●第21話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:10月 5日(木)17時15分12秒  時は少しさかのぼって、朝。  朝日は、変わることが無い。どこにいても、どんな天気でも、陽はのぼり、沈み、繰り返す。  教会も、どの町にも村にもある。それは神の愛が満ち溢れるせいなのか、神というものにすがりたい者が多すぎるのかは、彼の知った事ではなかった。  彼は、その町――エンフィールドの教会の屋根に立っていた。片足を屋根の頂点にのせ、まるで埠頭でポーズを決める水夫のように。  束ねられたくすんだ金髪と、長旅で色あせた薄茶色の、前をあけたコートを風にはためかして、彼は町を見下ろしていた。 「・・・ん?」  ふと何かを感じて、彼はコートの下に着ているジャケットの内ポケットから振り子を取り出した。糸の一端には透明な水晶――ひし形の八面体――、もう一方には指を通す輪がついている。  中指に輪を通し、意識を集中させる。すると、水晶がある方向を示す。まっすぐに。 「・・・魔力?・・・かなり大きい。悪霊でも出たか。それとも、他のなにかによるものか?・・・行ってみる価値は、ありそうだな」  再び意識を集中する。すると、彼のコートの右袖から、さっきと同じ振り子がひとつ出てきた。違うのは、水晶と反対側の末端が袖のなかということ。彼がその水晶を右手で握る。すると、水晶は蒼穹の空のような光を放つ。 「ウインド・ペンデュラム、『翼』よ」  彼が唱えると、水晶とつながれた糸――鋼線が彼の周囲をゆるく取り囲み、さらに教会の屋根の一部にも絡みつく。彼は足元のズタ袋を持つと、屋根を軽くける。  彼の身体は、ふわふわと宙を舞い、道に降り立つ。まるで、羽が落下を和らげたように。 「さて」  彼は、探査用の振り子の示す方角へと歩き出した。 「やれやれ。一騒動になってるな」  小さくつぶやく。  彼がやってきたのは、公園っぽい場所だった。――多分、その通りなのだろうが。  物陰から見ていたのだが、事情が飲み込めるわけも無い。  見つけた『力』の発生点はどこにでもいそうな少女。  三人組が近寄り、その背後に義腕の男が回りこむ。  戦う様子ではなかったが、三人組のひとりが銃を抜き、何もせずに倒れる。  なにやら口論があり、少女が苦しみ、三人組が姿を消す。 (・・・解らん事だらけ、か)  これまで見てきた事を反芻し、ため息をつく。昨夜この町についたばかりだし、当然といえば当然だが。 (・・・面白いことになりそうだ。この町になれるにもちょうどいい。・・・路銀も底ついてきたしな・・・)  決心すれば、あとは簡単だ。物陰から姿を見せると、義腕の男に歩み寄っていく。向こうもこちらに気づいたのか、こっちを見返してくる。敵意は見せていないつもりだが、なにが起きても不思議は無い。 (人生なんてのは、いつだって予期せぬ事態と驚きの連続で成り立ってる。なにがあっても、不思議じゃないのが、生きるってこと・・・って誰が言ったっけか?)  一人考えながら歩み寄る。男は、戦うつもりはないようだ。――心から感謝しよう。 「あんた、俺を雇ってみないか?」 「?君は、誰だい?」  男の一言は、慎重で、かつ簡潔だった。よほどこういう場に慣れているのか。 「俺の名はケイン=T=クライナム。西へ東への『何でも屋』だ。――なにか問題事があるようだな?損はさせんよ。どうだ?」  彼、ケインは不敵な笑みを浮かべながら、コートの内側から契約書と、万年筆と朱肉ビンがついたバインダーを取り出した。 ●第22話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:10月 6日(金)19時43分25秒 「ほう……」  目の前の男を一瞥し、アーウィルは瞬時に思考を巡らせた。 (渡りに船、だな)  予想以上に状況が混乱し、このままでは自分はあまり派手に動くわけにはいかない。 (特に、あの男……冒険者で、古代の魔法に詳しいらしいな……)  万に一つの可能性だが、下手に接触すると自分の正体に感づかれる恐れがある。  さらに、先程の念波……アーシィの放った殺気をまともに受けた直後だった為、完全に傍受できなかったが、 あれも放置するわけにはいかない。  結論。 「そうだな。少し、スパイの真似事をしてもらおう」  アーウィルは、少しその人間の挙動を観察すれば、大体の技量を推し量る事ができた。  この男の能力は十二分に信頼に値する。   それに…… (こういう輩は、敵にまわすと面倒だからな。形だけでも、早期に味方にしておいたほうがいい) 男の差し出した契約書を受け取り、必要事項を書き込む。  契約成立。 「さっきの三人。あの連中を監視していてくれるか? 監視して、何か動きがあったら知らせてくれればいい」 「どうしたの? なんだか顔色が悪いよ」  少年が心配そうに尋ねてくるが、答えることができない。 (返事……しないと……)  気は焦るが、言葉を紡げない。  どうすればいいのか、彼なら教えてくれるだろうか?  何も解らなかった自分に色々なことを教えてくれた、あの青年。  彼もまた、人間ではない。  自分と似ているが、自分よりも遥かに人間からかけ離れた、異質な存在。 「うふふふふ」  リオと少女からやや離れた場所で、何やら妖しげな含み笑いが漏れた。 「あたしのリオくんに近づくなんて、許さないわよぉぉ〜〜〜〜」  エンフィールドの名物市民、橘由羅。  普段なら、昼間だと言うのに酒をあおり、昼間だと言うのに風呂に入ってそのまま眠り込んでいるような彼女だが……。   今は、何を思ったか全身に木の葉をつけ、両手に木の枝を持ち、あまつさえ匍匐前進している。  彼女の服装と体形では、匍匐前進はかなりきつい筈なのだが……。何故かその移動速度は異様にスピーディだったりする。 「うふふふふ」  ちょっと危ない目の色で笑い、さらに前進しようとして…… 「……パティが、いい加減に溜まっているツケを払え、と怒ってたぞ」 「きゃああああああああっっ!!??」 ……いきなり横から生えた顔に飛び上がった。 ●第23話 投稿者:タムタム  投稿日:10月 6日(金)22時28分19秒 「ん〜?」  クラウド医院の一室にアーシィはいた。普段からボーっとした雰囲気があるが、今はいつにも増して酷い。完全に状況が把握できていない様子で、辺りを見まわしている。そのとき、カチャッっと小さな音がして扉が開かれる。 「気が付いたんですね」  カルテを持って入ってきたのは、ディアーナだった。そのままベットの横まで歩み寄ると、そばにあった椅子に腰をかける。 「あの、ディアーナちゃん?」 「気分はどうですか?」  取り合えず状況を確認したかったのだが、質問で返されてしまう。どうやら、少し緊張しているらしく、こちらの言葉が耳に入っていない様だ。 『トーヤ先生に良い所を見せたい様だし、少し付き合ってあげるかな』  そう考えると、アーシィはディアーナの質問に答え始めた。 「・・・遅い・・・」  ディアーナがアーシィの様子を見に行ってから、すでに三十分。目覚めていようがいまいが、とっくの間に戻ってきても良いはずである。 「俺が見てきましょうか?」  トーヤが怒っていると思ったのか、シュウがそう言ってくる。 「必要無い。それよりも、今日の所はゆっくり休む様に言っておけ」 「わかった。無理させる訳にもいかねぇからな」  アルベルトの言葉が終わると同時、調度よく二人が出てくる。 「心配かけた様だね、すまなかった」 「気にするなって。後のことは俺達に任せて、今日はゆっくり休め」  そう言うと、アルベルトはシュウを連れてクラウド医院を後にする。 「トーヤ先生、私もこの辺で失礼します」 「お大事に〜」  ディアーナの声を聞きながら、アーシィもクラウド医院を後にした。  