●第1話 投稿者:浅桐静人  投稿日: 9月15日(金)00時34分38  さくら亭の朝。  まだ客もいないが、今のうちに準備しておかないといけない。  普段は個々の注文や要求も柔軟に受け付けるさくら亭だが、混雑する時間帯はそうもいかない。よって、朝食はAセットとBセット、その他多少のメニューがあるだけ。  それでも朝は忙しい。パティの朝の仕事は、注文を聞いて、奥の厨房に伝えて、できた料理を運ぶこと。  近頃はリサが「世話になってばかりじゃ悪いから」と手伝ってくれるので、少しだけ負担は減った。 「よーし、今日もがんばるわよ」  パティは、もうすぐ押し寄せる客の波に立ち向かうべく気合いを入れた。大量の皿を取りだして、並べやすいように配置する。 「今日も威勢がいいね」  声を掛け、2階からリサが降りてくる。まずはAセット3人前決定。 「けどさ、今日は休日だろう?」  パティはふと思案げになる。そして思い出す。 「すっかり忘れてた」  休日。別にさくら亭が休みというわけではないが、自警団その他、いわゆる公的な仕事がこぞって休みを取るらしい。そうなれば客足がまばらになる。つまり、大量の注文は来ない。 「なんか臨時休業って感じよね。ホントに休むわけじゃないけど」  パティは肩の力を抜いた。客が多くて儲かるのはいいが、たまには休みたいというのも本音だった。  それなら朝は自分で作るのもいいなと思い、パティが厨房に向かったとき。  カランカラン。扉に取り付けられたカウベルが音を鳴らした。客の到来を告げる音。パティはいつもの調子で声を上げた。 「はーい、いらっしゃーい」 ●第2話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 9月15日(金)16時43分10秒 「あれ? アルベルトじゃないか」  入ってきた人物……自警団員のアルベルトを見て、リサが怪訝そうな声を上げた。  休日だというのに普段より重装備の自警団の鎧を着込み、完全武装している。このまま戦場に立っていても違和感が無いだろう。 「何かあったの?」  そのパティの問いには答えず、アルベルトは険しい表情でリサに向き直った。  恐ろしくクソ真面目な顔で、口を開く。 「リサ、朝早くすまないが、隊長がお呼びだ。オレについて自警団事務所まで来てくれ」  一瞬、パティとリサはポカンとした。いつものアルベルトと様子が違いすぎる。  だだならぬ気配を感じ、パティはアルベルトに負けないほど真剣な顔で…… 「な、何か変なものでも拾い食いしたの……?」 「するかっ!!」  2時間後。 「うーん。一体何がどうなってるのかしら……?」  厨房で忙しく料理の準備をしながらパティはぼやいた。  あの後、リサを急き立てるようにして出て行ったアルベルトが、 『今日一日の、自警団員の飯の用意を頼む』 と頼んでいったのだ。  休日はしばらくお預けらしい。  まあ、文句を言うつもりは無いが、何が起きたのか教えて貰えなかったことが、少し不満ではある。  リカルドが、なにやらリサと話し合いたい事があるとのことだったが……  と、パティの思考は来客を告げるカウベルの音で中断された。 「はーい、いらっしゃーい」  と、ほとんど条件反射でいつもの声を上げ、厨房から顔を出し……  たっぷり数秒、パティは絶句した。  入ってきたのは、軽装の戦闘服を兼ねた旅装束を着込んだ、傭兵風の若い男だった。歳はパティと大して違わないだろう。  傭兵は、エンフィールドでは多いわけではないが、別に珍しいものではない。それはまだよかった。  問題なのは、その男の右腕。  男には右腕が無く、巨大で武骨な金属製の義腕が代わりにその場所に納まっていた。  あまりそういったことに詳しくないパティでも、それが破壊的な目的で作られたことが見てとれる。  また、その形状がひどく特異なものであることも。  肩と拳が占める割合が生身の腕よりも多く、肩部はそれだけで一つの巨大なパーツを成していた。  