updated Feb.25 2000
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)

質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3500. 確定申告で交通費を非課税にしたいけど…
 派遣会社から交通費を支給されていません。年間だと15万円ぐらいになり、金額が金額なだけに確定申告などでお金が戻つてくる方法はないものかと思います。雑費で経費として申告するなど、なんとか交通費を控除する方法はないでしようか。

 これは難しい問題です。派遣労働者は税法では原則として給与所得者です。1般に労働者の通勤についての費用(通勤費)は、電車やバスなど通常の交通機関を利用している場合には、1カ月10万円まで「非課税」あっかいになります。この点は派遣の場合もなんら変わりません。実際、通勤手当が支給されている派遣労働者は、こうした非課税のあつかいを受けています。
 ところが、質問のような問題が生ずるのは、派遣元(派遣会社)のなかには、通勤手当を支払わず交通費分を時給にふくめて計算している(形では交通費を支払わない)ところなどがあるからです。これは、あちこちの派遣会社に派遣され、しかも短期間に採用と退職を繰り返す登録型派遣の場合、個々に通勤費を計算することが賃金管理の占…で面倒だからだと思います。
 税法では、給与所得者の場合、いわゆる必要経費に相当する分は「給与所得控除」(65万円)として考慮され課税されます。つまり、給与所得控除以外に通勤費を「必要経費」として控除することはできないのです。各種の必要経費を計上することが認められるのは「事業所得」です。いわゆるフリーランサーや在宅労働などの形態、つまり、労働者ではなく、自営業形式(事業主形式)で働く場合です。もちろん、その場合は、交通費や通勤費を必要経費とすることもできます。派遣労働者を事業所得者と同1視することは危険な方向です。かりに必要経費として通勤費15万円を控除できたとしても、事業者となれば労働基準法の年休や残業手当、社会保険や労働保険の適用はなくなります。また、給与所得者である派遣労働者には、現在、給与所得控除65万円がありますが、これらも失うことになります(コラム@のBさんの事例参照)。
 実際の税金対策としては、事後的に派遣元から「通勤費額の証明」と給与に非課税の通勤費がふくまれていないことを示してもらうことです。派遣元は嫌がると思いますが、何とかねばつてみることです。派遣会社が応じてくれれば、派遣労働者の通勤費は月10万円まで非課税あつかいになります。確定申告のときに還付請求することができます。
 やはり本筋は、税金対策ではなく、きちんと通勤費についての処理をさせること、税法にもとづいて通勤費額の非課税あつかいをさせるか、その証明を出させることでしょう。派遣会社への登録時や派遣就労時に事前に通勤費について非課税あっかいにするよう約束させたり、退職するときや源泉徴収票を請求するときにも、この点を強く求めることが必要です。

 ○派遣社員の交通費
 1999年3月の東京都労働経済局の登録型派遣労働者の調査では、36・7%が「通勤費の支給を受けていない」という結果が出ています。(以上、脇田滋『これだけは知っておこう派遣社員の悩みQ&A』学習の友社より)

 なお、2000年春闘に関連して、東京ユニオンの活動について、朝日新聞に次のような記事がありました。

 朝日新聞2000年(平成12年)2月23日

 断面 2000年春闘 「通勤費の税金、取戻そう」
 HPで手法を公開 派遣労働者ら確定申告運動

 「通勤費にかけられた税金を取り戻そう」−−。派遣労働者らで組織する地域労組、東京ユニオンと派遣労働ネットワークは、確定申告によって通勤費に課せられた、「納め過ぎ」の税金を三月十五日までの確定申告で還付させる運動を始めた。今春闘の目玉に位置づけ、派遣業界に協力を働きかけるとともに、東京ユニオンのホームページ(http://www.t-union.or.jp)に確定申告のマニュアルなどを公開、派遣労働者らの参加を呼びかけている。

 正社員やパートの労働者の場合、賃金と通勤交通費は別々に支給されるのが一般的で、交通費には課税されない。しかし、派遣労働者の場合、交通費込みで一括して賃金が払われる場合が多い。派遣労働ネットワークの一九九八年の調査では派遣労働者の四分の三は通勤費が支給されていなかった。東京都が昨年三月にまとめた派遣労働実態調査でも、三分の一強が支給されていない。
 一括して支給されると実際に通勤に使った交通費も所得として課税される。例えば、一カ月の通勤費が二万円かかる場合、年間二十四万円。これが給与と合算されて支給されると、最低でも所得税一〇%と住民税五%の計一五%に当たる三万六千円が源泉徴収で取られている計算だ。東京ユニオンは派遣会社に通勤交通費証明書を発行させて、通勤費の実費を税務署に確定申告し、払いすぎた税金を取り戻す運動に取り組むことにした。すでにホームページには同証明書のひな型も載せた。日本人材派遣協会〈加盟三百十五社)にも協力を要請、同協会も「派遣労働者の福利厚生の向上につながる」と前向きな姿勢を示す。しかし、この通勤交通費証明書が税金の還付をもたらすのかどうか。国税庁は
「通常の給与に加算して受ける通勤費の場合には非課税になる。仮に通勤費を実際に負担したとしても一括されて支給されれば.『加算』とみないのが所得税法の解釈だ。派遣会社が分離して支給すれば済む問題ではないか」〈法人税課)という。
 一方、派遺業界は、分離支給の事務が繁雑なうえ、通勤費を上積みした派遣料金を顧客に請求できない力関係にあるため、分離して支給すると、利益確保のため通勤費の少ない登録者ばかりを紹介し、かえって不公平になりかねない、などと弁解する。関根秀一郎・東京ユニオン書記長は「不安定な労働条件のうえに、税制上の差別を受けているのは許せない」。二月中にも派遣労働に理解のある国会議員とともに国税庁と交渉する予定だ。

 (写真)「通勤費にかかった税金は取り戻せます」。東京ユニオンが開いた,確定申告学習会に参加した派遣労働者ら

関連したホームページ
 
 国税庁タックスアンサー<所得税コーナー>


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