寝首をかかれる危険もあるからな」 「それは首領にいってくれ、それより見つかるとまずいことになる。早くここから離れるぞ」  そういうと二人はそれぞれ違う方向に去っていった。 「・・あれはランディか?もう一人は・・」  二人が去ると同時に教会の前に現れたのはアーウィルだった。 「こんなところに何のようだ?アーシィ達はローズレイクのはず・・まさか、狙いはロイか?」  あとをつけることも考えたが、確証もロイを狙う理由さえ浮かばなかったし、二人を同時に追うことができないので、教会に入った。 「・・アーウィルさんですか?」  心配はいらなかったようだ。ポチを従え、ロイはすぐに顔を出した。 「・・どうしたんです?魔物が出たとなれば一人でも強い人がいった方がいいと思うのですが・・」  そういうとロイは少し考え込んで、 「・・もしかしてアーウィルさんもポチを借りにきたんですか?」  そういうとロイは尋ねてもいないのに色々と話し始めた。  それを聞いてから、アーウィルも自分が表だって出られないことを話す。知られても困らない範囲でだが。 「・・それなら提案なんですが、雇う気はありませんか?ポチとセットで法に触れない範囲でなら何でもいうことを聞くということで・・」  もちろん、先の自警団員との話はなしだ。ロイにとっては興味のない話だったこともあるが、相手が何も話さなかったことが気に入らなかったからだ。  アーウィルならば、信頼できるかは別としても、色々と恩もある。協力しない理由もない。 「それはありがたいな。だが、何の利益があるんだ?」 「・・利益ならありますよ。退屈な時間から解き放たれるし、あなたは誰も知らない知識を持っている。その知識の断片でも教えてもらえれば十分ですよ・・」  こうして、二人と一匹(?)の契約は結ばれた。 ●第105話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:11月25日(土)11時16分19秒  翌朝。町は今日も特に何事も無く朝日を迎え入れた・・・はずだった。  ローズレイク。エンフィールドの南に広がる大きな湖は今、時ならぬ騒動に揺れていた。  謎の巨大生物。船を襲うその存在の話はあっという間に町中に広まった。そして、多くの野次馬がローズレイクに集まり、怪物を一目見るのを心待ちにしている。  要するに、自分たちに被害が及ばなければ、よい退屈しのぎになる。  そしてその結果、怪物迎撃のための部隊が困る事になった。自分たちだけならいざ知らず、一般市民までいるとそうそう特大規模の魔法での迎撃がし辛いというわけだ。 「やれやれ・・・どいつもこいつも命知らずな・・・『君子危うきに近寄らず』ってことわざを知らんのかね?」  今日も今日とてジョートショップに仕事探しにケインは来ていた。 「でも・・・今まで知られていなかった物を見てみたいという気持ちは解らないでもないわ」 「そうですかアリサさん?しかし・・・船一隻をあっさり落とすような化け物だしなぁ・・・岸に襲い掛かってきたら死人の一人や二人じゃ済まないぞ」  基本的に名前は呼び捨てのケインもアリサだけには『さん』づけである。呼び捨てにし辛いタイプの相手だ。 「ところでケインさん。湖の怪物ってなんなんすかね?」 「最初は水棲ドラゴンかとも思ってたんだが、どうも違うかもしれん。そもそも、ドラゴンなら無意味に人里に現われたりしないもんだし」  いいながら、ケインは一つの書類を手に取った。依頼主はさくら亭。湖畔への仕出し弁当配達販売の仕事だった。 「これ、もらいだ」  さくら亭ではアーウィルがリサに尋問を受けていた。昨日二回目の襲撃地点の破壊跡が彼のものだとリサには解っていたらしい。 「あんた今度はなにを企んでんだい?この町を潰そうっていうなら・・・私は何があろうとアンタを殺すよ」 「だから。