時刻はすでに夕方を回っていた ●第24話 投稿者:ashukus  投稿日:10月 7日(土)18時49分20秒 夕方、お子様はもう帰る時間、リオそして謎の少女も帰路につく 「どうしたの?元気無いよ」 リオの質問にはっとしながら答える謎の少女 「えっ、そ、そんなことないよ」 「ならいいんだけど」 しばらく二人とも無言で歩いている。話すことが見つからない 「・・・・ねえリオ」 「なに?」 「もしも・・・もしもよ、私が人形だったって言ったらどうする?」 「えっ?」 突然の少女の言葉にリオは返す言葉を失う 「えっと・・・ボクはその・・・」 と、少女は笑みを浮かべながら 「冗談、冗談だよびっくりした?」 「えっなんだ、びっくりした」 「ふふふ、じゃあまた明日も来てね」 「うん、明日も行くよ・・・・あっそうだ、君の名前は?」 少女は少し考えている 「私の名前は・・・」 二人から少し離れた場所 「あたしのリオくんと二人っきりになるなんてぇ〜〜」 さっきまでは公園にいた由羅だ、全身に葉っぱをまとい両手に木の枝を持っている、とよく見ると由羅の他にもう一人誰かが同じ格好をしている 「ほう、彼女なかなかいけてるねえ、でもあと3、4年は経たないとな〜〜」 自称エンフィールドの貴公子、一部からはナンパ師との呼び声高いアレフ・コールソンだ 「っと、さっきも言ったけどさ、パティがツケ払えって怒ってたぞ」 「ああ〜あたしのリオく〜〜〜ん」 「聞こえてないねこりゃ」 「それじゃあね、また明日」 「うん、じゃあね」 リオと謎の少女は別々になり、リオは一人っきりになる、由羅はこのチャンスを見逃さなかった ガサァァ 「リオくぅ〜〜〜〜ん」 由羅は凄まじいスピードで飛び出したと思うとリオに抱きついていた 「うぁ、やめてください」 それを少し遠くから見ていたアレフは一言 「だめだなこりゃ」 「リオくぅ〜〜ん」 「や、やめてください」 翌日 今日もアルベルト、アーシィ、シュウの三人は捜査を始める、今のところあの公園の少女が怪しいとにらんでいるため陽のあたる丘公園 へ向かっている 「アル、気が付いてるか?」 「ああ気付いてるぜ、何時ごろからだったか」 「ん〜大体クラウド医院を出た辺りからだな」 そう三人は監視されている、二人はそのことに気付いていた様だ、とシュウが二人の間に入ってくる 「なにヒソヒソ話してるんですか?」 「そういやぁ、お前の所にも来たか?」 「は?誰か来たんですか?」 「・・・・・・・・・(こいつの所には来てねぇのか?)」 ●第25話 投稿者:美住 湖南  投稿日:10月 8日(日)14時58分45秒  朝。かなり早い時間。日の当たる丘公園に白い布に包まれた長い物を持った男が1人。そして、黒髪の少女。2人はベンチに座っている。 「どうしたんだい?こんな朝早くに」 「・・・」  少女はなにも答えない。 「君の名前は?」 「あなたの名前は?」  反対に聞き返された。 「おれの名前はディムルだよ。名前を言いたくないならいい、家に帰った方がいいよ。きっと君の親が心配してる。親に迷惑はかけちゃいけないよ。」  そこまでディムルは一息に言うと立ち上がり、少女に手をさしだした。 「家まで送るよ」 「・・・うん・・・・」  少女がディムルの手を握った。すると、ディムルはにっこり笑った。“人形”であることを知っているかのように。  まだ朝は早い。だから人もいない。2人はただ歩いている。少女はなにも話してこない。ディムルが話しかけても都合の悪いことはなにも答えない。 「ねえ・・・」  だから少女が話しかけてきたのはディムルにとって驚きだった。 「・・なんだい?」 「それ、なに?」  少女はディムルの持つ、白い布に包まれた物を指さした。 「うーん・・女の子に見せられる物じゃあないな」 「そう。なんか不思議な感じがする・・・。