腕部は肩部から一続きになっているのではなく、その中から独立したパーツとして突き出す形になっている。  拳も肩に負けず劣らず巨大で、人間の頭を一つ包み込めるほど大きい。  さらにその腕を異様に見せているのは、掌から三本しか生えていない、大の男の腕ほどの太さがある指だった。  呆然としているパティに構わず、男はカウンターに歩み寄り、腰を下ろした。  義腕は相当な重量があるはずだが、床はみしりとも音を立てない。 「えーと、しばらくこの街に滞在したいんだが……」  巨大な義腕の拳を隣の席に乗せ、一人で二つの席を占領した男が、穏やかな表情で口を開く。 「え、えと、じゃあ宿帳に名前を……」  ようやく我に返ると、パティは宿帳を差し出し、返ってきたそれに書き込まれた文字を読む。  ウイップアーウィル、という何やら面妖な名前がそこに書かれていた。 ●第3話 投稿者:タムタム  投稿日: 9月15日(金)20時08分45秒  さくら亭に奇妙な客が訪れたのと時を同じくして、自警団第一部隊の事務所は喧騒につつまれていた。中に居るのはアルベルト、リカルド、リサ、の三人。のはずである。 「隊長!ですから・・・・。」 「落ち着け。アル」 「ったく、取り乱すんじゃないよ。大体・・・」  などと、途切れ途切れで要領の得ない話しか聞こえてこない。リサが来てから二時間。全く話が進んでいない様にも思える。何かが起きたことは確かだが、なにが起きたのかは教えてもらってない。だからこそ、自分の耳で確めようとしたのだが、 「何が起きたか全然分からないよ」  トリーシャはぶつぶつと文句を言う。盗み聞き自体誉められた事ではないのだが、せっかくの休日を返上しなければならない理由。『それを教えてくれないお父さんが悪い』トリーシャの頭の中ではそうなっていた。しかし、これ以上ここにいても、新しい情報を得ることは難しいだろう。そう判断したトリーシャは自警団の事務所を後にした。  街の中はいつもと違い奇妙な緊張感が漂っている。それもそのはず、朝方という事を差し引いても一般人より自警団の人間の方が多いのだ。 「ねえ、ちょっと・・・」  近くにいた自警団の隊員に事情を聞こうとするが、こちらに気付いていないのか走り去ってしまう。 「〜〜〜!」 「・・・トリーシャちゃん、トリーシャちゃんってば!」 「っっっ!ローラか。おどかさないでよ」  背後から急に声をかけられ驚いたが、振り向いた先にいたのは大きなリボンが良く似合う少女、ロ―ラであった。 「失礼ね!なんで驚くのよぅ」  口を尖らせながら文句を言ってくる。声をかけただけなのにこの反応。怒るのも無理は無い。 「いや、だってさあ・・・まあいいや。どうしたの?」 「セリーヌさん見なかった?」  しばらくトリーシャは考えた。セリーヌが迷子になるのは何時もの事である。三日たってもこんな騒動にはならないだろう。だとすると? 「トリーシャちゃん?」  ふと顔を上げると、不思議そうにこちらを見つめるローラと目が合ってしまう。なんだか照れくさく感じ、 「いや、見てないよ」  あっさり答えたトリーシャに対し、ローラはちょっと考える様子を見せる。が、街の様子が何時もと違うことに気付いたのか、目を輝かせながら、 「ねぇねぇ、何があったの?何があったの?」  と、尋ねてくる。 「僕にもよく分からないんだ」  そう言いながら、説明を始める。歩きながら説明していたためか、気が付くとジョートショップの前まで来てしまっていた。そこでふと、最近知り合った青年のことを思い出す。エンフィールドには旅の途中に立ち寄っただけだが、色々あり今はジョートショップで働いている。働くきっかけを作ったのは自分達だが・・・。 「ちょっと寄って行こうよ」  トリーシャの考えていることが判ったのか、ニッコリ頷く。二人ともこの事を誰かに喋りたいのだ。 「アーシィさん!いる?」  元気な声と共に扉が開かれる。 