その破壊があったという時間のニ、三分後にはラ・ルナに入っている。現場からラ・ルナまでは走っても十分はかかるよ。  大体、この町を破壊してもなんのメリットも無い」 「どうだかね・・・アンタが町に来てから騒動が続けて起こってる。アンタが裏で糸を引いてるんじゃないだろね?」 「疑り深いね・・・」  険悪な雰囲気が店内に充満する。客がいないからいいものの、いたらあっという間に姿を消しているだろう。 「店の者は居るか?」  店に入ってきたのはケインだった。店内の異様な雰囲気に気圧されたがギリギリ踏みとどまる。 「あらケイン。なんか用?」  出てきたのはパティ。ケインは懐から書類を出すと、 「この弁当配達の仕事、請け負いたい」 「父さんはジョートショップに依頼したんだけど?」 「人手不足だからな。アーシィもアイテムを持って湖だ」 「ふうぅ〜仕方ないわね・・・いいわ。じゃあ待ってて。弁当を用意してるから」  こうして、ケインは仕事をゲットした。 ●第106話 投稿者:美住 湖南  投稿日:11月25日(土)14時54分42秒  ローズレイクの岸辺に怪物迎撃部隊が集まっている。その後ろには数多くの野次馬−一般市民−が怪物を待っている。 「く〜・・・隊長はまだ来ないのか?」  隊長−リカルドは色々とやることがあるらしく、迎撃部隊より遅くくることになっている。 「はっ、もうすぐ来られると思うのですが」  部下の一人が報告する。 「そう言えばシュウのヤツは来ないのか?」 「はあ?今日は見ていませんが」 「そうか・・・」  仕出し弁当が到着したようだ。リヤカーを使って引っ張っている。販売員はトレンチコートに眼鏡。ケインだ。 「はい、自警団のみなさんに。さくら亭の仕出し弁当」  待っていたようにリヤカーの前には人だかりができる。一応、順番は守るようできちんと並んでいる。  最後に弁当を受け取ると、アーシィがケインに話しかけた。 「怪物の迎撃に協力してもらいたいんだが」 「販売があるんだが」 「その後でいい」 「リヤカーをさくら亭に戻さなきゃいけないが」 「それは後」 「仕事を探さないと」 「市民のほとんどがここに集まっている。町中に行っても静かなだけだよ」 「・・・・・・・」  最後の一押しとばかりにディムルが横から口を出す。 「怪物がこのままだと、さくら亭のおいしいご飯が食べられなくなるだろうなぁ。マリアも嘆くだろうなぁ」  飯に折れたかマリアに折れたかは知る由も無いが、ケインはオーケーサインを出した。契約書のサインも忘れない。販売をし、リヤカーを安全な場所に置いてからという条件付き。 「君、一体どれだけの弱み握ってるんだい?」  マリアのことはいつ聞いたのか?という疑問を言外にこめながらアーシィが問う。 「さあね」  不敵な笑みを浮かべたかどうかは本人以外知らない。  ケインが販売に行った後、 「どうするんだ?よほどのことでないならそっちの案も聞くが」 「ん〜、そうだね。難しいかもしれないけど、無人の船をローズレイクに浮かべる。船を流して、怪物が誘いに乗って来たらアイテムを使って捕らえる。後は身動きができないように魔法をかけるなりなんなりして・・・」 「船の操縦はどうするんだ?無人じゃ水の流れに任せるしかないだろ?それだと怪物のほうも誘いに乗らないんじゃないか?」  もっともな疑問である。 「あぁ、それならおれやろうか?そういう遠隔操作魔法できる」 「うん。じゃあ、ディムルに頼もう。さて、誘いに乗ってくれるかな?」 ●第107話 投稿者:ashukus  投稿日:11月25日(土)20時09分47秒 という訳で役割分担 アーシィ、『グラビティ・チェイン』役 ケイン、『ファング』による防御役 ディムル、無人の船をコントロールする 急きょ加わったアルベルト、ネットで『何か』を捕らえる。 