●第71話 投稿者:タムタム  投稿日:11月 5日(日)23時02分08秒 「…ようやく終わったか」  シュウが疲れた様にそう呟く。ディムルやケインもその場に腰を下ろし一息入れる。  しばらくして、草むらが微かな音を立てて揺れる。全員緊張が解けていた所為か、すぐ戦闘体制には入れない。しかも一番近いのは戦闘不能状態のアーシィだ。  しかし、現れたのはモンスターではなかった。一番最初に顔を出したのはリサ、そしてリカルド、何故かトリーシャの三名。 「アーシィさん、大丈夫!?」  地面に寝そべってグッタリしているアーシィに気が付き、トリーシャが駆け寄る。 「だいぶ手強い相手だった様だね」  周りの様子を見渡しながら、リサがそう聞いてくる。  それもそうだろう。地面は所々えぐれているわ、木は数本傾いていわ、辺りには何かが燃えたような匂いが漂っているわ、挙句の果てには疲れ果てた用に座っている三人と、戦闘不能状態のアーシィ。 「……」  この様子を見られては『相手は唯の雑魚でした』とはとても言えない。実際、かなり危険な相手だったのは事実だし。  奇妙な静寂の中、『わぁ、大きいタンコブ』だとか『左手も少し火傷しているよ』と言った、トリーシャの声が良く響いた。  応急手当ても済み、ある程度回復した一行は『アーウィルを締め上げる』と言って聞かないリサを何とかなだめ、雷鳴山を下りて行く。  下山した一行を待っていたのはアルベルト達だった。気になって仕方なかったのだろう、かなり先に下山していたシェリルやクリスの姿もある。 「うぉっ、随分酷い格好だな」  頭と左手に包帯を巻いたアーシィの姿を見て、アルベルトが驚きの声を上げる。 「よし!すぐにドクターのところへ連れて行ってやるぞ」  言うが早いか、シュウ(仮の人格)に肩を貸してもらっていたアーシィをマグロのように肩に担ぎ、クラウド医院へ向けて走り出した。 「…アルベルトさん、ものすごく元気だね」  少々呆れたようにトリーシャが呟く。 「この後もし良ければ、さくら亭で無事を祝って宴会をしたいが、皆どうする?」  唐突にディムルがそう言ってきた。何故か反応が無い。 「アーシィさんがさっき言ってたんですよ」  助け舟を出すようにシュウが口を開く。 「行く行くっ、絶対行く」 「楽しみ〜。アーシィさん、またフルート吹いてくれるかな〜」 「うん。きっと吹いてくれるよ」  マリア、ローラ、トリーシャはかなり乗り気のようだ。他の皆も依存は無いらしい。 「へぇ、アーシィ君ってフルートが吹けるの?」  ヴァネッサがローラにそう尋ねる。 「とっても上手なの〜。時々、教会でも吹いてくれるのよ〜」 「それにね、ボク達が出会った時も吹いていたんだよ」  ローラとトリーシャがそう言う。ローズレイクで純銀製のフルートを吹いていたのが出会いのきっかけだったのだから。 「ってことは全部アーシィのおごりか?」  ケインがディムルに尋ねてきた。ヴァネッサ達の会話は聞こえてないらしい。 「本人はそう言っていたぞ」  ディムルがそう言うと、ケインはガッツポーズを取って喜ぶ。その様子を見ながら、ディムルはにやっと笑い、 「ただし、人形代はケイン持ちだってよ」  意地悪く耳元でささやく。 「なんでだー!」  ケインの絶叫がエンフィールドに響き渡った。空ではカラスが鳴いていた。夕日が綺麗な午後だった。 ●第72話 投稿者:YS  投稿日:11月 6日(月)02時58分57秒 「・・それにしても、最近は面白いことばかりですね・・」  教会の一室でロイはいつものように独り言を言った。最近はボケた老人のようになっている気さえする。  今日持っているのは本ではなく人形である。ケインが弁償をさせられる羽目になった腹話術の人形だ。あの後わざわざ粉々になった物を拾い集め、魔法である程度復元し、同じ型の別の人形を借りてきて直しているのだ。 