大鏡・伊尹

花山院はかねてからの願い通り熱心に御修行なさり、修行のため訪れない場所はなかった。(中略)

こうしているうちに、法力がたいそうおつきになり、比叡山中堂にお登りになった夜のこと。比叡山の法師たちが護法童子を使って法力比べしているのを見て、院も「法力を試してみよう」とお思いになった。

院が心の中でお念じになったところ、護法童子がついた法師は、院がいらっしゃる屏風の面に吸い付けられて身動きできなくなった。

あまりに長い時間がたったので、「もういいだろう」と院がお許しになったところ、身動きできなかった法師は護法童子をつけた法師たちの元へ跳ねとんだので「なるほど院の御護法が法師を引きつけていたのだなあ」と人々は驚きあった。

それは当然のこと。験も身分によるものであるので、たいそうな修行人であっても、どうして院に並ぶことができましょうか。

天皇になれるほどの前世での功徳に加えて、国王の位を捨てて出家なさった功徳はこのうえないことでございましょう。


原典:『大鏡』(新編日本古典文学全集34)1996、小学館

法力の強弱が身分にも大きく左右されるというのは、現在から見ると面白い解釈です。

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