暖かい感じ」 「へえ、わかる人にはわかるんだね。これのなかのある物に魔力が込められてるんだよ」 「ふーん」  それ以来少女はなにも言わなかった。  いろいろと歩き回っていると金属の義腕をつけた男が立ちはだかった。 「その子に何をするつもりだ?」  人にわずかな恐怖を与える響きだがディムルは気にしなかった。 「別に。小さなレディーを家に送り届けるだけですよ」  いわゆる、余裕の笑みというものを浮かべてディムルは言う。人によっては嫌な物を感じる笑みといってもいい。先ほど少女にした笑みとは違っていた。 「ならば、自分が送り届けよう。その子と自分は知り合いだ」  少しディムルは悩むと、 「・・・そうですね。知り合いのほうが都合のいいこともありますし。それではお願いします」「わかった」  ディムルは少女の手を取り歩を進める男にディムルは話しかけた。 「あなたの名前は?」 「・・・ウィップアーウィル。アーウィルでいい」 「アーウィルか。おれはディムル」 「・・・覚えておこう」 ●第26話 投稿者:HAMSTAR  投稿日:10月 9日(月)11時22分52秒  公園で義腕の男、アーウィルとかいったか、彼と契約したあと、ケインは翌朝、つまり今も三人組を追っていた。 (気づかれていないわけないな・・・)  物陰に隠れながら、距離をとって追跡する。三人ともかなりの使い手であることはアーウィルとの会話で知っている。自警団のアルベルト、テレパシーだかなにかを使えるらしいシュウ、銃を突きつけた青年、アーシィ。気づかれている以上、巻かれる可能性もある。 (一応、感づかれたと報告しておくべきか)  要するに、これは『魂・意思』の問題でもある。 (稀代の人形師ルーク=ギャラガーの200番代後半の人形・・・それは心を持たないという意外はまさに人間だったという。そのNO294に心が宿って動き出した。アルベルトたちはそれを人形に戻すために追っていて、アーウィルは人形に戻したくは無い・・・だから対立している、か。たしかに、悪霊が憑依したわけでもないのに無理やり人形に戻すのは、『心』を人にしか認めない所業だからな)  だが、ケインはあの男をそこまで信用してはいない。 (あのアーウィルも信用できたわけじゃない・・・嘘をついているのは間違いないな。っても、情報が少なすぎる・・・どこからどこまでが嘘だかわからん。・・・そもそも、なんでヤツはそうまで人形にこだわる?そこまで博愛主義にも見えないしな・・・)  わからない。とにかく、事態は離れたところで進行しているのは間違いない。軽い近視用の眼鏡をクイッと引き上げ、前方の一団に意識を戻す。  ふと、前方の三人が立ち止まった。迎撃戦を挑まれるなら、返り討ちにする。その後彼らの情報を入手するだけだ。もっとも、ただ立ち止まったのかもしれないが。 (半々だな)  そのまま歩きつづける。立ち止まって不審がられるよりはましだ。このままいけば公園にでる。アーウィルもそこにいるだろうし、協議の場がもてる。  3人のそばまできたあたりで、今度は別の二人の声が聞こえた。女の声だ。  こんな朝早くから何してるんだか。ケインはため息をついた。 「アンタ・・・朝早くから近所迷惑になるよ。やめときなって」 「ぶ〜☆。いいでしょ。今日は学校で魔法のテストがあるの!だから、はやくから練習しとかないとまずいのよ〜☆。ま、それはともかく練習開始!・・・ルーン・バレット!!」  ドッカーン 「!!」  放たれた魔法は、なぜかケインの足元に着弾した。注意を払っていなかったので、彼は爆発にもろに吹き飛ばされていた。 「あ〜あ、いわんこっちゃない。おまけに見ず知らずも人まで巻き込んで。・・・どーすんだい?マリア?」 「うううううう・・・・・・どーしよう、エル?」   近寄ってくる足音。一方は今の会話の主、もう一方は、例の三人組――問い詰めるきっかけができたというところか。 