「・・友人の頼みですし、こういうのはなれてるからいいんですけど・・」  この場合の友人とはアーウィルとトゥーリア、それにイヴのことだ。断じてケインは含まれていない。  アーウィルはあの後、宴会中にひょっこりと帰ってきた。リサには心配してされていなかったが、他の何人かは心配していたらしく何があったか聞こうとしていたが、詳しいことは何も話さなかった。  遺跡には調査隊が向かったが、事件前と同じく奥には進入ができなかったので再び放置されることになったらしい。  それから、なぜかポチはまだ存在していたらしい。ロイが魔法で干渉したためか、ポチがオリジナルなのかはわからないが。ポチはどこに引き取られるか問題になったが、結局ロイの命令しか聞かないという理由で教会で力仕事をしている。 「・・ケインさんにはこの前の仕事の分とこの人形の修理分はきっちりいただかないといけませんね・・」  ロイの横には針山と小さな親指の後のついた契約書が置いてある。急いでいたはずなのにきちんと書かれていることから書きなれているのだろうと判断した。 「・・ということは、契約の絶対性もわかっているはずですよね・・」  そのケインは盗掘の罪でいろいろ役所から言われていたが、証拠不十分ということで罪はないということになったらしい。  盗掘をしたのは師匠なのだから関係ないような気もするが、ちゃっかり罰金はとられたらしい。  シュウはまた剣を買いなおした。今度のは少し高めの物だ。本人はいつ欠けたのか記憶にないといっていたが値引きはされなかった。  店主のマーシャルの話ではどんな物でも触れるだけで切れるらしい。それならなぜ鞘に入るのか、という質問には答えられなかったからやはり怪しいのだが・・  アーシィの怪我は数日後には完治し、今は元気に働いている。  ディムルは次の日にはいつも通りの生活に戻っていた。宴会の時にはアルベルトやヴァネッサにいろいろ絡まれていたが・・彼にはそういう厄介なことにかかわる何かがあるのだろうか。 「・・よし、できた・・」  人形は元通りの形に戻っていた。ただ、これはロイが直しているのでルーク・ギャラガーの作品という価値的なことまでは元通りとはいかないが、トゥーリアが納得する位にはなっている。  そして、元通りになった腹話術の人形とケインの契約書を二枚ほど手にロイは教会を後にした。この時間ならトゥーリアはリオと一緒に公園にいるはずだ。人形を直したら一緒に遊ぶ約束をしている。 「・・たまには童心に帰ってみますかね・・」  子供なのだから童心に帰るという表現はどうかと思うが・・  その日、ロイは久しぶりに日が暮れるまで外で遊んだ。 ●第73話 投稿者:ashukus  投稿日:11月 6日(月)23時26分42秒 『流れ者』 魔法兵器の騒動から目立った事件も無く平和なエンフィールド、だが今日は違っていた 街に何者かに連れられて来た軍隊経験者(リサ談)の一団が隣街と間違えエンフィールドへと来てしまったらしい。 しかしすぐに自警団団長直属部隊のロビンにより事態は収集された。表向きは・・・・・・ 自警団事務所 「あ〜疲れた〜〜」 イスに寄り掛かるシュウ、ちなみに髪が伸びてきたので額にバンダナをまいて髪を上げていた。 髪が黒そしてバンダナも黒ではおかしいのか灰色の物を使っている。 本人いわくイメチェンらしいが服は相変わらずだ、最近は黒のジーパンに灰色Tシャツの上に黒いYシャツのような物を羽織っている。 と、アルベルトがドアを開け入ってきた 「おい、シュウ結局どうだったんだ?」 アルベルトもイスに腰掛ける 「あ、アルベルトさん、どうやら手違いでエンフィールドへ来たようですよ」 「手違いだ?」 「ええ、隣町に雇われる労働者達だったようです」 「ほぉ・・・しかしお前も苦情処理専門っても大変だな」 笑いながら話すアルベルトシュウは苦笑い 「ははは・・・本当に今日は疲れました・・・」 ぐったりしているシュウ、と、またもドアを開けて誰かが入ってきた 「いたいた、アルベルトさんにシュウ君」 トリーシャだ後ろにはクレアの姿も見える 「なんだクレア、何か用か?」 