巻第十一 花山院、書写上人性空の像を写さしめ給ふ事

花山法皇は、書写上人の徳をとても尊んでいたので、絵師を連れて書写山にお登りなさった。

そして御対面の間に、上人には供の者が絵師であることを隠し、上人の姿をよく見せて、こっそりと肖像画をお描かせになった。

と突然、山が鳴りひびき地震が起こった。上人は法皇が驚きなさっているのがわかったので、「これは性空(注:上人の名)の姿をお描きになったので、地震が起こったのです」とおっしゃった。それで法皇は上人への信心がますます高まった。

上人の顔にはちいさなアザがあったのだが、絵師はそれを見落として描いていなかった。ところが、地震の騒ぎで絵師が筆を落としてしまったところ、ちょうどその部分に筆が落ちて墨が付き、それがアザとそっくりだったので、人は皆不思議なことだと思ったそうだ。

その肖像画は、今でも書写山の宝蔵にあるということだ。


原典:『古今著聞集 下』(新潮日本古典集成)1986、新潮社

花山院は、性空上人たちといっしょに、比叡山や紀州熊野那智山に参籠・修行し、西国三十三ヶ所観音霊場の巡礼を発願したといわれています。これはその性空上人の徳の大きさを示すエピソードです。

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