「いらっしゃい。トリーシャちゃんにローラちゃん」  二人を出迎えたのは年のころなら二十過ぎだろうか。長く伸ばしたライト・ブルーの前髪を横に垂らし、ゆったりした白いズボンに白のベストを着用している、何処と無く『ぼー』っとした雰囲気を持つ優しそうな青年だった。 「アーシィくん。お客さま?」  奥の方から優しそうな女性が出てくる。ここの女主人、アリサである。 「あっ、アリサおばさま。おはようございます」  二人はあいさつをすると、アーシィに向き直り、 「街の様子が変なんだ!」  そう切り出すと、二人は早口に喋り出した。 ●第4話 投稿者:ashukus  投稿日: 9月15日(金)21時49分29秒 「街中自警団の人だらけでね」 「セリーヌさんがいなくなっちゃったのよ」 「お父さんも何も教えてくれないし」 「トリーシャちゃん、あたしを見て驚いたなんていったのよ」  ローラは少し論点がずれているようだ・・・ 「トリーシャちゃんにローラちゃん、悪いんだけどもう少しゆっくり」 「あっ、ごめんごめん」  トリーシャは始めから説明していく 「・・・・・で、僕にもよく分からないんだけどね」 「ふーん」  アーシィは話を一通り聞き終えると外へ出てみる  確かに街の様子がおかしい、通りは自警団や公安維持局の職員で占められている  普通見回りと言ってもこの五分の一もいないだろう 「あら、自警団の方たちがこんなに、珍しいわね何かあったのかしら」 「公安の人もいるっス」  三人に続きアリサとテディも外へ出てきた 「確かにいつもと様子が違うね」 「でしょ、でしょ」  アーシィの言葉にトリーシャが答える、妙に嬉しそうだ  だが、ジョートショップでもこれといった事は分からないようだ 「じぁあ、僕もうちょっと調べてくるね、ローラは?」 「あたしはここでアーシィさんといるの」 「ははは・・じゃあトリーシャちゃん気をつけて」とアーシィ 「気をつけてね」とアリサ 「気をつけるッス」とテディ 「うん、バイバーイ」 ●第5話 投稿者:タムタム  投稿日: 9月18日(月)23時33分28秒  ジョートショップを出て早三十分。トリーシャはなんの情報もつかめないでいた。 「本当にどうしちゃったんだろう?」  そう呟いてみるが、答えてくれる人は誰もいない。それに、このまま当ても無くさ迷うのも時間の無駄である。さらに、お父さんは何も教えてくれない。そうなると取れる手段は極わずか。其の一、アルベルトさんに聞く。其の二、リサさんに聞く。其のさ…ん?ふと、そこで思考が停止する。よくよく考えてみると、リサさんがこの事を知っているなら、パティも何かを知っているかもしれない。『何故、こんな簡単なことに気が付かなかったんだろう?』思いつくと同時に、新たな情報を求め走り始める。 「あれ?」  魔術師ギルドの前を通り過ぎた辺り。何か、考え事をしながら歩いていたトリーシャが、いきなりきびすを返し走り去る。 「ちょっと!トリーシャ!!」  一応声をかけてみるが、聞えていない様だ。 「ぶ〜☆」  なんだか無視されたようで、マリアとしても面白くない。それどころか、なんだか面白そうなことが起こりそうな予感がする。ほとんど思いつきだけで、マリアも走り出した。 「あれれ?何処行っちゃったのかな?」  勢いで走り出したはいいが、マリアはトリーシャを見失ってしまった。周りを見まわしても、いるのは自警団の人間ばかり。 「ぶ〜☆マリアつまんない〜」  勝手に追い駆けておいてその言いぐさは無いような気がするが、そこが『マリアがマリアたる所以』である。多分。 「あれ?アルベルト?」  その時、マリアの目の前を通り過ぎたのは完全武装したアルベルトだった。しかも、何時もと違いかなり険しい顔をしている。なんだか不安になったマリアはアルベルトに駆け寄り、 「アルベルトっ!」 「なんだ、マリアか。どうした?」  振り向いたアルベルトに向かい、一言。 「熱でもあるんじゃないの?」 