「兄様、お弁当にお醤油をつけ忘れてしまって」 クレアに続いてトリーシャが口を開く 「ボクはそこで会ったから一緒に来たんだけどね」 と、トリーシャがぐったりしているシュウに気が付いた 「あれ?シュウ君どうしたの?」 トリーシャの問いにアルベルトが答えた 「ん、ああ、アイツは今日のあの事件を捜査してたからな」 アルベルトの言葉に少し意外といった様子のトリーシャ 「へぇ〜シュウ君も捜査とかするんだ」 トリーシャの言葉にまたも苦笑いでシュウが口を開く 「はは、トリーシャひどいな〜俺も一応自警団員なわけだし・・・バイトだけど・・・」 シュウはそう言うと何かを思い出したように体を起こす 「そういえば、アルベルトさん、こんなこと言っちゃいけないんですけど、なんか怪しい人がいましたね」 「あん、怪しい奴?」 「俺も人のこと言えないんですけど全身黒ずくめで、手にはボウガンを持って、中年くらいの男なんですが 話し掛けたら無視してどっかいっちゃって、それとなぜか街を出るときにロビンさんの隣にいたんですよ」 「そりゃお前の考え過ぎだろ」 軽く受け流すアルベルト 「そうだと良いんですが・・・」 ●第74話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:11月 7日(火)18時24分00秒  さくら亭。 「ふう……」  カウンターに腰掛け、リサは溜息を吐き出した。 「お疲れ様。でも、何も無くて良かったわね」  パティが水を出す。 「まあね。今回はあのバカも関係してないようだし。あいつが絡むと、知らない内に裏で色々好き勝手やられて、 とんでもないことになる」 「そんなに凄いの?」  パティは、あまり信じられない、という顔で尋ねる。呑気なアーウィルの姿しか知らないのだ。無理も無い。 「あんまり、こういう場所で話すべきじゃないような事になるんだよ」  話は終わり、とばかりに、リサはピザを注文した。 「そう言えば、アーウィルは最近大変そうね」  トーヤとディアーナの二人に加え、例の騒ぎでどのように魔法兵器と戦ったのか聞かせろ、とピートに追いかけられているらしい。  他のメンバーからは根掘り葉掘り聞き、残るはアーウィルだけ、とピートが話していた事をリサは思い出した。 「まあ、ロイから聞いた事から判断すると、あいつ、あの技をぶっ放したらしいね……まったく……」  苦々しそうに呟いて、リサはピザを口に放り込んだ。 『なかなか面白い事になりそうね。楽しみだわ』 「君が楽しんでるのは、事態が最悪な証拠だ」 『嘘つき。本当は、あなたも楽しみなんでしょう? 今回は、気兼ね無く遊べるわよ』 「君は、この前遊んだばかりだろう。とにかく、今回の事に自分は関係しないからな。これ以上目立って、 正体が露見するとマズい」 『その事が、この街の存在に関わっていても、そうやって人間の真似を続けていられるかしら?』 「……何か掴んでいるのか」 『言ったでしょう。この辺り一帯は、全てわたしの『ゲーム盤』なのよ。見落とす事など無いわ』 「余計な手出しをするな……今回の事は、我々の出る幕ではない」 『あら。わたしは脅迫するのかしら? <コードΩ>』 「……その名で呼ぶなと、以前に言ったぞ、<コードα>」 『怖い顔しても駄目よ。あなたがこちらの陣地に入ってこない限り、地殻破壊攻撃でもわたしは滅ぼせないわ。 解ってるんでしょう?』 ●第75話 投稿者:美住 湖南  投稿日:11月 7日(火)23時33分19秒  −さくら亭−  従業員用の裏口から入り、親父さんに挨拶をしてカウンターに入った。今日はいわゆるポニーテールに髪を縛っているので後ろから見ると背の低さと相まって女にも見えないこともない。 「あ、やっと来た。もうすぐお客さん来るからね」 「あぁ・・・」 「やっぱり、疲れてるねぇ。