そして無人の船がローズレイクへと浮かべられる 10分経過・・・・ 「来ないな・・・」 20分経過 「おい、来ないぞ」 と、ケイン 「ん〜とすると、何か足りない物が・・・・・そういえば最初に襲われた船の積荷はなんだったんだ?」 アーシィの問いに答えるアルベルト、自警団にはそういう情報が入っているからだ 「たしか、食料、日用品、それから魔術師組合に届けられるはずだったマジックアイテムだな」 「ん〜マジックアイテム、たぶんそれかもしれないな」 「どういうことだ?」 「いや、とりあえずディムル船を一回戻してくれ」 そして戻ってきた船にアーシィが青と白のカードを置く 「ん〜こんな感じか」 再び船は動き出した。そして湖畔との距離を確認すると呪文を唱えるアーシィ 『水と光のカードに込められし魔力よ、優しく照らし包みゆくその力を現せ。わが魔力に導かれ奏でられるは静かに響く小夜曲(ヒーリング・セレナーデ)』 船が光に包まれる。その時、船の近くで水飛沫が上がる。そして『何か』によって無人の船は木端微塵になった。 「ん〜やっぱり魔力に反応するのか」 アーシィ達はフロート・リングを指にはめる、すると体が浮き上がり、水面を滑るように水飛沫の方へ しかしその『何か』はアーシィたちの存在に気が付き魔力の塊を数発放ってきた 『ファング』を構えるケイン ドォォォン 数発の魔力の塊が障壁に接触し破裂する 「今だ!!」 『グラビティ・チェイン』 確かな手応えだ、そして水中の『何か』の動きが鈍くなった 「アル、ディムル!!」 「よし、まかせろ」 「おうよ」 アルベルトとディムルが浮遊性のあるネットを湖へと投げ入れ、水中の『何か』を絡めネットの重りを切り離す。 そしてネットが水面へ上がってきた。 薄暗い部屋 「首領、それは?」 首領と呼ばれた男の手には紙切れが 「ほっほっほ、これは彼からの中間報告書だそうですよ。文字通り『送られて』きましてねぇ」 その紙切れにはローズレイクに現れた怪物の特性、能力など、他にもアーウィルの昨日発動させた能力なども書かれていた 「フン、思ったよりやるじゃねぇか」 「ほっほっほ、それはいいとして、例の魔法兵器の件はどうなりました?」 唐突に話題を変える首領 「努力するとはいってましたが・・・・おそらくは無理でしょう」 「ほっほっほ、そうですか残念ですねぇ」 ●第108話 投稿者:タムタム  投稿日:11月26日(日)09時55分40秒 …ざわざわ、がやがや…。ローズレイク周辺が騒がしくなる。集まっていた野次馬達が水中から姿を現した生物を指差し、口々に勝手な事を言い始める。  水中から姿を現したのは全長七メートル程の生物。蛇のようなフォルムを持つが、その顔は鶏を連想させ、その身体はドラゴンの鱗のような物に覆われている。  それだけなら、まだ納得できる。そう考えてしまう程異常な部分、それは顔から2メートルほど下にある直径一メートルくらいのリング。其処から生えている、まるで翼の様に折り畳まれた巨大な鰭のような物。  しかも、リングは体から離れているにもかかわらず、鰭のような物が蠢いている。 「随分変わった魔物だね…」 「私の知識の中に該当する魔物はいないわ。皆を避難させるべきね」  落ち着いた口調でリサとイヴは言う。だがその口調とは裏腹に、イヴの認識は敵がかなり危険だと訴えていた。  その言葉を聞いた自警団員は野次馬を避難させようとするが、誰一人としてその場を離れ様とはしていない。 「…あいつ等はそんなに死にたいのか…?」  野次馬達の方を一瞥したケインが呟く。あの様子では死人が出ないと判らないのかもしれない。 「ん〜。まさか、異世界の魔獣とは思わなかった」  ネットに捕らえられ、水面に這いつくばっている魔獣を見てアーシィが言う。