「ねえよ!!」  一方その頃トリーシャはさくら亭にいた。走り回ってのどが乾いたせいか、カウンター席でジュースを飲んでいる。 「ねえ、パティ」 「何?」  厨房の方から、声だけが返ってくる。 「今、街で起こっている事なんだけど…。」 「その事だったら、私だって聞きたいわよ」  厨房から出て来たパティが、トリーシャと向かい合うように腰をかける。今さくら亭には客がいない。料理の準備も終わったことだし、話をしていても問題は無いと判断した為である。  話した内容といえば、トリーシャが自警団の事務所で聞いたことと街の様子を。パティは朝早くアルベルトが来たことをそれぞれ話す。 「それじゃパティの方でも何も判らないんだ…」 「ごめんね」  目に見えて落ち込んでしまったトリーシャを慰めるかのように声をかける。そこで先ほどの、奇妙な客のことを思い出す。 「そうそう、さっき変な客が来たのよ」 「えっ。どんな人?」  途端にトリーシャの顔が明るくなる。そのとき、カランカランというカウベルの音が響く。 「いらっしゃい。って、アルベルトとマリアじゃない」  奇妙な組み合わせに、パティは目を丸くする。『どうしたのよ』と聞くより早く、アルベルトが、 「その話、俺にもしてくれないか?」  そのまじめな声に、今度はトリーシャが驚く番だった。 「アルベルトさん…」 「・・・何も言うな…」  なんだか疲れた声だった・・・。 ●第6話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 9月20日(水)18時22分37秒 「へえー。何て言うか……変わった人だね」 「でしょ?」 「それで、その人は今どこに居るの?」 「えーと。朝御飯がまだだって言ってたから食事して、部屋に荷物を置いてから散歩に行ったわよ」 「散歩?」 「うん。『食後の運動』とか言って」 「マリアも見てみたかったなあー」  ……と奇妙な客の話で盛り上がっている三人の横で、一人アルベルトは難しい顔をしていた。 「お昼までには帰ってくるって言ってたし……最低でも一ヶ月はエンフィールドに居るって言ってたから、今日じゃなくてもその内会えるわよ」 「そうだね」 「面白そうだから、マリア、今から探してみる」 「……駄目だ」 「え……?」  突然、今まで黙りこくっていたアルベルトが口を開いたので、三人は驚いてそちらを向いた。  険しい表情で、アルベルトが繰り返す。 「駄目だ。そいつとはかかわるな」 「はあ……」  道を歩きながら、クレアはため息をついた。 「兄様……突然部屋を飛び出してしまって……何があったんでしょうか……?」  今日の朝早く、事務所から何か緊急の呼び出しを受け、扉を破壊しそうな勢いで部屋を飛び出していった彼女の兄……アルベルトのことが気がかりだった。  街の様子を見ても、何かただならぬ雰囲気が漂っている。時折見かける自警団員に、兄のことを聞きたいが、何かの急ぎの仕事の邪魔をするのは気がひけた。 「はあ……」  事務所にも行ってみたが、何やら殺気立った様子で、とても声をかける気にはならなかった。  そんな風に考え事をしながら歩いていた為に、注意力が散漫になっていたのだろう。 「え……?」  一瞬、足に軽い衝撃を感じたのと同時。  突然、自分の体重が消失した。 「あ……」  異常を感じて意識が現実に引き戻され、クレアは落下しつつある自分を認識した。  いつの間にか、急な坂道を下り始めていた事に気付かず、つまずいて宙に投げ出されたのだった。 「!」  ある程度武道の心得があるので、咄嗟に受け身を取ろうと体を丸める。  とにかく、頭と腹部は守らなければならない。  目をきつく瞑り、クレアは落下の衝撃を覚悟した。  しかし…… 「……?」  いつまで待っても、固い路面に体が叩きつけられることはない。だが、足が地面についているわけでもない。 (何が……?)  