ディムル」  カウンターに腰掛けているリサは気が付いたようだ。 「そりゃ、朝早くからピートにあれだけしつこくつきまとわれれば、な。そうだ!リサ、全身黒ずくめでボウガン持ってる男、知ってるか?」 「はあ?黒ずくめのボウガン男?あたしは知らないね」  水を飲み干すとおかわりを頼んだ。 「そうか・・・。身のこなしがちょっと違ったんだよな。なんというか・・・兵士・・傭兵みたいな感じでな。ちょっと気になったんだが」 「どこで見たの?」  関心を持ったようでパティが聞いてきた。皿などを並べながら聞けるのだから女はすごい。 「えぇっと・・陽の当たる丘公園だ。他にいたヤツらとは違った雰囲気だったな」 「ふぅん。なにもないと思うけど。ここのところ騒動続きだからね。わからないよ」  なにやら含みを持った言葉だ。 「・・・おれも少しは休みたい・・・」 「ま、巻きこまれないようにがんばりな」  ディムルは心の中で涙の泉でおぼれかけていた。 「(かんばって済むことならばいくらでも・・・)」  しかし、すぐに現実に引き戻された。多数の客が入ってきたのだ。昼食の人なので暴れそうな野郎はいない。 「ディムル!注文とってきて」 「おう!」  −客が去ったあとのさくら亭−  あとは遅めに昼食を取りに来た人々を迎え見送るだけだ。 「ふう。一段落だな」  カウベルを鳴らしてシュウが入ってきた。今日は遅めだ。 「よ。何にする?」 「そうだな〜。楽なところで日替わり」 「ほんっとに楽だな」  今日の日替わりはご飯、みそ汁、焼き魚、カブの漬け物、生卵。栄養もきっちり考えられている。 「は〜い。日替わりお待ちぃ」  パキッと割り箸を割った。 「いただきます」  洗い上がったお皿をまた新しく並べていてディムルは思い出した。 「そういえば。シュウ、黒ずくめのボウガン持った男見なかったか?」  みそ汁を啜ると言った。 「君の見たのか?」  巻きこまれると思ったがもう遅い。 「・・・あぁ」 ●第76話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:11月 8日(水)18時31分03秒 ―セントウィンザー教会の一室。  彼は平穏な午後を味わっていた。外出時に着るコート(耐刃繊維製)は、今は着ていない。くすんだ金髪に全体的に黒っぽい服装。軽近視用の眼鏡は、部屋の中の机の上に置いている。 (たく・・・ロイのやつに借りを作ったしな・・・ジョートショップにでもいくか?)  彼、ケインは胸中でごちた。先日の魔法兵器の一件で、ケインは悪魔に取り付かれた人形破壊の責任を取らされていた。その時ロイが人形を直し、修理代の請求をされているのだ。 「つーか、これのせいだよな」  刃が反射して輝く。『守護する白爪』。『ファング』ともよぶ古代の魔法兵器。師匠から譲られた物で、これが原因で例の悪魔に狙われたのだ。 「・・・我は汝を振るう者。ひと時真の姿を」  短剣が姿を変え、長剣へと変わる。  一言に『長剣化』といっても二通りある。ひとつは、以前見せた日に一回が限度の[覚醒解放形態]。自分や周囲の魔力や魔法を吸収し、莫大な破壊力へと変える形態。そして、もうひとつが今の[長剣化]。この形態だと効果もデメリットも短剣時と同じ。魔法文字も数は増えない。  なぜ長剣で持ち歩かないかというと、小さい方が邪魔にならないからだ。   「我は汝を振るう者。仮初めの姿へ」  剣をじっと眺めてから、短剣形態へと戻す。右腰につった鞘―前は後ろ腰にあったが、隠す必要がないので右腰に持ってきた―に戻すと、ケインは外出準備を始めた。 「黒ずくめの男、ねぇ・・・」 「君は見てないのかい?結構騒ぎになったんだが」 「俺は今日は教会から出てないからな。ところでテディ、この『劇場の大道具仕事』の依頼はうけてないんだな?」  ジョートショップ。今そこにはケイン、アーシィ、テディ、アリサがいた。アリサは奥に引っ込んでいるから、実質3人(?)