民間シェルターの概要

大阪市立大学

  1. 民間シェルターとは

民間シェルターとは、民間の手で運営されている、虐待を受けた女性の緊急一時避難の場所である。現在全国に22ヶ所確認されているが、他にも個人や宗教団体のものもある。現在の法律による行政の枠組みでは援助しきれない女性たちを受け止め、安全に守ってくれる。核シェルターのように、完全に外界から遮断され、何より女性たちの安全を優先する。そのため、場所は一切公開されていない。そして、女性を心身ともに安らかにさせ、次のステップへのあらゆる援助を提供する。

2.どうすれば民間シェルターに入れるか

民間シェルターの場所は、安全確保のため公開されていない。そのため、民間シェルターの情報を手に入れるのはなかなか難しいが、女性への暴力に関する書物の中から知ったり、婦人相談所や公的な相談機関で情報を得ることが出来る。とはいえ、民間シェルターの情報が浸透しているとはいえず、相談に行ったところで必ず情報が得られるわけではない。民間シェルターに何らかの方法で連絡を取ったあとは、民間シェルターがそれぞれ独自に入所の必要性を判断する。行政機関では手続に時間がかかったり、判断の基準が厳しかったりと、受け入れられないケースが多い。このような場合にも、民間シェルターは状況によって柔軟に対応している。しかし、受け入れ定員数は少なく、満員の場合もあり、いつでも入れるとは限らないのが現状である。

3.シェルターに入ってから

シェルターでは、被害女性が再スタートするための相談にあたり、弁護士や福祉 事務所などとの協力によって 問題を解決できるように支援する。民間シェルターによっては、新しい生活のための住居や、生活保護や離婚手続などの相談にのる。日本にはまだまだ、シェルター間のネットワークや、援助提供の統一基準などがない。

19986月に、日本で初めての民間シェルターの全国ネットワーク会議が北海道で開かれ、民間シェルター間の連携や共通意思を持とうという動きが、ようやく出始めている。しかし現状は、それぞれが独自の方法やネットワークで女性をサポートしている。

4.問題点と課題

  1. 財源不足・スタッフ不足
  2. ほとんどが、支援する会員からの寄付や会費でまかなわれており、DVの視点で公的援助を受けているのは東京と新潟だけである。利用を有料としていても、何も持たずに逃げてくる女性たちには支払えない場合も多く、スタッフにも十分な賃金を払えない。

    にもかかわらず、シェルターのスタッフは激務を強いられている。男性からの攻撃はスタッフにも及ぶことがあるし、暴力から逃げてくる女性を24時間何時でも受け止めるのは並大抵ではない。守るほうも命懸けである。民間シェルターのスタッフに対する公的援助や関連機関からの支援も重要な課題である。

  3. 安全性を保ちながらの広報活動をどうやるか
  4. 財政問題にもからんで、一般にも民間シェルターの意義を知らせ、支援者を増やすのも大切だろう。安全のため場所を非公開にすることは大事だが、民間シェルターの存在を何らかの方法で、もっともっと広く伝える必要がある。

  5. 援助の内容と質の向上

被害女性のサポートには、心理的なケアを始め法律の問題や行政とのやり取りなど、多岐にわたる分野の援助が必要である。そのためには、民間の力だけでは限界もあるので、官民を越えた連携が不可欠である。民間シェルターと他の関連機関とのネットワークを確立することが、被害女性により有効な援助ができることにつながる。

 

女の駆け込み寺・生野学園(大阪市大が訪問させていただいた民間シェルターについて以下にまとめる)

<開設の経緯>

婦人保護施設生野学園の閉鎖に伴い、生野学園の元職員が中心となり1998年開設。

<運営>

専従スタッフ3人、ボランティア(弁護士13人、カウンセラー14人、保健婦2人、他3人)、支援会員594人(年会費6000円)

<目的>

  1. 夫の暴力など生活上の困難を抱えた女性の自立を援助し、女性の地位向上を図る。
  2. 大阪市唯一の「女の駆け込み寺」としての役割を積極的に果たし、公的社会福祉施設としての認可を求めていく。
  3. 全国シェルターや関係機関と連携し、女性福祉の拡充に向けての運動を進める。
  4. 「女性福祉法」「女性福祉条例」制定の運動を進める。
  5. 大阪の婦人保護事業を守る会や、個人、女性団体、労働組合等幅広い人々と協力・共同し、誰もが安心して暮らせるよう運動と事業を進める。

<事業内容>

  1. 相談活動
  2. 電話相談、面接相談、法律相談(ボランティアの女性弁護士)、カウンセリング

  3. 緊急一時保護
  4. 入所期間は原則として3ヶ月を限度とする。利用料は1日1500円(子ども何人でも+500円)食事は自炊とし副食費は各自負担。定員は4組。

  5. 女性の人権を守り、その地位向上の為の諸活動(広報活動や他団体との協力など)

 

[生野学園退所者からの不安の声]

[生野学園から太田房江知事への申し入れ]