恐る恐る目を開けようとすると、ふいに近くから若い男の声が聞こえてきた。 「えーと……こういう場合は『お怪我はありませんか?』と尋ねるべきなんだろうが……それではちょっと間が抜けているような気がしないでもない……何か独創的なセリフを言った方が良いかな?」  目を開けると、まず妙に傾いた視界に穏やかそうな表情の青年の顔が写った。  下に目を向けると、かなり下方に路面が見える。  どうやら、この青年が落ちてきた自分を受け止めて、宙吊りにしているようなのだが…… 「あ、あの……」 「ん?」 「とりあえず、下ろして頂けませんか?」 「あ、そうだった。悪い」  耳元で微かに機械の駆動音が響き、両足が地面を踏む。  ようやく青年の全身が見えるようになって、クレアは彼の右腕が金属製であることに気付いた。 ●第7話 投稿者:ashukus  投稿日: 9月20日(水)21時20分52秒 「・・・・・・・・・」 クレアはその場で黙り込んでしまう 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 と、ようやく口を開く 「・・・・・・・・・あの・・・ありがとうございました」 再びさくら亭 「駄目だ。そいつとはかかわるな」 「ぶ〜☆なんでよ〜」 「とにかくだ、そいつとはかかわるな」 「かかわるなって言われても・・・」 と、またもカウベルの音が響く、流石のパティこの様な状況でもいつも通り対応する 「はーい、いらっしゃーい」 「あっどうも、アルベルトさん何かわかりましたか?」 入ってきたのは黒めの服を着、刀を持った青年、年はそう18、いや17くらいか アルベルトより軽装だが、どうやら自警団員のようだ、しかしパティもマリアも見たことが無い顔だ、 がトリーシャは面識があるようだ 「あれ、シュウ君」 「えっ?、トリーシャ?ひさびさだな〜」 「あれ、でもバイトは?」 「あははは〜〜あれはちょっとね〜」 「ちょっとトリーシャ、誰?」 シリアスな場面をぶち壊した彼の名はシュウ・アークス、1ヶ月ほど前にエンフィールドへ越してきた者で、 いろいろな所でバイトをして生活している、トリーシャとはバイト先で顔を合わせていたという、 が、彼は今までことごとくバイトをクビになっている。 その訳は彼の性質が大きく関係しているのだが・・・・・とりあえず今は自警団準隊員として働いているようだ。 と、アルベルトが口を開く 「シュウ、事務所に戻るぞ」 「えっ?」 「隊長に報告だ、それとリサはどこにいる」 「リサさんなら事務所にいると思いますが、もしかしてなにか分かったんですか?」 「ああ、とにかく戻るぞ」 「えっ、ちょっと待ちなさいよ」 「悪ぃ、それじゃサンキューな・・・」 アルベルトとシュウは再びカウベルを鳴らし、さくら亭を出ていった 二人は小走りで事務所に向かっている 「アルベルトさん、何がわかったんですか」 「・・・・・・・・・」 アルベルトは険しい表情で何かを考え込んでいる 「(無視された・・・)・・・んっ、あれっ?」 シュウは何かに気が付く 「・・・あれクレアちゃんじゃないですか?・・・隣にいるのは?」 「・・・・・・・・」 アルベルトは無言のままクレアの方を見る 「・・・・・!!」 はっと我に返ったアルベルト 「クレア!!」 ●第8話 投稿者:タムタム  投稿日: 9月23日(土)00時03分08秒 「アルベルトさんっ!?」  今にも駆け出して行きそうな形相のアルベルトへシュウが何事かと声をかける。 「クレア!そいつから離れろ!」  シュウの声が聞えていないのか、叫ぶと同時に槍を構えて義腕の男へと突撃する。 「(また無視された・・・)・・・リサさんを呼んで来た方がいいかな?」  少し考えてから、シュウは自警団事務所の方へと駆け出した。その後ろでアルベルトと義腕の男、アーウィルの影が交差する。そして、クレアの叫び声が聞えてきた。  一方その頃さくら亭では・・・ 「も〜。