●第61話 投稿者:タムタム  投稿日:10月30日(月)21時35分05秒 「お父さんがいない!?」  自警団事務所に着くなりトリーシャは叫び声を上げた。入れ違いになったらしく、リカルドは第一部隊の人間を何人か引き連れて出て行った後らしい。残っていた団員の話しではアルベルトと合流し雷鳴山へ向かうとの事。  しかも、学園の人間と一緒に下山して来たようだ。だが、リカルドやアルベルトはトリーシャとシェリルが無事な事を知らないはずである。  合流場所を聞くと、今度は無事を知らせるため走り出した。  一方その頃アルベルトは…荒れていた。 「何が『魔術に頼るのだ、当然であろう』だ!馬鹿みたいな金を要求してきやがって!」  魔術師組合に協力を要請したところ、莫大な金を請求されたためである。さらに、「街に被害が出るかもしれない」と言っても「下りてくる保証も無い」と言われた事が余計不機嫌にさせていた。 「随分荒れているじゃないか」  そのため、リサが近付いてきた事にも気が付か無かった様だ。 「リサか。なんの様だ」 「クリスから事情は聞いたよ。私も同行させてもらう。いいね」  静かだが有無を言わさない迫力がそこにはあった。が、別に断る理由は無い。それどころか、今は少しでも戦力になる人間が必要である。リサの申し出は逆に有り難い位だ。 「別にかまわねぇが、かなり危険だぞ」 「そんな事は判っているさ」  緊張を隠せないアルベルトとは対照的に、リサの様子はいつもと変わらなかった。 「今度は分かれ道か」  ケインがうんざりした様子で呟く。無限回廊を抜けたはいいが、今度は分かれ道の連続である。いくら進んでも分かれ道だが、今回は引き返して見ればあっさり最初に戻る事が出きた。 「ん〜。ここまで徹底しているとは…面白い…」  最後の言葉は聞えないように呟いたつもりだが、ディムルがものすごい目つきで睨み付けてきた。どうやら聞えてしまった様である。 「お客さんだ」  そう言いながらディムルが槍を持ちなおす。現れた魔法兵器は右から三体、左から五体。 「冗談だろ…」  そう言いながらもケインは『ファング』を構える。アーシィは喋る前に魔法弾を放ち、右から来た三体を打ち倒す。 「私がやろう」  いつの間に持ち替えたのか、銃の変わりに二枚のカードがその手にはある。色は青と紫。 『水と風のカードに込められし魔力よ、静かに留まりゆくその力を示せ。わが魔力に導かれ奏でられるは氷の乙女の鎮魂歌≪アイス・レクイエム≫』  魔力を放出したカードが形を失い消失してゆく。それと同時に凍てつくような冷気が魔法兵器を包み込み、氷の彫像へと変えていく。 「ちょっと待て!」  ケインとディムルが声を揃えてアーシィへ詰め寄って行く。いくら本来の魔法兵器より弱いとはいえ、それでもかなりの強さを持っていた。それをいともあっさり葬られては声を荒げたくもなるだろう。 「何なんだ!その銃は!」 「聞いた事無いぞ、そんな魔法は!」  前者がケイン、後者がディムル。『ファング』でもまともに通用しない相手を打ち倒すような銃について、聞えた『音』が単音ではなく音楽になっていた事について、それぞれ不思議に思ったようだ。 「説明するから落ち着こうな。二人とも」  アーシィの説明によると、銃の名前は『食らい尽くす者』。契約した者の魔力を常に吸い取り威力を上げる。魔力が尽きると契約者の大切な記憶を食らい、最後には命を食らう呪われた銃。  魔法の方は企業秘密らしい。(マリアがいては話せる物も話せない)一言で言うなら<失われた魔法>との事。 「なんでそんな銃を使うんだよ…」  その質問にアーシィは答えなかった。 ●第62話 投稿者:ashukus  投稿日:10月31日(火)23時50分26秒 「・・・・・・・・」 黙り込んでいるアーシィ、結局なにか深い訳が有るのだろうと言う事でそれ以上追求はしなかった いや、している暇は無かった。またも魔法兵器が姿を現したのだ。数は三体 「ん〜しかたない、カードもの無駄使いは出来ないしな・・・」 銃を構えるアーシィ 「数が多すぎる」 『ファング』を構えるケイン 「またお客さんか」 槍を構えたディムル 「またなの!?