だが。 「そうっすけど・・・ケインさん、うちで受けきれなかった仕事を取っていくのはやめて欲しいっす!」 「仕方なかろう。はやくロイに借りを返さんといかんのだから。アーシィ、その黒ずくめの男がどうかしたのか?」 「ん〜まだはっきりしないんだけどね。なんかありそうでね」 「・・・今回も巻き込まれるのかな・・・」 「お茶がはいったんですけど・・・いかがですか?」  ケインがため息をつくと同時、アリサが紅茶を持って出てきた。彼は、お茶に目がない。 「いただきます」 ●第77話 投稿者:タムタム  投稿日:11月 8日(水)21時14分19秒  カウベルが静かに鳴り、扉が開かれる。 「こんにちは」  そう言って入ってきたのはシーラだ。アレフとルーまで一緒にいる。 「いらっしゃい。シーラ。こっちへ来て座りなよ」 「はい」  アーシィに促され、隣の席に腰を下ろす。あまり会った事が無いためか、少し緊張しているようだ。  今日、シーラが来たのは今度セント・ウィンザー教会で行う事になっている、演奏会の打ち合わせをする為、それは良いとして、アレフはシーラを見かけて、ルーは占いの結果、それぞれの理由で付いて来たらしい。  取り合えずお茶の時間と言う事で、テーブルの上にはアップルパイとティーカップが置かれている。 「それにしても、街にいた連中は何者だったんだ」 「なんだか怖かったわ」  ルーが疑問を口にする。午後には居なくなっていたとはいえ、気になるのだろう。 「ここにも来たっス。『仕事をよこせ』と言ってたっス」  そう言いながら、チラッとケインの方を見る。当のケインはそ知らぬ顔で紅茶をすすっているが。 「大丈夫だったんですか?アリサさん」  テディの言葉を聞き、アレフが心配そうに身を乗り出しながら尋ねてきた。 「大丈夫っス。アーシィさんが一発で黙らせてくれたっス」  アリサに訪ねたはずが、何故かテディが答える。だが、その言葉を聞き、シーラ、アレフ、ルーが驚いた表情でアーシィを見た。シーラにいたっては少し怯えている。 「テディ。誤解を招くような事は言わない様に」 「今の言葉も誤解を招くんじゃないか?」  アーシィに注意され、しゅんとしてしまったテディを見ながらケインが口を挟む。確かに、見方によっては脅している様にも見えてしまう。 「口で注意してくれただけなんですよ」  アリサが助け舟を出してくれた。そのおかげで疑惑の視線から逃れる事が出来た様だ。 「で、なんて言ったんだ」  興味津々と言った表情でアレフが尋ねてきた。 「ん〜。それほど大した事は言っていないつもりだったんだけどね。まぁ、礼儀知らずにそれなりの対応をしただけだよ」  それだけ言うと、アーシィは小さく肩をすくめた。ケインは(本当に誤解なのか?)と思っているが、口には出さない。  言葉が途切れたのを見計らったかの様に、突然扉が開かれた。 「…随分変わった面子だな…」  扉を開けるなり、そう呟いたのはアルベルトだった。予想外のメンバーを見て呆気にとられている。最も、予想できる人間がいたらそれはそれで驚嘆に値するが。 「アル。取り合えずこっちへ来て座ったら?」 「そんな所で、何時まで間抜け面を晒しているつもりだ?」  アーシィの言葉の後に、ルーがきつい事をさらりと言う。その一言で我に返ったアルベルトがゆっくりと近付いてきた。  何か言うかと思っていたが、アリサが見ている所為かルーを睨み付けただけだった。 ●第78話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:11月 9日(木)17時37分04秒 『取引に応じるなら、わたしの掴んだ情報を分けて上げてもいいわよ』 「何が望みだ」 『そうね……また、わたしと遊んでくれる事を約束してくれるかしら?』 「……考えておく」  そう言い放ち、彼は部屋のドアに手をかけた。 