「えっと〜〜〜あの・・・ごめんなさい・・・マリア、魔法がちょっとだけ苦手で」 「『ちょっと』じゃなくて、『ものすっごく』だろ・・・?」  声から察すれば、謝ってきた金髪の少女がマリア、その後ろのエルフの少女がエル、だろう。 「おい、お前!」  右手側から怒鳴り声がする。アルベルトだった。 「お前、なんて名前だ?昨日から俺たちをつけまわってるのは、お前だな!?」  詰め寄るアルベルト。背後では残りの二人が険しい表情で見ている。 「・・・俺は、ケイン。見てのとおりの流れ者だ。お前たちこそ、つけられて困るようなことをしているのか?」  座り込んだままで問い返す。たしかに、彼の格好は長旅のせいで薄汚れている。 「あの・・・じゃあ、人形みたいにきれいな少女を見かけませんでしたか?」 「見たぞ」 「どこでだ!?」  シュウの問いに立ち上がりながらあっさりと答える。アルベルトが勢い込んで尋ねた。  ケインは微笑しながら指差した――マリアと呼ばれた少女を。  アルベルトが裏拳をかまそうとし、ケインがよけて、アルベルトの渾身の一撃は民家の壁に直撃した。 「!!!!!!」  アルベルトの絶叫が、エンフィールドに響き渡った。 ●第27話 投稿者:タムタム  投稿日:10月 9日(月)21時02分47秒 「聞き方がまずかったかな?黒いショートカットに、黒い瞳の女の子なんだけど?」  拳を押さえてもがいているアルベルトを放っといて、アーシィが口を開く。 「さあ?知らないね」  ズボンの汚れを取りながら、彼等の方を見ようともせず答えてくる。そんなケインの態度が気に食わなかったのか、アルベルトが胸倉をつかむ。が、 「離してくれないか?」  そう言いながら、胸倉をつかみ上げている拳を握り締める。 「!!!」  先ほど叩きつけた拳をケインに握られ、声にならない叫び声をあげながら転がり出す。「アル。何やってるんだよ」 「あ、もう行ってもいいですよ」  この人から情報を得る事が出来ないと思い、シュウはケインにそう促す。そして後ろを向くと、調度アーシィがアルベルトに魔法をかける所だった。 「治してやるからじっとする様に」  その手には青いカードと白いカードが握られている。そして静かに呪文を唱え始める。『水と光のカードに込められし魔力よ、優しく照らし包みゆくその力を現せ。わが魔力に導かれ奏でられるは静かに響く小夜曲(ヒーリング・セレナーデ)』  詠唱が終わると同時に手の中のカードが消え始め、アルベルトの手が光に包まれる。すると、苦しんでいたアルベルトの表情が次第に穏やかになってゆく。 「治ったのか?」  先ほどまでの痛みが嘘のように引いている。拳を握ったり開いたりしながら調子を確めるが、やはり痛みは無い。 「ん〜。大丈夫だとは思うけど、一応トーヤ先生に診てもらった方がいいぞ」  そういいながら、何やらシュウに耳打ちをする。 「わかりました。アルベルトさん、行きましょう」  何やら言いたげなアルベルトを引きずる様に、シュウは公園を出て行く。二人に手を振りながら見送ったアーシィだが、くるっと振り返ろうとして後ろに倒れこむ。何者かに、コートの裾を引っ張られたためである。  あお向けに倒れたまま見上げると、金髪の少女がこちらを見下ろしていた。 「ね、ね、さっきのどうやったの?マリアにも教えてよ☆」 「あのなぁ、マリア。初対面の人間に何言ってるんだよ?」  その少女の隣ではエルフの少女が呆れた顔をしている。 「ん〜っと、マリアちゃん。で、いいのかな?」  あお向けのまま金髪の少女に声をかける。取り合えず、名前が判らないと話にならない。 「うん。マリアだよ☆で、こっちがエル」 「なるほど。私はアーシィ。所でマリアちゃんにエルちゃん。小さい子なんだけど知らないかい?」  そう言いながら、人形の特徴を挙げていく。二人は顔を見合わせ考え込む。待つ事しばし、 「知らないねそんな子は。