どうなってるのかしらほんとうに・・・・」 そしてヴァネッサは後ろでセリーヌ、ローラ、マリアのガードをする しかし後ろからも魔法兵器が姿を現した。その数2体、俗に言う挟み撃ちだ。突然の敵に驚きつつ銃を構えるヴァネッサ、 その手は微妙に震えている。そしてその震える手で銃の引き金を引いた その頃アーウィルそしてシュウ。と、アーウィルが突然口を開く 「そういえば、お前は誰だ?それから自警団員をしているあれは誰だ?」 アーウィルの質問に少し考えた後に答えるシュウ 「・・・・・『アイツ』は偽物・・・・とだけ言っておこう」 「ほぅ、なるほど」 と、木の影から魔法兵器が一体姿を現した。構えをとる二人、だが様子が変だ、攻撃してくる気配が無い。 よく見ると誰かが魔法兵器に乗っかっていた。そう、その魔法兵器はロイによって操られている通称『ポチ』だったのだ 「お供しますよ、戦力は多い方が良いでしょう?」 「そうだな、まぁいいだろう」 「・・・・ああ」 アーウィルそしてシュウが答える 「どうしたんですかシュウさん?何処か具合でも?」 「・・・・いや」 雷鳴山中腹辺り アルベルトの槍が魔法兵器を貫いた。 「へっ、手応えがねぇなこいつら、おいリサ魔法兵器ってのはこんなもんなのか?」 アルベルトの言葉にナイフで魔法兵器を切り裂いたリサが答える 「いや、魔法兵器ってものがこの程度のはずが無いよ、これは何かあるね・・・・」 どうやらここにいる魔法兵器はコピー失敗作の失敗作のようだ 「これなら隊長の手を煩わせる必要もねぇな」 そうアルベルトが言った瞬間何かが歩いてくる音がする ズン、ズン、ズン 「まさか」 木をなぎ倒し10メートルほどの魔法兵器が現れた。例の鎧武者と同じタイプだ 「!!やべぇ、リサ逃げるぞ、コイツは今までのとは格が違う」 アルベルト達が動き出す前に魔法兵器の方が先に動いた。大きく腕を振り上げる ドォン 木をなぎ倒した。例の光球を使うかと思ったが、これまた失敗作のようで魔法兵器のくせに魔法は使えないらしい 「驚かせやがって、リサ!!」 「分かってるよ!!」 アルベルトとリサは10メートルも有る化け物に斬りかかった ●第63話 投稿者:YS  投稿日:11月 1日(水)02時22分53秒 「・・切りがないですね・・」  それはロイの正直な感想だった。おそらく、この事件に巻き込まれ魔法兵器と戦っている者全員が思っていることだろう。  指令塔のある物とない物の差であろうか、ロイの操る魔法兵器ポチは他の魔法兵器を簡単に倒している。アーウィルやシュウもそれぞれに現れる魔法兵器を片っ端から倒している。  しかし、いくら倒しても切りがない。倒された魔法兵器のコピーはそのすべてが土に帰っている。時折現れる謎の魔物たちも倒すと消えてしまう。 「・・もしかして・・」  ふと、ロイの頭にある考えが浮かんだ。 「・・あの、アーウィルさん・・」  アーウィルを呼び止めて、ポチに周囲の警戒を命令しておく。 「なんだ?」 「・・これは推測なんですが、この魔法兵器は皆ゴーレムの一種なんじゃないでしょうか。もし誰かが魔法兵器を複製するのなら失敗作を山に捨てるより自分で処分するでしょうし、なんらかの計画にしては意味がありません」 「確かにそうだな、陽動作戦なら街で暴れさせる方が得策だ」 「ええ、それとあなたが戦った魔法兵器は10メートルもあったのに他の場所で出会うのは2メートル程度、それも同型のサイズ違いの物です」  シュウは話が予測できているのか、ポチと一緒に魔法兵器の警戒をしている。 「そして、これから向かっている遺跡は通常は内部から出ることができない場所。魔力やそこを通った物の記憶が何等かの形で蓄積される可能性はあります」 「つまり、あの魔法兵器は遺跡に蓄積された魔力が作り出した物だと?」 「はい、何等かの形で遺跡の魔力が解き放たれたならば、恐らく自然消滅する可能性は高いと思います」  その頃、その遺跡の中では激しい戦いが繰り広げられ・・るはずだった。 「・・何が起きたの?」  