第三十六話 とどめき   1967年2号(1月8日号)掲載

 貧乏人から、物を盗むと、「百の鳥の目」ができるという。これは、貧しい人の見方、「とどめき」という妖怪が、悪人にとりつくからだと言われている。


第三十七話 輪入道 1967年3・4号(1月15・22日号)掲載

 むかし、京都の東塔院通りに「輪入道」という妖怪が出たという。この妖怪は、日暮れになると、下町から山の方へかけのぼるのだ。

 恐ろしくて「輪入道」を見る者はいなかったが、ある女が一目見たいと、戸を細めに開け、妖怪が来るのを待った。

 ゴーゴーと不気味な音をたて、妖怪がかけのぼってくる。見ると、恐ろしい顔をした車が、引きちぎった人の足をぶらさげ、走ってくる。女がはっとして、顔を引っ込めようとしたときだ。

「この女め、俺の顔を見るより、自分の子供を見ろ!!」と妖怪が叫んだ。

 振り返ってわが子を見ると、子供の足は無惨にも引きちぎられていた。それ以来「輪入道」を見る者はいなくなったという。


第三十八話 かんばり入道
          
1967年3・4号(1月15・22日号)掲載

 誰も入っていないのに、便所の戸が開かない。
 また、古い板の便所などで、誰も入っていないのに、キキとか、チチとか、トリのなき声のような音が聞こえることがある。

 これは、「かんばり入道」という便所のまわりをうろつく、なんとも、いやらしい妖怪のしわざだと言われる。

 大晦日の夜、便所に行って、「かんばり入道かつこう」と唱えれば、この妖怪は一年間は出てこないという。

 また、ある説によると、「かんばり入道」に出会った場合、着物の帯(今ではバンド)を解いておくと、脅かされないという。

 中国では、この「がんばり入道」を「紫姑神」といって、便所の神様とあがめている。

 日本でも、地方によっては、これを「かわやの神」とする所もある。


第三十九話 あかなめ   1967年5号(1月29日号)掲載

 何日も何日も、風呂場を洗わずに不潔にしておくと、人が寝静まった頃、ペロペロと風呂場の方でなにかをなめる音がすることがある。

 風呂場に行ってみると、垢の付いた、湯ぶねの一部分が、テカテカに光ってきれいになっている。

 これは、「あかなめ」というまるまる太った妖怪が、長い舌で湯ぶねの垢をなめに来ていたのだ。

「あかなめ」という妖怪は「あかふり」ともよばれる。

 そしてこの妖怪は古い風呂屋さんや、古い風呂場によく出る。風呂場に付いた垢を求めて、毎夜、風呂場を渡り歩くのだ。

 昔の人は、不潔な風呂場の垢の中から、「あかなめ」が生まれると信じていた。
また、生まれた「あかなめ」は風呂場の垢をなめて生きていくとも信じていた。

 だから昔の人は毎晩風呂から上がるとすぐに掃除をして、いつも風呂場を清潔にしていたという。


第四〇話 ぬえ      1967年5号(1月29日号)掲載

 あるとき、晴れ渡った空に、急に黒雲が現れた。すると、なぜか御所にいた天皇が声を詰まらせて苦しみ始めた。

 外を見上げた家来が黒雲の中に怪しい姿を見て、矢を放った。
 矢は怪しいものに命中し、怪しいものが天から落ちてきた。

 頭はサル、からだはタヌキ、手足はトラ、尾はヘビというすごい姿だ。

 これは昔御所によく出た「ぬえ」という妖怪の仕業だ。だが正体は不明である。


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