updated Oct.8 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3240. 派遣で働いていますが、派遣先から派遣元に渡される派遣料金のなかで、何割が自分に入っていて、何割を派遣会社が何に使っているかを知ることは可能でしょうか。
 以前の派遣では、4割近く取られていました。短期の派遣で時給も安く、保険も何もないのに、何故4割近く取られていたのか納得できません。
 説明も求めましたが、「そんなに取っていない。誰がそんなこと言ったんですか。」とか責めてきますし、内容についても聞いても、曖昧な答えしかもらえません。私達に知る権利はないのでしょうか。そして、派遣会社は明示する義務はないのでしょうか。
 まず、派遣会社の取る手数料については、法的には、労働基準法が禁止する「中間搾取」ではないか、という疑問が生じます。

    派遣料金−賃金=派遣元の手数料部分−−−→中間搾取

 労働基準法第6条(中間搾取の排除)

 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。


 他人が仕事につくときに、中間に介在して賃金の一部を取上げることは、いわゆるピンハネということで労働基準法が禁止しているのです。

 しかし、労働者派遣法が制定され、「法律に基づいて許される場合」に当るとされこうした中間搾取が合法化されることになっているのです。

 私たちは、労働者派遣法が制定されるときに、この合法化された「中間搾取」部分を、有料職業紹介事業の場合のように10%程度に抑えるように主張してきました。

 労働者供給事業を行っている労働組合のなかには、派遣会社には社会保険などの使用者としての責任が有料職業紹介事業にはない責任があるので、20%程度までは認めてもよい、とする意見もありました。

 いずれにしても、せいぜい20%程度のピンハネが認められる限度だと思います。
 ところが、労働省は、次のように、派遣労働関係では、派遣元と派遣労働者の間に労働関係があり、派遣元は「第三者」ではないから、労働基準法が禁止するピンハネにはならない、としています。

 これはコジツケの議論だと思います。派遣労働関係の基本は、働く者とその労働を受ける派遣先との関係です。極端に言えば、派遣元はほとんど意味がない存在であって、まさに「第三者」であると言えるのです。つまり、次の労働省の解釈は派遣元のピンハネを事実上放置することにつながっています。

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律第3章第4節(労働基準法等の適用に関する特例等)の施行について(昭61・6・6 基発第333号)

 (2) 中間搾取との関係
 イ 労働基準法第6条は「業として他人の就業に介入して利益を得る」ことを禁止しているが、この場合の「他人の就業に介入」するとは、「法第8条の労働関係の当事者、即ち使用者と労働者の中間に、第三者が介在して、その労働関係の開始存続において、媒介又は周旋をなす等その労働関係について、何等かの因果関係を有する関与をなしていることである」(昭和23年3月2日付け基発第381号)。
 労働者派遣については、派遣元と労働者との間の労働契約関係及び派遣先と労働者との間の指揮命令関係を合わせたものが全体として当該労働者の労働関係となるものであり、したがって派遣元による労働者の派遣は、労働関係の外にある第三者が他人の労働関係に介入するものではなく、労働基準法第6条の中間搾取に該当しない。

 労働省は、こうした考え方から、派遣会社の手数料について、派遣料金の何割といった規制を定めようとしていません。
 また、派遣料金について、これを派遣労働者に公開する義務を派遣会社に課していません。
派遣労働者の場合、賃金は「派遣料金と賃金の格差」という問題もあります。
ここに1995年に賃金と派遣料金を比較した表があります。
いくらピンはねされているか?派遣という働き方がどんなにリスクのあるものか考えてみてください。

 東京都の調査では、次のような数字が示されています。
   業務の種類    平均基準賃金  派遣料金の平均  賃金比率
              (月額)    (20日分)

情報処理システム開発 300,870円 453,320円 66.4%
機械設計       311,870円 425,640円 73.3%
機器操作       206,960円 301,080円 68.7%
通訳・翻訳・速記   323,200円 579,220円 55.8%
秘書         254,760円 354,000円 72.0%
ファイリング     197,130円 280,660円 70.2%
財務         213,750円 294,980円 72.5%
貿易         243,390円 326,140円 74.6%
デモンストレーション 210,270円 374,960円 56.1%
添乗         196,850円 307,320円 64.1%
建築物清掃      190,200円 239,800円 79.3%
                <東京都労働経済局1995年調査>
 これによれば、単純には40%から20%以上のピンハネ率になっています。
 一方では、社会保険加入などの使用者としての責任を十分に果していないことが派遣会社の問題点として指摘されています。

 社会保険未加入などの使用者責任を果していないことが問題になっています。多額のピンハネをしながら使用者責任を果さない派遣会社を労働省のように労働関係があるから「第三者」ではない、とかばい立てすることは説得力がありません。

 学説のなかには、余りにも多額のピンハネ(必要経費をはるかに上回る)については、労働基準法第6条が禁止する中間搾取にあたるとする意見もあります。労働省のようにまったく規制をしない、のは大きな問題だと考えます。

 何割のピンハネ率か、派遣会社は絶対に明らかにしません。
 正面から尋ねても、派遣会社が拒否すれば、法的には手段はありません。
 もちろん、知る権利はあります。要求するのは当然です。

 しかし、残念ながら、派遣会社の明示義務は労働者派遣法には規定されていません。

 法律的に考えられるのは、一定の証拠(状況証拠)を準備して、限度を超えていることを理由に、労働基準法第6条の中間搾取であると決めつけ、不当利得であるとして、一定部分の返還請求の民事裁判を提起することが考えられます。

 裁判を通じて、派遣会社は、釈明のために必要経費などを説明しなければならない状況に追込むしかありません。一度、このような裁判も考えてよいと思います。

 もし、派遣が違法であるときには(対象業務外派遣、無許可派遣など)、前提がありませんので、派遣業者の手数料の大部分は、労働基準法第6条違反の中間搾取に該当しますので、返還請求だけでなく、刑事告発によって罰則の適用を求めることも考えられます。
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