ヴァネッサは自分の放った弾が外れたことは確認している。  そして、弾は遺跡の壁に当たり、魔法兵器には当たっていないはずだった。だが、魔法兵器は実際にその姿を消していた。 「どうなっているんだ?」  ディムルの耳には、もう奇妙な音は聞こえなくなっていた。  同じ頃、アルベルトは木にぶつかっていた。  突然魔法兵器が消えたため、勢いが余ったのだ。 「何をしているんだ、アル?」 「大丈夫、アルベルトさん?」  そこにリカルドと合流したトリーシャの二人が現れた。 ●第64話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:11月 1日(水)19時09分11秒  遺跡の中に、魔法兵器の姿は一つ残らず消えていた。まるで全てが虚構だとでもいいたげに。 「どう・・・なってるの?」  ヴァネッサが呆気にとられながら聞いてくる。その他の者もわけがわからないようだ。 「ん〜原因はヴァネッサの弾丸だな」  アーシィが弾痕の残った壁に近づいて呟く。弾痕の下には、傷らしきものもあった。 「これは傷じゃなくて魔法文字の一種だな。ケインの武器に彫られているのと似たものだ」 「つまり、これがこの遺跡の罠や魔法兵器の稼動用の魔力を制御していたわけか。そして、文字の一部がかき消される事で効果もなくなったわけだな」 「そう。これでもう足止めを食わずに戻れるわけだ。ほらね」  アーシィとケインの会話を聞いて、全員が後方を見ると、日の光が差し込んでいた。実はそう奥深くにいたわけでもなかったようだ。 「なら、今度こそ帰るか」 「そうだね。最深部の調査までしてやる義理もない」 「じゃあマリア、今度調査隊についていこ〜」  こうして、一行は脱出できた。そして、入り口付近にはアーウィルらが近づいていた。 「やあ。どうやら皆無事に切り抜けられたようだね」  アーウィルがやたらでっかい剣を携えて話し掛けてくる。 「まあね。あなたこそよくあの大きさの魔法兵器と渡り合えたわね」  真相を知らないヴァネッサが答える。 「ところでシュウ。お前やけに無口だな。気分でも悪いのか?」 「いや・・・」 「セリーヌさんにローラさん。ご無事だったようですね」 「ロイ君!私たち大変な目にあったんだよ〜」  そんな和気あいあいとした雰囲気を破ったのは虚空から放たれた数発の魔法だった。無数の光球は、なぜかケインに集中しながら飛来する。 「障壁よ!!」  障壁に阻まれて光球は霧散する。見上げるとそこには、大きさ40センチほどの人形が浮かんでいた。 「我が・・・主の遺産・・・返せ・・・」 「まさか・・・この剣を?そりゃまぁ、師匠は『盗掘品』だとかいってたが・・・」  その場の人間の目が『盗掘品はダメだろ』といってるような気がした・・・ ●第65話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:11月 2日(木)17時29分30秒 「……やれやれ、もう少し遊んでいたかったが、そろそろ真面目にやるか」  再び光弾を放つ人形を見、アーウィルが誰にも聞こえない呟きと嘆息を漏らした。  同時。  周囲の地面が爆裂した。  一瞬で、視界が噴き上がる土塊に奪われる。 『現在の反射速度 通常の約三十二倍を計測』  アーウィルは加速を開始。人間の視覚と反射速度では捉えられない速度を得る。  人間の反射速度の限界は0.1秒。今の彼の反射速度はその三十二倍。  三十二倍に引き伸ばされた、スローモーションのような視界の中で、人形が再度の攻撃を放とうとしている。  遅い。  のろのろとした動きを見せる人形を<戮皇>で殴り飛ばし、時間を稼ぐ。 (まあ、こんな木偶にやられるようなタマじゃないだろ。これはこいつらに任せるか)  そう判断し、アーウィルは遺跡の入り口に飛び込んだ。 「ふむ。この部分が損傷したか」  機能を失った魔法文字の欠けた部分を左の指で描き直し、復活させる。  さらに遺跡の中枢に割り込み、防衛機構の維持を最優先事項に設定変更。  これは、基本的にロイが行ったことと同じだ。  