本当ならさっさと止めを刺したい所だが、下手に傷つけて暴れられたら厄介だ。 「なんか変じゃねぇか?」  そう言うアルベルトの視線は魔獣に注がれている。何気無くその視線を追ったディムルは驚きを露にする。 「コイツ…魔力を食ってる!?」  ディムルの言葉通り、ネットから魔力の輝きが消え掛けている。そして、完全に魔力の輝きが消えたとき、ネットを引き千切るかのように鎌首をもたげ始めた。 「さて、どうする?」  戦闘態形に移動しながらケインが尋ねてくる。敵は水面に浮かびながら、獲物を狙うかのようにこちらを見つめている。 「まずは確めたい事、其の一。ディムル頼む」 「おう」  アーシィの意図を察し、石突きの部分を左手で包み、右手で印を結ぶ。そして、 『フレイム・ジェイル』  包み込むような炎が、容赦無く敵の体力を奪って行く。だが、その炎も短い時間しか効果を現さなかった。  魔獣は今魔法を放った相手を探し、ディムルと目が合う。嘴のようなものが開かれ、ディムルへ襲い掛かろうとした瞬間。 「確めたい事、其の二」  言葉より早く放たれた魔法弾が魔獣の動きを止める。 「瞬間的な魔法は食えないが」 「持続時間の長い魔法なら食えるのか」  今の様子を見たディムルとケインが思った事を口にする。 『!!!!』  突然響く理解不能な叫び声。それは魔獣から発せられたらしく、周囲の空間が揺らぎ始め、見た事も無い魔物が数体出現する。 『ニードル・スクリーム』  まずは小手調べと言った所か、ケインが広範囲魔法を放つ。効いてはいる様だが、まだまだ倒れそうに無い。  アーシィもカードを取り出し前方へと放り投げる。その数六枚。 『シューティング・スター』  何時もより強力な魔力の込められた、六発の魔法弾がそれぞれカードを撃ち抜き、無数の魔法弾となり弧を描く様に降り注ぐ。 「ヤバイ!」  アルベルトの叫びが何を意味しているかはすぐに理解できた。魔法弾を掻い潜り、魔獣が突撃してくる。誰の行動も間に合わず、全員が弾き飛ばされる。  魔獣の速度は衰えず、そのまま岸のほうへと向かっている。湖岸には未だ大勢の野次馬達がいた。 ●第109話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:11月26日(日)20時22分47秒 「アーウィルさん。岸に向かってますよ!」 『見えてる。ポチで攻撃できないか?』 「無理です。動きが速すぎて」 『そうか。まあ、元々狙撃向きに造られてないからな。……しょうがない』  ロイは手に直径一センチ程の金属球を握っている。アーウィルの声の発生源はそれだ。  遠距離会話用のマジックアイテムらしい。 「どうします?」  現在ロイとポチが身を潜めているのは、湖畔の防衛線とローズレイクが一望できる林の中だ。  とりあえず防衛に当たっているメンバーの手並みを拝見し、何か起こった場合の『保険』としてここに居る。  アーウィルも、どこかに潜んでいる筈だ。 『リサ達に気付かれないように、自分が動きを止める。たぶん、派手に吹っ飛ぶだろうから構えていてくれ』 「解りました」  どうやるのかは尋ねなかった。見れば解る事だ。  ローズレイク・水深二十メートル地点。  アーウィルはそこに居た。ロイと別れてから今までここに潜んでいたのだ。  どのような方法で何の装備も着けず、大顎月光魚の襲撃も受けずにこの場所に潜めたのかは、彼しか知らない。  頭上を魔獣が通過していく。今回は気取られないように巧妙に隠形している為、素通りだ。 「えらく頑丈だな……とりあえず、こっちは手助けするだけだ。後はうまくやってくれよ」  言うなり、義腕に構えた大剣を振り上げる。音速超過の斬撃。  液体中でもその威力は健在だ。必要なパワーは大きくなるが、媒体となる水の密度が空気より高い為、 むしろ破壊力は増す。 「!」  