それと、ちゃん付けは止めてくれ」  エルの答えはある意味予想道理だった。だが、情報が入らなくては先に進めない。 「そうか、ありがとう。見かけたら、ジョートショップへ来て欲しいな。お礼はするよ」  取り合えず起き上がりながら、周りを見まわすがケインの姿は無い。 「ああ。さっきの男なら、あんたが倒れているうちにどっか行ったぞ」  その言葉に、少し困った顔をするアーシィだった。 ●第28話 投稿者:ashukus  投稿日:10月10日(火)19時03分48秒 「・・・・・ん〜気配は・・・ないか・・・」 相手はかなりの使い手なので気配を消すくらい出来ると思うが、とりあえずケインはここにはいないようだ 「(ん〜予定が狂ったな、私が捜査側か・・・まあいいか)ごめんマリアちゃんにエル、私はこれから仕事をしなくてはならないんだ」 そう言うとアーシィは立ち上がりとりあえず公園を捜査し始めた 「ぶ〜☆さっきの教えてよ〜」 「おい、もういくぞ」 そのころ クラウド医院前 「くそ〜あの野郎、次会った時はただじゃおかねぇぞ」 「いいですから早く」 シュウはまだぶつぶつ愚痴っているアルベルトを引っ張りながらクラウド医院を目指している 「はなせ!!俺はなんともねぇよ」 ガチャ バタン 「トーヤ先生、アルベルトさんの診察をお願いします、あっ、でもするふりだけでいいですから」 「なんだいきなり・・・・まぁいい奥の診察室に来い」 訳有りと踏んだトーヤはそれを承諾する 「すいません」 「おいシュウ!!こんなコトしてる暇はねぇんだぞ」 「っと、とりあえず俺の話を聞いてください」 診察(?)を受けているアルベルトに公園でアーシィが耳打ちした内容を話す 「・・・・・・そう言うことかよ」 「ええ要するにアーシィさんは俺達を二手に、しかもごく自然に分かれるようしたわけです」 「あのケインとか言う奴を片方に付けさせもう一方がフリーの状態で公園で捜査を進めるってコトか」 「そう言うことです。公園にいたあの女の子、例の人形との特徴が合致していて今のところ一番有力ですからね、でもこれは予想外でしたね」 「ケインとか言う奴が俺達に付いてるってコトか」 そう、いまケインはクラウド医院の近くの木の上からアルベルトたちを監視している 監視といっても気が付かれているのでこれは捜査への牽制程度だ、それはケイン本人も承知している だが牽制程度とはいえ監視下の中で下手に捜査を進めるのは好ましくない、それゆえに二手に分かれることにしたのだ 「おそらく計画ではアーシィさんは自分に監視が付いている間に公園から離れ、俺達は公園に戻って捜査を進めるはずだった、でもこれじゃあアーシィさんに公園で捜査をしてもらう事になりそうですね〜」 「二人のはずが一人になったってコトか、だが相手も馬鹿じゃない、すぐにアーシィの方にも付くと思うがな」 「それはこの短時間で相手に気付かれずにアーシィさんが何処まで掴めるか、ですね」 陽のあたる丘公園 「ん〜今日はあの女の子はいないみたいだな」 まだ早いためか?例の少女は公園にはいなかった。しかたなく公園の外を探すことにする、 と一人の若者に出会う、長く濃い灰色の髪に切れ長の紺碧の目 髪は毛をえりあしのところで一つにまとめ、手には白い布に包まれた長い物を持った若い男だ 「すまない、こんな感じの女の子を見なかったか?」 例の特徴をその男に話す 「ああ、見ましたよ」 「どこで!!」 「さっきこの公園で、いろいろ歩き回って家まで送っていこうとしたら知り会いって人が来て連れていきましたよ」 「知り合い?名前は?」 「アーウィルって」 「何!!」 アーシィは一度落ち着き、そして続ける 「それで何処で会ったのかな?」 「たしか――――――ですね」 「そうかありがとう・・・・君の名前は?」 「おれ?