― 1998年 社会保障法合同ゼミナール 大阪市立大学1部報告内容案 ―

日本の社会保障は所得保障として、社会保険、公的扶助、社会手当があります。
そして、その社会保険の一つであり、将来の私たちの生活にとって、最も
重要であると思われるものが年金保険です。そもそも社会保障制度、年金制度と
いうのは憲法25条の生存権に基づいて作られたものですから年金というのは
すべての人がもらえるはずなのですが、現状ではもらえない人がいるのです。
高齢者で、旧制度における任意加入制度で未加入だった人、あるいは、保険料
滞納者、障害者で制度上の問題で受給されない人がそれです。
私たち 大阪市立大学法学部1部社会保障法ゼミでは、特にそのうち、
障害無年金問題をとりあげてみました。

1、制度、受給要件(障害基礎年金)

2、無年金者の種類わけ
無年金者においては、過去の制度の問題で、現在無年金の人、そして
現在の制度の問題で、無年金の人を特にとりあげて分類しました。
・旧制度の問題による無年金者
1)国民年金に任意加入していなかったサラリーマンの妻
2)国民年金に任意加入していなかった学生
3)旧法対象者で、厚生年金の加入後6か月以内、または共済年金
加入後1年以内に初診日があった者
4)脱退手当て金の対象となった被保険者期間中に初診日があった者
5)障害が軽くなり支給停止後3年で失権したが、その後に障害が
重くなった者
6)国籍要件のため、国民年金に加入できなかった在日外国人
7)国民年金の繰り上げ請求で老齢基礎年金を受給したために、
事後重症の請求を受けられなくなった者
・現行制度の問題による無年金者
1)65歳過ぎに障害状態になった高齢障害者
2)保険料を一定期間滞納していた者
3)任意未加入で、長期間の国外滞在中に障害者となった者

3、無年金者の具体例
ー国籍要件のため国民年金に加入できなかった在日外国人についての例ー

4、無年金者の救済策について
無年金者たちはもう今後年金をもらうことはできないのでしょうか。
現在の制度の問題での無年金者、過去の制度の問題での無年金者、
それぞれ救済策のある場合、ない場合に分類しました。
現在の制度における無年金者
・救済策がある場合
国外滞在中に障害者となった場合は、滞在していた国との協定によっては
救済を受けることができる。
・救済策がない場合
高齢障害者
滞納者→自己責任による場合をどこまで救済するか?
過去の制度における無年金者
・救済策がある場合
厚生年金加入後6か月以内に初診日があった場合
事後重症…65才になる前日までに申請すれば支給される
・救済策がない場合
個別的救済策として訴訟
新しい救済制度をつくる

5、まとめ
私たちは、いつ障害者になるかわからないはずですが、自分が障害者になるだろうと思う人はほとんどいないでしょう。そうなると、保険料を支払わず、障害者となった後で救済策を必要とすることになってしまいます。
このように、障害というものの性質上、保険主義ではどうしても限界ができてしまいます。
そこで私たちはこう考えます。日本で生活している以上、生存権が保障されるべきですが、実際はそうでない人々もいます。そのような人々は、国民がみんなで助けていくべきです。
そのためであれば、国民がすべて払うような税金(たとえば消費税)を上げることもやむをえないのではないでしょうか。
ただし、国にはその税金を効率的に社会保障などに運用できるような財政をつくることが要求されます。

1998.11 担当:大阪市立大学法学部1部社会保障法ゼミ