アルベルトさんったら感じ悪いなぁ」  「朝来た時もあんな感じだったわよ。」 「ぶ〜☆つまんない〜」  そんな内容の会話がされていた。 「なんであんな事聞いて行ったのかしら?」  パティがそう呟き、何やら考え始める。『もしかして・・・?』 「マリア、そいつを探してみる!」  その声にパティの思考は中断される。見るとマリアはすでに立ちあがり、扉の方へと向かっていた。 「ちょ、ちょっとマリア!」  慌てて声をかけるトリーシャにマリアは足を止め、怒ったような口調で一言。 「何よ!アルベルトの言う事なんて無視すればいいでしょ!」 「そうじゃなくて・・・。何処を探すつもりなの?」 「えーっと・・・」  その言葉に困った顔をしながら、髪の毛を指先でいじり始める。何も考えずに飛び出して、一体何処に行くつもりだったのか考えてみる。分かる訳が無い。 「きっとその辺にいるわよ」  パティは冗談で言ったつもりだったが、その考えは当たっていた。何やら通りが騒がしい。途切れ途切れだが自警団員の声が聞えてくる。 「急げ!・・・」 「・・・向こ・・アル・・」  外から聞えてくる声に、マリアとトリーシャは顔を見合わせる。 「行ってくるね!」  そう言い残して二人はさくら亭を飛び出した。後に残されたのはパティだけ。 「今日は忙しい日ね・・・」  所変わってジョートショップ。テディは外を眺めていた。今日は午後から仕事が入っているだけなので、アーシィはローラとおしゃべり中(と言っても、ローラが一方的に話しているだけなのだが)アリサはピザを焼く準備をしている。よって、テディは暇を持て余していた。 「・・・?」  外を眺めていたテディの視界に、何やらふわふわ浮かんでいる黒い物体が飛び込んできた。 「よう、犬。アルベルト見なかったか?」 「犬じゃないっス!」  一応はそう言ってみるが、まるで聞いていない。相手は口と態度が悪い、空飛ぶ物体のヘキサである。はっきり言って言うだけ無駄。 「アルベルトさんなら見てないっスよ」 「・・・もうすぐ飯だっていうのに何処行っちまったんだよ・・・。メシ〜」  そう呟きながら、ふらふらと何処かへ飛び去っていく。 「・・・ヘキサさんに何があったか聞けば良かったっス」  時すでに遅く、ヘキサの姿は見えなくなっていた。 「リサさん!」  シュウが事務所に飛び込むと、リサが椅子に座ったままこちらを見ていた。 「何か分かった様だね」  シュウの様子からそう判断すると、イスから立ちあがり近寄って行く。 「じつは・・・」  シュウの話しを黙って聞いていたリサだが、だんだん表情が厳しくなってゆく。 「ったく、何やってんだい。行くよ!」 「まって下さい」  事務所を飛び出したリサに続き、シュウも飛び出す。 「何があったんだい・・・?」  そこでリサが見たものは、呆然と座り込むマリアに、地面に倒れているアルベルト。そして、それを見下ろす義腕の男だった。 ●第9話 投稿者:YS  投稿日: 9月23日(土)05時43分41秒 「何があったんだい・・・?」 「この人がいきなり襲いかかってきたんだ」  リサの問いに答えたのは義腕の男、アーウィルだった。リサはその腕を見た時なんとなく違和感を感じた。 「アンタ<城砦潰し>のアーウィルかい?」 「ん・・・ああ、久しぶりだな」  そして、その違和感はますます高まった。 「アンタ、本当に”あの”アーウィルなのかい?」  ところ変わって、雷鳴山。なぜかここにヘキサが来ていた。 「うー、はら減ったぞー」  はらが減っているのに、なぜ街から離れたのかが謎だが、とにかく、彼はいた。 「お、あそこにいるのは・・・」  どうやら何か見つけたらしい。 「お〜い、セリーヌ」 「あら〜、ヘキサさんですか〜」  またまた謎だが、セリーヌがいた。 「何してんだよ、こんなとこで」 「落とし物を届けようとしてたんですけど〜」 「なんで落とし物を届けるのにこんなとこに来るんだよ」 「どうしてなんでしょうか〜」 「・・・迷ったんだろ。