おれはディムル、ディムル・マークレット」 「私はアーシィ・フォーヴィル、また彼らを見たときはジョートショップへ連絡してくれないか」 「ジョートショップ、あの何でも屋ですか、わかりました」 アーシィは現場へと急ぐ、とその彼を木の上から見ている男がいるケインだ、何時の間にかアーシィに付いている 「ふっ陽動作戦とは考えたものだな、さてどうするか」 ●第29話 投稿者:YS  投稿日:10月11日(水)03時15分38秒  朝、旧王立図書館の窓から外を見ている少年がいた。 「・・ふう、暇ですねえ・・」  彼の名前はロイ。孤児院で世話になっている孤児だ。7才という年齢に似合わず、いつもここで本を読んでいる。  今日は辞書なみの大きさの本を片手に窓際で外を見ていた。 「・・ここのところ、毎日来てますねえ・・」  彼の目には少女と少年の姿が映っていた。とても仲がいいようで楽しそうに見える。そういえば、今日はやけに早く来ている。少女が迎えにでもいったのだろうか・・ 「・・そういえば、あの娘はイヴさんの言っていた人形そっくり・・いや、そのものみたいですねえ・・」  そう思って見ているとほんの僅かだが、人間とは違う動きが見てとれる。 「・・イヴさんは人形に戻すのがあの人形のためだから、って言ってましたけど・・」  よくここに来ているロイはイヴとは結構、話をしている。人形が消えたことについても数日前にすでに聞いていた。  見ている限りでは人形の彼女は本当に楽しそうだ。今は別の場所に行くためか、公園から出ていくようだ。  まだ、自警団の人達は誰も来ていないようだ。 「・・これじゃあ、どっちが人形なんでしょうか・・」  自分の生き方について悩むにはまだ早すぎるが、ロイは自分の生き方と彼女を比べて独り言を呟いた。 (・・それに、あの動き・・元々動かすことが決まっていたかのように滑らかですし・・)  邪精霊が取り付いても元々の形が変わるわけではない。別の理由だとしてもあれほど見事な動きができるとは考えにくい。 (・・そういえば、彼女を義腕の人が連れていっていったことがありましたねえ・・それに、あそこで下手ではないにしてもバレバレな尾行をしていた人とも何かしてたみたいですし・・)  義腕の人とは面識がある。たまにここで出会うからだ。 「・・おや?あれは自警団の人達ですねえ・・」  ロイの目にはアルベルト達が映っていた。 「は?誰か来たんですか?」 「・・・・(こいつのとこには来てねぇのか?)」 「気がつかなかったんですか?ん〜、あの髪の長い人ですよ」  アーシィが尋ねる。 「ああ、来ましたよ。道に迷ってたから後をつけてたんじゃないですか?」 「そんなわけないだろ」  そして、後ろで爆発が起きた。ロイが見たのはそこまでだ。  そうしていると声をかけられたからだ。 「こんにちは、ロイ」 「・・あ、ディムルさん・・」 「また、今日も分厚い本を読んでるみたいだね」  ディムルはここによく来る人の一人だ。義腕の人・・確か、アーウィルもここには来るが、彼とは時間帯が違うためか二人をここで同時に見たことはまだない。  今日は早朝に二人が一緒にいた気がするが、まだ眠かったので確証は持てない。  ディムルには教会まで送ってもらったことがある。誰かについていかないと、ロイは確実に道に迷うからだ。 「・・そうだ、ディムルさん・・ちょっといいですか?」 「別にいいけど」 「・・あそこの人のところまで連れていってもらえませんか?」  ロイの指差した先にはアルベルト達から離れたケインがいた。  そして・・ 「・・疲れますねえ・・誰かのマネをして尾行というのも・・」  今、ロイはクラウド医院の近くの木に登っている。 「・・しかも、ばれる様に尾行ってのは苦手なんですけどねえ・・」  あの後、ロイはケインと接触し状況を教えてもらう代わりにばれるように尾行することを引き受けたのだった。  ケインの狙いとしては姿を見せないで周囲をうろつくことで相手に警戒させておくことだったのだろうが、ロイは魔法でケインの姿に見えるように細工までしている。