嬉遊笑覧・化物絵

化物絵

花山院のお描きになったあかんべえの絵は伝わっていない。光重の百鬼夜行を元祖とし、元信などが書いたものもある。

奇怪な物の絵に名前が付けてあるのは、浄土絵双六などがその最初であろうか?

その名前の大略は、赤口、ぬらりひょん、牛鬼、山彦、おとろん、わいらうわん、目一ツ坊、ぬけ首、ぬっぺらぼう、ぬりほとけ、ぬれ女、ひやうすべ、しやうけら、ふらり火、りうんばう、さかヾみ、身の毛だち、あふあふ、どうもかうも、これらの名前はその姿を見て作ったものが多いようである。

その他にも猫また、野きつね、雪女、かつぱ、山わらは、犬がみ、山姥、火車、みこし入道などがいる。

みこし入道の注:これは大きな法師が金棒などを杖にしているのをいうのか、また同じ姿で頸が長いものをいうのかわからないが、世間で良く描かれている。けれどもみこし入道は光信の百鬼夜行などには見えず、元信の画に頸の長いのもいるが今のみこし入道の姿とは違っている


原典:『嬉遊笑覧 2』(日本随筆大成 新装版<別巻8>)1979、吉川弘文館

大鏡・伊尹

花山院は絵をお描きになりましたが、それはとても面白いものでした。

例えば、走っている車の車輪の部分に、墨をうっすらとお塗りになって、墨をぼかすようにしなさったのは、なるほどこのように描くべきだったのだなあと思われます。速く走っている車は、どのぐらい車輪が黒いかなどどうして目に見えましょうか。

また、男が筍の皮をそれぞれの指に付けてあかんべえをして子供をおどかし、おどかされた子供が顔を赤くしてひどく恐ろしがっているという内容の絵や、裕福な人や貧しい人の家の中での生活の様子などを描いた絵などもお描きになりましたが、どの絵もきっとそのようであろうと思わせるものでした。


原典:『大鏡』(新編日本古典文学全集34)1996、小学館

花山院と化物絵について。嬉遊笑覧の化物絵の項には「花山院のあそばしたるめかヽうは伝はらず、光重が百鬼夜行を祖として、元信などが書きたるもあり」とあります。『嬉遊笑覧』の編者喜多村信節は花山院が最初に化物絵を描いたと理解していたと言うことでしょうか?

下段の大鏡は「花山院のあそばしたるめかヽう」について書かれている部分です。

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