『ランディ・ウエストウッド』 「…………」  一瞬、動きが止まるが、振り返る事無く部屋を出る。 『ふふふふ、好きなだけ考えるといいわ。時間は無限に有るのだから。あなたとわたしにだけわね。<コードΩ>』  微かに部屋の空気が揺らぎ、一瞬後には部屋は完全な無人となった。 「成る程……どうやら同一人物だな。しかし、ボウガンとは物騒なやつだ」  ディムルの言葉にシュウは頷き、 「それに、ロビンさんと一緒居たのも気になります」 「リサ、何か心当たりは無いか?」  ディムルがリサに水を向ける。 「うーん、直接見てみないことにはどうもね……あのバケモノぐらい目立つ奴ならともかく」 「バケモノ……ああ、アーウィルか。そう言えば、見かけないがどこに?」 「いつも通り、客室に引っ込んでるわよ。お昼はもう終わりだし、そろそろ降りてくるんじゃないかしら?」  ディムルの問いに、パティが答える。  何しろアーウィルは一人で席を二つ占領してしまう為、昼食時などの忙しい時は自主的に部屋に引っ込むか、 外出しているのが常だった。 「とりあえず、あいつにも聞いてみるか。何か知ってるかも」  などと話していると、足音も無く階段をアーウィルが降りて来た。 「おや、顔をそろえて何か相談でもしてたのかな?」 「この三人で不意打ちしたら、あんたをどうにかできるか否か相談してたのさ」  リサがきつい冗談をぶつける。 「ははははは。それは勘弁してほしいね」  アーウィルは軽く笑って受け流すと、ドアに向かった。  こういうシャレにならない冗談を言い合える辺り、この二人の間には一種の信頼関係があるのかもしれない、 とディムルは思った。  無論、油断のならない、普通の関係とは言い難いものだが。 「アーウィル。どこ行くの?」  パティが尋ねる。 「今度教会で演奏会があるだろ? リオとトゥーリアのデートのお膳立てをしてやろうと思ってね」 「ああ、シーラの演奏会ね。でも、ちょっと待って。話があるって、今日の騒ぎの事で」 ●第79話 投稿者:ashukus  投稿日:11月 9日(木)22時42分56秒 リサが口を開く 「あんた、今日の騒ぎのこと何か知らないのかい?」 「ああ、何も知らない」 きっぱりと答えるアーウィル 「それじゃあ、黒ずくめのボウガン男については?何か知らないか?」 と、ディムル 「知らないな、っとすまないがそろそろ行かせてもらうよ(なるほど、ランディ・ウエストウッドか・・・)」 そう言うとアーウィルはカウベルを鳴らしさくら亭を後にした 「駄目、か」 「情報は無しですね」 ディムル、シュウ、続いてリサ 「どうだか、アイツの事だし案外なにか知ってるかもね」 と、シュウがなにか思いついたように言葉を放つ 「そうだ、リカルド隊長なら何か、あ、でも今日は非番・・・う〜ん失礼かな〜」 リサが続く 「しょうがないね、私達も一緒に行くよ、パティいいかい?」 「『私達』っことはおれも含まれてるわけか・・・」 「お昼時を過ぎたからお客さんも少ないし、いいわよ」 と言う訳でフォスター家へと向かったリサ、ディムル、シュウの3人 その頃ジョートショップ 「あら、アルベルトさんいらっしゃい」 アリサの言葉に硬くなるアルベルト 「あ、い、いや、こんにちはアリサさん」 「どうです?お茶でも」 「はい!!いただきます」 その言葉を待っていたかのようなアルベルト 「わかりやすい奴だな」 ストレートなルーの言葉 「コイツ・・・」 店内で暴れるわけにもいかずまたしてもルーを睨みつけるアルベルト 「あの・・・・」 二人の状態(正確にはアルベルトがルーを睨んでいるだけ)に戸惑っているシーラ 「どうしました?アルベルトさん、さぁ、どうぞ」 「ア、アリサさん、あ、ありがとうございます」 嫌なムードをかき消すナイスタイミングなアリサ 「そう言えばアルベルトさん、黒ずくめの人を見なかったっスか?」 突然テディが言った、お茶をすすりつつ答えるアルベルト 「ズズズ、あん?黒ずくめだ?