updated Oct. 1 2000
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

2272. 労働者派遣法の改正で「派遣先による直接面接」が禁止されたと聞きましたが?  登録していた派遣会社から、派遣先に面接に行くように指示を受けました。事前面接は、法律違反と言うことは承知していますが、こちらも生活がかかっているので断ることもできません。
 そのまま派遣されるのであれば問題なく働くつもりですが、万一、「なかったことに」なった場合、どの役所に持ち込めば適切な処分を下していただけるのか、教えてください。
   具体的な事情が示されていませんので、一般的なコメントになります。
 事前面接の問題点については、FAQ2270に指摘した通りです。
 1999年の労働者派遣法改定で、事前面接の弊害が改めて指摘され、労働者派遣法の第26条第7項に以下のような「労働者の特定行為の禁止」が明文の規定として盛り込まれることになりました。また、派遣先や派遣元に対して労働省から、ガイドライン(指針)が示されています。

 したがって、現状では、派遣先が、派遣就労を受入れる前に「事前面接」をすることは悪質な法違反と言えます。労働者派遣法では派遣先の「努力義務」が明確ですので、悪質な派遣先企業には公共職業安定所を通じての行政指導を求めることができます。さらに、民事的には、不法行為と考えられますので、それによって生じた損害については、派遣先や派遣元に賠償を請求することが可能であると言えます。

*事前面接の禁止の法的根拠

○労働者派遣法(1999年改定)第26条第7項
第26条(契約の内容等)
 7 労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。
○新派遣法・派遣先指針(労働省告示 1999年第138号)

 派遣先が講ずべき措置に関する指針

 三 派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止

 派遣先は、派遣元事業主が当該派遣先の指揮命令の下に就業させようとする労働者について、労働者派遣に先立って面接すること、派遣先に対して当該労働者に係る履歴書を送付させることのほか、若年者に限ることとすること等の派遣労働者を特定することを目的とする行為を行わないこと。

○新派遣法・派遣元指針(労働省告示 1999年第137号)

 派遣元が講ずべき措置に関する指針

  十一 派遣労働者の特定を目的とする行為に対する協力の禁止等

 (一) 派遣元事業主は、派遣先による派遣労働者を特定する行為に協力してはならないこと。
 (二) 派遣元事業主は、派遣先との間で労働者派遣契約を締結するに当たっては、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第三条の規定を遵守するとともに、派遣労働者の性別を労働者派遣契約に記載し、これに基づき当該派遣労働者を当該派遣先に派遣してはならないこと。

 本来は公共職業安定所が「事前面接」の禁止を徹底する行政責任を負っています。しかし、実際には事前面接の慣行が広がっているのは、公共職業安定所が本気で責任を果たせる態勢にないことに原因があると思います。これまでの相談例では、公共職業安定所は、一般に期待されている労働者保護の姿勢が弱く、意外に企業よりとも言えます。しかし、労働者が粘り強く、行政責任を追及すれば建て前として、責任を否定することができません。余程、労働者が強く求めないと、本来の役割を果たさないのは、労働行政としては情けない限りです。

 できれば、労働組合やマスコミなどの援助を得て、社会的に公共職業安定所を包囲し、しっかりと行政責任を果たさせ、さらに派遣元や派遣先に責任をとらせることが必要だと思います。

 いずれにしても派遣労働者が声をあげないと問題があることさえ、社会的には知られていません。派遣問題に取り組む地域労働組合や法律家団体、さらにはマスコミなどを通じて、悪質な派遣先や派遣元を社会的に告発することも考えられます。

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