一瞬の空白の後、アーウィルは無限に続く回廊の中に立っていた。  まずは良し。 「この遺跡を調べられるワケにはいかないんでね。悪いが、ここは封印させて貰うよ」  今日のお遊戯の時間は終わりだ。 (本来なら、トゥーリアのことが片付いたら消える予定だったが……)  もうしばらく、人間のフリをしてこの街で遊んでいることにしよう。  だが、今日はもう充分に遊んだ。少し、真面目になってやるべき事をやる。  自分と、そして何よりもトゥーリアの為にも。 「消えた……?」  アルベルトは首を傾げた。 「……まあいい。とりあえず、早いところあのバカを捕まえて締め上げて吐かせればいいよ」 「うーん。そうだな。とにかく、急ごう。何が起こってるのかよく解らんが、善は急げだ」 「……思いっ切り体育会系だね……考えるより先に行動かい……」  リサは聞こえないように呟いた。 ●第66話 投稿者:タムタム  投稿日:11月 2日(木)20時56分48秒  アーウィルに攻撃を仕掛けたはずの人形が、何故か大木に叩きつけられている。しかも、アーウィルの姿まで見当たらない。 「ん〜。リサの言う通り、まともに戦ったら人間じゃ勝てないか」  あの程度の攻撃でアーウィルが消滅するとは思えない以上、何かしでかしたと考える方が妥当だろう。 「あの…程度…?」  そう呟いた人形の目が妖しく光り、恐ろしいほど魔力が膨れ上がる。 「…すげぇ魔力だ…」 「ん〜、心が読めるのか。どうやら中堅クラスの悪魔の様だね」  相変わらずの調子でアーシィが言い放つ。その所為で、誰かが発した呟きはかき消された。 「…消えろ…」  人形の前に巨大な火球が出現する。それに気付いたケインが魔法障壁を展開し、アーシィが黒いカードを一枚取りだし呪文を唱える。  闇の魔力が開放され、アーシィの左腕を囲む様にスペル・サインが出現するのと、火球が放たれたのはほぼ同時。  魔法障壁の外に飛び出したアーシィは落ちてきた火球を左腕で受けとめる。スペル・サインが一瞬光を放つが、一瞬にして左腕が燃え上がる。 「アーシィ!」  誰かの叫び声が聞える。だがその炎は次第に落ち着き、左手を包み込み、 『クリムゾン・フレア』  放たれた魔法は大きめの火球とそれを囲む四つの小さな火球。それは未だその場に留まっていた人形に命中、大きめの火球が爆発し、周りの小さな火球も破裂。その衝撃と熱量を内側へと押し留める。 『サンダーペンデュラム・ロンド』  ケインの放った四つのペンデュラムが爆炎の中から姿を現した人形を貫き、呟きと同時に放たれた強大な電撃が人形を襲う。 「ハァ!」  動きの止まった人形へディムルが文字通り飛びかかり、気合と共に手にした槍で地面へと叩きつける。 「・・・」  人形の落ちてくる軌道を予測していたシュウが、叩きつけられリバウンドした人形へと無言で居合切りを放つ。一閃。刀は狙いたがわず人形を捕らえ弾き飛ばす。 「硬ってぇ〜」  そう言ったのはディムル。若干、手が痺れている様だ。 「ん〜魔法防御も強い。でも、勝てない相手じゃない」 「ヴァネッサ。マリア達を連れて先に山を下りてくれ」  マイペースなアーシィを横目で見ながらケインが言う。このまま戦い続けたら、巻き込んでしまう可能性が高い。 「…わかったわ。さあ、行きましょう」  身の危険を感じたのか、マリア達も文句一つ言わずそれに従う。唯一人、ロイは残ろうとしていた様だが、セリーヌに腕をつかまれ連れられて行った。 「…主の遺産…」  ふわりと浮び上がった人形の言葉が終わるより早く、 「盗掘品だろうが何だろうが、今は俺のものだ。絶対に渡さん」  ケインが胸を張って言い切った。 「ん〜。盗掘品でも発掘品でも、所有している者が強いんだよ」  そう呟いたアーシィに、ケインは師匠と同じ匂いを感じ取った。 ●第67話 投稿者:美住 湖南  投稿日:11月 3日(金)21時52分38秒  そして、その場に残ったのは、アーウィル、ケイン、アーシィ、シュウ、ディムルの4人。アーウィルがいるのはその場ではないので、抜かすべきか。 「『盗掘品でも発掘品でも、所有している者が強い』、か。それはそうだな。