updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3260. 健康保険・年金にはいれますか
 労働者が就労したことにともなって加入するのは、通常、健康保険・厚生年金保険です。
 この健康保険・厚生年金保険はセットで加入することになっており、その加入の要件もほぼ同じです。つまり、一定の事業所に使用される者で、臨時的な雇用でないものであればすべて加入しなければなりません。

 派遣会社は、いかに小規模であっても法人(株式会社など)であれば、適用事業所です。雇用期間が2ヵ月を下回るときには加入できませんが、契約が2ヵ月契約でも、それを繰返して反復更新しているときには、加入対象になります。

 短時間労働者も加入対象ではないとされていますが、通常の労働者(正社員)の4分の3(1日8時間であれば6時間、1月20日であれば15日)以上、就労するときには、加入対象となります。

 通常、フルタイムでの派遣労働であれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入の必要が生じます。
 派遣会社は、とくに、登録型の派遣労働者については、社会保険に加入することを選択できる、といった勝手な誤った解釈をしてきました。その責任は重大です。いずれにしても、派遣労働者であるから、適用を除外されるという法律の規定はどこにもありません。
 使用者(派遣会社)は、社会保険に加入するべき労働者を使用するときには、これを届け出る義務があります。
 健康保険法 第8条(事業主の報告等の義務)

 保険者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ被保険者ヲ使用スル事業主ヲシテ其ノ使用スル者ノ異動、報酬等ニ関シ報告ヲ為サシメ又ハ文書ヲ提示セシメ其ノ他本法ノ施行ニ必要ナル事務ヲ行ハシムルコトヲ得

 厚生年金保険法第27条(届出)

 適用事業所の事業主又は第十条第二項の同意をした事業主(以下単に「事業主」という。)は、厚生省令の定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額に関する事項を都道府県知事に届け出なければならない。


 この義務を果さなかったときには、6ヵ月以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられることになります。
 健康保険法 第87条(事業主に関する罪)

 事業主故ナク左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ六月以下ノ懲役又ハ二十万円以下ノ罰金ニ処ス
 一 其ノ使用スル者ノ異動又ハ報酬ニ関シ第八条ノ規定ニ基ク命令ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタルトキ

 厚生年金保険法第102条

   事業主が、正当な理由がなくて左の各号の一に該当するときは、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
 一 第二十七条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。


 このように罰則が定められているのはかなり厳しい義務ということです。

 たしかに、この報告の義務は、国が事業主に対して定めた義務ですが、労働者は、この義務を果すように求めることが労働契約上の権利としてあると考えられます。なぜなら、この報告によってしか、労働者は健康保険に実際に加入するという利益を得られないからです。

 また、保険料を全額納付する義務も生じます(保険料については、労働者に半額を負担させることができます)。<多くの派遣会社(使用者)は、こうした社会保険法が求める使用者としての義務や負担を逃れてきた訳です。

 社会保険加入については、派遣会社に手続をするように求めることが必要です。加入してくれたか、どうもあやしいといったときには、保険者(政府管掌健康保険の場合には、近くの社会保険事務所)に問い合わせをしておくことが必要です。保険料だけをとられて、保険給付を受けられないのでは困ります。

 派遣会社には、零細企業も少なくありませんし、いい加減な管理をしている例もあります。ご自分で役所に確かめておくことが必要です。
 社会保険事務所は、都道府県の役所の一部ですので連絡方法が判らないときは、県庁などに尋ねてください。

 こうした社会保険の加入に関する法的義務を事業主(派遣元)が果さないときには、つぎのような対抗措置も可能です。

 (1)健康保険法8条・87条違反および厚生年金保険法第27条・102条違反について、警察に刑事告発をして刑事処分を求めることができます。

 被害者が加害者に対して行う(刑事)告訴と違って、この告発はだれでも行うことができます。派遣労働者の場合には、次の派遣紹介などで不利益を受けるので、それを恐れて告発は難しいかもしれません。
 しかし、法律家団体や労働組合であれば直接の当事者でありませんので、報復を受ける可能性もありませんので告発も可能です。

 1997年の会計検査院の措置は刑事処分ではありませんが、その一歩手前の行政的な制裁措置につながるものです。ですから、派遣業界は、しぶしぶながら派遣労働者の社会保険加入を進めることになったのだと思います。
 (2)健康保険や厚生年金保険加入の手続きは、労働契約による労働者に対する義務ですので、それを果さないのですから、契約違反になると考えられます。

 派遣労働者は、社会保険の加入手続きの義務を履行しない使用者に契約違反の責任を追及できます。
 まず、手続きを履行するように請求できます。(1)との関連で、社会保険事務所(健康保険や厚生年金保険の手続きを管理する都道府県に属する役所)に改善を求めることも同時に行えばいいと思います。

 次に、手続きをしないことによって生じるすべての損害の賠償を請求することが可能です。

 また、社会保険加入の手続をしてくれないことを理由に、労働者から退職するのは実際にはほんとんど考えられませんが、契約期間途中での労働者からの一方的契約終了(解約)をすることも可能です(責任を問われません)。

 なお、健康保険加入についての、公共職業安定所HPは次のように解説しています。
 すべての法人の事業所、又は常時5人以上の従業員を使用する事業所には健康保険が適用されますから派遣会社も当然適用になります。
 適用事業所に雇用されれば原則として加入しなければなりません。
 パートタイマーの適用基準
 1日の所定労働時間が、一般社員のおおむね4分の3以上であれば該当します。
 1ヶ月の勤務日数が一般社員の所定労働日数のおおむね4分の3以上であれば該当します。
 ただし2ヶ月以上の雇用の見込みが必要です。
 なお、あくまでも適用基準は判断の目安であり一律にこの基準を当てはめて機械的に判断するのではなく、就労の形態、内容を総合的に考えて常用的使用関係にあると認められれば被保険者となります。
(以上、公共職業安定所のHPから転載)


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