凄まじい力の暴走に湖全体が鳴動する。同時に、頭上の巨大な影が一瞬で消失した。 「なにっ!?」  岸に突進する魔獣を追いかけていた四人は、突然目標が消失した事に驚いた。 「上!」  やや遅れていたアルベルトが前方上空数十メートルを指さす。 「おいおい……」  ケインが呆れたようにぼやく。  高々と、七メートルの異形の巨体が宙に舞っていた。その胴体は半ばから妙な角度で折れ曲がり、 その口からは苦痛と憎悪の絶叫が放たれている。 「!」  ディムルは魔法が発動する音を聞いた。体が反応するより早く、膨大な熱量を持つ光弾が飛来し、 魔獣の胴体を直撃する。 オオオオオオオオオオオオオオオオオ…………!!!!!!  常人なら腰が砕けてへたりこんでしまう程の怒りと憎悪に満ちた咆哮が上がり、魔獣は全身から煙を 噴きながら着水した。岸とはかなり方向がずれている。 「仕切り直しだ…!」 「うまく行きましたよ」 『そいつは良かった。やはり、水の上に引き摺り出せばまともにダメージを与えられるワケだ』 「で、あれは何なんです? アーシィさんは異世界の魔獣とか言っているように見えましたが」 『ふむ。九十九点てところだ。惜しい』 「もったいぶらないで、知ってるなら教えてくれても良いでしょう?」 『あれは、異世界から召喚した魔獣に改造を施して造った使い魔だよ。ただし、戦術級/局地破壊タイプだ。 当然、現代の技術では製造は不可能。古代から蘇った亡霊だ』 「使い魔……いつの時代の物なんですか?」 『タナトス王の造ったものさ。文献などの記録は一切残っていないし、外見からは判別できないから、 誰にも解らないだろうけど』  ならば、それを知り、それを判別できる彼は何者……否、“何”なのか…?  ロイは大きな疑問を抱いたが、口には出さなかった。 ●第110話 投稿者:ashukus  投稿日:11月28日(火)22時34分47秒 再び水飛沫が上がる。そして再びアーシィ達に向かってきた。そのスピードは全く衰えていない 「なんだかよくわからなかったが、また来るぞ」 と、ディムル 「ん〜でも状況は良くなったな」 「確かに」 ケインは後ろすなわち岸に見をやる。するとさっきまでいた野次馬達は忽然とその姿を消していた。 残っているのは、迎撃部隊とリサ、そしてイヴ、しかしなぜイヴまで残っているのか・・・ 「野次馬さえ居なければ手はある」 と、ケイン 「ん〜まぁそうだね」 そして体勢を立て直すアーシィ達 「それで、どうする気だ?」 「ん〜そうだな・・・・・・・・で・・・・・が・・・・だろう」 「なるほどな、ようし」 アルベルトはそう言うと岸へと戻っていく、ケインも一緒だ 「まさか『ファング』を餌にすることになるとは・・・・・我は汝を振るう者。ひと時真の姿を」 『ファング』が長剣へと姿を変える。しかも[覚醒解放形態]だ、周囲の魔力を吸収し、膨大な魔力がファングへと集まる その魔力に反応し魔獣は方向を変えケインたちの方へ向かっていった そして水面のアーシィは・・・・・・ 「よし、今だ!!」 『シューティング・スター』 何時もより強力な魔力の込められた、六発の魔法弾がそれぞれカードを撃ち抜き、無数の魔法弾となり弧を描く様に降り注ぐ。 魔中の動きが一瞬止まる。そしてディムルが魔法石に手をかざし精神を集中する 『カーマイン・スプレット』 ドパァァン 水に発動させた為、爆発それ自体の威力は少ない、だが魔獣は衝撃で岸に吹き飛ばされる。アーウィルの時ほど高く飛びはしないが・・・ 魔獣を岸に吹き飛ばした。野次馬がいたら大惨事だ・・・・ 「うおぉぉぉぉ」 怒涛の気合と共に高くジャンプしたアルベルト、魔獣を串刺しにする そしてケインが『ファング』を構えた 「これで、とどめだ」 「うぉ、ちょっとまて!!」 アルベルトは魔獣に刺さった槍が抜けないようだ・・・