その『物』に対して一番強い権限があるからな」  耳のいいディムルには聞き取られたようだ。アーシィの言葉を評論する。 「─で、どうする?このお人形さんはすぐには退いてくれそうにないが」 「壊したら、トゥーリアがなにか言いそうだな」  言葉に反応したのはケイン。あくまでも、「壊したら」。「殺したら」ではない。 「ん〜。でもこの状況、戦闘不能にするしかないね。人形のほうはきっと私たちを殺すつもりできているだろうから」 「・・・どうするんだ」  この言葉は本人格シュウ。 「ん〜。どこかに弱点があると思うんだが」  そう、アーシィがいった瞬間、ケインと人形を除く全て−6つ−の目が一点に集中した−もちろん、警戒は怠らない−。その視線の先は、 「これしかないだろうね」 「そうだろうな」 「・・・うむ」  視線の先にある物は『ファング』。 「行け」  ぴっと親指を立て、人形のほうに向けるディムル。 「いったい何がだ」 「・・人形は『ファング』を狙っている。そして、人形に宿っているのはおそらく悪魔。今、一番魔力を持つ武器を持っているのはケイン、おまえだ」  いつもより饒舌ぶりを見せるシュウ。 「とにかく、倒してこいってことだよ」 「後方支援はしてやるから、安心しろ」  危険を押しつけているだけではないのだろうか。そう思うケイン。事実、そういう部分もあるのだが。  それまで黙って聞いていた人形。いわゆる「堪忍袋の緒」が切れたようだ。今までにはない魔力が吹き出す。 「おい、この中つっこめっていうのか?」 「ん〜。一応、そのつもりだけど」  にべもなく言い切るアーシィ。 「殺すつもりか?」 「・・・そのつもりはないが」 「すげぇ・・・石の魔力戻っちまったぞ・・なんちゅう魔力だ」  ディムルの持つ槍の石の輝きがもとの状態、否、それ以上になっている。それだけ吸収できるほど魔力が満ちていることになる。 「いいかげん倒しちまったほうがいいんじゃねぇか?これ以上魔力が放出されると空間歪むぞ」「・・じゃあ、『ファング』で戦闘不能にするって案はなしにして」  素早くアーシィが戦闘の指示をする。前衛はケイン、シュウ。後衛はアーシィ、ディムル。これは接近戦の能力と魔法の能力を計算した結果だ。  さあ、戦闘は始まった。 ●第68話 投稿者:ashukus  投稿日:11月 3日(金)23時35分46秒 人形は再び巨大な炎の玉を生み出した。しかも今度は二つである。 「死ね!!」 二つの巨大な炎の玉が前衛のケインとシュウに向かい放たれる。『ファング』の障壁を展開するケイン ドォォン 「重い!!」 しばらく拮抗した後、二つの巨大な火の玉は障壁に阻まれ消滅した。と、タイミングを見計らいシュウが前方に飛び出した。そして人形に斬りかかる、だがそれを察知した人形は土を体にまとい石の鎧を形成した。 ガキィィ 「・・・・!!」 人形には傷一つ付いていない、それどころか刀の刃が欠けてしまった。恐ろしく硬い石だ 「どうする?」 と、ケイン 「ん〜今の状態では方法は一つ思しか浮かばないな、それも成功するかはわからないが」 アーシィがそんなことを言っている間に人形が新たに炎の玉を生み出す。 「あれしか攻撃方法が無いのか?まぁいいか、ケイン今度は炎の玉をスルーしてくれ」 アーシィの意外な言葉にケインは驚いた。 「そんなことをして何の意味がある。返したところで炎は効かないだろう」 「ん〜まぁ見ててくれ、ディムルは人形の動きを止めてくれ」 「ああ、まぁいいが」 と、人形が炎の玉を放つ。前衛の二人に接触したかと思った瞬間、二人は横に飛び炎の玉を避ける。アーシィに向かっていく炎の玉、そしてアーシィは黒いカードを取り出し、そして呪文を唱える。闇の魔力を開放し、左腕を囲む様にスペル・サインが出現した。そして二つの火の玉を受け止めた。スペル・サインが一瞬光を放つそして左腕が炎に包まれる、そしてその炎は次第に落ち着きはじめ、左手を包み込む 『クリムゾン・フレア』 大きめの火球と四つの小さな火球が人形に命中し人形の周辺が凄まじい炎に包まれる。