updated Sept. 6 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3180. 賃上げの交渉をしたいのですが
 

 賃金の集団的決定

 派遣労働者の賃金は、派遣会社(派遣元)が決定し、支払う義務を負っていますので、派遣元との交渉事項となります。
 賃金は労働条件のなかでも最も基本的なものです。労働法の建て前では、「労働条件労使対等の集団決定」が原則となっています。いわゆる賃金表の改訂やベースアップといわれる集団交渉で、争議行為を構えての集団的な労働者の力で使用者に圧力をかけることによって賃金の引き上げが可能になります。団体交渉の労働協約によって賃金の改訂を行うことは、一般の労働者と同様に派遣労働者にも可能性としては開かれています。
 しかし、この12年間の労働者派遣法施行後の状況をみますと、派遣労働者が労働組合に加入して、派遣元と団体交渉を行う事例はきわめて限られた場合しかありません。フランスやドイツなど、EU諸国では、同一労働同一賃金の保障がありますし、産業別労働協約は、派遣労働者にも適用されます。派遣労働者自身が、労働組合の呼びかけたストライキに参加することも可能です。労働組合に加入したり、集団的交渉ができない、日本の派遣労働者の現実は、ILO181号条約の理念にも反した異常なものです。

 賃金の個別的決定

 派遣元は、就業規則によって、賃金について、明確にその支給基準などを決めることが必要です。賃金表によって、労働能力、年齢など客観的な基準に基づいて公正な賃金決定ができるようにしなければなりません。労働者の仕事ぶりに従って賃金を個別に査定・決定する能力給などの賃金決定も、公正な基準に基づかないで使用者の勝手な決定は許されません。
 したがって、本来、同じ労働であれば同一の賃金が支払われることが原則ですから、この原則を歪めるような賃金の交渉(自分だけは同じ労働でも高い賃金を要求する交渉)は許されないことになります。つまり、賃金についての個別交渉は、すでにある基準から見て、賃金表や基準の適用が違っていることを是正するという趣旨の交渉になるかと思います。
 日本の賃金査定は、曖昧な基準で根拠が明確でない判断によって行われている例がほとんどだと思います。アメリカでは、査定者が労働者に査定の根拠などを明確に伝え、労働者が納得し、署名してはじめて査定結果が有効になることになっています。日本の賃金査定では、労働者が査定結果について知らされ、署名をすることはほとんどありません。使用者の決定がすべてで、理由も判らないまま、不明朗な査定が一般的です。
 とくに、派遣労働者の場合には、誰が(派遣元か、派遣先か、その両方か、また具体的な査定者は誰かなど)、どのような基準で判断するのか明確にされないことが多いようです。とくに、派遣先が実際に仕事を指揮命令し、仕事ぶりを判断できる立場にありますが、法的には、派遣元が賃金を決定します。直用の労働者の場合にも、労働者は、賃金査定について不満が生じがちですが、派遣労働者の場合には、派遣先と派遣元の連絡がうまくいっているのか、派遣先の勝手な言い分を派遣元が鵜呑みにしているのではないか、など不満が大きくなる条件が数多くなります。苦情処理も形としては用意されていますが、実際にはほとんど活用できていません。

 


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