おそらくかなりの時間は稼いでおけるはずだ。  ディムルもあの人形について気になることがあるらしく、手伝ってくれた。まだ、近くにいるはずだ。 「・・さて、向こうはどうなってるんでしょうねえ・・」  少なくとも何か進展するまでは、ばれないことを祈って木の上で本を読み始めるロイだった。 ●第30話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日:10月11日(水)17時45分00秒 「ん〜このあたりのはず……なんだが……もう居ないか」  先程教えて貰った場所に来てみたが、アーウィルも人形らしき少女の姿も無い。  だが、あの義腕の男がこの事件に絡んできているのは確実のようだ。 (そう言えば……確かさくら亭に滞在していたはず)  さくら亭。 「え? 行方不明?」 「そんな大げさなものじゃないけど……ニ、三日前から帰ってこなくて」  パティが言うには、アーウィルはこの数日間姿が消えているという。 「ん〜」  考え込んでいると、誰かに襟首をつかまれた。 「ちょっとこっちに来な」   リサだった。  そのまま、人通りの無い路地まで連れて行かれる。 「何か?」  尋ねると、リサがきつい目つきで顔を近づけてきたので、アーシィは思わずのけぞった。 「あんた……もしやとは思うが……あのバケモノのこと調べてるのかい?」 「バケモノ?」 「アーウィルのことだよ。……で、どうなんだい?」 「別に調べてるわけでは……」  なにかトラブルになりそうではあるが。 「そうかい……ならいい。とにかく、あいつにはちょっかいを出さないことだよ。死体の無い葬式を出したいなら別だけどね……」 「ロイも絡んできたか。……まったく、人間という種族は無茶をする傾向が強いらしいな……」  誕生の森の中に作っておいた隠れ家の中で、アーウィルは嘆息した。自分はあまり街に出るわけには行かないので、 当分はここがねぐらだ。  とにかく、片付けなければならない事柄は多い。  あの三人は邪魔だが、今までのように消してしまうわけにはいかない。今回の目的は殺戮ではないのだ。 それに、リサは自分のやり口を知っている。街の一区画ごと消滅させてしまえば証拠は残らないが、彼女にはバレる。 「名前も決めないといけないな……」  実はこれが一番頭が痛い。が、とりあえずこれは後回しだ。  ……と、 「お客さんだな」  外に出ると、オーガーが三体。  面倒だが、このような連中がいるからこの隠れ家は見つかりにくいのだ。  オーガー達の放つ敵意に反応して、右の義腕が獣のような駆動音の唸りを上げる。 「大人しくしていろ、<戮皇>。おまえが目覚めるほどの相手ではない」  この義腕の銘は<戮皇>という。彼にしか扱うことのできない、危険な玩具だ。  じりじりと距離を詰めてきた一体が、咆哮を上げて殴りかかってきた。 「ふん……」  面白くも無さそうな表情で、生身の左手でそれを受ける。  あっさりと、巨大な拳を掌で止め、紙細工のように握り潰す。  生物の体が破壊される、異様な音が響いた。そして、苦痛の絶叫。 「うるさいな。静かに死ね」  血塗れの手で、間髪容れずに相手の喉をホールド。今度も強靭な筋肉の塊があっさりと潰され、破壊される。 「運動不足の解消にもならんな……まだやるか?」  残る二体のオーガーは、逡巡しているように固まっている。  待っているのが面倒になった。 「アイシクル・スピア」  ごく普通の物理魔法だが、氷の槍は彼の手からは飛ばない。  その代わりに……  ……遥か高空から落下した、全長二十メートルの巨大な氷の槍が二体のオーガーを押し潰した。  何も知らない人間が見れば、突如として氷の壁が出現したように見えるだろう。 「さて、真面目にやるか。……やっぱり、名前が無いとマズイよな……」