間髪入れずにディムルが槍を地面へと突き立て右手で印をつくり、左手では魔法石を包み込み精神を集中する 「(精霊よ力を貸したもう、我が名はディムル、火を属性とし土を生ずる者、行け精霊たちよ、世界の理(ことわり)を崩す者に鎖を与えよ)」 土で作られた無数の鎖が人形を縛り上げ動きを止めた。それを確認し青と紫のカードを取り出すアーシィ 『水と風のカードに込められし魔力よ、静かに留まりゆくその力を示せ。わが魔力に導かれ奏でられるは氷の乙女の鎮魂歌≪アイス・レクイエム≫』 カードが形を失い消失し凍てつくような冷気が炎を消し、人形を氷の彫像に変えた。だが バリィィン 人形が氷を吹き飛ばす。あれだけの攻撃を食らいながらも無傷に近い状態だ。見た目上は・・・・ 「こんなことをしても無駄だ、さぁ死ね」 ピシッ そう人形が言った瞬間、石の鎧をまとった人形の頭部にひびが入った、そして ピシッ、ピシッ、ピシッ 頭部のひびを皮切りに体中にひびが入っていく 「・・・・・熱疲労・・・か」 今まで黙視していたシュウが呟く、そしてアーシィが口を開いた 「ん〜うまくいったみたいだ」 「貴様・・・何をした!!」 人形の問いにアーシィが落ち着いた様子で答える 「ん〜いくら石で体が硬くしても急激な温度変化に耐えられなかったという訳だ」 瞬間、石の鎧が砕け防御力が皆無となった人形が真っ二つになり宙を舞う 「・・・・・お前はもう終わりだ・・」 シュウの居合抜きだ。それに続いてケインは四つのペンデュラムを放つ 『サンダーペンデュラム・ロンド』 真っ二つにされた人形は雷に貫かれ粉々に砕け散った その頃 「待ってよアルベルトさん」 「待てアル、どうなっているんだ」 先へと進もうとするアルベルトをトリーシャとリカルドが止める 「あっ!!隊長、実は・・・・」 今の状況をリカルドに説明した 「なるほど、魔法兵器は消えたわけか、よしアル、お前はリサ共にこの事態の調査をしてくれ、私達とトリーシャは山に残っている住民を捜索する」 「はっ、わかりました隊長、リサ行くぞ」 「ああ、とりあえずあのバカを見つけないとね」 アルベルトとリサはリカルド達と別れ雷鳴山を進んでいった。 約五分後 「まったく、どこ行ったんだか」 リサが愚痴を漏らしたその時、遠くに人影が見えた。それに気が付いたアルベルトとリサはその人影の方へ走った 「アルベルトくん?」 「あ〜アルベルトさんにリサさん」 聞き慣れた声がした ●第69話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:11月 4日(土)19時13分07秒 「終わったようだね」  アーシィが呟く。4人の前には粉々になった人形が転がっている。 「人形の弁償はケインだよな」 「なっ・・・ちょっと待て!一応全員の連帯責任だろ!!」  ディムルに言い返すケイン。金銭感覚はシビアなようだ。刹那―  ゴンッ!  アーシィの後頭部を何かが襲った。その黒い影は一瞬で4人から間合いをとると空中で静止した。  それは、人の頭ほどの大きさの石だった。 「無事か、アーシィ」 「髪・・・一重で・・・無事かな・・・」  シュウが安否を気遣う。が、アーシィはどうも動けないようだ。 「フッフッフッ・・・我は既に精神体。ゆえに器が滅びても平気なのだ」 「さっきの人形の?」 「どうやら、無生物に取り付くようだな。きりがないか?」  ケインのぼやきに、石が答える。 「ふっ・・・その通り。貴様らはこれから地獄を味わうのだ」  石は、もしかしたら笑っているのかもしれない。確かめようがないが。 「具体的にはどうするんだ?」 「そうだな・・・魚の小骨に取り付いて喉につかえさせたり、ベッドに取り付いてガタガタ揺らしたり、あとは・・・」 「プライドねぇのか・・・?」  ディムルのツッコミにも耳を貸すつもりはない様だ。  「では、ゆくぞ!」 「ホーリーペンデュラム『霊封陣』」  ケインの左腕から二つの振り子が飛び出す。水晶の色は、純粋な光。二つはそれぞれ、地面に水平な五紡星と垂直な八紡星を一筆書きのように描く。石を中心として。 「え?」 「憑依霊を消し去るために封じ込める為の結界だ。