・・・そういゃあさっきシュウが怪しい奴がどうのこうの言ってて黒ずくめの奴とかなんとか言ってたな」 「ん〜アル、それでその男は何処に行ったんだ?」 と、アーシィ 「例の一団と一緒に出ていったみたいだがな」 「ん〜そう・・か」 ●第80話 投稿者:タムタム  投稿日:11月11日(土)22時34分42秒  辺りは薄暗くなり、街にガス灯の火が灯る。通りには家路へ着く人達の姿が増え始め…数時間。 「もう、こんな時間か」  窓の外を見たルーがそう言いながら立ち上がる。打ち合わせなのか世間話なのか、区別の付かなくなるような話をしていて、誰も時間の事は気にしていなかった様だ。 「そろそろ帰るか」  ケインが言い、全員が帰り支度を始める。アーシィも立ち上がり壁に掛けてあったコートを掴み、 「シーラ、送って行くよ」  コートを着ながらそう声を掛ける。シーラも昼間の事があった所為か、断りはしなかった。 「皆さん。気を付けて帰って下さいね」 「気を付けて帰るっス」  アリサとテディに見送られ、全員がジョートショップを後にした。  暗い夜道をアレフ、シーラ、アーシィは歩いていた。 「あの…アーシィさん。今度の演奏会でフルートを吹いて下さるんですよね?」  突然シーラが声を掛けてきた。一曲だけだが、ピアノにあわせ演奏する事になっている。何でも、ローラが『シーラちゃんとアーシィさんの演奏が一緒に聞きたい』と言い出したのが発端らしい。  まあ、『孤児院と住民達の交流』と言う名目上、子供達の多少のわがままはあっさり通ったりするのだ。 「ん〜。そう言う事になっているね。時間の有る時にでも練習しようか?」  アーシィが微笑みながらそう答えた。ジョートショップの仕事をしながらなので大変そうだが。  その様子を見ながら何となく面白くないのがアレフだ。『シーラを狼と一緒に帰らせるわけにはいかない』と言い張り付いて来たのは良いが、何故か蚊帳の外にいるような気がする。このままでは蚊に刺されてしまいそうだ。 「…ケッ、つまんねぇ仕事を受けちまったぜ…。オイ!テメェが<魔導師フォーヴィル>だな」  突然何者かに呼び止められ、歩みを止める。ガス灯の下に現れた男は全身黒ずくめ、右手をコートのポケットに突っ込み、左手で構えたボウガンをアーシィに向けている。 「きゃっ」 「あぶねぇオッサンだな。全く」  そう言いつつも悲鳴を上げたシーラをアレフが抱き寄せる。 「ん〜。確かに私がアーシィ・フォーヴィルだが、何か用でも?」  アーシィはこんな時でも何故か呑気に構えている。アレフとシーラはかなり不安そうな表情だ。 「クックックッ、随分余裕だな。オイ!」  言うが速いかボウガンの引き金が引かれる。が、その矢は発射される寸前に弾け飛ぶ。アーシィの放った魔法弾だ。 「…チッ、早撃ちだと?俺は目を離してなかったぞ…」  誰にも聞き取れないような小声で呟く。ボウガンが使えないと言うなら接近戦しかなく、身を低くしてダッシュする。 「アレフ!シーラを連れてすぐに離れろ!」  何時に無く切迫した声を上げる。敵の実力と自分の格闘能力を天秤に掛け…るまでも無く答えは出てる。夜のため、使用可能な魔力が殆ど残っていない。駄目もとで魔法弾を放つが、あっさりその右腕で弾かれる。  男の右腕がかすみ、それと同時にアーシィは左手で魔法障壁を展開させる。ガキン!金属を思わせるような衝撃が障壁を打ち、右足を軸にその身が旋回する。男はさらに追撃をかけ様として、何かが視界に飛び込んできたのが見えた。  それは赤い宝石のついた杖。攻撃の威力を利用した素早い一撃。しかし、狙いが甘く、それは目の前を通り過ぎ赤い軌跡を描く。再度追撃しようとしたが、違和感を感じ男は一歩後ろへ下がる。  弧を描いた軌跡は未だ杖の先端に繋がっている。まるで大鎌の如く。それこそが(死を招き、魂を導くもの)と呼ばれる杖の能力。生命力を刃に変える武器の力。  二人は距離をとって睨み合う。アーシィに余裕は無かった。