ところで、いい匂いだなその包み」 「これですか〜?・・・変ですね〜」 「何が変なんだよ、貸してみろって」  いうが早いか、ヘキサは包みを奪い取る。 「お、クッキーじゃねーか。ひとつ貰うぞ」  そういいながら、すでに口に運び終わっている。 「変ですね〜、どうしてローラさんの作ったクッキーがあるんでしょうか〜」  ・・・ぶばっ 「げほっ・・・なに〜!ローラの作っただと〜!!」 「はい〜、ローラさんが一生懸命作ったクッキーですよ〜」 「・・・道理でまずいわけだ・・・」 「何かいいましたか〜」 「いや、何でもねえよ。それより、落とし物はどうしたんだよ」 「おかしいですね〜、確かにここに入れたんですけど〜」  そういいながらクッキーの包みを見る。 「だ〜か〜ら〜、まちがえたんだろ!!」 「そうみたいですね〜」 「ったく、しかたねーな。教会まで案内してやるから、変わりに何か食い物食わせろよ」  こうして、行方不明のセリーヌは無事、ヘキサに保護された。  そのころ、リサ達は状況説明を聞き終わったころだった。 「つまり、こういうことなんだね」  アルベルトとアーウィルの影が交差する。そして、クレアの叫び声と共に繰り出されたアッパーカットによって、見事アルベルトは地面に倒れこんだ。クレアの言い分ではアルベルトが恩人にいきなり襲いかかった為だという。  マリアが呆然と座り込んでいたのはそれを見たためで、アーウィルは自分に襲いかかってきたアルベルトを、どうすればいいかわからなかったので見下ろす形になったということらしい。 「とにかく、アンタにはいろいろ聞きたいことがあるんだ。自警団の事務所まで一緒に来てもらうよ」  いうが早いか、リサは事務所への道を歩き出す。アーウィルも仕方なくついていく。  シュウはアルベルトを抱え、ついていった。 ●第10話 投稿者:宇宙の道化師  投稿日: 9月24日(日)17時06分41秒 「うーん」  と、呻き声を上げるアルベルトの額に、とりあえずシュウは濡れタオルをのせることにした。彼が失神した原因は、完璧なアッパーカットを食らった事による脳震盪なので、意味があるかどうかは自信が無いが。  それにしても…… 「クレアちゃんを助けるつもりで、当の彼女にノックアウトされるなんて……」  どれほど控えめに言おうと、間が抜けていること甚だしい。  先程の騒ぎに駆けつけたトリーシャは、とりあえずリカルドのために頭痛薬と胃薬を用意すると言っていた。  今は、マリアやクレアと一緒にドアの張り付いて、アーウィルとリサの会話を聞き取ろうと苦心している筈だ。   「うーん、聞こえない……」 「ぶ〜☆ つまんな〜い」 「はあ……」   ドアが分厚い上に、中の二人があまり大きな声で喋っていないため、ほとんど中の様子を窺うことができない。 「企ん…いる………て………ったく………の悪い」 「……んた…………に付き合う………は無い…………目に………んだね………次第では……」 「随分と非……的なこと………なあ。…………に再………って言う……」 「…んた……腕……が、よほど………的に思え……………ね、<城砦潰し>」  あまり穏やかな雰囲気ではないことは解るが。 「どんな様子だ?」  いきなり後ろから声をかけられ、三人は飛び上がった。 「お父さん……びっくりさせないでよ……」  三人の後ろに立っていたのはリカルドだった。 「ああ、すまん。リサに『自分に任せてくれ』と押し切られたものの、どうしても気になってな」 「あの……」  少し不安そうに、クレアが口を開く。 「あの人は……どういう御方なんですか? リサ様のお知り合いのようなことを……」  続いて、マリアも口を開く。 「<城砦潰し>って、何?」  最後に、トリーシャ。 「そう言えば、お父さんは何にも教えてくれないじゃないか、ズルイよ」 「う……」  リカルドは言葉に詰まった。  そう言えば、何も教えていなかったような気もする。