空間転移もできんよ。そしてこれが俺の切り札―」  そういって『ファング』を掲げる。 「貴様・・・まさか!」  石の叫びを無視し、ケインは詠唱する。 「我、汝の仮初めの主。我、汝に請う。汝の真の姿、ここに示さんことを。汝が名、守護する白爪!」  瞬時、『ファング』は一振りの長剣へと変化した。刻まれた文字の数も増えている。  ディムルは感じた。ケインの、そしてその周囲の魔力が剣に収束するのを。 「そんな・・・バカな!」 「だから言ったろ、俺のものだと!知ってるよな、いまのこいつの力は、魔力を吸収、収束して強大な破壊力に変換すると!俺も日に一回の長剣化が限度だがな!」 「やめろーー!」  石の絶叫。構わず、剣を振り下ろす。 「ヴァニシング・ノヴァ!バーストモード(増幅)!!」  閃光が炸裂する。全てを飲み込むかのように。 ●第70話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:11月 5日(日)16時25分08秒 「成る程……未確認の遺跡か……」 「ええ、偶然機能を停止させる事ができたのだけれど……その後、最初に言った人形が……」 「で、今その場に残ってるのは、シュウ、ディムル、アーシィ、ケイン、アーウィルか……」 「それが……」  全員を代表して、今までの事を説明していたヴァネッサが口篭もった。 「……消えた? あのバカが?」 「ええ、人形の攻撃で何も見えなくなった隙に居なくなっていて……」 「あんのバカ……やっぱり何か企んでるんだね……」  リサが地団駄を踏んだ。 「考え過ぎじゃないですか? アーウィルさんがここに来たのは、本当に偶然かもしれませんよ?」  アーウィルをこのハイキングに誘ったロイが口を挟む。 「あいつは、一見ただの破壊力バカに見えるけど、実際はかなりの謀略家なんだよ。とにかく、 何を考えてるにしても、ロクなことの筈がない」 「うむ……まあ、何はともあれ彼らと合流しよう。杞憂だろうが、念のため戦闘準備をしておこう。 アルベルト、街まで皆を送っていけ」 「はっ……」  遺跡の最深部。中枢。 「ふむ。思った通りだな。あの程度の悪魔にやられるような連中ではない」  目の前の壁に映し出された外部の映像を見、アーウィルは呟いた。 『ふふふ、そうね。少し、メインディッシュには役者不足だったかしら?』  無邪気な少女のような声が、彼の背中に投げ掛けられる。 「やはり、君だったか。どうもやり方に見覚えがあると思ったら……」 『久しぶりね……今の名前は何にしてるの?』 「ウイップアーウィル。アーウィルで通っている」 『相も変わらず、自分のことに限ってネーミングセンスが無いわね、あなたは。全然変わってないじゃない』 「ほっとけ。君も、変わってないな。こうやって、周囲に迷惑をかけまくる『ゲーム』が好きなところとか」 『いいじゃない。退屈だったんだから。それに、こうでもしないとあなたは来てくれないでしょ?』 「これだけ大騒ぎされたら来ないわけにもいかない。自分が何をしてるか解ってるのか?」 『人間のフリをして遊んでるあなたに言われたくないわよ。まあ、そろそろゲームセットね。 人間と遊ぶのは、あなたと遊ぶのとはまた違って面白かったわよ』 「魔法文字を壊させたのも、わざとか?」 『当然よ』  心底楽しそうに、声は続ける。 『あの悪魔は、あのナイフが欲しそうだったから、力を貸して上げてこの『ゲーム』に参加して貰ったのよ。 でも、もう少し楽しめると思ったのになあ……』  少し不満そうな響きを声が帯びる。 『ご苦労さん。あなたはもう用済みよ』  無邪気で、そして残酷な声が宣告した。 「おのれぇぇえ!!!」  ケインの攻撃が炸裂するまでの刹那、悪魔は絶叫した。  ほぼ同時に、その体が消滅する。 ゴオオオオオオオオオオオ…………  地鳴りのような咆哮が、虚空に響く。  この地上に存在する事のできなくなった悪魔の魂が、そのいるべき世界に引きずり戻される、 断末魔の悲鳴だ。  もはや、自我を保つことは不可能だろう。その論理構造は既に半壊し、完全消滅は時間の問題だ。